UPDATE 2025.06.17
POST 2025.06.17
FX取引に関心はあるものの、「取引に失敗すると損失が膨らむのではないか」と心配でなかなか一歩を踏み出せない初心者は多いものです。
損失が出る可能性があるのはどの投資でも共通ですが、FXにおいてその損失をできる限り抑える安全装置ともいえるのが「ストップロス (注文) 」という概念です。
本記事では、ストップロスの意味や実行する理由などについて、初心者にも分かりやすく解説します。迷いがちなストップロスの目安やルールの作り方、具体的な注文方法まで網羅的にまとめているので、ぜひ参考にして下さい。
FX取引におけるストップロスとは、トレーダーが損失の範囲を限定するために設定する注文のことで、「損切り」とも呼ばれています。
ストップロスは、取引ツール上であらかじめ条件を設定しておき、その条件を満たしたら自動的に売買が実行されるという流れが一般的です。例えば、「特定の通貨ペアの価格が◯円に達したら売却する」と設定しておいた場合、その水準に達すると自動的に売却注文が行われ、保有していたポジションが決済されます。
ストップロスは予期せず価格が急変するような場面や、ボラティリティの高いシーンにおいて、あらかじめ設定した範囲内に損失を限定できるため、想定外の損失を防ぐことができるのです。
また、ストップロスは心理的な負担を軽減する効果もあります。手動で取引を行う場合、急激な価格変動による動揺などによって判断が遅れ、損失が膨らむケースが少なくありません。機械的に実行することで感情に左右されずに取引が行えるようになり、取引の長期的な安定化が期待できます。
損失を恐れ、ポジションを長く保持しすぎることがありますが、ストップロスを事前に設定しておけば、感情に左右されず決済ができます。ストップロスの効果的な活用により、長期的な投資パフォーマンスの向上が期待できます。
ストップロスと混同されやすい用語に「ロスカット」があります。ここでは、ストップロスとロスカットの用語の定義を確認しつつ、それぞれの違いについて解説します。
ロスカットとは、FX会社が定めたルールに基づき、トレーダーが保有しているポジションを強制的に決済する仕組みです。
ロスカットは、トレーダーのさらなる損失を防止することを目的としており、証拠金維持率が一定の水準を下回った場合に実行されます。
なお、FX初心者の中には「FXはロスカットがあるから怖い」と考えている人も少なくないようですが、これは大きな誤解です。ロスカットがあることで想定外の損失を未然に防止できるため、むしろトレーダーを守る安全装置の役割を果たしているのが実情です。
ストップロスとロスカットは、いずれも損失の範囲を限定するための手段ですが、実行する主体に違いがあります。
ロスカットはFX会社が定めたルールに基づいて、トレーダーの証拠金維持率が一定の水準を下回った際に強制的に実行されるものです。
これに対して、ストップロスはトレーダー自身が、自身のリスクを管理するために自主的に設定するものです。そのため、実行する基準や水準、どのような方法で決済するかなどを、全てトレーダー自身で決める必要があります。
つまり、自身が設定したルールの範囲内で行うリスク管理としてストップロスがあり、取引の継続が困難になるほど大きな損失を出さないための最終手段としてロスカットがある、と考えれば分かりやすいでしょう。
このように、トレーダー自身がストップロスを設定しておくことで、ロスカットと併せて二重のリスクヘッジが可能になるのです。
ストップロスを実行する主な意味は以下の5つです。
ストップロスは、FX取引における基本的なリスク管理の1つです。
為替市場に限ったことではありませんが、相場や市場の動きは予測不能であり、継続的かつ正確に予測するのは不可能といっても過言ではありません。そのため、価格が自身の想定と逆方向に変動することや、その範囲が自身の想像の範疇を超えることは、決して珍しいことではありません。
つまり、FXでは損失が出ることを許容しつつ、その損失をできる限り抑えることで、最終的にプラスになることを目指すのが基本的なスタンスとなります。
仮に自身の想像と反する状況になった場合でも、ストップロスを設定しておけば損失の範囲をコントロールできるため、想定外の大きな損失を防止できます。
このように、ストップロスを活用することで損失の範囲をコントロールできるため、非常に有効なリスク管理方法です。
FX取引において、トレーダー自身の感情が取引に与える影響は、想像以上に大きいものです。
特に損失が出ている場面では、「そのうち価格が戻るはずだ」という根拠のない期待に流され、適切な決済のタイミングを逃してしまいがちです。相場が希望通りに動けば良いですが、逆行してさらに損失が膨らむことにもなりかねません。
