UPDATE 2025.05.02
POST 2025.05.02
FXで一定の利益を得た場合は、確定申告をしなくてはならないケースがあります。
逆に、1年を通してFXでの収益がマイナスとなった場合は、税法上は確定申告をする必要はありません。しかし、確定申告をした方が繰越控除や損益通算などのメリットが大きいため、損失が出た場合でも確定申告をするのがおすすめです。
本記事では、以下の3点を中心に、個人口座におけるFXと確定申告の関係についてわかりやすく解説します。
※確定申告の条件は個人によって異なります。詳しくは所轄の税務署または税理士等の専門家にお問い合わせください
FX取引で得た利益については、1年間を通して一定以上の利益を得た場合においては確定申告が必要となります。
確定申告とは、1月1日から12月31日までの1年間に生じた所得の金額と、所得に対する税額を計算し、税務署に報告する手続きのことです。給与所得以外に一定以上の所得がある方は、適切な納税額を計算するために年に1回、確定申告をしなくてはいけません。
FXで得た利益は通常、「先物取引に係る雑所得等」に分類されますが、先物取引に係る雑所得等は、確定申告が必要となる「申告分離課税」の対象となっています。そのため、FXで得た利益については確定申告が必要となるケースがあります。
申告分離課税とは、給与などの総合所得とは別に税額を計算し、確定申告によって納税する課税方式のことであり、FX取引による所得の他に、山林所得や土地建物等の譲渡所得なども該当します。
FXの利益について確定申告をしなくてはならない方が申告をせずにいると、税務署から指摘されて無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されるので注意しましょう。
FXの利益は、「申告分離課税」の対象であり、一定以上の利益を得た方は確定申告が必要となります。FXの利益にかかる税金は、給与所得などとは異なり、利益の金額にかかわらず以下のような一定の税率が課せられます。
これらを合算して、FXの利益には20.315%の税金が課せられます。例えば、1年を通してFXによる利益が100万円だった方は、翌年の確定申告において20万3,100円(100円未満切り捨て)納税しなくてはいけないということになります。
FXで課税対象となる利益は、一年間の「為替差益」と「スワップポイント」で得た利益の合計です。基本的に建玉を決済し、実現損益になった段階で課税対象となります。決済していない建玉の評価損益やスワップポイントは、課税対象とはなりません。また、入出金自体は課税対象ではありません。
名称 | 概要 |
---|---|
為替差益 |
通貨ペアの売買によって得た利益または損失のこと。 SBI FXトレードでは、建玉を決済した段階で課税対象となる。 |
スワップポイント |
取引をする際の通貨間の金利差により、ポジションを保有している場合に毎日受け取れる(または支払う)もの。 SBI FXトレードのFX取引においては建玉を反対売買・決済した段階で課税対象となる。つみたて外貨においては、「再投資」または「分配」を行った時点で、課税対象となる。 |
これらの為替差益とスワップポイントを合計した利益から、FX取引にかかった必要経費を差し引いた合計金額が課税対象となります。
例えば、一年間を通じた為替差益が100万円、スワップポイントが10万円、必要経費が5万円だった場合、以下のように税額を計算できます。
① 課税所得(課税対象となる利益)を計算する
計算式:(為替差益)+(スワップポイント)-(必要経費)=(課税所得)
・・・100万円 + 10万円 - 5万円 = 105万円
② 税額を計算する
計算式:(課税所得)× 20.315% =(納税額)
・・・105万円 × 20.315% = 21万3,300円(100円未満切り捨て)円
前述の通り、FXの課税所得を計算する際には必要経費を差し引くことができます。FX取引における必要経費として認められる可能性のあるものは、以下の通りです。
これら以外にも、自宅の家賃や、光熱費やスマホの購入代なども計上できる可能性があります。ただし、プライベートでも兼用する場合は、家事按分をしなくてはいけません。家事按分とは、実際にかかった費用のうち、FXなどの事業のために使用した分を算出することです。
例えば、家賃やパソコン代については、以下のように家事按分をすれば経費として計上できる場合があります。
※確定申告の条件は個人によって異なります。詳しくは所轄の税務署または税理士等の専門家にお問い合わせください
FXで確定申告が必要になるケースの例を挙げます。
これらのいずれかに当てはまる方は、確定申告によってFXの利益について納税をしなくてはいけません。それぞれのケースについて簡単に解説します。
年収が2,000万円を超える方は、所得税法上、会社勤めの給与所得者であっても確定申告が必要です。これは、FXで利益を得たかどうかに関わらず適用されます。
