外貨預金の基本を初心者向けにわかりやすく解説！メリットやリスクも

1. 外貨預金とは？基本的な仕組みを解説

まず外貨預金とは何か、その特徴や円預金との違いなどの基本を解説します。

1-1. 外貨預金の特徴

外貨預金とは、日本円を外国のお金に交換して銀行に預け入れることを指します。例えば日本円を米ドルに交換して、アメリカの銀行に預け入れるイメージです。日本の多くの銀行で専用口座を扱っているので、開設すれば利用できます。

外貨預金の一番の特徴は、為替相場の変動によって預け入れるお金が増えたり減ったりすることです。外貨ベースで考えれば、預け入れた金額（元本）とその後に運用によって増えた利息が減ってしまうことはありません。

ただ日本円に戻す時は、お金の価値が変わり為替手数料なども支払うため、預け入れた時の金額を下回ってしまうという可能性があるのです。

1-2. 円預金との違い

ここで、外貨預金と円預金の違いも理解しておきましょう。まず円預金は日本円を銀行に預け入れ、必要になったら日本円で引き出せます。預け入れたお金も利息も全て日本円です。

一方の外貨預金は、日本円を米ドルやユーロなどの外貨に交換してから預け入れます。そして、引き出す時にはその外貨をまた日本円に戻すという手間が発生します。

それでも外貨預金に魅力があるのは、日本円に比べ高い金利で設定されている通貨があるからです。金利とは預け入れたお金に対する利息の割合のことですが、日本は低金利政策が長く続いているため、金利が良いとは言えません。一方で金利設定が高い国の通貨を選んで預け入れすれば、資産を増やせる可能性が高くなります。

1-3. 外貨預金の仕組み

外貨預金は、「為替（かわせ）」というお金の価値の変わり方が大きく関係します。為替というのは、日本円と外貨を交換する際に使う言葉です。「1ドル＝140円」や「1ユーロ＝150円」というのは、外貨と日本円を交換する時の比率であり、これを「為替相場」といいます。為替相場は日々、変動します。

例えば、1ドル＝150円だったのが120円になると、150円だった時よりも多くの米ドルや米ドルで買える商品が増えるため「円高」となります。反対に、1ドル＝150円から180円になると、同じ金額で買えるドルや商品が減ってしまい「円安」となります。

為替相場は各国間の経済状況、政治情勢、貿易状況、金利差などさまざまな要因によって変動します。

外貨預金では、この為替相場が変動することによって「為替差益（かわせさえき）」という利益、または「為替差損（かわせさそん）」という損失が発生します。具体的には、円高の時に通貨を預け入れし、円安の状態で引き出せば為替差益、円安の時に預け入れて円高になった状態で引き出すと為替差損が発生するという仕組みです。

■1-3-1. 円安ドル高

円安ドル高が進むと、米ドルで外貨預金をしている方にとっては預け入れているお金の価値が上がることになります。

例えば、1ドル＝150円の時に、100ドルを預け入れたとしましょう。この時点で、日本円に換算すると1万5,000円（150円×100ドル）となります。

その後円安が進み、1ドル＝180円になった場合、預け入れた100ドルは日本円に換算すると1万8,000円になります。このタイミングで外貨預金の米ドルを引き出せば、最初に預け入れた時よりも3,000円多く受け取ることができるという計算です（利息やコストは考慮していません）。

■1-3-2. 円高ドル安

逆に円高ドル安が進むと、米ドルで外貨預金をしている方にとっては、預け入れているお金の価値が下がることになります。1ドル＝150円の時に100ドルを預け入れた場合を見ていきましょう。同じように、最初は1万5,000円です。

しかし、その後に円高が進み、1ドル＝130円になると、預け入れている100ドルは1万3,000円になります。結果的に、最初に預け入れた時よりも2,000円少ない金額しか受け取れません（こちらも利息やコストは考慮していません。）。

