米雇用統計特別レポート

掲載日:2019年01月07日

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2018年12月米雇用統計(1月7日発表)結果

前回値 予想 結果
非農業部門就業者数(万人) 15.5万人増⇒17.6万人増 17.7万人増 31.2万人増
失業率(%) 3.7% 3.7% 3.9%
時間給賃金(前月比) 0.2% 0.3% 0.4%
時間制給賃金(前年比) 3.1% 3.0% 3.2%

12月雇用統計のポイント

・就業者数は31.2万人増と10ヵ月ぶり高水準、直近2ヶ月も上方修正

・時間給賃金は27.48㌦、前月比+0.4%は2017年9月以来の上昇率、前年比も+3.2%

・ヘルスケア、レストラン、建設業など幅広い分野で雇用増を確認

・失業率は3.9%へ悪化したものの、労働参加率の増加(62.9%⇒63.1%)で説明可能

・3月を含め次回の利上げを決定付けるものではなく、FRBにとって参考材料の一つ?

強弱交錯・・強い雇用統計と弱いISM製造業軽挙指数

雇用統計発表の前日3日に発表された米12月ISM製造業景況指数は54.1と11月の59.3から大幅に低下し2016年11月以来2年1ヶ月ぶりの低水準となりました。内訳をみても新規受注が11月の62.1から51.1と10Ptsも低下したほか生産指数も60.6から54.3へ、雇用指数も58.4から56.2へ低下する内容でした。雇用指数が低下したにもかからず、民間部門の雇用の増減を示すADP雇用統計では就業者数が前月の15.7万人増から27.1万人増へ改善、さらに4日発表の雇用統計でも上述のように極めて良好な結果となりました。

ISM製造業景況指数の大幅な低下は12月のNYダウが月間で2,200㌦超の大幅な下落を記録したことに象徴されるNY株式市場の軟調地合いが企業の設備投資意欲を大きく後退させるなど心理的に慎重な姿勢を高めたことが影響したことに起因しているのかもしれません。一方、雇用統計では時間給賃金(前年比)が3ヵ月連続で3.0%台を維持するなど3.0%台が定着しつつあるほか、失業率も昨年7月以降6ヵ月連続で4.0%を下回る堅調な労働市場を確認しています。

ISM製造業景況指数の低下は一時的な現象か、あるいは雇用統計の堅調な結果が一時的なのか、FRBは今後発表される米経済指標をこれまで以上に注視する必要がありそうです。

企業の設備投資などに影響すると見られる米中通商交渉の行方が今後の米国経済を占う上で重要な位置付けとなるかもしれません。12月1日の米中首脳会談で米国が課した①技術移転強要の是正、②知的財産権侵害の是正③非関税障壁撤廃など6つの分野に及ぶ課題に対し、中国が90日以内に推進することができるか、1月7日から8日かけて中国で米中通商交渉を巡る次官級協議が予定されています。この協議で進展が見られることになれば今月中にもライトハイザー米通商代表部(USTR)代表と中国劉鶴副首相との閣僚級協議の開催に向けて道のりを開くことになるとの一部報道も聞かれています。加えて今月下旬のスイスで開催されるダボス会議に出席するトランプ大統領が中国の王岐山国家副主席と会談する可能性もあり、こうした会談の可能性へ期待を抱くことができる協議となればNY株のみならず上海株も底打ちから反発へと基調が転換し、企業経営者の先行き懸念の後退につながるかもしれません。

米非農業部門就業者数(万人) 失業率(%)

米非農業部門就業者数(万人) 失業率(%)

FRBは次回利上げのスケジュールは白紙?

12月の雇用統計は12月FOMCでの利上げを正当化する内容となった一方、次回の利上げ観測を高めるには時期尚早といえそうで、あくまでも参考資料の一つとしての位置付けに過ぎないと思われます。米雇用統計の結果を受けて米2年債利回り(2.494%)と5年債利回り(2.501%)との逆イールドは解消されており、これが一時的な解消か、持続するのか今週11日発表の米12月消費者物価指数が注目されます。時間給賃金が市場予想を上回った今回の雇用統計、引き続き企業が優秀人材確保に向けた動きを活発化させるのか、米中通商協議が進展すれば企業の設備投資計画も慎重姿勢から積極的姿勢へ転換する可能性もあり、米インフレ期待にも影響するかもしれないだけに米中通商協議の行方がカギを握ることになるだけに注目されます。

米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)

米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)

雇用統計を前後したドル円の動き

雇用統計を前後したドル円の動き

提供:SBIリクイディティ・マーケット株式会社

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