年収2,000万円を超える場合、会社による年末調整を受けられないため、個人での申告が必要となるので気をつけましょう。
FXの利益が年間20万円を超えると、確定申告が必要になります。これは、給与所得者の場合であっても適用されます。
一年間の取引での為替差益やスワップポイントを通算したものから必要経費を差し引いた金額が20万円を超えた場合には、確定申告を行わなければなりません。
給与所得者である会社員の方で、FXで得た利益やその他の副業などからの所得が合計で年間20万円を超える場合、確定申告が必要です。給与所得者は、通常は会社の年末調整を受けているため確定申告が不要ですが、給与以外の所得が20万円を超えると、個人で確定申告する必要があります。
FXの利益だけでなく、ブログ収入やフリーランスの仕事などもこの20万円に含まれます。申告漏れがあると、無申告課税などのペナルティが課せられることがあるため、副業をされている方は金額を正確に把握して申告しましょう。
専業主婦や学生など、扶養に入っている方(扶養控除を適用していた方)の場合、年間の所得が48万円を超えると、扶養から外れるため確定申告が必要となります。扶養の範囲内であれば確定申告の義務はありませんが、FXで得た利益が48万円を超えると、所得税法上の扶養控除を受けられなくなるため、確定申告が必要です。
また、FXの利益とその他の所得の合計額が48万円以上となった場合も扶養から外れてしまいます。
扶養から外れると、扶養者が受けていた控除が減額され、結果的に家庭全体の税負担が増加する可能性があります。
会社で年末調整を受けていない方は、給与所得者であっても自分で確定申告を行う必要があります。特に、複数の勤務先を持つ場合や、転職をした年に年末調整が完了していないケースがあるため、こうした場合には個別に申告をしなければなりません。
また、先述の通り年間の給与収入が2000万円を超える方は会社での年末調整を受けられない為、個人で確定申告をする必要があります。
確定申告が不要なケースをまとめると、以下の通りです。
年末調整の適用を受けた会社員の方で、例えば、為替差益およびスワップポイントにより得た利益から必要経費を差し引いた金額と、副業などの所得の合計が年間で20万円以下であれば、確定申告は必要ありません。また、扶養控除を適用している方も、扶養から外れない程度の利益しか得られていない場合であれば確定申告は不要となります。
また年金受給者の場合は、「公的年金等における収入が400万円以下」「公的年金等にかかる雑所得以外の所得が20万円以下」の2つを満たしている方であれば、確定申告は不要です。
FXで一定以上の利益が出た場合は、確定申告が必要となります。
反対に、FXで損失が出た場合は、税法上は確定申告する必要はありませんが、確定申告をした方が複数のメリットがあります。
ここでは、FXで損失が出た場合でも確定申告をした方が良い理由をご紹介します。
FXで損失が出た年に確定申告をすると、損益通算ができるというメリットがあります。
損益通算とは、同年のうちに複数の会社で取引をしていた場合に、それらの損失と利益を合算して相殺し、課税所得を下げることを指します。
例えば、A社での外為取引で50万円の課税所得を得ていた場合、通常は10万1,500円(100円未満切り捨て)の税金を納める必要があります。しかし、B社でのFX取引で30万円の損失が生じていた場合は、損益通算によって課税所得が50万円−30万円=20万円となり、税額が4万600円(100円未満切り捨て)と大幅に削減できます。
FX取引の損失と損益通算できるものは、FXの所得と同じく「先物取引に係る雑所得等」に限られ、具体的には以下の通りです。
【FXと損益通算できるもの】
反対に、以下の所得はFXの損失と損益通算できません。
【FXと損益通算できないもの】
FX取引で発生した損失を損益通算した結果、その年の控除額を上回る損失が残った場合には、確定申告によって翌年に繰越控除ができます。
※翌年以降の「先物取引に係る雑所得等」の金額の計算上において、その損失を繰り越して控除することになり、FXなどの先物取引に係る雑所得等の計算についてのみ繰越して損失を控除ができる
繰越控除とは、本年分の損失が他の所得から控除しきれない場合、翌年以降の利益から控除することができる制度です。FX取引における繰越控除は、翌年以降3年間に渡り有効となるため、損失が出た場合は必ず確定申告をしておくのがおすすめです。
例えば、2024年のFXの損失が100万円、2025年に50万円の利益が出たケースを考えます。本来であれば50万円の利益が課税対象となりますが、2024年に確定申告をしておけば繰越控除によって、2025年度のFXの利益は0円となり、税金がかかりません。
この時点で、2024年の損失のうち相殺されていないものが50万円残っている状況となります。
