UPDATE 2025.06.17
POST 2025.06.17
外貨預金は、円預金よりも高い利回りや為替変動によるメリットが期待できる魅力的な商品です。特に円安・円高が大きく影響するため「いつ預け入れるか」が重要なポイントになるものの、相場の方向性を正確に予測することは、運用のプロでも難しいのが現実です。
この記事では、外貨預金運用の初心者に向けて、始める前に知っておくべきリスクとその対策について詳しく解説します。また、FXとの違いや外貨預金のタイプについてもご紹介します。リスクを正しく理解し、適切な運用戦略に役立ててください。
外貨預金とは、日本円ではなく米ドルやユーロなどの外国通貨で預金することです。
外貨預金は、手持ちの日本円を希望する外貨に交換して預け入れるという点が異なるのみで、預け入れ方や預金の仕組みは円預金とほぼ同じです。外貨で預金している間は、その通貨を発行している国の金利水準が適用されるため、円預金よりも高金利で運用できる場合もあります。
外貨預金で最も特徴的なのが、為替変動による利益・損失が発生する点です。運用後に日本円に交換すると、預け入れた時よりも増える場合もあれば、減る場合もあります。以下で利益や損失が発生する仕組みを具体的に解説します。
円安ドル高は、日本円に対して米ドルの価値が高くなるという意味です。例えば、1ドル=150円の場合、1,000ドルを預け入れると、日本円に換算すると15万円になります。
円安が進み、1年後に1ドル=180円となった場合、日本円での評価額は18万円です。預け入れた時よりも3万円多く受け取ることになります。この時に受け取る利益のことを「為替差益」といいます。
円高ドル安とは、日本円に対して米ドルの価値が低くなるという意味です。例えば、先ほどと同じように1ドル=150円とすると1,000ドルを預け入れると、日本円では15万円に相当します。円高が進んで1年後に1ドル=120円となった場合、日本円での評価額は12万円になります。
この場合は、預け入れた時よりも3万円少なく受け取ることになります。この時にマイナスになる損失のことを「為替差損」といいます。
外貨預金で人気のある外貨はさまざまですが、初心者におすすめなのは米ドルやユーロです。
米ドルは世界で最も取引量が多く、基軸通貨としても高い信頼性があります。ユーロは米ドルに次ぐ取引量で比較的、為替相場が安定しているのが魅力です。オーストラリアドル(豪ドル)、ニュージーランドドル(NZドル)なども日本円と比較して相対的に金利が高く人気があります。
ただし、どの外貨を取り扱っているかは金融機関によって異なるため事前に確認しておきましょう。
外貨預金は、円預金よりも高い金利が期待できる一方でいくつかのリスクも伴います。始める前に、以下の3つのリスクとその対策についてしっかりと理解しておきましょう。
為替差損による元本割れリスクは、外貨運用全般のリスクであり注意が必要です。元本とは基礎となる資産、ここでは預け入れるお金を指します。
外貨預金は預金という名前が付いていますが、預け入れた通貨の価値(為替相場)は常に変動するため、預け入れた時よりも円高になっていると元本が減ってしまうリスクがあるのです。
外貨預金は、元本割れのリスク対策を取っておくことが大切です。
まずは、初心者の方は無理のない少額から始めるのが安心です。仕組みや値動きに慣れてきた段階で、少しずつ運用額を増やしていくと良いでしょう。
また、為替相場は経済状況や政治情勢の変化などで大きく変動し、一時的に為替差損が発生する場合があります。しかし、その後に回復する可能性もあるため、長期的な視野で行うことが推奨されます。
実践的な運用方法として、複数の外貨を持つのもリスク分散につながります。一部の外貨の価値が下落しても、他の外貨の価値が上がればその損失を補うことができるからです。
外貨預金は、金融機関の経営状況によっては預け入れたお金が戻ってこないリスクもあります。これは「信用リスク」 と呼ばれるもので、利用する金融機関が倒産してしまうことで預金が全額戻らない可能性を言います。
円預金の場合は「預金保険制度」という国の仕組みがあり、万が一金融機関が倒産しても一定額までは円預金が保護されます。しかし、外貨預金はこの預金保険制度の対象外となり、全額が保証されているわけではありません。
