豪ドルの特徴は?主要な経済指標や今後の見通しも解説 | SBI FXトレード 

豪ドルの特徴は?主要な経済指標や今後の見通しも解説

FX市場分析

UPDATE 2025.04.15
POST 2025.04.15

豪ドルの特徴は?主要な経済指標や今後の見通しも解説

1. 豪ドルとは?

豪ドル(オーストラリアドル)は、オーストラリア連邦(以下オーストラリア)の公式通貨で、通貨コードはAUDです。オージーやオーストラリアドルとも呼ばれ、オーストラリア本土だけでなく、ナウルやツバル、キリバスといった、ポリネシアの国々でも流通しています。

以前は、英国通貨を中心としたポンド通貨圏に属し、価格も英国に連動していました。しかし、1966年にそれまでの1ポンドにつき2ドルの価格でオーストラリアドルに置き換えられました。1967年には、ポンド通貨圏から離脱しました。

近年では、比較的高い政策金利を背景に、日本や海外からの巨額な資本流入がみられます。

2. FXにおける豪ドルの特徴

豪ドルには、下記の6つの特徴があります。

  • 取引量が多い
  • ボラティリティが高い
  • 金利が高い
  • 資源国通貨である
  • 中国経済の影響を受けやすい
  • RBA(オーストラリア準備銀行)の金融政策の影響を受けやすい

それぞれ詳しく解説します。

2-1. 取引量が多い

豪ドルは取引量が多く、2022年4月のデータでは世界第6位を誇ります。国際決済銀行(BIS)が3年ごとに調査している為替取引量データの順位は以下の通りです。

順位 通貨名 シェア率
1 米ドル 44.2%
2 ユーロ 15.3%
3 日本円 8.3%
4 ポンド 6.5%
5 中国人民元 6.5%
6 豪ドル 3.2%
7 カナダドル 3.1%
8 スイスフラン 2.6%
その他 13.3%

豪ドルは、日本国内においても非常に人気があります。一般社団法人金融先物取引業協会が公開している「店頭FX月次速報(通貨ペア別取引金額)」のデータは以下の通りです(2025年2月時点)。

順位 2025年1月 2024年12月 2024年11月 2024年10月 2024年9月
1 米ドル/円1,133,125,451 米ドル/円919,712,758 米ドル/円1,076,629,474 米ドル/円986,240,960 米ドル/円1,199,394,393
2 ポンド/円47,814,959 ユーロ/円32,081,052 ユーロ/円33,259,440 ポンド/円42,017,188 ユーロ/円45,089,321
3 ユーロ/円35,500,153 豪ドル/円30,117,840 ポンド/円31,132,825 ユーロ/円30,577,112 ポンド/円41,605,937
4 豪ドル/円27,389,168 ポンド/円29,733,871 豪ドル/円25,420,882 豪ドル/円30,501,976 豪ドル/円37,844,408
5 ユーロ/米ドル24,399,680 ユーロ/米ドル16,289,854 ユーロ/米ドル20,733,139 ユーロ/米ドル8,378,776 ユーロ/米ドル7,775,939

単位:100万円



圧倒的な取引高を誇る米ドル/円を除けば、月によって豪ドル・ポンド・ユーロの順位が入れ替わっていることが分かります。豪ドル/円は値動きが安定しやすく、初心者でも取り組みやすい通貨ペアといえるでしょう。

2-2. ボラティリティが高い

ボラティリティとは、金融資産の価格変動率を示す指標です。FXにおいてボラティリティが高いとは、価格変動が激しく、価格が上下に大きく変動することを表します。反対に、ボラティリティが低いとは、価格の変動が小さいことを表します。

豪ドルは、FXのボラティリティが高い通貨ペアに該当します。FXのボラティリティが高い通貨ペアは、短期間でも利益を生み出すチャンスがあることが魅力です。一定の時間帯における通貨ペアの価格変動をうまく予測し、適切なタイミングで売買することで大きなリターンを見込めるのです。

ただし、高いボラティリティは価格変動が大きい分、損失のリスクも高まります。そのため、ボラティリティが高い通貨ペアを取引する際は、リスクを十分に考慮することが大切です。

2-3. スワップポイントが高い

豪ドルは先進国の中でも歴史的に金利が高い通貨です。そのため、世界的に政治・経済が安定している時は金利狙いの資金が集まりやすく、豪ドルが上昇する傾向があります。一方で、突発的な混乱が生じると、一気に資金が流出して安くなることがあります。

近年、オーストラリアを含む各国の利上げが行われましたが、日本が異次元金融緩和政策を維持したことから全般的な円安となり、2022年9月には1豪ドル98円台まで上昇しました。その後、2023年には1豪ドル86円付近まで下落する場面もありましたが、再び円売りが優勢となり、2024年4月には約10年ぶりに100円台に達しました。