次に、2026年は30万円の利益が出たとします。30万円の利益は2024年分の残っている損失50万円とさらに相殺できるため、2026年もFXの利益は0円となり、税金を払わずに済みます。
このように、FXで大きな損失が出た年ほど、翌年以降の課税所得を減らせる効果が大きくなります。FXで損失が出た際は、損益通算ができないとしても繰越控除の恩恵を最大限受けるために、必ず確定申告をしておきましょう。
ここでは、FXによる所得について確定申告をする際の手続き方法や、必要書類の書き方などを詳しくご紹介します。
これから確定申告を控えている方はぜひ参考にしてください。
FXで一定以上の利益を得ており、確定申告をする方が用意する書類は以下の通りです。
それぞれ、書類の役割や概要について簡単にご紹介します。
確定申告書は、所得や控除額などの申告内容を記載する書類であり、確定申告のメイン書類ともいえます。確定申告書には第一表・第二表の2種類があり、確定申告をする方は全員が両方を提出する必要があります。
第一表には、収入や所得の金額、生命保険料や住宅ローンなどの控除額を記載し、第二表には第一表の内容に関する詳細を記載します。
申告書第三表は、分離課税対象の所得を申告するための書類です。
FXの利益は「先物取引に係る雑所得等」に当たり、申告分離課税であるため、申告書第三表で詳細を報告する必要があります。
先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書は、FX取引における所得額を確定させるための書類です。
FXで所得を得ている場合は、確定申告によってFXによる所得金額を正確に計算して申告する必要があります。FX業者の年間取引報告書を基に、年間を通じた取引の利益や損失・スワップポイントによる利益などを計算明細書に記載して提出しましょう。
年間取引報告書は、FX業者が提供する1年間の取引の概要を記載した書類です。
取引の利益や損失、スワップポイントなどが全て記録されており、確定申告時に所得を正確に算出するための基礎資料となります。FX業者のマイページからダウンロードできるケースがほとんどで、この報告書を基に確定申告書や計算明細書を作成します。
FX業者によって呼び名が異なり、「年間損益報告書」といった名称が使われる場合もあります。
確定申告を行う際は、本人確認書類の提出が必要です。
確定申告の際は、申告書などの各書類にマイナンバーを記載する必要があり、それと共にマイナンバーカードの写しも提出しなくてはなりません。マイナンバーカードを持っていない場合は、マイナンバー通知カードと身分証明書の組み合わせでも対応可能です。
ここまでにご紹介した書類以外にも、さらに書類を用意する必要がある場合があります。
例えば、会社員で給与所得がある方は、源泉徴収票が必要となります。また、医療費控除を受ける方は医療費の領収書、住宅ローン控除を申請する場合は住宅ローンの年末残高証明書などが必要です。
加えて、FXによる損失の申告をする際は、所得税及び復興特別所得税の申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)が必要となります。
FXの確定申告書の書き方を、各書類のサンプルと一緒にご紹介します。
出典:国税庁「所得税の確定申告」
申告書第一表には、所得や各種控除などの金額を記載します。源泉徴収票と照らし合わせながら記入するのがおすすめです。源泉徴収票の下記項目に対応する金額を転記してください。
出典:国税庁「所得税の確定申告」
申告書第二表には、給与などの支払い者の会社名や控除の詳細・金額などを記載します。「所得の内訳」欄の、収入金額や源泉徴収額は源泉徴収票から転記しましょう。
また、「社会保険料控除等に関する事項」の欄には、社会保険、生命保険、地震保険などの支払額を記入する必要があります。
社会保険料の金額は、源泉徴収票に記載されている支払額を転記すれば大丈夫です。ただし、生命保険料と地震保険料は、源泉徴収票に記載されている控除額ではなく、各保険会社や機関から提供される保険料払込証明書(保険料控除証明書)に記載のある支払額を記入しなくてはいけません。
出典:国税庁「先物取引に係る雑所得等の課税の特例」
計算明細書には、利用しているFX業者のページからダウンロードした年間取引報告書を参考に記載します。FXの利益は「雑所得」として扱われるため、明細書の上部に指名を記載し、「雑所得用」を丸で囲みます。
取引の内容については、種類に「外国為替取引」、決済の方法に「仕切」と記入してください。「決済年月日」と「数量」は未記入で問題ありません。
書類内の(A)から(C)欄については、差金決済取引または譲渡ごとに記入します。差金決済取引とは、FX取引のように有価証券のやり取りをしない取引のことを指します。
「総収入金額」の「差金等決済に係る利益又は損失の額(1)」には「年間取引報告書」の内容をもとに記入します。また、書籍代やセミナー代など、FX取引のためにかかった経費がある場合は、「必要経費等」内の「その他の経費⑦〜⑨」に記入してください。