ちなみに、2010年9月、日本振興銀行が経営破綻し、金融庁は戦後初めて「ペイオフ」を発動しました。ペイオフとは、預金保険制度に加盟している金融機関が破綻した場合に預金者へ保険金を支払うことを言います。金融機関が破綻することは稀ですが、万が一の場合、外貨預金は対象外になる点は覚えておきましょう。
信用リスクは金融機関の信用力に起因するものですが、預け入れる金融機関の経営の安定性を確認しておくなどの対策が可能です。
例えば、事業内容や財務状況などをまとめたディスクロージャー資料、金融機関の債務の支払い能力を評価する格付けなどで金融機関の健全性を確認することができます。
これらは各金融機関または格付け会社のホームページで確認しましょう。格付けが高い金融機関ほど信用力が高くなります。
ただし、格付けはあくまでも一つの評価基準であり絶対的なものではありません。社会情勢の変化によっては、合併による金融業界の再編も活発化する可能性があるため、定期的に情報収集を行うことが重要です。また、複数の金融機関に分散して外貨預金する方法も有効な手段と言えるでしょう。
流動性リスクとは、自分の好きなタイミングで外貨を日本円に交換できないリスクのことです。預け入れた通貨を発行する国の経済状況によって、為替の取引が制限されているなどの場合は、外貨預金の預け入れや払い戻しに応じてもらえない可能性があります。
外貨の流動性は、通貨の取引量によって左右されます。米ドルやユーロのような取引量が多い通貨は流動性が高く、一方でトルコリラやブラジルレアル、南アフリカランドのように取引量が少ない通貨は流動性が低いとみなされます。
流動性が低い通貨は価格が不安定になりやすいため、初心者はできるだけ避けた方が良いでしょう。
流動性リスクは、一般的に取引量の少ない外貨で発生しやすいリスクですが、米ドルやユーロなどは取引量が多いため、そのリスクは比較的低いと言えます。
しかし、外国為替市場の取引状況や金融機関の規定によっては、好きなタイミングで希望する金額を引き出せない場合もあります。外貨預金はあくまでも余剰資金で行い、長期的な視点で運用することが大切です。
ここでは、外貨預金を行うメリットについて説明します。
外貨預金の一つの大きなメリットは、日本円よりも高い金利の外貨で預け入れができることです。日本では長らく低金利が続いており、円預金だけでは利率が低く資産を増やすことが難しい状況です。
一方で、新興国などの外貨は高い金利が設定されていることが多く、利率の高さからより多くの利息も期待できます。
外貨預金は、為替相場の変動によって為替差損が発生したとしても、その一部または全部を利息で補うことができる可能性があります。
特に、長期で預け入れる場合は複利効果によって利息が増えていくため、為替差損の影響をより緩和できる可能性が高まります。
外貨預金は、円安が進んだ場合に大きなメリットを発揮します。
例えば、1ドル=150円で100ドルを預け入れると、日本円では1万5,000円です。その後円安が進み1ドル=180円になった場合、1万8,000円となり、この時点で米ドルを日本円に戻せば3,000円の為替差益を得ることができます。
反対に、1ドル=130円と円高になった場合は2,000円の為替差損となりますが、通貨の評価額が下がっただけです。この時点で日本円に戻さない限り、為替差損は発生しません。
外貨預金は大きな利益を狙う運用ではありませんが、株式などに比べて損益の生じる仕組みが分かりやすく、少額から始められるため、ミドルリスク・ミドルリターン型の資産運用とされています。
円預金より高い金利で運用できる手段として、初心者でも始めやすいのが特徴です。ただし、リスクが全くないわけではありません。特に、外貨によってはハイリスクなものが存在するため、運用前に十分な情報収集を行いましょう。
ここからは外貨預金のデメリットについて説明します。
外貨預金のデメリットは、運用できる外貨の種類が限られている点です。金融機関にとって、為替手数料が外貨によって異なり、管理が難しいことなどの理由が挙げられています。金融機関によりますが、少なければ5種類、多くても13種類程度と言われています。
