UPDATE 2025.08.26
POST 2025.08.26
クローネは、ノルウェーやデンマークなど北欧諸国で使用されている通貨です。言語の違いによって各国で若干呼び名が異なる場合があり、ノルウェーでは「クローネ」、スウェーデンでは「クローナ」、デンマークでは「デンマーククローネ」として知られています。
外国為替市場(FX)では、米ドルやユーロ、日本円などの主要通貨とペアを組んで取引されることが多いといえます。米ドルやユーロとは異なる値動きを示す局面が多く、米ドル/円やユーロ/円と分散投資する上で有効な選択肢の一つです。
本記事では、クローネの為替レートや通貨としての特徴、相場状況などを詳しく解説します。クローネでのFX取引を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
なお、この記事の為替レートは、特記ない限り2025年8月19日時点の値です。
クローネは、主に北欧諸国で使用されている通貨です。言語の関係で呼び名が少々異なる場合はありますが、複数の国で「クローネ」に準ずる呼び名を通貨に使用しています。
ただし、似た名称の通貨であっても、各国で通貨制度は異なります。まずは、どの国でクローネが使用されているのか、またそれぞれの為替レートについて紹介します。
クローネは、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、チェコといった北欧諸国で使用されています。クローネは「王冠」という意味を持つ言葉で、各国で異なる経済状況や政策があるにもかかわらず、通貨名称は共通しています。
ただし、あくまで異なる通貨なので、為替レートもそれぞれ異なります。どの国もユーロを法定通貨とする国々と地理的・経済的に近いため、一定程度はユーロとの連動性が見られるものの、為替相場の値動きの特徴も通貨によって異なります。
例えばノルウェークローネは、ノルウェーの石油や天然ガス産業に強く依存しており、原油価格の変動に大きく影響されがちです。2024年時点の石油・ガス産業が産業別のGDPに占めるシェアで22%、総輸出の61%、政府収入の27%など、主要産業の中では多くを占めています。
そのため、エネルギー需要が高まる局面では、経済成長が加速して通貨も上昇しがちです。
一方、スウェーデンクローナは、EU経済圏向けの製造業やIT関連の産業が発展しているため、ノルウェーよりもユーロ圏経済の影響を受けやすい通貨です。特に、鉄鋼製品や機械工業といった分野の成長が著しく、スウェーデン経済の主要な柱となっています。
日本でもSBI FXトレードのように、ノルウェークローネやスウェーデンクローナを取引できるFX会社が何社かあります。それぞれの通貨の特徴の違いをおさえた上で、取引する通貨ペアを選択しましょう。
前述のとおり、クローネを使用している主な国は、ノルウェーやスウェーデンなどの北欧諸国です。ノルウェークローネ(NOK)やスウェーデンクローナ(SEK)は、為替市場で対ユーロ、米ドルや円など色々な通貨ペアで取引されており、各国の経済状況や世界の政治的な動きによって日々変動しています。
ノルウェークローネの為替レートは、1クローネ=14.45円前後を推移しています。もし1万円をクローネに換算すると、約692ノルウェークローネとなります。ノルウェーは石油資源が豊富であり、原油価格の変動が大きく影響します。
エネルギー市場の変動やロシア・ウクライナ情勢など、国際的な要因がクローネの為替レートに影響を与えています。
グローバルに景気が良くなるとエネルギーの需要も増える傾向があるため、ノルウェークローネはそうした世界経済の変化にも影響を受けやすい特徴があります。
スウェーデンクローナの為替レートは、1クローナ=約15.42円前後を推移しています。1万円をクローナに換算すると、約649スウェーデンクローナとなります。スウェーデンは、ノルウェー以上にユーロ圏との経済的な繋がりが強いため、ユーロの動きに影響されやすいのが特徴です。スウェーデンはEU加盟国ですが、ユーロを導入せず自国通貨のクローナを維持しています。
当然のことながら、いずれの通貨も変動相場制を採用しており、どちらの政府も為替相場には原則不介入の姿勢をとっています。国際通貨基金によると、ノルウェー銀行は1999年以来一度も為替市場介入を行っていません。