このように外貨預金を行う際は、円高・円安の動きをしっかりと見極めることが重要です。

2. 外貨預金のメリットと魅力

外貨預金は、円預金とは違う魅力を持つ金融商品です。そのメリットと魅力について詳しく解説していきます。

2-1. 外貨の種類によっては、円預金より高金利で運用できる

一般的に、銀行にお金を預け入れると利息がつきますが、円預金は非常に金利が低く預金をしたところで多くの資産を増やすのは困難な状況です。一方で外貨預金の場合、外貨の種類によっては預け入れたお金に対して高い利息がつくことがあります。なぜなら、外貨預金の金利は、その通貨を発行している国の金利水準に基づいて設定されるためです。

つまり、同じようにお金を預け入れるのであれば、外貨預金の方が効率的にお金を増やすことが可能です。その中でも、取引量が多く値動きの安定した外貨を選べば、円預金よりも効果的な資産運用ができるでしょう。

2-2. 為替差益を狙った資産運用が可能

外貨預金では、為替差益（かわせさえき）を利用してお金を増やすこともできます。

為替差益とは、外貨を買ったり売ったりする時に為替相場の変動によって得られる利益のことです。日本円と米ドルを交換する場合、円が強くなったり弱くなったりすると、同じ米ドルでも得られる日本円の金額が変わります。

例えば、1ドル＝150円の時に100ドル（1万5,000円相当）を外貨預金に預け入れ、1ドル＝170円に円安が進んだ段階で引き出すと、1万7,000円に相当し、円換算で2,000円の差益が生じます。

この為替差益を狙った資産運用ではFXが有名ですが、外貨預金はFXと比べてリスクは少ないため扱いやすい他、「円高」「円安」のタイミングによって為替差益を狙いやすくなっています。また近年はネット取引も普及し、手間なく口座開設できるのも魅力です。

2-3. 複数の通貨に分散できる

外貨預金はさまざまな国の通貨から選べるため、複数国の通貨を預け入れすればリスクの分散につながります。一つの国の通貨だけで預け入れしていると、その国の経済が悪化したり、何か問題が起こったりした時に大きな損失が出る場合があるからです。

米ドルだけでなくユーロやポンドなど、色々な外貨に少しずつ分けて預け入れすれば、一つの外貨の価値が下がっても他の外貨でカバーできる可能性が高くなります。

3. 外貨預金のデメリットとリスク

外貨預金にはメリットがある一方で、デメリットやリスクもあります。ここでは、注意すべき点について分かりやすく説明します。

3-1. 為替変動によって損失が発生する可能性がある

外貨預金のデメリットは、為替変動が大きなリスクとなる可能性です。預け入れた時と引き出した時の為替相場が違うと、利益が出ることもあれば、逆に損失が出ることもあります。

例えば、円安の時に外貨預金を始め、後で円高の状態で引き出すと、預け入れた時の日本円の金額より少なくなってしまうことがあります。特に為替変動に慣れていない初心者は、このリスクをよく理解せずにタイミングを間違えて損失を出しやすいので注意が必要です。

3-2. 為替手数料や税金がかかる

外貨預金をする時には、「為替手数料」がかかります。これは、日本円と外貨を交換する際に金融機関に支払うお金です。為替手数料が高いと、それだけで利益が減ってしまう場合があります。

ちなみに、外貨預金で利益が出れば税金がかかることも覚えておきましょう。この利益は「為替差益」と呼ばれ、雑所得として扱われるので一定額を超えると確定申告が必要です。外貨預金で得た利益の計算は難しいため、確定申告前にあらかじめ税務署や税理士などの専門家に確認しましょう。

3-3. 為替手数料で元本割れすることがある

外貨預金では「元本割れ」になるリスクもあります。これは預け入れたたお金が減るという意味で、為替相場の変動によるものだけではなく為替手数料によっても起こります。

例えば、100万円を外貨に交換して、為替手数料が1%（1万円）かかるとします。その後、為替相場に変動がなく、再び日本円に戻す場合にも同じ1%の為替手数料（さらに1万円）がかかれば、100万円が98万円になってしまいます。

