UPDATE 2025.04.15
POST 2025.04.15
※為替相場は2025年2月時点のもの。
高金利通貨として人気のある南アフリカランド。コロナ禍以降インフレ傾向が強く、世界経済が安定している時は世界中から資金が集まる通貨ですが、世界的な金融危機が起こると資金が流出するなど、不安定な面もあります。今後の動向が気になる人もいるのではないでしょうか。
本記事では、南アフリカランドの特徴や注目すべき経済指標を解説します。今後の見通しについてもまとめましたので、これからの取引にぜひお役立て下さい。
南アフリカランドは南アフリカ共和国の法定通貨で、ISO通貨コードはZARです。
プラチナ、石炭などの鉱物資源に恵まれている南アフリカは、世界有数の鉱山資源国。そのため南アフリカランドは、プラチナなど商品価格に影響を受けやすい特徴があります。
また、南アフリカ経済はBRICS国家の一つとして今後の成長が期待されている新興国ですが、電力不足や個人消費低迷などの問題も抱えています。そのため、南アフリカランドは、国内外の経済状況や金融政策、世界の商品市場の動向によって大きな影響を受けます。したがって、取引する際は、これらの要因を考慮しながら資金管理を行う必要があるでしょう。
FXでは人気のある通貨で、スワップポイント獲得を目的としてよく保有されています。
グローバルな資金移動の影響を受けやすい特徴がある南アフリカランド。コロナ禍以降インフレ傾向が続いており、金利は2022年以降高い水準を維持しています。
下記の特徴を踏まえた上で取引をしましょう。
それぞれ詳しく解説します。
南アフリカ共和国の政策金利は他の多くの国々と比較して高く、2025年2月時点で7.50%と、金利が低い日本とは大きな差があります。そのためスワップポイントが高いという特徴があります。
スワップポイントとは、通貨間に生まれる金利差のことです。日本円のような低金利通貨を売って、南アフリカランドのような高金利通貨を買うと、両通貨の金利の差額を利益として受け取ることができるのです。
FXにおいて南アフリカランドは値動きが激しく、グローバル金融市場で取引するトレーダーが少ないこともあり独特な動きをする通貨です。しかし、スワップポイントが高いという特徴をうまく活用すれば、FX初心者でも利益を得られるでしょう。
資源に恵まれた南アフリカの主要な産業は鉱業です。金やダイヤモンド、鉄鉱石、石炭など、さまざまな資源を算出していますが、その中でもプラチナ生産量は世界一で、生産量の7割を占めています。
これら資源の輸出が南アフリカの外貨獲得の大きな部分を占めています。そのため、資源価格が変動すると南アフリカ経済全体も大きな影響を受け、それが南アフリカランドの価値に反映されます。
資源価格が高い時は南アフリカの輸出額が増加し、貿易収支が改善します。これにより、南アフリカランドに対する需要が高まり、通貨価値も上昇します。逆に資源価格が下落すると、輸出額が減り、貿易収支が悪化して南アフリカランドの価値が下がる傾向があります。
南アフリカランドは、米ドルや日本円などの主要通貨よりも圧倒的に取引量が少ないため、小さな出来事で相場が大きく動きます。急激に上昇し、急激に下降する特徴があるため、取引する際は値動きを注視しましょう。
失業率や貿易収支といった経済指標の変動が大きいことも南アフリカ経済の特徴です。経済指標が極端に動いた時は、南アフリカランド相場も大きく変動する可能性があります。
また、南アフリカは最近は比較的落ち着いているものの、高インフレ率に悩まされることが多く、それに伴う金利政策も市場に影響を与えます。急激な金利変動や予期せぬインフレ率の変動は経済を不安定にし、南アフリカランド相場に大きな影響を与えるため、これらの点にも注意が必要です。
政治が不安定になると、通貨が安くなってしまいます。南アフリカは比較的政情が安定した国ですが、選挙などのイベントは要注意です。さらに、周辺国の政情にも気を配りましょう。
貿易相手国である中国の経済も、南アフリカランド相場に影響することがあります。なぜなら、中国は南アフリカ最大の貿易国だからです。日本貿易振興機構のデータによると、南アフリカの輸出・輸入の相手国は、共に中国が1位です。
中国は南アフリカに対して巨額の資金を投じており、特に鉱業、製造業、インフラの分野で多くのプロジェクトを進めています。したがって、中国の経済政策などの方針が変わると、これらのプロジェクトが影響を受け、南アフリカの経済活動全体にも大きな影響を及ぼす可能性があります。
南アフリカは2000年代半ばに高成長を遂げました。しかし、2008年の世界金融危機により輸出が不振に陥り、さらに2015年の中国経済の減速に伴う鉱物資源価格の下落などで、経済が停滞しました。
南アフリカランドで取引をする場合は、中国経済の動向もチェックする必要があります。
VIX指数とは、シカゴ・オプション取引所がS&P500(アメリカの主要株価指数)の値動きを基に算出・公表している指数のことで、トレーダーたちの恐怖心理を指数化したものです。
VIX指数が高い場合、トレーダーは安全資産(日本や米国等)に資金を移動する傾向があり、新興国通貨である南アフリカランドは売られることが多くなります。
VIX指数が高い時期は世界経済の低迷や金融不安が高まっていることが多く、高リスク資産から資金が引き上げられるため、南アフリカランドの価値が下がる傾向にあります。
このようにVIX指数と南アフリカランドは逆相関関係があり、VIX指数の動きを注視することは南アフリカランド相場を見るうえで重要です。
少ない資金で取引できることも大きな特徴です。
例えば、25倍のレバレッジで10,000通貨を購入すると想定します。米ドル/円が1ドル=150円の場合、取引必要証拠金は60,000円となります。
