豪ドル 特別レポート

2018/03/05

特別レポート

豪ドルは昨年末以来の安値圏も、軟調継続か

 豪ドル相場が1月27日に付けた0.8136ドルの今年の高値から下落が続いている。2月2日の米国雇用統計を受けて米国10年債利回りが約4年ぶりの高水準まで上昇、米利上げがさらに続くとの懸念から世界的な株安の流れが進み、リスク回避の動きが急速に強まったことが豪ドル相場を押し下げている。対ドル相場では2月9日0.7750ドル台まで下落した後、世界同時株安が一旦落ち着いたことから2月16日に0.79ドル台後半まで戻したものの、米FRBが2月22日に公表したFOMC議事要旨で金融引き締めに積極的な姿勢が示されたことで、再びリスク回避が強まり、豪ドル売りが優勢となって0.77ドル台前半に反落、1月の高値から5%超の下落となっている。

AUDJPY・AUDUSD 日足チャート

AUD_chart_20180305.png  一方で豪州の経済については緩やかな回復が続いている。1月の雇用統計で就業者数が16ヶ月連続増加して、1978年の統計開始以降で過去最長を記録、堅調な雇用情勢が確認されている。雇用・所得環境の改善や低金利の継続などを支えに個人消費も底堅く推移しており、豪州経済の回復を強く後押ししている。その中で、世界経済の拡大が輸出の増加、国際商品市況や企業収益の改善による設備投資の拡大から、景気の回復基調は維持されていることも、豪ドルの下支え要因となっている。

 今週は6日に豪州中銀(RBA)理事会が開催される。2月9日に公表されたRBA四半期金融政策報告によると、基調的インフレ率は2019年半ばまでにRBAがインフレ目標に定める2~3%の下限に達するとは見込めず、利上げは当分実施しないことを強く示唆したこともあり、今回の理事会では政策金利の据え置きが見込まれている。ただ米FRBが今月のFOMCで追加利上げすることが見込まれており、実施されれば豪州と米国との金利水準が逆転する。すでに市場では米国の利上げは織り込まれていると思われるが、豪ドルにとっては上値を抑える要因となるだけに注意したい。また、米国ではトランプ大統領が鉄鋼やアルミに関税を賦課することを表明、保護主義に軸足を置いた通商政策に傾向してきたことも資源国通貨にはマイナスに働くことも、豪ドルにとっては上値が重くなり易くなっている。

豪州・米国政策金利推移

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