UPDATE 2025.03.24
POST 2025.03.24
メキシコペソ/円は、メキシコの金利が日本よりかなり高い上に、少額から取引できる魅力的な通貨ペアです。ただし、メキシコペソ/円には特有のリスクもあるため、その特徴や要因を知らない場合、想定外の損失を被る恐れがあります。
この記事では、メキシコの経済状況やメキシコペソの特徴などの基礎知識をはじめ、メキシコペソの価格変動の要因や、過去の値動きなどをご紹介します。さらに、これからメキシコペソ/円の取引を始めようとしている方に向けて、押さえておくべき経済指標や今後の見通し、取引時のポイントといった実践的な内容も解説しますので、ぜひ参考にしてください。
メキシコは、日本の約5.2倍の広大な面積を持つ国です。中南米では経済規模でブラジルに次ぐ第2位であり、世界でも経済的に重要な新興国に位置付けられています。
人口 | 1億3,110万人(2023年予測値) |
---|---|
面積 | 196万4,375㎢ |
1人当たりGDP | 1万3,642 米ドル(2023年) |
実質GDP成長率 | 3.2%(2023年) |
出典:独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)「メキシコ - 中南米 - 国・地域別に見る - ジェトロ「概況・基本統計」」(2024年)
メキシコは地理的には北米に位置し、アメリカと国境を接しています。この位置関係からアメリカとの関係が深く、輸出の約8割をアメリカが占めている状況です。
主要産業には原油や銀の生産があり、特に銀の生産量は世界一を誇ります。また、カンクンやトゥルムなどのリゾート地に加えて35ヶ所もの世界遺産があり、観光業も盛んです。
さらに、メキシコはGDPの高さや、人口全体に対して若年層が多いことも特徴です。これらを背景に「ネクスト11」という、経済成長のポテンシャルが高い国を集めたグループに選ばれています。
今後、アメリカとの経済的な結びつきが維持され、国内の治安問題が改善されれば、メキシコはさらに安定した成長を遂げるでしょう。
ここからはメキシコペソの特徴・魅力として、以下の3つについて解説します。
これらを理解しておくことで、リスクを踏まえて収益を上げるチャンスを得やすくなるでしょう。
メキシコペソは、世界的に見ても金利の高い通貨の1つとして知られています。以下の表は、各国の主な政策金利を金利の高い順に並べたものです(2025年3月12日時点)。
国・地域名 | 政策金利 | 政策金利名 |
---|---|---|
トルコ | 42.50% | 1週間物レポレート |
メキシコ | 9.50% | 銀行間翌日物レート |
南アフリカ | 7.50% | レポレート |
イギリス | 4.50% | オフィシャル・バンク・レート |
アメリカ | 4.25%~4.50% | フェデラル・ファンド(FF)レート |
日本 | 0.50% | 無担保コール翌日物金利の誘導目標 |
このようにメキシコペソは代表的な高金利通貨であり、トルコリラに次ぐ高い水準です。
FXでは、高金利の通貨を買い、低金利の通貨を売ることでスワップポイントと呼ばれる利息のようなもの(両通貨の金利差)を得られます。メキシコペソ/円の取引では、比較的安定したスワップポイントを得やすく、トレーダーにとって魅力的な通貨ペアの1つといえます。
メキシコは豊富な天然資源を持つ国で、特に石油や銀などが有名です。これらの資源は世界市場で重要な役割を持ち、その価格変動がメキシコペソの価値に大きく影響しています。
例えば、2021年以降に原油価格が高まったことで、メキシコペソの価格も上昇しました。こうした動きが起きるのは、石油がメキシコ経済にとって重要な輸出品であり、その価格が上がると国全体の収入が増えるためです。
このように、資源価格とメキシコペソの動きは密接に関連しています。FX取引を始める場合は、世界の資源市場の動向にも注目することが重要です。
メキシコペソは、新興国通貨の中では比較的安定しています。多くの新興国通貨は不安定で大きな値動きが起きやすい傾向がありますが、メキシコペソはイレギュラーな動きが少ない通貨です。