為替手数料は金融機関によって異なり、為替手数料が高いと引き出す時に預け入れた金額よりも少なくなってしまうことがあるので注意しましょう。

3-4. 預金保険制度の対象外である

日本の金融機関には「預金保険制度」という制度が存在し、預け入れた金融機関が倒産しても預金者の元本1,000万円と倒産した日までの利息が保護される仕組み（ペイオフ）になっています。

しかし、外貨預金はこの制度の対象外です。預け入れた金融機関が破綻した場合でも、外貨預金は保証されていないため、預け入れたお金を失う可能性があります。

外貨預金を始める際には、こうしたデメリットやリスクをよく理解しておくことが大切です。

4. 初心者におすすめの外貨預金の種類と選び方

外貨預金は、為替変動リスクを考慮しながら資産を増やす手段です。ここでは、初心者向けにおすすめの外貨預金の種類と、選ぶ際の基準について分かりやすく説明します。

4-1. 主要な通貨の特徴

どの通貨を選べば良いか分からない方は、まずはよく耳にする通貨、人気のある通貨がおすすめです。外貨預金でよく選ばれる通貨は米ドル、ユーロ、豪ドルなどが挙げられるでしょう。

■米ドル

米ドル（USD）は、世界中で最も多く取引されている通貨です。国際貿易決済や各国通貨の価値基準となる「基軸通貨」とも呼ばれ、非常に安定しているのが特徴です。海外旅行やオンラインショッピングなどに利用しやすい通貨でもあります。

また、アメリカは政府や公的機関からの公式発表など情報量も多く、値動きを分析しやすいのもメリットです。

■ユーロ

ユーロ（EUR）は米ドルに次ぐ取引量を持つ通貨で、ヨーロッパ圏で広く使われています。「第二の基軸通貨」とも言われ、信頼性が高く安定感があるのが特徴です。

ユーロの管理は欧州中央銀行（ECB）が行っており、物価の安定や経済成長を目的にさまざまな金融政策を実施しています。

■豪ドル

豪ドル（AUD）は、先進国の中でも特に金利が高く、値動きも比較的大きいため利益が期待できる通貨です。オーストラリアは鉄鉱石や石炭、天然ガスなど豊富な資源を持っており、「資源国通貨」とも呼ばれています。そのため資源価格が豪ドルの価値に大きな影響を与えます。

■その他

他にも、ニュージーランドドル（NZD）やポンド（GBP）、スイスフラン（CHF）などがあります。それぞれ特徴は異なるものの、信頼性が比較的高く値動きが大きい通貨です。これらの異なる値動きをする通貨を組み合わせ、リスクを分散するという方法もあります。

4-2. 外貨の「定期預金」と「普通預金」、「つみたて」の違い

外貨預金には、主に「普通預金」「定期預金」「つみたて」の3種類があります。円預金と基本的な仕組みは同じですが、為替変動リスクがある点や金利なども異なるため、目的に合わせて選ぶことが大切です。

■外貨普通預金

外貨普通預金は、いつでも預け入れや引き出しができるため使い勝手が良く、海外旅行用などに外貨をプールしておくのにも便利です。円の普通預金より高い金利が得られるのも魅力といえます。

ただし、預け入れ後1ヶ月間は引き出しができないなど、制約があるケースも見受けられるので事前に確認しましょう。

■外貨定期預金

定期預金は1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年など預け入れ期間が決まっており、その間は原則として解約ができません。

預け入れた外貨の価値は日々変動するため、満期時に為替損益が発生する可能性があるものの、外貨普通預金に比べて金利が高い点は魅力です。

■外貨つみたて

外貨つみたては、定期的に決まった金額を自動的に外貨預金口座に積み立てていく仕組みです。長期的に少しずつ外貨を購入したい方に適しています。

外貨つみたては、一般的に「ドル・コスト平均法」で購入します。これは、価格の変動に振り回されず、長期的にコツコツと外貨を買い増していくことで買い過ぎや買いそびれなどを防ぎ、平均的な価格でつみたてられる方法です。為替変動を気にせずに購入できるため、最も初心者向けといえます。