スウェーデンについても、2001年6月のインフレ目標補完を目的とした「市場への関与」を最後に、為替市場介入を行っていません。中央銀行であるリクスバンクは独立性が高く、為替相場を市場にゆだねる姿勢が基本であるため、「口先介入」の可能性はあるものの、現在のところは需給動向がダイレクトに値動きに反映されやすい通貨といえるでしょう。
ノルウェークローネの特徴や、日本円に対する相場状況について見ていきます。ノルウェーの経済は石油と天然ガスへの依存度が高いため、エネルギー市況がしばしばノルウェークローネの為替相場に影響を与えます。
ノルウェーは、スカンディナビア半島の西側に位置する国で、北大西洋に面しています。この国は、欧州諸国の中では有数の石油・天然ガスの産出国です。ノルウェーの輸出総額の約6割が石油および天然ガスに関連しているため、国際的なエネルギー市況の動向がノルウェー経済全体に大きな影響を及ぼします。
福祉国家としても知られ、教育、医療、介護、高齢者福祉などの社会保障が充実しています。ノルウェーは1人あたりGDPが購買力平価ベース(PPP)で10万ドル(2024年予測)を超え、世界でもトップクラスの生活水準を実現しています。
ノルウェーの基本情報
項目 | 詳細 |
---|---|
面積 | 38.5万平方キロメートル(日本とほぼ同じ) |
人口 | 560万人(2025年推計) |
首都 | オスロ |
主要産業 | 石油・天然ガス、水産業、造船業、鉱工業 |
GDP(名目) | 5,038億ドル(2024年) |
1人当たりGDP(名目) | 約9万434USドル(2024年) |
経済成長率 | +0.1%(2023)、+2.1%(2024年) |
主要貿易相手国 | ドイツ、英国、フランス、オランダ、ベルギー等欧州各国 |
EUに加盟していないものの、欧州経済領域(EEA)協定やシェンゲン協定に参加しており、EU単一市場へのアクセスを確保、人や物の移動の自由がほぼEU加盟国と同等に認められています。特に、エネルギー資源の輸出が重要な役割を果たしています。主要貿易相手国であるドイツやイギリスとの経済的な結びつきが強く、これがノルウェークローネの為替レートにも影響を与えます。
ノルウェークローネは、1992年に変動相場制へ移行し、通貨の価値は需要と供給に基づいて決まります。変動相場制移行後、直接介入義務を放棄したため、為替安定のための市場介入は実行されておらず、政策金利や発言など間接的手段が主体となっています。
特に主要産業である石油や天然ガスの価格がノルウェー経済に影響を及ぼすとの考え方から、原油価格の動向は、しばしばクローネの為替変動要因となります。石油価格が上昇すれば、クローネの価値も上昇する傾向があります。
これは、価格上昇がノルウェーの経済成長を加速させると期待できるためですが、逆に石油価格が下落すれば、クローネの価値も下がる可能性があります。ノルウェーは主要貿易相手国であるドイツやイギリス、フランスなどの欧州経済の影響も受けやすく、ユーロやポンドの為替レートにも影響されがちです。
ノルウェーは、財政が非常に安定しており、国債の格付けも高いのが特徴です。ノルウェーのカントリーリスクにより、通貨が暴落するリスクは低いといえるでしょう。政策金利が2025年6月時点で4.25%と日本より高い点からも、長期保有でスワップ収益を積み上げていくのは有効な戦略の一つといえます。
ノルウェークローネ/円相場は、両国の経済状況や政策金利、国際的な市場動向に影響を受けます。相場に影響を与える要因について、詳しく紹介します。
2019年末頃のノルウェークローネ/円相場は、1ノルウェークローネ=12円程度で推移していました。しかし、2020年3月には世界的なコロナ禍の影響で、ノルウェークローネは円に対して8.9円台まで急落しました。
世界的な景気後退と共に石油需要が低迷し、ノルウェー経済に大きな打撃を与えると見込まれたためです。その後の世界的な景気回復および石油需要の回復により、2021年1月には12円台まで回復しました。
さらに、世界的なインフレを背景にノルウェーで利上げが始まったことや、ロシア・ウクライナ情勢の影響でロシア外のエネルギー需要が高まるとの見方を受けて、2022年3月には14円台までノルウェークローネ高円安が進みました。その後も、原油価格を中心としたエネルギー市況の変化がクローネにも影響を与え、過去1年間では12円台から15円台で推移しています。