安定性の理由の1つとしては、若年人口が多く労働力が豊富なことから経済が安定しやすく、GDPも堅実に成長している点が挙げられます。また、メキシコが現在、金融政策について米国と歩調を合わせていることも、メキシコペソの安定性につながっています。
したがって、メキシコペソは高金利通貨を用いた取引に挑戦したい初心者でも試しやすい通貨といえるでしょう。
アメリカに出稼ぎに出ているメキシコ人が母国へ送金するお金は、メキシコ経済にとって重要な収入源です。また、経常収支にも大きな影響を与えています。
特に、近年では送金額が増加傾向にあり、アメリカを含む外国からの送金額は2023年に過去最高を記録しました。その金額は5,479億1,100万ペソであり、当時の価格である1ペソ=約8.3円で換算すると約4兆5,476億6,130万円です。この巨額の送金は、メキシコペソの価値を支える要因の1つとなっています。
出典:独立行政法人日本貿易振興機構(ジェトロ)「上半期の郷里送金は過去最高額も、通貨ペソ高で目減り(メキシコ)」(2023年)
メキシコペソ/円の取引で利益を得るためには、価格変動に影響を与えている以下の主な要因を理解することが重要です。
それぞれの要因について詳しく解説します。
メキシコペソ/円の取引において、政策金利の動向は非常に重要です。政策金利とは中央銀行が決定する金利で、通貨の価値に直接影響を与えます。
メキシコでは、2021年から2023年にかけて15回続けて利上げが行われ、これによりメキシコペソ/円の価格が大幅に上昇しました。例えば、2021年6月には5.4円でしたが、2023年8月には8.7円台まで上昇しています。この間の利上げはインフレ抑制を目的としたものであり、メキシコペソの価値を高める要因となりました。
このように、政策金利が高い時期はメキシコペソの価値が上がりやすくなります。しかし、利下げが予想されると、下落するリスクも考慮することが必要です。
メキシコペソ/円の取引において、アメリカの経済動向は無視できない要素です。アメリカとメキシコは隣国であり、両国の経済は密接に結びついています。メキシコの輸出の約8割はアメリカ向けであり、アメリカ経済の変動はメキシコペソの価値に直接的に影響を与える要因の1つです。
例えば、アメリカの経済指標である消費者物価指数(CPI)や雇用統計の発表は、メキシコペソの為替相場に大きな影響を与えます。これらの指標が好調であれば、アメリカ経済が堅調であると判断され、メキシコペソもその恩恵を受ける場合が多いでしょう。
反対に、アメリカ経済が低迷するとメキシコペソも影響を受け、価格が下落するリスクがあります。
メキシコは世界有数の産油国であり、原油価格の動向がメキシコペソに大きく影響するのが特徴です。原油価格が上昇するとメキシコ経済にとってプラスとなり、メキシコペソの価値も上昇しやすくなります。反対に原油価格が下落すると、メキシコペソは下落圧力を受けます。
例えば、2018年後半から原油先物(以下、WTI)の価格が下落し、76ドル台から50ドルを下回った時期にはメキシコペソも大きく値下がりしました。原油価格が下落することでメキシコの経済全体に影響を与え、ペソの価値を引き下げたからです。
メキシコペソ/円で取引を行う際は、原油価格の動向を注視することが非常に重要です。特に、WTIの価格や産油国の需給バランスに関する情報は、メキシコペソの今後の見通しを考える上で欠かせません。
メキシコペソ/円は、リーマンショック以前には10〜11円台で推移していましたが、2008年のリーマンショックにより大幅に下がり、下落局面が続きました。しかし、2013年の安倍政権下で金融緩和政策(マイナス金利)を実施したことを背景に、メキシコペソ高・円安のトレンドが生まれ、一時9円付近まで上昇しました。
その後の2014~2024年までの価格推移を表したのが以下のチャートです。
上図のようにメキシコペソ/円の価格は、過去10年で大きな動きを見せています。まず、2014年に原油価格が急落。メキシコペソを含む新興国通貨が全面安となり、これにより再び下落基調となりました。
