米雇用統計特別レポート

掲載日:2018年10月29日

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2018年10月米雇用統計(11月2日発表)直前レポート

5月 6月 7月 8月 9月 10月
(予想)
非農業部門就業者数(万人) 26.8 20.8 16.5 27.0 13.4 19.3
失業率(%) 3.8% 4.0% 3.9% 3.9% 3.7% 3.7%
時間給賃金(前月比) 0.3% 0.1% 0.3% 0.4% 0.3% 0.2%
時間制給賃金(前年比) 2.7% 2.7% 2.7% 2.9% 2.8% 3.2%

米10月雇用統計の注目点

①9月のFOMCでは、今年3度目となる0.25% の利上げを決定したほか、声明文 から『金融政策スタンスは緩和的』との文言が削除されました。さらに9月雇用統計では失業率が3.7%と48年9ヶ月ぶりの低水準まで改善が進むなど、あらためて労働市場の堅調地合いを確認されました。こうした状況を受けて米10年債利回りは2011年5月以来の3.246%へ上昇したこともあり、NYダウは10月3日に史上最高値(26,951㌦)を更新後、調整局面に入りました。加えて、サウジアラビア人記者がトルコのサウジ領事館で殺害された事件の影響によるオイルマネーのNY株式市場からの投資マネーの引揚げ観測も重なり、その後の3週間でおよそ9%の下落となりました。

今回の雇用統計での時間給賃金(前年比)が市場予想(+3.2%)と前月から大きく上昇する予想となっており、3.0%台の回復となれば2009年4月以来9年半ぶりとなり、米長期金利が再び3.2%台を上回って上昇すると思われるだけに、NY株式市場の反応が注目されます。米長期金利の上昇がドル高を再燃させる動きとなるか注目されます。

米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)

米時間給賃金 前年比(%) 前月比(%)

②トランプ大統領は何度となくFRBの金融政策(持続的な利上げ)を批判しているものの、仮にFRBが12月FOMCで利上げをしなければFRBの金融政策が政治的介入によってその中立性が損なわれたと市場に捉えられるリスクが懸念されることになります。トランプ大統領のFRB批判は却ってFRBの金融政策の頑なな方針継続をより強固にする中、歴史的低水準の失業率や時間給賃金の上昇が確認されれば米長期金利は勿論、FRBの想定する中立金利の水準も上方修正される可能性もあるだけに債券市場の反応が注目されます。

FRBの政策金利誘導目標(%)

2018年9月 2018年12月 2019年3月 2019年6月 2019年9月
2.00~2.25 2.25~2.50 2.50~2.75 2.75~3.00 3.00~3.25

③ ドル円は10月4日に年初来高値となる114円55銭まで上昇しましたが、牽引したのは、前日10月3日に史上最高値(ザラ場高値:26,951㌦、終値:26,828㌦)を更新したNYダウをはじめ、堅調なNY株式市場や9月28日から10月3日まで4営業日連続で24,000円台(終値ベース)を維持した日経平均株価など株高に象徴されるいわゆるリスク選好の動きでした。しかし、その後報じられたサウジ人記者のトルコのサウジ領事館での殺害事件を契機に、中東のオイルマネーなどNY市場を中心にした世界的な株式市場からの投資マネー引揚げ観測が株式市場の調整局面入りにつながり、リスク選好からリスク回避の動きを強める結果となりました。しかし、7-9月期の米主要企業決算を見ると以下の主要企業をはじめ

これまでに決算発表を終えた企業の約80%が市場予想を上回る好決算となっています。例えばアマゾンは売上高(565.76億㌦)と29%増となったものの、インドなどの海外事業が冴えず、アナリスト予想を下回ったことから、株価は売られ、ドル円も株価下落を背景に111円38銭まで下落するなど円高方向へのバイアスを強める結果となりました。また、日経平均株価を見ても終値(20,617円)で年初来安値を付けた3月23日のPER(株価収益率)は12.22倍まで低下、先週末10月26日に一時21,000円割れ(20,971円)まで下落した日経平均株価のPERは12.37倍へ低下しています。今後本格化する企業決算で大幅な下方修正がない限り、かなり割安な水準まで株価が下落しており、今週末の米10月雇用統計が予想を上回る好調な結果となり、日米ともに株式市場の調整局面終了が示唆されると同時にドル円も先週末10月26日に付けた111円38銭を下値に再度反発基調に転じる契機になるか注目されます。

米非農業部門就業者数(万人) 失業率(%)

米非農業部門就業者数(万人) 失業率(%)

提供:SBIリクイディティ・マーケット株式会社

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