米雇用統計特別レポート

掲載日:2019年09月09日

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2019年8月米雇用統計(9月6日発表)結果

前回値 予想 結果
非農業部門就業者数(万人) 15.9万人 16.0万人 13.0万人
失業率(%) 3.7% 3.7% 3.7%
時間給賃金(前月比) 0.3% 0.3% 0.4%
時間制給賃金(前年比) 3.3% 3.0% 3.2%

米8月雇用統計の総括

① 8月雇用統計は過度な悲観もなければ過度な楽観にもつながらず

・就業者数は13.0万人増、しかし2.5万人は国勢調査のための政府の臨時的雇用
⇒FOMCで0.25% 引下げの可能性。成長減速の兆し、米景気の下支え?

・民間部門の雇用増が鈍化 8月9.6万人(7月:13.1万人 6月:16.1万人)サービス業の雇用の伸びが鈍化 8月8.4万人(7月:13.3万人、6月:13.4万人)

・全体的に就業者数は鈍化、6月分、7月分の下方修正

・製造業の就業者数の増加は0.3万人、伸びが前年同月の半分以下

・失業率は3ヵ月連続で3.7%、一方、労働参加率は63.2%(6月;62.9% 7月:63.0%)
⇒実質的な失業率は低下、堅調な労働市場を確認

米非農業部門就業者数(万人) 失業率(%)

米非農業部門就業者数(万人) 失業率(%)

・労働時間 34.4時間(7月:34.3時間) 時間給 28.11㌦(7月:28.00㌦)
⇒週間報酬額 966.98㌦(7月:960.40㌦)は上昇、個人消費を支援

米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)

米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)

② 米雇用統計は引き続き要経過観察、金融政策の行方が焦点

雇用統計発表の前日9月5日に中国・国営中央テレビ(CCTV)が、中国の劉鶴副首相とライトハイザー通商代表部(USTR)代表、ムニューシン米財務長官が9月4日の朝に電話で協議、10月に閣僚級の貿易協議を行うことで合意したとの報道がきかれました。さらに米政府からも、数週間以内にワシントンで通商協議が行われることを認めた上で、米中両政府が10月の通商協議に向けて今月中旬にも事務レベルの協議を行うとのリスク選好の動きを背景にドル円は107円台を回復。その後の反落も106円台後半に留まるなど堅調地合いを継続するなど政治的な懸念が一服、ファンダメンタルズに焦点が移行する中での雇用統計でした。結果的に就業者数の鈍化は否めないものの、決して過度に悲観する内容ではないこと、低失業率の継続や賃金の強さも確認 される内容となっただけに、無難に消化したとの評価が適切かもしれません。雇用統計の発表後にパウエルFRB議長の講演が行われ、米経済見通しに対する強気な姿勢が見られた一方、成長をじぞくするために適切な措置をとるとして、追加緩和の可能性を示唆しています。しかし、追加緩和の時期や緩和幅への具体的な言及は聞かれませんでした。しかし、9月3日に発表された米8月製造業景況指数が2016年1月以来の低水準となる49.1と好不況の節目となる50.0を2016年8月以来下回りました。仮に9月の数値も引き続き50.0割れとなればリセッション入りのリスクが高まるの見方もあり、FRBは来週FOMCで0.25%の利下げを決定すると見られています。すなわち、今回の雇用統計はFRBの追加利下げを否定するほどの強さは見られなかったものの、0.50%の大幅な利下げの必要性を高めるものには至りませんでした。引き続き、米中通商問題を中心に米国経済への影響を見極めながら、さらなる追加緩和の必要性を模索する経過観察の域に留まる雇用統計に留まったと見ていいのかもしれません。

雇用統計を前後してのドル円の反応

雇用統計を前後してのドル円の反応

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