ノルウェークローネ/円の今後の相場は、両国の経済状況や金融政策の影響に加えて、グローバルなエネルギー市場の動向が主な変動要因と想定されます。ノルウェーは、世界の主要国より早いタイミングで利上げサイクルに入り、2025年6月19日に2020年以来初めての利下げを行いましたが、現在の政策金利は4.25%と依然高水準にあります。
2025年5月のコアインフレ率は、前年同月比2.8%の上昇となり、中央銀行の目標値である2.0%を上回っています。6月の利下げは、市場予想を上回るインフレの鈍化を受けた措置で、経済情勢が予測通りに推移すれば、2025年内にさらに1~2回の利下げを行い、年末までに政策金利を4.0%または3.75%に引き下げる可能性があると示唆していますが、それでも相対的には高い水準と言えます。
主要先進国経済の不確実性が続く中で、財政の健全性や相対的な金利の高さが、ノルウェークローネの需要を下支えする役割を果たすことも、ノルウェークローネの為替レートが底堅い要因となるでしょう。
その他、原油価格の変動によってクローネの価値が上下する可能性があります。ロシア・ウクライナや中東情勢が、原油価格の上昇やノルウェー産エネルギー資源の需要拡大につながれば、ノルウェークローネが一段と上昇する要因となります。
ただし、ロシアと欧州諸国の緊張が高まれば、地政学リスクを意識したユーロ安からのノルウェークローネ安円高が進む可能性も否定できません。世界情勢は、ノルウェーにとって上昇・下落双方の要因となりうるため、動向を注視する必要があります。
クローネの中では、ノルウェークローネと並んで日本でFX取引がしやすいスウェーデンクローナの特徴や、対日本円の相場状況を紹介します。スウェーデンは、EU加盟国でありながら、ユーロを導入せずに独自の通貨であるクローナを法定通貨としています。
ただし、産業構造や貿易関係においてユーロ圏との結びつきが強く、ユーロとの相関性も高いのが特徴です。
スウェーデンは、スカンディナビア半島の東側に位置し、豊かな自然と高度な工業技術を持つ国です。地の利を活かした林業の他、機械工業、化学工業といった重化学工業、ITなどもスウェーデンの基幹産業です。
スウェーデンは、高福祉国家としても知られ、国民の生活水準が非常に高く、医療や教育、社会保障が充実しています。例えば、妊娠・出産にかかる費用が全て無料です。また、家事・育児を男女で分担する仕組みが整っていて、合計特殊出生率が先進国の中で高いのも特徴です。
スウェーデンの基本情報
項目 | 詳細 |
---|---|
面積 | 約45万平方キロメートル(日本の約1.2倍) |
人口 | 1,058万人 |
首都 | ストックホルム |
主要産業 | 機械工業(含:自動車)、化学工業、林業、鉄鋼業、IT |
GDP(名目) | 約7,694億ドル |
1人当たりGDP(名目) | 約59,519ドル |
経済成長率(実質GDP) | 2.2%(2025年予測) |
主要貿易相手国 | ドイツ、米国、ノルウェー、デンマーク、フィンランド、オランダ、デンマーク、中国 |
スウェーデンはEUに加盟しているものの、ユーロを導入せずに独自の通貨を法定通貨にしています。ただし、スウェーデンは製造業が主体の産業構造で、自動車やIT産業においては近隣の北欧やEU諸国との貿易依存度が高いのが特徴です。
そのため、スウェーデンクローナ(SEK)もユーロ相場に影響を受けやすいといえます。スウェーデンの経済環境自体も、欧州経済の動向に左右されがちなので、スウェーデンクローナに投資する時は、北欧やユーロ圏経済にも着目しておくと良いでしょう。
スウェーデンは安定した経済基盤を持っているため、スウェーデンクローナも信用悪化などに伴う為替変動が起きにくい通貨として信頼されています。ただし、インフレ率の低下や経済成長の鈍化を背景とした政策金利引き下げが今後も続くと予想されており、日本との金利差も縮小傾向となっていることから、スウェーデンクローナ/円の為替レートは下落圧力を受けやすい状況です。
