暗号資産市場レポート

未解決課題を残した歴史的な週

2022年05月17日 更新

先週のハイライト

  • ●LUNA(ルナ/テラ)とTerraUSD(UST、テラドル)の時価総額はわずか数日で約5兆円が消失
  • ●Tether(USDT、テザー)も一時的0.95ドルまで下落
  • ●ビットコインは12%、イーサリアムは17%下落
  • ●他の主要アルトコインは20-30%下落
  • ●市場はシステミックリスクと信用リスクを懸念
  • ●ボラティリティは急騰。オプション市場はスポットの急落リスクを懸念。

先週の動き

Terra(テラ)のエコシステムは、週半ばに完全に崩壊、TerraUSD(UST、テラドル)の暴落は、LUNA(ルナ/テラ)のハイパーインフレ化を引き起こした。5/9(月)には60ドルあったLUNAの価値は、5/11(水)には2ドル、5/12(木)にはほぼゼロにまで下落した。これは、LUNA、TerraUSD(UST)を取り巻くエコシステム内において、わずか数日間で5兆円相当の時価総額が消失したことを意味しており、多くの市場参加者はこの影響がヘッジファンドの破綻など、どのような形で現れるのかという疑念を抱いたままである。

5/12(木)には、世界最大のステーブルコインであるTether(USDT、テザー)にも深刻な動揺が見られた。一時的にペッグされている1ドルから乖離し95セントまで下落したが、テザー発行体のパオロ・アルドイノ最高技術責任者(CTO)が投資家の懸念解消に動き、過去24時間の6億ドル(約770億円)を含め、償還に問題はなかったと強調したことを受けて1ドルの水準を回復した。ただ、市場は依然としてテラの崩壊により、どの企業がどれくらいの損失を被ったかとかなり神経質になっており、先週一週間で、ビットコインは12%、イーサリアムは17%の下落、また他の主要アルトコインも20~30%下落し、AVAX(アバランチ)に至っては、35%の下落を記録した。

売買動向を見ると、再びイーサリアムよりビットコインに買いが集まる傾向が見られた。また、DOG(ドージコイン)、XRP(エックスアールピー)、ADA(カルダノ)に強い買いが見られた一方、SOL(ソラナ)、 DOT(ポルカドット)、EOS(イオス)は売りが優勢であった。 地域別に見ると、アジア圏と欧州・中東圏は買い越しだったが、米国圏においては売り優勢。 顧客カテゴリー別では、銀行に強い買いが見られた一方、海外取引所は売り越しとなった。

OTCレンディング市場は、市場参加者が信用リスクと期間リスクの低減を図るなか低調に推移。先週はほとんどのアルトコインのパーペチュアル取引(先物取引の一種で期限がない)において、ベーシスがネガティブ(売りポジションを持つとコストを払わなければならない)に動いた。しかしこれは、同時に相対的に信用力の高いビットコインなどの暗号資産に対して、ショートポジションを取る事が容易となることを意味しており注目に値する。暗号資産市場を取り巻く環境が悲観論に満ちている中、先物市場がますます成熟し、ベーシスのボラティリティが大幅に低下したことで、暗号資産対暗号資産のクロス取引によるファンディング裁定が、以前の市場ボラティリティが高まった時期よりはるかにタイトになったことは、刮目すべき点である。

オプション市場では、5/12(木)にボラティリティが急騰した場面において、61~64%のレンジ取引されていた9月物ATM(アット・ザ・マネー)が90%まで跳ね上がった。リスクリバーサル(上サイドのオプションと下サイドのオプションのボラティリティの差)も激しく動き、9月物のリスクリバーサルは12%の下高に、期間の短い1ヶ月物では25%の下高となった。その後は落ち着きを見せ、ビットコインのカーブは、期近物の80%台前半台から期先物の70%台前半で、イーサリアムも90%台前半から70%台後半で推移している。ATMのボラティリティとは異なり、引き続きリスクリバーサルは極めて高い水準で取引されていることから、市場は引き続きスポットの急落リスクを警戒していることが伺える。

今後の展望

今週は、5月17日(火)のパウエル米FRB議長を筆頭に、ブラード、ハーカー、メスターと投票権のある連銀総裁の発言に注目が集まる。また、米4月小売売上高も同日に発表される。
暗号資産市場にとっての焦点は、「守り」だろう。つまり、先週テラに起こった出来事に続くかもしれない暗号資産市場の潜在的なシステミックリスクに対するヘッジ動向に注目が集まっている。リスクオフマーケットの流動性低下、スプレッドの拡大、ボラティリティの上昇、プライスの不安定さはしばらく続くだろう。

提供:SBIリクイディティ・マーケット。本レポートはグローバルで大きな取引シェアを持つ暗号資産マーケットメイカーのB2C2社のデータを元に、SBIリクイディティ・マーケットが作成しています。

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