「信用リスク」で先述したように、預金者の預け入れ金は預金保険制度によって一定額が保護(ペイオフ)されていますが、外貨預金はペイオフの対象外です。金融機関が破綻した場合、外貨預金の払い戻しは保証されないため全額が戻ってこない可能性があります。
外貨預金は、日本円を外貨に交換する際と日本円に戻す際に、必ず為替手数料が発生します。この為替手数料は金融機関によって異なり、取引金額や外貨の種類によっても変動します。
一般的に、取引金額が多いほど受け取れる利息は増えますが、同時に為替手数料も高くなるため、為替差益が出ても為替手数料の方が上回ってしまう可能性も考えられるのです。
外貨預金で得た為替差益は、「雑所得」として扱われるので原則として確定申告が必要です。課税される所得額が高いほど税率も高く、税金負担が大きくなります。
ただし、年間の所得が48万円以下の場合や、年収2,000万円以下の給与所得者で、為替差益を含めた給与所得以外の所得が年間20万円以下の場合は確定申告が不要です。
ちなみに、外資預金の利息にも円預金同様、20.315%の税金がかかりますが、利息を受け取る際に源泉徴収されているため、確定申告は不要です。税金は計算や分類が複雑になりますので、不明な点があれば税務署や税理士などの専門家に確認するようにしましょう。
外資預金は適切な知識なしに始めると思わぬ損失を被る可能性があります。ここでは、初心者が陥りやすい失敗例をご紹介します。
失敗例の一つは為替変動リスクを軽視してしまうケースで、預け入れた後にしばらくして円高になっていることを知らずに引き出そうとして、元本割れが発生してしまったという失敗です。
金融機関は、その日の市場の動向を踏まえて独自に為替相場を設定しています。この為替相場を常にチェックし、円換算でいくらになるのか確認しないと、大きなミスにつながります。
外貨預金では、頻繁な引き出しも大きな落とし穴となります。例えば、金融機関で外貨を日本円に交換すると毎回為替手数料がかかるため、頻繁に入出金するほど為替手数料の総額が増えてしまいます。
また、為替変動も影響し、結果的に損失となるケースも考えられるため、生活費などはしっかり確保しておき、余剰資金を使うことが必須です。当面使う予定のないお金を外貨預金に回せば頻繁に出し入れする必要がなく、為替手数料の出費が抑えられるでしょう。
外貨預金は、「単利型」「複利型」の2種類があり、利息の計算方法が異なります。単利型は元本のみに利息が付き、複利型は元本と利息の合計で利息が計算されるため、長期的な運用では単利型に比べ利息による利益効果が高くなります。
「金利の高い単利型を選んでしまった」、「そもそも外貨預金の種類や特徴について知識がなく、単利型と複利型があるのを知らなかった」など、契約前に確認しなかったことで、思うように利息額が増えていかない事態を招くことがあります。複利型を選んで長期的に運用すれば、高い利息効果が期待できます。
預金保険制度とは、金融機関が破綻した場合、預金者1人あたり一定額までが保護(ペイオフ)される制度です。基本的には1人あたり、1金融機関1,000万円までと破綻日までの利息分となっています。
しかし、先述したように外貨預金はペイオフの対象外です。「金利の高さから多額のお金を外貨預金として預け入れてしまった」や「そもそもペイオフの対象外になる金融商品があることを知らなかった」などの理由で後悔する方もいます。
利回りの高い外貨定期預金は魅力的に見えますが、引き出すまでには一定期間が必要です。
また、いざ満期になったため解約しようとしても、為替相場が大きく変動している可能性もあります。円安の場合は元本が増えますが、反対に円高になると元本割れのリスクが考えられます。
原則、外貨定期預金は中途解約できません。やむを得ず中途解約をするにも解約手数料がかかり、その解約手数料が利息分を上回ると受け取り額が当初の預け入れた額を下回り、元本割れとなることもあります。
また、金融機関によっては中途解約すると預け入れた外貨の元本金額のみが払い戻しとなり、利息は支払われないケースもあるため注意が必要です。
外貨預金は高金利が魅力的な一方、注意すべき点も多々あります。ここでは、初心者でも安心して外貨預金を始められるよう、基本的な知識と注意点について解説します。
