UPDATE 2025.08.26
POST 2025.08.26
※為替レートは2025年8月時点のものです。
スイスフランは、永世中立国スイスの通貨であることから、国際的な金融不安や地政学リスクが高まる時には、「安全通貨」として投資家の需要が多くなる場合もあります。
スイスフラン/円は、同じ「安全通貨」であることから、比較的値動きが安定しており、FX取引でも人気の通貨ペアです。平時には安定した値動きをする一方で、過去にはスイス国立銀行(SNB)の市場介入により、変動幅が拡大したこともあります。逆に、介入の取りやめが変動要因となった局面もありました。
本記事では、スイスフラン/円の為替レートの現状や過去の推移、今後の見通しについて詳しく解説しますので、FXや資産運用を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
2025年8月25日時点のスイスフランと日本円の為替レートは、1スイスフランが182.85円前後で推移しています。
このレートに基づくと、1万円をスイスフランに換算した場合、約55スイスフランとなります。為替レートは常に変動しているため、両替やFX取引をする場合には、最新状況を確認しましょう。
また、FX取引では、売値と買値の差であるスプレッドが実質的な取引コストとなります。例えば、スイスフラン買い円売りのポジションの場合、スプレッド分以上にスイスフラン高が進行しなければ、利益が発生しない点に注意しましょう。
スイスは、インフレの進行を背景に、2023年には段階的に利上げを行い、一時は政策金利が2008年以来の水準となる1.75%でした。日本とスイスの金利差を背景に、この頃は円安が進行しました。しかし、2025年8月時点でのスイスの政策金利が0.0%であるのに対し、日本の政策金利は0.5%となっており、金利差が逆転しています。
スイスは、永世中立国で経済的に安定した国であり、ユーロ圏の影響を受けつつも独自の金融政策を維持しています。スイスフランへの投資を検討する上で、まずはスイスの基本的な情報をおさえておきましょう。
スイスは、ヨーロッパの中央部に位置し、内陸国としてアルプス山脈に囲まれています。約60%が山岳地帯で、観光資源としても非常に豊富です。
スイスは「永世中立国」として知られていますが、これは1815年のウィーン会議で認められたものです。この地位により、スイスは戦争や紛争に巻き込まれることが少なく、安定した情勢を保っています。
経済的には、金融業、製薬業、時計製造業、機械工業といった産業が発展しています。1人あたり実質GDPが、98,146米ドル(2025年時点)と世界有数の高水準であることが特徴です。スイスには、国際労働機関(ILO)や世界保健機関(WHO)など、国際的な機関の本部が多く所在しており、さまざまな組織にとって重要な活動拠点の一つとなっています。
スイスの通貨はスイスフラン(CHF)で、補助通貨単位としてサンチーム(フランス語圏、ドイツ語圏ではラッペン、イタリア語圏ではチェンテージモ、ロマンシュ語圏ではrap、表記は「Rp.」が一般的)が存在します。紙幣は10フラン、20フラン、50フラン、100フラン、200フラン、1,000フランの6種類です。紙幣はスイスの文化や科学、芸術をテーマにしたデザインで構成されています。
日本円からスイスフランへの両替は、日本国内の銀行や外貨両替所でできます。また、スイスの現地の両替所などでも交換可能です。
なお、スイス国内の店舗やサービスでは、ユーロを両替せずに使えるところも少なくありません。EU諸国を訪れたあとなら、ユーロのまま使用するのも一つの方法です。
スイスフランは、政治・経済の安定性に裏打ちされた信頼性の高い通貨です。永世中立国であるスイスは、戦争や大規模な政治的混乱が少ないことから、投資家にとって安全な資産として捉えられています。
世界情勢が不安定な時期には、スイスフランが買われやすく、価値が上昇する傾向があるのが特徴です。スイスはEUには未加盟ですが、ユーロ圏諸国に囲まれているため、ユーロの経済動向がスイスフランに影響を与える場合もあります。
スイスでは、年4回中央銀行による金融政策決定会合が実施されます。利上げ・利下げなど、金融政策の変化も為替相場の変動要因の一つです。
スイスフランは、政治的な安定性と高い経済力に支えられた通貨である一方、過去には特定の要因で大きく変動した局面もありました。ここでは、スイスフランの過去の変動要因を詳しく見ていきます。
安全通貨としての性質により、グローバルな政治・金融の混乱においては、投資家がスイスフランに資金を移動させる動きが強まり、価値が上昇する傾向があります。