また、感情的なトレードは長期的な運用成績にも悪影響を与えます。感情的な判断は希望的観測になりやすい上、どうしても運任せになりがちで、結果的に損失が膨らむ可能性が高まります。
このような感情に左右されるトレードを防ぐ意味でも、ストップロスは非常に有効な手段といえます。ストップロスを設定することで、あらかじめ決めた水準で自動的にポジションが決済されるため、感情に左右されない冷静な取引が可能になります。
ストップロスは、トレーダーの資金を保護する役割もあります。
例えば、価格が急激に変動した場合、ストップロスが設定されていなければ保有ポジションが維持され続けるため、過度な損失が発生してロスカットが実行される可能性があります。ロスカットは自分の意思とは関係なく強制的にポジションが決済される上、取引の継続が困難な水準まで資金が減ってしまうケースも少なくありません。
一方、あらかじめストップロスを設定しておけば、トレーダー自らが設定した範囲内で損失をコントロールできるため、過度な損失を防止すると共に、自身の資金を保護することにつながります。
また、ストップロスによって損失の範囲が小さくなることで、必然的にロスカットを防止することにもなるのです。
ストップロスは、単なるリスク管理ツールとしてだけでなく、戦略的な取引を支援する手段としても活用されています。
テクニカル分析に基づいて取引を行っているトレーダーの多くは、トレンドが転換する可能性の高い価格の付近にストップロスを設定することで、効率的にリスク管理をしています。
具体的には、サポートライン付近で買いポジションを持ち、想定に反して価格が下落した場合に備えて、その少し下にストップロスを設定するといった使い方です。こうすることで、予想が外れた場合のリスクを最小限に抑えつつ、利益の最大化を狙います。
また、もし仮に予想が外れたとしても、損失を最小限に抑えてまた次のチャンスを待つことが大切です。
このように、ストップロスはトレーダーが戦略的かつ計画的に取引を行うことを支援する側面も持ち合わせています。
外国為替市場は不確実性が高く、しばしば想定外の急激な変動が起こります。このような市場の不確実性に対処するためにも、ストップロスは欠かせません。
特に、ニュースや経済指標の発表などの情報によって市場が動く場面でも、ストップロスが大いに役立ちます。通常時と比べて価格の変動幅が大きく、値動きのスピードも早くなる傾向にあり、大きな利益が狙える反面、通常時よりも高いリスクを伴うためです。
FX取引において、「損失を被るかもしれない」「損失が大きくなったらどうしよう」という感情は、少なからず取引や意思決定に影響を与えます。しかし、あらかじめストップロスを設定しておくことで損失を決められた範囲に抑えられる見通しが立ち、「資金が守られている」という安心感から、積極的に利益を狙うことができるのです。
このように、ストップロスは予測しづらい市場の不確実性に対応するための重要なツールといえます。
ストップロスを決める上で頭を悩ませるのが、ストップロスの具体的な目安や水準です。ここからは、ストップロスのルールに設定すると良い指標やルールの決め方を解説します。
ストップロスのルールを決める基準の1つ目は値幅(pips)で、「◯◯pips変動したらストップロスを実行する」というルールを決める方法です。
「pips」とは、FX取引における通貨ペアの値幅を指す共通単位のことです。例えば、一般的に米ドル/円は1pip=1銭(0.01円)に相当します。
ストップロスのルールを決める基準の2つ目は損失額で、「1回の取引で◯◯円の損失が発生したらストップロスを実行する」というルールを決める方法です。
具体的な金額に基づいて管理するため、直感的に分かりやすく、FX初心者や資金管理を重視するトレーダーに向いています。例えば、運用資金が100万円の場合、「1回の取引で1万円の損失まで」と設定すれば、資金の大半を守りながら取引を行えます。
ここで設定する損失額は、個人の運用資金や許容できる金額が異なるため、損失額の具体的な金額は一概にはいえません。自身の総資金や許容できる損失範囲に合わせて、適切と思われる金額を設定することが大切です。
ストップロスのルールを決める基準の3つ目は損失率で、「1回の取引で資金比あるいはポジション比◯◯%の損失が発生したらストップロスを実行する」というルールを決める方法です。
例えば、運用資金が100万円だった場合、「損失率1%」なら10,000円、「損失率3%」なら30,000円の損失をストップロスの基準に設定します。
この方法では、総資金に対する損失の割合を基準にしているため、総資金が変動しても許容できる損失額を計算し直す必要がありません。そのため、ストップロスのルールに設定する具体的な損失額を決めづらい場合などにも適しています。