2024年3月、日本銀行が2013年から続けてきた異次元金融緩和を終了し、約17年ぶりとなる利上げを発表しました。当時の日銀総裁が「緩和的な金融政策を継続することが大切」と考えたことから円高にはつながりませんでしたが、RBA(オーストラリア準備銀行)が2024年6月に追加利上げを排除しないと表明したことで、約17年ぶりに1豪ドル=105円後半まで上昇しました。

一般的に、豪ドル/円では、買いポジションを持ち続けると、ポジションを翌営業日へ持ち越す度にスワップポイントを受け取ることができます。ただし、スワップポイントの金額は同じ通貨ペアでもFX会社によって異なり、ポジションを持つ期間が長いほど収益の違いが大きくなることが予想されます。

豪ドル/円で中長期の取引をする場合は、各FX会社のスワップポイントの水準をしっかりとチェックし、他社よりも有利なスワップポイントを提供しているFX会社を選ぶことが大切です。

2-4. 資源国通貨である

資源国通貨とは、輸出額に占める資源の割合が高い国の通貨のことです。オーストラリアは鉄鉱石や石炭など豊富な資源を有しており、全輸出の5割以上を鉱物資源が占めています。そのため、豪ドルは資源国通貨の側面を持っています。

ただし、米国のように豊富な資源を有していても、輸出額に占める資源の割合が小さい場合、資源国通貨とは言いません。

資源国通貨は、資源の価格変動の影響を受けやすい傾向があります。オーストラリアの主な輸出資源は、鉄鉱石・石炭・天然ガスであり、豪ドルはこれら資源の価格変動の影響を受けることがあるのです。

例えば、鉄鉱石の価格が上昇すると豪ドルも上昇し、逆に価格が下落すると豪ドルも下落します。

2-5. 中国経済の影響を受けやすい

オーストラリアの最大の輸出先は中国です。そのため、豪ドルは中国経済の影響を受けやすい傾向があります。

実際に新型コロナウイルスが流行った際、オーストラリアが新型コロナウイルスの起源に関する調査を中国に呼びかけたことを受け、中国はオーストラリアに対して輸入制限・関税引き上げの措置をとり、豪ドル相場急落を招きました。

現在は関係が改善され、輸入制限も解除されていますが、今後このような措置を新たに講じる可能性はゼロではありません。豪ドル/円を取引する際は、中国との関係や経済状況を都度チェックする必要があるでしょう。

2-6. RBA(オーストラリア準備銀行)の金融政策の影響を受けやすい

豪ドル相場を分析する上で、オーストラリアの経済指標は重要な要素です。その中でもオーストラリアの政策金利を決めるRBA(オーストラリア準備銀行)の動向は特に重視されています。

その理由は、一般的に経済が安定している時は、金利の高い国の方に資金が流入しやすい傾向にあるからです。例えば、豪ドルの金利を「4.10%」、日本円の金利を「0.5%」と想定し(2025年2月時点)、100万円の資金で為替レートの変動がない状態で1年間運用すると仮定すると、1年後に豪ドルは「104万1,000円」に増えますが、日本円は「100万5,000円」にしかなりません。つまり、金利差が開くほど、高金利が魅力の豪ドルが買われ、日本円の売りが加速するのです。

ただし、RBAは2025年2月に利下げを行いましたが、今後の利下げについては慎重な姿勢を示しているものの、追加利下げの可能性もあります。

豪ドル/円を取引する際は、RBAの動向を欠かさず確認しましょう。

3. 豪ドル相場に影響する主要な経済指標

豪ドル相場に影響する主要な経済指標は、下記の4つです。

  • 新規雇用者数・失業率
  • 消費者物価指数 (CPI)
  • 中国製造業PMI (購買担当者景気指数)
  • 中国GDP成長率

それぞれ詳しく解説します。

3-1. 新規雇用者数・失業率

新規雇用者数・失業率は、景気の先行きを見る上で重視される要素です。なぜなら、新規雇用者数が市場予想を上回る時や、失業率が市場予想を下回る時は、景気が好転する可能性が高いからです。

景気が好転すると個人や企業の間で資金需要が増え、長期金利が上昇します。国家間での金利差が広がると、金利が高い国の通貨を買った方が多くの金利を得られるため、金利の高くなった豪ドルが買われやすくなるのです。

オーストラリアの新規雇用者数・失業率は、オーストラリア統計局が毎月中旬の日本時間10:30ごろ (夏時間は9:30ごろ)に発表しています。なお、新規雇用者数は、調査した月に新たに雇用された方の数を示します。

3-2. 消費者物価指数 (CPI)

消費者物価指数(CPI)とは、物価の動きを把握するための統計指標です。消費者物価指数はインフレ率に深く関わっており、金融政策に大きな影響を与える可能性があることから、FX取引においても重要な指標といえます。