2016年にはアメリカ大統領選挙戦でトランプ候補の支持率が上昇すると、保護主義的な政策が懸念されて5円台まで下落、その後トランプ候補が当選すると5円台での低迷が続きました。さらに、2020年には新型コロナウイルスの影響や原油価格の下落により、過去最安値の4.2円まで急落しました。
その後、原油価格の高騰やメキシコ中央銀行の利上げにより、2024年に再び9円を超える水準まで回復しました。しかし、2024年6月の大統領選で与党シェインバウム候補が当選した結果、政策の不透明さや経済への影響が懸念され、再び下落しています。
出典:財務省関税局「外国為替相場(課税価格の換算)」
メキシコペソ/円の見通しについては、経済成長の可能性と短期・中期的なリスクの両方を考慮する必要があります。
メキシコ経済はまだ成長余地が大きく、特にニアショアリング(アメリカの近くに生産拠点を移転する動き)を背景としてメキシコに進出する企業が増えているため、長期的には上昇の可能性が高いといえるでしょう。
しかし、アメリカや日本との金利差が縮小すると、ペソの価値が下落するリスクも存在します。例えば、メキシコの政策金利は2025年3月12日時点で9.50%ですが、今後のインフレ動向次第では利下げをする場合があります。また、日本でも2025年1月24日に追加の利上げが決定し今後も利上げの可能性を示唆しており、これによりメキシコペソ/円の価格が影響を受ける可能性が高いでしょう。
したがって、今後のメキシコペソ/円のトレードを行う際には、メキシコとアメリカ、日本の経済指標や政策動向をこまめにチェックし、慎重に判断しなければなりません。特に、価格や金利差の推移を常に確認しながら取引すると良いでしょう。
メキシコペソ/円は金利差の大きい通貨ペアとして人気です。取引する主なメリットには以下が挙げられます。
順番に解説します。
メキシコペソは金利が高く、買いポジションを保有しているだけでスワップポイントを得られるのが魅力です。スワップポイントとは、通貨を保有している間に日数に応じて得られる利息のようなもので、金利差の大きい通貨ペアの取引ではこの金額が増えるのが特徴です。
例えば、メキシコペソを買って日本円を売る取引を行うと、両国の金利差に基づいてスワップポイントが発生します。ポイントはFX業者によって異なりますが、例としてSBI FXトレードにおける2025年3月時点のスワップポイントは、10万通貨あたり1日約180円です。
したがって、100万通貨を保有した場合の1日分の利益は約1,800円となり、1年で1,800円×365日=約65万円のスワップポイントを得られます。ただし、この利益は通貨ペアの価格変動による利益や損失を除いたものである点に注意してください。
金利差の大きい通貨ペア取引について、以下で詳しく解説しています。
>>「高金利通貨ペア取引のメリットと注意点について解説」
また、スワップポイントのシミュレーションはこちらから行えます。
>>「スワップポイントシミュレーション」
メキシコペソ/円は、少ない資金で取引を始められることが大きな魅力です。2025年3月12日時点で、メキシコペソは約7.3円で取引されています。仮に、1,000通貨で取引する場合、レバレッジ(手持ち資金の何倍もの金額で取引できる仕組み)を25倍で計算すると、取引必要証拠金は1,000通貨×(7.3円÷25)=約292円です。
少額の証拠金であれば、初心者でもリスクを抑えながらFXを試せるでしょう。ただし、レバレッジを高く設定するとリスクも大きくなるため、FX初心者の場合、レバレッジを低く抑えるために、取引必要証拠金よりも多めの資金を預けておきましょう。
仮にレバレッジ10倍程度の取引をする場合、1,000通貨×(7.3円÷10)=約730円となるため、730円を預けておくことで、レバレッジを低く抑えて取引することが可能です。
メキシコペソ/円は2020年から4年以上も長期的な上昇トレンドを続けてきたことから、トレンドが比較的分かりやすい通貨ペアといえます。
