トルコリラ特別レポート | SBI FXトレード 

トルコリラ/円(TRY/JPY)

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トルコ 基本情報

更新日:2024年10月29日

首都 アンカラ
面積 78.43万㎢ (日本の約2倍)
人口 8,537万人 (2023年)
大統領 レジェップ・タイイップ・エルドアン
財務相 メフメト・シムシェキ
トルコ中銀総裁 ファティヒ・カラハン
通貨 トルコリラ
経済規模 【名目GDP】9,202億ドル (2023年) 2023年の成長率 +4.5%
【インフレ率】49.38% (2024年9月)
【失業率】8.5% (2024年8月)

トルコ レポート

更新日:2024年10月29日

高インフレ/リラ安からの脱却に向けて

 トルコは、2021年9月以降、景気拡大局面においても利下げを続ける独自の金融政策を展開してきましたが、エルドアン大統領が3選を果たした昨年6月以降、トルコ中銀は利上げに転じ、昨年9月に公表した2024年~2026年の中長期経済プログラム (MTP) では、物価の安定、財政規律の強化、構造改革を優先事項として挙げ、金融・財政両面から高インフレに対処する政策方針を示しました。 また、今年5月、シムシェキ財務相が、インフレを抑制するため公共投資の 15%削減、さらに物品・サービスの購入予算の10%削減等の歳出削減策を行うと表明しました。 予算削減規模は、1,000億リラと2024年予算 (約11兆リラ) の1%相当が見込まれましたが、震災からの復興に係る費用は削減対象としていないことから、5%程度の財政赤字が見込まれています。

 また、政策金利の大幅な引き上げのほか、リラ安阻止を目的とした為替保護預金制度 (リラ建定期預金がリラ安により減価した場合の損失分を政府が補填) の解除を決めたことも信用回復に寄与し、今年3月に格付け会社フィッチ、5月にはS&Pがともにトルコの格付けを従来のBからBプラスに格上げしました。 こうした中、震災による復興費用は徐々に縮小しつつあり、また、高インフレに対応するため緊縮財政を進めていることから、来年以降、財政赤字も縮小すると見込まれ、MTPでは、2025年にプライマリーバランスを黒字化するとともに財政赤字を対GDP比3%に、さらに2026年に2.6%まで縮小する計画を掲げました。 これを受けて世界銀行は、トルコが金融政策の正常化により、慎重な財政スタンスを保持しつつ、震災復興や高インフレに苦しむ社会的弱者への支援に集中できると指摘し、 公的債務のレベルについても、その6割が外貨建てでありリラ安進行による上振れリスクはあるものの、債務比率は他の新興国・途上国と比較しても高くなく、短期的には問題ない水準を維持できるとの考えを示しました。

 さらに、インフレ率は今年5月の75.5%をピークに9月には49.4%へと鈍化する中、緩やかな経済成長が見込まれます。 IMFの見通しでは、2024年から3年間は3%成長するとされており、歳入拡大も見込めるかもしれません。 ただ、安定的な財政運営のためには、市場の信用回復を得るべく、引き続き金融政策と財政政策両面から課税ベース拡大など構造的な課題にも取り組んでいくことが必要不可欠となります。

政府の中期経済計画

 トルコ政府は、9月に2025年~2027年の中期経済計画を発表し、インフレとの闘いに断固とした姿勢で臨み、投資、生産、雇用、輸出および成長を優先するとしました。 また、今年の成長率見通しについて、地政学リスクの高まりを背景に+3.5%と昨年9月時点の目標 (+4.0%) から下方修正した一方、来年の成長率目標を+4.0%としました。 また、今年末時点のインフレ率を41.5%(9月:49.4%)とし、2026年に9.7%、2027年に7.0%へ収束させるとの目標を示しました。 トルコは原油を輸入に依存していますが、今後、鉱物やクリーンエネルギー資源の国内生産を促すとともに輸出産業の育成にむけた研究開発、DX (デジタルトランスフォーメーション) 投資拡大や技術革新、さらには労働市場の活性化などを進めることを掲げました。 こうした方向性の下、トルコ中銀の金融引き締め継続により対ドルでのリラ安が底入れし輸入インフレ圧力が緩和すれば、インフレはさらに鈍化する可能性が高まると思われます。

トルコ中銀政策委員会

 10月17日の中銀政策委員会では、9月に続き7会合連続で政策金利を50%に据え置いたうえで基調的インフレ率がやや加速しているとし、慎重な姿勢を示しました。 ただ、インフレ率は5月の75.5%をピークに9月の49.4%まで4ヵ月連続で鈍化しており、11月4日に発表の10月のインフレ率が一段と鈍化し、その後も鈍化傾向を強まることが確認できるか注目されます。 こうした中、22日に政府が2035年までに風力発電と太陽光発電の設備容量を現在の4倍となる120ギガワットに引き上げる計画を明らかにしましたが、計画が順調に進めば輸入インフレの抑止力となると思われ、今後のインフレ動向が注目されます。

リラ安からの脱却に向けて潮目が変わるか?

 政府の債務残高が大きく膨れ上がる状況の下、5月にユルマズ副大統領とシムシェキ財務相が率いる経済チームは包括的な財政緊縮策を公表、歳出削減を進め、予算配分の効率化を図ることでインフレ抑制につなげる意向を明らかにし、以下の具体策を示しました。

① 政府機関による財およびサービスの購入予算を1割削減

② インフラをはじめとする公共投資の投資規模を15%削減

③ 公共投資対象を進捗率が75%以上と完工間近なものおよび地震対応案件などに限定

④ 政府部門による新車購入や土地の購入などを向こう3年間停止

⑤ 公務員の新規採用は退職者数と同数とし総数増加を抑制

 トルコリラは、対ドルでは4月12日に33.02でリラ安が一服、さらにドル円の円安進行とともに対円でも3月11日の4円52銭から7月3日には年初来高値となる4円98銭まで上昇しました。 しかし、その後、円キャリートレードの巻き戻しにドル円が7月3日の161円95銭を高値に急落すると、再びリラ安トレンドを辿り、8月28日には4円割れと史上最安値を更新しました。 しかし、政府の緊縮財政策や正常な金融政策への転換、さらには、高インフレの緩和や財政規律など経済ファンダメンタルズの土台を強化するなどエルドアン政権が様々な構造改革を進める中、9月に0.50%の利下げを決めたFRBをはじめ日本を除く先進各国で金融緩和に転換したことによる対主要通貨での上昇にサポートされたほか、日本での衆議院選を経て円安が進んだことから、10月28日には4円48銭まで持ち直しています。 今後経済改革を進める中、インフレの鈍化を通じてリラ安からの本格的な脱却を図れるか注目されます。

提供:SBIリクイディティ・マーケット株式会社

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