例えば、2001年のアメリカ同時多発テロ事件や2003年のイラク戦争の際には、スイスフランの急騰がみられました。最近では、ロシアとウクライナの紛争激化でも、スイスフランの需要が高まりました。スイスフランは、国際的な政治・金融混乱時の資産逃避先の通貨として認知されており、価値が上がる傾向にあります。
スイスはEU加盟国ではありませんが、地理的・経済的にはEUと密接な関係があり、ユーロ圏の経済状況はスイスフランに影響を与えます。
例えば、ギリシャ危機や欧州債務問題など、ユーロ圏の経済が悪化する際には、スイスフランは安全資産として買われ、ユーロに対して価値が高まる傾向にあります。また、欧州中央銀行(ECB)が金利を引き下げると、ユーロの魅力を低下させ、相対的にスイスフランの強含み要因になり得ます。ただし、現状はSNBの金融政策により、その動きが抑制されています。
スイスの中央銀行にあたるスイス国立銀行(SNB)は、スイスフランの高騰を抑制するために、為替市場へ介入したことがあります。
例えば、2011年9月6日に欧州債務危機の影響でスイスフランが高騰した時、1ユーロ=1.20スイスフランを上限とする「minimum exchange rate(下限レートまたはcurrency floorフロア)」を導入しました。この措置は、スイスフランの過度な上昇による輸出産業や観光業への悪影響を抑制する目的で実施されました。SNBは、この下限レートを維持するために、必要に応じて無制限に外貨を購入する用意があると表明しました。
2015年1月15日には、この下限レートが予告なしに突然撤廃され、スイスフランは一時1ユーロ=0.9スイスフランを割り込む水準にまで急騰しました。平時には相対的に安定性の高い通貨とみられていますが、この出来事は「スイスフランショック」とも呼ばれ、為替市場におけるリスク管理の重要性を改めて認識させることになりました。
政策金利が変わると、スイスフランと円の金利差が変化し、為替相場の変動をもたらします。金利差拡大要因となる日本の利上げ、スイスの利下げはスイスフラン安の要因で、その逆はスイスフラン高の要因です。
スイスフラン高を抑制するために、スイスでは2015年以降マイナス金利政策を採用していました。しかし、国内外のインフレによる悪影響を抑制する目的で、2022年9月22日にマイナス金利を解除し、-0.25%から0.5%に引き上げました。その後、一時は政策金利が1.75%まで引き上げられ、この間はロシアのウクライナ侵攻、中東情勢の緊張による原油高など複合要因により、スイスフランへの資金流入が促進され、円安が進行しました。
日本銀行が2025年1月に政策金利を0.5%に引き上げたことで、一旦は円高へ振れましたが、スイスが3月に政策金利を0.25%へ引き下げ、6月にはゼロ金利への移行があったにもかかわらず、円安傾向の転換には至っていません。
スイスフラン/円の今後の為替レートを考える上では、スイスと日本の金利政策、為替介入、国際情勢の変動、さらには経済指標の発表の影響を考える必要があります。ここからは、今後のスイスフラン/円の変動要因についてまとめました。
スイスと日本の金利政策は、スイスフラン/円のレートに強い影響を与えます。スイスは2022年にマイナス金利を終了して以降、一時は1.75%まで利上げが進みました。その後は利下げが行われ、2025年8月現在の政策金利は0.0%です。
対して日本では、2024年3月にマイナス金利を解除、7月にも利上げが行われました。2025年1月には0.5%まで再度引き上げられ、同年5月の会合でも据え置かれました。
今後、仮にスイスの利下げ、日本の利上げがさらに進む場合には、スイスフラン安円高が進む可能性も視野に入れておく必要があるでしょう。
為替介入は、スイスフラン/円の為替レートに大きな変動をもたらす可能性があります。例えば、SNBが過度なスイスフラン高を抑えるために介入すれば、一時的にスイスフラン安が進む可能性があります。
同様に、日本銀行が円安対策で介入すれば円高が進み、相対的にスイスフランは安くなります。しかし、為替介入のタイミングや規模は事前に予測するのが難しく、投資家は常に最新の情報を収集し、迅速に対応することが求められます。
国際情勢が不安定な時期には、「安全資産」としての需要が高まり、スイスフラン高が進む傾向があります。最近でいえば、ウクライナ情勢の緊張が、スイスフランの上昇要因となりました。