4-3. 外貨預金の金融機関を選ぶポイント

外貨預金を始めるなら金融機関によって外貨の取り扱いが異なるため、どの金融機関を選ぶかはとても重要です。

まずは、預け入れしたい外貨がその金融機関で取り扱っているか確認しましょう。例えば中国元や韓国ウォンなどを希望しても、金融機関が取り扱っていなければ預け入れることができません。

また、預け入れたお金に対してどれくらいの利息がつくのか、コストがどのくらいかかるのかは金融機関によっても異なります。主な銀行を比較・検討した上で最もお得な金融機関を選びましょう。

さらに、外貨預金は円預金と違って預金保険制度（ペイオフ）の対象外です。倒産などでお金が戻る保証がないため、経営の安定している金融機関を選びましょう。

5. 初心者が外貨預金をする際に注意したいポイント

外貨預金は資産運用の選択肢として人気がありますが、初心者にとっては不安や疑問が多いかもしれません。そこで、初心者が外貨預金を行う際に注意すべきポイントを解説します。

5-1. 外貨つみたてを少額から始めてみる

外貨預金をする際には、最初に少額からの外貨つみたてを検討すると良いでしょう。つみたてで大きな利益を狙うのは難しいかもしれませんが、資産運用のリスクを抑えられるため堅実な資産形成としておすすめです。

つみたては毎月決まった金額を購入するため、購入のタイミングで悩む必要がなくなり、少額からコツコツと無理なく運用できます。また長期間にわたってつみたてを続けることで、為替相場の変動リスクを分散し大きな損失を回避しやすくなるのもメリットです。

5-2. 元本割れリスクを抑えるには長期運用が原則

外貨預金では、じっくりと長期的に運用することが基本です。その理由に、為替相場の変動によって元本が減る「元本割れリスク」が高くなることが挙げられるでしょう。

また、外貨預金は為替手数料が比較的高いため、為替相場が不利に変動した状態で日本円に戻すと、預け入れた金額よりも少ない金額しか手元に戻らない場合もあります。

しかし、為替相場は常に変化しており、利益が出るまでには時間がかかる傾向があり、そのまま待ち続けると平準化される可能性も高くなります。短期的な損益に一喜一憂するのではなく、長期間での運用を視野に入れて行うことが大切です。

5-3. 運用を始めるなら「投資信託」という選択肢も

資産形成や運用を始める際には、外貨預金だけでなく「投資信託」という選択肢もあります。投資信託とは、複数の顧客から集めた資金を一つにまとめ、専門の運用会社がその資金をさまざまな金融商品に分散して運用する仕組みのことです。

外貨預金は、その仕組みがシンプルで分かりやすく、初心者にも向いています。海外で外貨を使用する機会が多い方にも利便性が高いでしょう。ただし、為替変動による元本割れのリスクやコストも考慮する必要があります。

一方で、投資信託は運用のプロであるファンドマネージャーが資金を管理・運用するため、知識が少ない初心者でも始めやすい資産運用方法です。また、投資信託は複数の資産に分散するため、一つの商品を選ぶだけでリスクを軽減できるという利点があります。

5-4. 為替相場や各国のニュースをチェックしよう

外貨預金は、為替相場の変動によって大きな利益を得られる一方、損をするリスクもあります。リスクを避けるためには、日々の為替相場がどのような動きをしているのかを注意深く見守り、その背景にある社会情勢を理解した上で予想していくことが重要です。

その社会情勢とは、各国のGDP成長率や失業率、インフレ率といった経済指標や金融政策、さらに政治情勢や自然災害といったものが考えられます。

定期的に政治・経済のニュースをチェックし、情報収集を欠かさないように注意することで為替相場の動きに敏感になり、損失を最小限に抑えられるでしょう。