なお、値幅(pips)を基準にする場合と同様に、損失率によるストップロスの設定は取引する通貨ペアや市場のボラティリティに応じて調整することが大切です。
ストップロスのルールを決める基準の4つ目はテクニカル分析です。テクニカル分析とは、過去の値動きやチャートのパターンを基に、将来の価格変動を予測する手法を指します。
具体的には、相場のトレンドが反転しやすい価格帯を示す指標を用いて「25日移動平均線を下回った場合にストップロスを実行する」といったルールを設定します。その他にも、サポートラインやレジスタンスラインを目安にしたり、トレンドラインやボリンジャーバンドを活用したりと、指標の選択肢はさまざまです。
長い歴史によって確立された分析手法を用いるため、他の基準に比べて精度が高い一方で、高度な知識や経験が求められることから、FX初心者には少しハードルが高い方法といえるでしょう。
続いて、自身で決めたストップロスのルールを実際に実施する場合の、具体的な注文方法を4つご紹介します。
逆指値注文とは、現在の価格が指定価格よりも「下がったら売る」、または指定価格よりも「上がったら買う」という決済を行う注文方法です。
例えば、米ドル/円の通貨ペアにおいて、1ドル=150円の価格で買いポジションを持っていて、現在152円付近を推移しているとします。「まだ利益を伸ばしたいが、反落への備えもしたいな」と思ったら、「1ドル=148円まで価格が下がったら売り」の逆指値注文をしておきます。価格が上昇すれば利益を伸ばせますし、期待に反して相場が反落すれば、指定価格に達した時点で自動的に売り注文が実行され、損切りとなります。
このように、逆指値注文を設定しておけばストップロスとして機能するため、価格が一定水準まで下がった場合でもさらなる損失の拡大を防止できます。
IFD注文とは、新規注文と決済注文を同時に発注できる注文方法です。注文形態の特徴から「もし〜なら」を意味する「イフダン(if done)注文」とも呼ばれています。
例えば、「1ドル=150円になったら買い注文を入れ、その後1ドル=148円まで下がった場合は売り注文を入れて決済する」という注文を同時に出せるのがIFD注文です。この場合、1ドル148円に下がらなければ売り注文は実行されないため、逆に価格が上昇した場合は利益が期待できますが、利益確定の決済は手動で行う必要があります。
このように、取引を開始した時点でストップロスの水準もあらかじめ設定しておくことで、「想定した価格に到達した場合にのみ取引を行う」という、計画的な取引を自動的に実現できるのです。
少し慣れが必要ですが、使いこなせれば忙しくてネットに接続できる時間が限られている人でも自動的に取引を行えます。
OCO(One Cancels the Other)注文とは、指値注文と逆指値注文を同時に設定しておき、そのうちいずれかの注文が成立した場合、もう片方の注文が自動的にキャンセルされる注文方法です。
例えば、1ドル=150円で買いポジションを持っている場合、「1ドル=152円に達したら利益を確定させるための売り注文を設定し、同時に1ドル=148円まで下がったらストップロスの売り注文を設定する」といった使い方ができます。
相場がどちらに動いても決済ができるため、ストップロスと利益確定の両方を自動化できるのがOCO注文のメリットです。リスクとリターンのバランスを保ちつつ、自動的かつ計画的に取引を行える可能性が高いため、上記の例のように利益確定とストップロスを同時に注文する使い方が一般的です。
トレール注文とは、相場の動きに応じて逆指値注文の価格が自動的に調整される注文方法です。
例えば、1ドル=150円で買い注文を入れ、その後1ドル=148円まで下がったら売るという逆指値注文を同時に設定したとします。注文後、相場が1ドル=152円に上がった場合、逆指値注文の設定価格も自動的に150円に引き上げられます。
相場の上昇に追随する形で設定価格が自動調整されるため、利益の最大化を目指しながら、その時の水準に合わせて損失を抑えられる点が、トレール注文の大きな特徴でありメリットです。
また、逆指値注文を手動で調整する必要がないため、相場の動きを常に監視する必要もありません。そのため、トレール注文は忙しいトレーダーや相場の動きを見逃したくないトレーダーなどに適した注文方法といえるでしょう。
FX取引で成功するためには、ストップロスをうまく活用して損失を最小限に抑えることが重要です。特にFX初心者は、その意味を正しく理解して、できるだけ早く取り入れるべき重要な概念といえます。
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この記事を監修した人
SBIリクイディティ・マーケット株式会社
金融市場調査部長
上田眞理人