米ドル/円の取引必要証拠金:
10,000通貨×150円)÷25=60,000円
しかし、南アフリカランド/円は1ランド=8.2円(2025年2月17日時点の価格)なので、取引必要証拠金は3,280円と少額で済みます。
南アフリカランド/円の取引必要証拠金:
(10,000通貨×8.2円)÷25=3,280円
同じ10,000通貨でも、南アフリカランドは米ドルの約18分の1の必要証拠金で購入できるのです。
そのため、南アフリカランドは多くの資金を用意できない人でも取引ができます。
先述した通り、南アフリカランドは中国をはじめとする各国の経済や金融政策によって大きな影響を受けます。そのため、国の経済状況を示す重要なデータであり、通貨の価値に影響を与える経済指標を知ることが大切です。
南アフリカランドの主要な経済指標は下記の4つです。
それぞれ詳しく解説します。
失業率は、その国の景気や消費の傾向など、市場に変化をもたらす経済の状態を示す重要なデータです。そのため、FXの相場に影響を与える可能性が高い指標といえます。
雇用統計における失業率とは、労働力人口(失業者と就業者の合計)のうち、失業者数が占める割合を示す数値です。一般的に「失業者÷労働力人口×100(%)」で算出されます。
失業率は労働市場の健全性を示すため、経済政策の判断においても考慮される重要なデータです。南アフリカの失業率は、雇用者数、失業者数共に四半期ごとに南アフリカ統計局が発表しています。発表時期は、2・5・8・11月下旬です。
貿易収支とは、輸出入の収支のことです。一般的に、輸出額が輸入額を上回る状況を貿易黒字、輸入額が輸出額を上回る状況を貿易赤字といいます。南アフリカは資源輸出が盛んであるため、貿易収支の変化は南アフリカランドに影響を及ぼします。
貿易黒字になると、外国通貨を多く受け取るため、その通貨を売って自国通貨を買う動きが強まり、自国通貨高につながります。また、貿易黒字が増えるとGDPも押し上げられ、逆に貿易赤字が増えると押し下げられます。
貿易収支は速報性が高く、実態が反映されやすい指標です。そのため、他の統計の基礎としても使われており、エコノミストや市場関係者などからも注目されています。
南アフリカの貿易収支は、歳入庁が毎月下旬の日本時間21時頃に発表しています。
小売売上高とは、デパート、スーパー、コンビニ、家電量販店を初めとする小売業者の売上額をまとめた指標のことです。小売売上高は多くの国で経済規模の6割以上を占めています。消費動向を探ることは経済動向を見極める上で重要であるため、小売売上高は南アフリカランドの取引においても注目すべき指標といえます。
南アフリカの小売売上高は、南アフリカ統計局が毎月発表しています。発表時期は、毎月中旬の日本時間20時頃です。
製造業生産高とは、鉱工業生産の内訳である製造業の生産高のことです。景気に対する反応が大きい特徴があり、その国の生産活動の状況など、景気の動向を示す指標とされています。したがって、鉱業が主要産業である南アフリカにおいては特に重要な指標であり、南アフリカランドにも影響を与えるといえます。
南アフリカの製造業生産高は、南アフリカ統計局が毎月上旬の日本時間20時頃に発表しています。
南アフリカ準備銀行は近年、コロナショックに対応するため、2020年7月までに政策金利を3.50%まで引き下げました。しかし、2021年11月にはコロナ禍からの経済回復やインフレ率の上昇などを背景に利上げを決定しました。
南アフリカランドは、資源輸出国である南アフリカの特性から金やプラチナの価格に影響を受ける側面があります。金・プラチナ相場の上昇につられて南アフリカランドも上昇する傾向があるため、商品相場の動向をチェックすることも大切です。
昨今の南アフリカランド/円は、概ね7.6円〜8.8円で推移しています。2025年以降は、トランプ関税にかかる世界貿易動向、タカ派に傾く南アフリカ準備銀行の金融政策、電力インフラ整備や失業率改善に絡んだ相場が予想されます。
FX初心者が通貨ペアを選ぶ際に意識したいポイントは、取引量が豊富でスプレッドは狭く、それでいて適度なボラティリティがある通貨に絞ることです。
南アフリカランドは、政策金利も比較的高いため、高ボラティリティであるとともにスプレッドは狭く、長期的に保有することで高スワップ収入が狙えるなど、日本国内のトレーダーにも人気が高い通貨の一つです。これらの点から、FX初心者でも挑戦しやすい通貨といえるでしょう。
アフリカ大陸最大の経済大国として急速な成長を遂げた南アフリカは、2021年以降インフレ圧力にさらされていることから金利が高い特徴があります。そのため、南アフリカランドはスワップポイントが高く、スワップポイント獲得を目的に保有しているトレーダーも日本に多く存在しています。
取引に当たっては特有の懸念材料があるものの、南アフリカ政府が基本的に財政の健全性を重視する傾向が強く、財政のコントロールが保たれてきたこともあり、FXにおいても一定の魅力がある通貨として位置し続けるでしょう。
FX初心者は、商品相場や南アフリカの金融政策・経済指標の変化に注意しつつ、余裕をもった資金管理を心がけましょう。
SBI FXTRADE
FX(外国為替証拠金取引)は異なる通貨を売買し、売買時のレートによって生じた差額で利益を出そうとする取引です。
SBI FXTRADEは、スプレッドやスワップポイント、通貨ペア数など、業界最良水準のサービスをご提供しています。また、初心者の方から、上級者までご満足いただける取引ツールをご用意しております。
この記事を監修した人
SBIリクイディティ・マーケット株式会社
金融市場調査部長
上田眞理人