この期間中、メキシコペソは政策金利の引き上げや経済成長に支えられ、多くのトレーダーが「下げたら買う」という上昇トレンドにおける押し目買い戦略をとってきました。長期目線での上昇トレンドは崩れておらず、今後も押し目買い戦略は有効といえるでしょう。
ただし、今後は下落トレンドに転換する懸念があることには注意が必要です。例えば、アメリカが利下げに転じ、メキシコも同様に利下げを開始したことや、返り咲いたトランプ大統領の関税・移民を巡る対メキシコ強硬政策などが、メキシコペソに影響を与えると考えられます。
メキシコペソ/円には、取引量の少ないマイナー通貨特有のリスクがあります。また、メキシコや隣国アメリカの経済・政治の変化によって、急激な価格変動が起きるリスクについても注意が必要です。
メキシコペソはマイナー通貨に分類される通貨です。マイナー通貨とは、ユーロや米ドルなどのメジャー通貨と異なり、為替市場での取引参加者や取引量が少ない通貨を指します。マイナー通貨はメキシコペソの他に、トルコリラや南アフリカランド、ブラジルレアルなどが挙げられます。
取引量が少ない通貨は、流動性(売買の成立しやすさ)が低いことが特徴です。流動性が低い場合、FXにおける実質的な手数料であるスプレッドが広くなり、また「買いたい時に買えない、売りたい時に売れない」状態にもなりやすいといえます。
つまり、マイナー通貨でのトレードは取引コストが高くなることや、狙った価格での損切り・利益確定ができないといったリスクを考慮する必要があります。
メジャー通貨とマイナー通貨について詳しく知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
>>「FXで人気の通貨ペアは?初心者向けに特徴と選び方を解説」
メキシコペソ/円の取引では取引量の少なさ以外にも、価格が急激に変動するリスクが存在します。要因の1つとして、スワップポイントを狙って保有しているトレーダーが多いことが挙げられます。スワップポイント目的のトレーダーが多いと、悪材料が出た際には一斉に売却されることがあるからです。
例えば、メキシコの経済指標が予想より悪かった場合や、世界的なリスク回避ムードが高まった時に、スワップポイント狙いのトレーダーがメキシコペソを一斉に売却する恐れがあります。その結果、短時間で大幅に下落するリスクがあります。
メキシコペソ/円の取引において、アメリカとの関係が影響するリスクは無視できません。メキシコは豊富な天然資源を有する資源国ですが、経済の動向はアメリカに大きく左右されるからです。
例えば、トランプ前政権時代の2017~2018年ごろ、メキシコに対する強硬な政策がとられたことで、メキシコペソは大幅に売られ、急激な価格下落となりました。今後もアメリカの大統領選や政策変更がメキシコペソの価格に大きな影響を与えるリスクがあるため、十分な注意が必要です。
メキシコペソ/円を取引する際に、確認すべき主な経済指標は以下の通りです。
また、併せて以下の指標も確認しましょう。
経済指標の把握は難しく感じるかもしれませんが、少しずつ慣れていけば理解できるようになります。
経済指標の発表は、以下のカレンダーから確認できます。
>>「経済指標カレンダー」
マイナー通貨であるメキシコペソは、全てのFX会社や証券会社で取引できるわけではありません。そこで、取り扱い通貨数が業界トップクラスのSBI FXトレードをおすすめします。
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取り扱い通貨ペアの一覧はこちらをご覧ください。
>>「業界トップクラスの取り扱い通貨ペア」
メキシコペソ/円は金利差の大きさからスワップポイントが多く、魅力的な通貨ペアです。ただし、取引量が少なく価格が急激に変動しやすい点や、経済情勢の影響を受けやすい点に注意が必要です。
メキシコペソ/円の取引は少額から始められます。初心者の場合、価格変動に影響を与えるマーケット情報をこまめにチェックしながら、徐々に取引に慣れていくと良いでしょう。
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この記事を監修した人
SBIリクイディティ・マーケット株式会社
金融市場調査部長
上田眞理人