資産運用のリスクを抑えるためには、分散することが必須です。為替相場は常に変動するため、一つの外貨に多額の資金を集中させるとその外貨が下落した場合に大きな損失を被る可能性があります。
例えば、米ドルだけでなくユーロやポンドなど、複数の外貨に分散すれば、一つの外貨の価値が大きく変動した場合でもリスクを軽減することが可能です。また、最初は少額から始めて徐々に預金額を増やしていく方がリスクを抑えられるでしょう。
外貨預金を行う際には、預け入れのタイミングを複数回に分けることが重要です。一度に全額を預け入れてしまうと、その時点の為替相場が全額に適用されるため、為替変動リスクをダイレクトに受けることになります。
預け入れのタイミングを複数回に分けることで、その都度異なる為替相場で外貨を購入することが可能です。これにより為替変動リスクを分散させることができ、結果的に有利な為替相場での外貨預金ができる場合があります。
外貨預金では、短期的な為替変動は予測が難しく、為替変動による元本割れのリスクがあるため長期的な運用に向いています。その際は、生活などに支障が出ない余剰資金を預け入れることが重要です。
余剰資金を使い長期の預け入れを行うことで、為替変動の影響を抑えつつ資産を増やす可能性が高まる他、引き出す時の為替手数料を抑えることもでき、全体的なコスト低減が期待できます。
外貨預金を行う際には、為替相場や各国の政治・経済ニュースを定期的にチェックしましょう。
為替相場は政治情勢や国際関係、経済指標の発表などに大きく左右されるため、これらの動向を把握することでより適切な判断が可能になります。
また、各国の金融政策も通貨の価値に影響を与えるため、関連する情報をこまめに確認し、リスクを軽減しながらより有利な為替相場での預金を目指しましょう。
外貨預金以外に、初心者にも人気がある資産運用方法として挙げられるのがFXです。為替変動を利用して利益を得る点では共通していますが、仕組みや特徴は異なります。どちらの運用方法が自分に合っているか検討してみましょう。
外貨預金はレバレッジ取引ではないため、預け入れた金額での取引になります。一方、FXの場合は、レバレッジにより少ない資金で大きな金額を取引できます。例えば手元の資金が10万円でも、3倍のレバレッジ取引を行うと30万円まで取引を行えるという仕組みです。
FXは異なる通貨を売買し、売買時のレートによって生じた差額で利益を出そうとする取引です。SBI FXトレードでは、スプレッドやスワップポイント、通貨ペア数など、業界最良水準のサービスをご提供しています。また、初心者の方から、上級者までご満足いただける取引ツールをご用意しております。
外貨預金とFXは異なる金融商品であり、それぞれの特徴を理解することが重要です。外貨預金は長期運用を推奨する場合が多く、為替変動による損失の可能性があります。一方で、FXは短期間での為替変動を利用した運用が可能です。
外貨預金とFXの違いを理解し、自分の投資目的に応じた運用方法を選ぶことが重要です。外貨預金は長期運用を推奨する場合が多く、為替変動による損失の可能性があります。一方で、FXは短期間での為替変動を利用した運用が可能です。
資産運用で外貨預金を始めたいけれど、FXにも興味があると迷っている初心者には、SBI FXトレードの「つみたて外貨」がおすすめです。
「つみたて外貨」は満期がなく、長期保有も可能なので為替変動やスワップポイントによる利益をじっくりと狙うことができます。
また、SBI FXトレードでは全額信託保全されているので、万が一のときも安心です。さらに、為替差益にかかる税金も20.315%と外貨預金よりも低く設定されており、コスト面でも有利です。無料で口座開設ができるので、これからFXを始めたい方はぜひご検討ください。
つみたて外貨
SBI FXトレードの「つみたて外貨」では、為替変動などのリスクを最小限に抑えながら、長期の外貨運用がスタートできます。
外貨預金より柔軟に売買したいけれど、普通のFX投資はリスクが高いと感じる方は、SBI FXトレードの「つみたて外貨」で外貨投資を始めてみましょう。
無料で口座開設ができるので、外貨運用に興味がある方はぜひご利用ください。
この記事を監修した人
SBIリクイディティ・マーケット株式会社
金融市場調査部長
上田眞理人