一般的に、インフレ率が上昇すると中央銀行により政策金利が引き上げられるため、経済が抑制され、インフレ傾向を抑えられます。金利が高いほど、その国の通貨は上昇しやすく、逆に低金利の国の通貨は下落しやすくなります。

オーストラリアの消費者物価指数は、オーストラリア統計局が月次と四半期ごとに発表しており、中銀は四半期ベースの物価動向を注視しているとみられています。発表時期は、月次は翌月の下旬、四半期では、1・4・7・10月下旬の日本時間10:30ごろ (夏時間は9:30ごろ)です。

3-3. 中国製造業PMI (購買担当者景気指数)

中国製造業PMI(購買担当者景気指数)は、中国の製造業の購買担当者を調査対象にした、企業の景況感を示す指標です。

先述の通り、豪ドルは中国経済の影響を受けやすい傾向があります。したがって、中国の経済指標は、豪ドルの値動きに影響を与える可能性があるのです。一般的に、中国経済が好況である時は豪ドルも上昇し、不況の時は下落します。

中国製造業PMIは、中国国家統計局と中国物流購買連合会から、毎月月末に発表されています。

3-4. 中国GDP成長率

中国製造業PMIと並び、中国GDP成長率も重要な指標です。オーストラリアにとって最大の輸出国である中国のGDP成長率の動向は、豪ドル相場に直接的な影響を及ぼします。

GDPとは国内総生産のことで、その国の経済規模や強さを示す指標です。2024年の世界GDPランキングにおいて、中国は2位を誇っています。2025年以降経済成長の鈍化を予想する向きもありますが、3位ドイツ、4位日本を大差で抑えており、今後も2位の座は揺るぎないでしょう。

中国GDP成長率は、中国国家統計局が四半期ごとに発表しています。発表時期は、1・4・7・10月中旬で、日本時間11:00ごろです。

4. 豪ドル/円の今後の見通しは?チャートで解説

2024年の豪ドル/円の相場は上昇トレンドが続き、7月には109円を突破しましたが、その後急落し、90円台後半で推移しました。

豪ドル/円今後の見通しは?チャートで解説

金利差が拡大した主な理由は、新型コロナウイルスの感染拡大やロシア・ウクライナ問題により、世界的なインフレが発生したからだと考えられています。インフレを抑えるために、日本以外の世界各国ではハイペースな利上げを実施しました。その結果、日本と世界各国の金利差が拡大し、大幅な円安が発生したのです。

また、現在の日豪金融政策は新たな段階へと移行しつつあり、これまで同様、活発な値動きが予想されます。最近では日銀が金融政策正常化の動きに転じつつも利上げを示唆するなど、円高が進む可能性もあり、トレンドに乗るスタンスも有効となりそうです。

オーストラリア経済について、国際通貨基金(IMF)は2025年以降のGDP成長率が毎年2%以上で推移すると予測しており、今後さらなる経済成長が見込まれます。

また、移民政策などによる人口増加と消費拡大も経済成長に寄与すると見込まれていること、さらに、中国が世界一の経済大国になる可能性もあり、その恩恵も期待されます。

内需・外需拡大による経済発展があれば、今後豪ドル/円は堅調に推移し、現状の価格が維持される可能性は十分にあります。

5. FX初心者に豪ドル/円はおすすめ?

最初は大きな損失を防ぎながら、徐々に取引に慣れていくためにも、メジャー通貨を選ぶことをおすすめします。

また、通貨ペアを少数に絞ることも大切です。1つの通貨ペアで利益が出ない状況では、複数の通貨ペアで取引をしても良い結果は出ないからです。最初は少数の通貨ペアに絞り、勝率を上げていきましょう。

豪ドルは取引量が多く、取引をする際の特徴をつかみやすい傾向があります。また、適度なボラティリティがあるため、FX初心者でもある程度の利益も期待できます。

以上のことから、豪ドル/円は、FX初心者におすすめの通貨ペアだといえます。

6. まずは少額から豪ドル/円で為替取引してみましょう

資源国通貨であり、中国経済やRBA金融政策の影響を受けやすい豪ドル。2008年ごろまでは政策金利が約7%まで上昇していたこともあり、高金利通貨の代表的な存在でした。しかし、リーマンショックにより金利が引き下げられ、それ以降は魅力が薄れてしまいました。

とはいえ、オーストラリアは政治や経済面での不安要素があまりないため、豪ドルは比較的リスクの少ない通貨だといえます。取引量が多いことやボラティリティが高いことなどからも、FX初心者にはおすすめです。

初めて取引をする際は、大きな損失を出さないためにも、今回紹介した主要な経済指標や今後の見通しに注目しつつ、少額から始めましょう。

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この記事を監修した人

SBIリクイディティ・マーケット株式会社
金融市場調査部長
上田眞理人

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