スウェーデンは長年にわたり中立政策を重視してきましたが、ウクライナ情勢の影響を受けて2024年にNATOに加盟し、安全保障政策を転換しました。その結果、地政学的な注目度が高まり、通貨としてのスウェーデンクローナは、リスク認識の変化を受ける場面も見られます。とくに、バルト海を挟んでロシアと地理的に近いことから、対ロシア情勢の緊張が市場心理に影響を及ぼす可能性には留意が必要です。
スウェーデンクローナと日本円の為替相場は、主にユーロ圏の経済状況やスウェーデン・日本の金融政策に左右されます。
スウェーデンクローナは、ヨーロッパ全体での通貨危機(いわゆる「ERM危機」)により1992年9月に固定相場制が崩壊(正式な変動相場制移行は1992年11月)して以降、対円では長期的に下落傾向が続いており、2010年代以降も、20円台を回復することなく推移しています。背景には、イギリスのEU離脱(いわゆる「ブレグジット」)など、欧州における地政学的・経済的な不確実性の高まりがありました。
その後、2018年以降はスウェーデン国内の低金利政策や景気減速懸念を背景に、クローナは一段と軟化し、2019年8月には対円で10円台に下落しました。さらにコロナ禍の影響を受け、2020年6月頃まで10~11円台の低水準での推移が続きました。
しかし、2021年以降はスウェーデン経済の回復によりクローナは対円で持ち直し、2021年3月には14円台を回復しました。その後、2022年にはユーロ圏のインフレ加速やエネルギー価格の上昇がクローナにも波及し、12円台以上での推移が続きました。
さらに、リクスバンク(スウェーデン中央銀行)による段階的な政策金利の引き上げを受け、2024年6月には対円で15円台に到達しました。一方で、2024年7月以降は日本の利上げとスウェーデンの利下げが重なり、一時的に14円台まで押し戻される局面もありました。
そして、2025年8月19日時点においては、スウェーデンクローナ/円は15.42円前後で推移しています。
スウェーデンクローナ/円の相場は、スウェーデンや日米欧諸国の金融政策によって上下に振れる可能性があります。
リクスバンクは2024年に入って、直近の政策金利のピークであった4.0%から、段階的に利下げを始めました。2025年6月に政策金利を2.0%に設定しています。
2025年5月のデータでは、インフレ率が前年比2.3%(CPI・総合)で4月と同水準に留まっていますが、リクスバンクのインフレ目標である2.0%は上回っている状況です。しかし、CPIベースでは、前年同月比0.2%と4月(0.3%)からわずかに低下する歴史的な低水準にあり、既に米ドルなども利下げ局面入りしている中で、今後の金融政策の動向が注目されます。
経済を下支えするための利下げの動きが今後も続くと、クローナの上昇が抑えられる可能性があります。一方で、日本銀行は追加利上げのタイミングを伺っている状況です。日本の利上げもまた、クローナ安円高の要因となる可能性があります。
その他、ロシア・ウクライナ情勢や2024年3月7日に加盟したNATO共同防衛活動への積極的参加などは、防衛支出の増加を伴う地政学的リスクの要因として警戒されています。周辺諸国情勢の急変が、為替相場の変動要因となるかもしれません。
スウェーデンは、2024年の春頃から利下げが始まっていて、既に直近の最高値である4.0%から合計で2.0%引き下げられています。インフレ率が低水準にある中で、さらなる利下げの有無には注意が必要です。
クローネは、ノルウェーやスウェーデンなどで使用される通貨です。どちらの国もユーロ圏との経済的・政治的な繋がりがありますが、ノルウェーはエネルギー市況の影響を受けやすい一方で、スウェーデンは中立的立場を重視していましたが、NATO集団防衛体制に移行するなど、互いに異なる特徴があります。
ユーロの値動きや、地理的に近いロシア・ウクライナの情勢は、クローネの相場に影響を与える要因です。また、それぞれの国の金融政策や経済動向にも着目しましょう。
ノルウェークローネ・スウェーデンクローナは、いずれも近年は比較的高金利を維持しているため、スワップポイントを獲得できる通貨として、FX取引でも人気があります。
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この記事を監修した人
SBIリクイディティ・マーケット株式会社
金融市場調査部長
上田眞理人