今後もアメリカの金利政策や貿易摩擦、さらにはアジアや中東での地政学リスクの上昇などが、スイスフラン高の要因となる可能性があります。逆に緊張が緩んで安心感が強まれば、スイスフランから他の通貨へ資産を移す動きが広がるでしょう。スイスフランの取引を行う場合には、世界情勢の動向も見ておく必要があります。
経済指標の水準も、スイスフラン/円の為替レートに大きな影響を及ぼします。例えば、スイスの実質GDP成長率は、スイス経済の動向を示す重要な指標です。
成長率が高い、もしくは予想を大きく上回れば、スイスフラン高の要因となります。またその逆は、スイスフランが下落する要因となるでしょう。2025年6月16日にスイス連邦経済省経済事務局(SECO)が発表した実質GDP成長率予測は、2025年が1.3%、2026年が1.2%と、3月時点(1.4%、1.6%)から下方修正されています。今後の予測値の変化や、実績と予測値の差異に着目しましょう。
スイスフラン/円でのFX取引には、投資家にとっていくつかの大きなメリットがあります。スイスフランと日本円は、どちらも世界的に信用力が高く、相対的に安定した通貨とされています。そのため、為替の急変動が比較的少ない傾向があり、通貨の特性を理解すれば、初心者にも取り組みやすい通貨ペアの一つと言えます。
また、スイスフランはリスクオフの局面で上昇する傾向があるため、他のハイリスク・ハイリターン通貨ペアと組み合わせて分散投資するのも有効な戦略の一つです。
スイスフランと日本円は、世界的な経済不安や政治リスクの影響を受けにくい通貨です。スイスは永世中立国として知られ、地政学リスクの影響を受けにくい国です。そのため、世界情勢が不安定なときには、資産の逃避先として注目される傾向があります。日本円もまた、リスクオフの際に買われることが多い通貨です。
このような背景から、スイスフラン/円の取引は、経済不安や情勢悪化時の急変リスクが相対的に低く、初心者やリスク回避志向の投資家に適した通貨ペアです。米ドルやユーロとは異なる動きをするため、投資先を分散する観点からも有効です。他の通貨ペアや他の資産との分散投資をすることは、有効な選択肢の一つといえます。
スイスフランは、ヨーロッパ市場での取引が活発で、比較的流動性の高い通貨です。流動性の高さを背景に取引が成立しやすく、指定した価格通りに取引が実行できる可能性が高いでしょう。
特に、流動性が高くなる欧州時間帯を狙って取引を行えば、スムーズな売買が期待できます。欧州時間帯にはBid/Askスプレッドも狭まる傾向があるため、取引コストを抑えたい方はこの時間帯に取引を実行すると良いでしょう。
ただし、米ドルやユーロに比べると流動性が低いため、取引量が少ない時間帯は円滑な売買が難しくなることもあります。
スイスフラン/円は、他の通貨ペアと比べて値動きが比較的安定しています。ここまで紹介した流動性の高さや安全性の高さにより、スイスフラン/円は環境変化の影響を相対的に受けにくい通貨ペアであると期待されます。
FX取引は、レバレッジにより高い利益を追求することが可能です。その反面、急激なレート変動により、証拠金を超える損失が発生するリスクもあります。スイスフラン/円のように値動きが安定した通貨ペアを選択すれば、レバレッジを活用したとしても、環境変化による損失の抑制が可能です。
スイスフラン/円の取引には、為替介入や金利政策の変更に伴う変動リスクがあります。また、ユーロや米ドルと比べて、取引量が少ない点もリスク要因の一つです。スイスフラン/円のFX取引を行う場合は、これらのリスクを理解しておきましょう。
スイスフランは、スイス国立銀行(SNB)が為替市場に対して介入を行う可能性がある通貨です。スイスフランの過度な上昇によるデフレリスクを抑制する目的で、SNBが為替市場へ介入し、スイスフラン安へ誘導する可能性があります。
為替介入は、予期せぬタイミングで行われることが多く、スイスフラン/円のレートが急変する要因の一つです。また、2015年の「スイスフランショック」のように、為替介入レベルの解除が相場急変をもたらすケースもあります。SNBの動向には、常に注意が必要です。
スイスや日本の金利政策の変化もリスク要因の一つです。2025年8月現在、スイスはゼロ金利政策をとっています。さらに、SNBはインフレ目標を維持するために、必要に応じて政策金利を再びマイナスに引き下げる可能性も示唆しています。
現在、スイスフラン買い・円売りで得られるスワップポイントはマイナスになっていますが、SNBがマイナス金利政策をとれば、ポジション保有コストがさらに増大します。
そのため、両国の中央銀行の動向に注意を払う必要があります。金融政策決定会合では、重要な政策変更が発表されるケースが多いので、逐一会合の結果を確認しましょう。