最後に、収入から必要経費等を差し引いた金額を「所得金額(12)」に記入して、計算明細書は完成です。
出典:国税庁「所得税の確定申告」
申告書第三表は、先ほどの「先物取引に係る雑所得等の金額の計算明細書」を見ながら記載しましょう。
「収入金額」の「分離課税」「先物取引(ト)」に、明細書に記入した収入金額の合計を記入します。そして、「所得金額」の「先物取引(76)」には、明細書の「所得金額(12)」を記入します。
「税金の計算」の「総合課税の合計額(12)」と「所得から差し引かれる金額(29)」には、確定申告書 第一表の数字をそのまま記入してください。
「課税される所得金額」の「(12)の対応分(79)」には、「総合課税の合計額(12)」から「所得から差し引かれる金額(29)」を引いた合計額を記入します。
「(76)対応分(84)」には「所得金額」の「先物取引(76)」の金額をそのまま記入すればOKです。
ここまで記入ができたら、次は税額の計算に移行します。
「(84)対応分(92)」に、「(76)対応分(84)」に記入した金額に、所得税率15.0%をかけて記入しましょう。最後に、(95)に(87)~(94)の合計額を記入してください。
また、FXの所得には5%の住民税がかかりますが、住民税は確定申告書をもとに計算されるため、第三表で計算する必要はありません。
※出典:国税庁「所得税の税率」
確定申告の書類は、以下の3つのいずれかの方法で提出できます。
それぞれメリット・デメリットが異なるため、自分に適した方法を選びましょう。
確定申告の手続きに慣れている方は、税務署にいかずに郵送で申告を済ませるのがおすすめです。確定申告の時期は税務署が混み合うため、自宅で書類をつくって郵送で済ませるのは時間的にメリットが大きいです。
ただし、書類の記載内容などに不備があると受理されずに送り返されてしまいます。3月15日の消印があれば期限を守ったとみなされますが、不備が多いと提出されたとはみなされない可能性もあり、その場合、追徴課税のペナルティ等があるため、郵送で申告する場合は余裕を持って手続きを済ませましょう。
郵送方法は、郵便または信書便に限られ、宅配便やゆうメールなどは利用できない点に注意してください。
確定申告は、必要書類を用意した上で住所地を管轄している税務署の窓口に直接行くのもおすすめです。
税務署では、申告書の記載内容がわからない方向けに相談も行っているため、確定申告が初めてで、不安がある方は税務署に直接行って手続きしましょう。
ただし、確定申告の時期は税務署が非常に混み合うため、時間に余裕を持って行くようにしてください。
e-Taxを利用すれば、インターネット上で確定申告を済ませられます。e-Taxを利用するには、事前に利用申請を済ませておく必要があり、マイナンバーカードも取得していなくてはいけません。
e-Taxによる確定申告は、税務署に行く手間が省ける他、24時間いつでも提出できるなどのメリットがあります。また、青色申告控除額が最大65万円になるため、少しでも節税したい方はe-Taxで提出するのがおすすめです。
※損失の繰越控除を行う場合は、別途「年分の所得税及び復興特別所得税の申告書付表(先物取引に係る繰越損失用)」(国税庁)の提出が必要になります
所得税の納付方法としては、下記のいずれかの手段がとれます。
クレジットカードだと税額に応じた手数料がかかる一方で、コンビニ払いや税務署での現金納付だとカードや電子マネーが使えないといったデメリットもあります。自分に適した納税方法を選びましょう。
また、所得税の納付期限は確定申告の期限と同じく基本的に3月15日となっています(口座振替を除く)。納付期限を過ぎてしまうと、延滞税などのペナルティが発生するため、必ず期限は守ってください。
本記事では、FXの確定申告方法を中心に解説しました。FXで一定以上の利益を得ている方は確定申告が必要ですが、1年間の取引で損失が出た場合も確定申告をしておくと翌年以降に損失を繰り越せるなど大きなメリットがあります。
FX取引をしている方は、本記事で紹介した書類の記載方法などを参考にして、適切に確定申告を行ってください。
また、これからFX取引を始めようと考えている方は、ぜひSBI FXトレードでの口座開設を検討してください。SBI FXトレードは、少ない資金で取引でき、1通貨から取引可能です。また、つみたて外貨などリスクを抑えて取引できるため、初心者におすすめのサービスとなっています。
確定申告の際に必要な年間取引報告書のダウンロードも簡単なので、ぜひ利用してみてください。
※確定申告の条件は個人によって異なります。詳しくは所轄の税務署または税理士等の専門家にお問い合わせください。
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この記事を監修した人
SBIリクイディティ・マーケット株式会社
金融市場調査部長
上田眞理人