スイスフランは、米ドルやユーロに比べると流通量が少なく、時間帯や市場環境によっては、スプレッドが拡大しがちです。夜間や祝日などの流動性が低下するタイミングでは、取引コストが増加する可能性があります。
また、取引量が少ない通貨ペアは、売買のタイミングにより希望のレートで約定できない場合があります。これらのリスクを抑制するために、スイスフラン/円の取引が活発なタイミングを狙って売買するのが得策です。
スワップポイントは、2ヶ国間の通貨の金利差によって発生する調整額のことで、高金利通貨を買い、低金利通貨を売れば金利差益を獲得できます。
逆に、高金利通貨を売って、低金利通貨を買った場合でもスワップポイントが発生します。金利差がプラスになればスワップポイントを受け取ることができ、マイナスになると支払う仕組みです。
2025年8月時点、スイスフランの金利は0.0%、日本円の金利は0.5%です。金利差は日本の方が0.5ポイント高くなっているため、2025年8月時点の市場環境では、スイスフラン買い、日本円売りのポジションを保有すると、日々のスワップポイントを支払う可能性が高くなっています。
スイスフラン/円でFX取引を行う際には、少額投資や分散投資を心がけるのが得策といえます。また、情報収集をしっかり行って、適切なタイミングで売買するように心がけましょう。ここからは、スイスフラン/円でFX取引を始める際のポイントを紹介します。
スイスフラン/円の通貨ペアで初めて取引をする場合は、まずは最小単位から始めると良いでしょう。FX取引の最低取引単位は、FX会社によって異なります。SBI FXトレードのように、1通貨単位、すなわち1スイスフラン単位で取引が可能な会社もあります。
初心者のうちは、少額で取引することで損失を抑制しながら、取引のルールやタイミングを掴んでいくのが得策です。
取り返しのつかない損失を受ける心配がないため、リスクに対する恐怖感も軽減され、ストレスを感じずにFXにチャレンジできます。経験を積んで慣れてきたら、徐々に取引額を増やしていくと良いでしょう。
スイスフラン/円だけに集中せず、複数の通貨ペアに投資を分散させることで、リスク分散が可能です。例えば、米ドル/ユーロや米ドル/円などの異なる値動きをする通貨ペアを組み合わせると、リスク分散効果が期待できます。
また、スイスフランの安定性に着目して、あえてハイリスク・ハイリターンの通貨ペアと合わせ持つのも一案です。
例えば、高金利の新興国通貨ペアとスイスフラン/円の通貨ペアを合わせ持つことで、新興国の経済成長が良好な時には高い利益を獲得でき、逆に経済悪化時にはスイスフラン/円が損失抑制の役割を果たします。新興国通貨だけに投資するよりも、損失リスクを抑制できるでしょう。
スイス国立銀行(SNB)や日本銀行が発表する政策金利の変更や、両国のインフレ率、失業率、GDP成長率といった主要な経済指標を逐一チェックしましょう。これらの情報は、時に為替レートに大きな影響を与えるため、事前に発表タイミングをおさえて、タイムリーに内容を把握できるようにしておくことが大切です。
多くのFX会社では、マーケットニュースや経済指標カレンダーを提供しています。これらの情報を活用することで、重要な経済イベントのスケジュールを事前に把握できます。また、SNSや経済ニュースサイト、金融メディアなども有効な情報源です。
スイスフラン/円は安定性が高いため、初心者にとっても取引しやすい通貨ペアです。ただし、為替介入や金利政策の変更といった、スイスフラン/円の相場変動要因には注意しましょう。
スイスフラン/円での取引を始める場合は、少額からのスタートがおすすめです。SBI FXトレードは業界トップクラスとなる「34種類」の通貨ペアがあり、1通貨単位から取引できるため、非常に少ない資金からFX取引が可能です。また、スプレッドは業界最狭水準となっており、利益を上げやすい環境が整っているため、初心者の方にも安心してご利用いただけます。
まずはSBI FXトレードで口座を開設し、FX取引を始めてみましょう。
SBI FXTRADE
FX(外国為替証拠金取引)は異なる通貨を売買し、売買時のレートによって生じた差額で利益を出そうとする取引です。
SBI FXTRADEは、スプレッドやスワップポイント、通貨ペア数など、業界最良水準のサービスをご提供しています。また、初心者の方から、上級者までご満足いただける取引ツールをご用意しております。
この記事を監修した人
SBIリクイディティ・マーケット株式会社
金融市場調査部長
上田眞理人