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ニュージーランドドル特別レポート
【2024年8月22日時点】

ニュージーランド

【基本情報】

【首都】 ウェリントン

【面積】 270,534㎢ (日本の約4分の3)

【人口】 534万人 (2024年6月 NZ統計局推計)

【元首】 チャールズ三世国王陛下 (英国国王)

【首相】 クリストファー・ラクソン (国民党)

【通貨】 NZドル

【経済規模】 名目GDP 2,535億米ドル (2023年) (世界銀行推計)

       インフレ率 3.3% (2024年4-6月期) 失業率 4.6% (2024年4‐6月期)

NZ経済を取り巻く状況

 ニュージーランドの人口は534万人と兵庫県の人口とほぼ同規模であり、経済規模も限られていることから豪経済および世界経済の好不況の影響を受け易いとされています。
 また、豪同様に最大の貿易相手国は中国ですが、豪が鉄鉱石や石炭を主な輸出産品としているのに対し、約30%近くを占める乳製品をはじめ食肉、木材など第1次産品の輸出額が輸出全体の60%以上となっています。もっとも、第一次産業がGDPに占める割合は約6%に過ぎず、第二次産業が約19%、そして第三次産業が約67%となっており、第一次産品の輸出とともに観光や留学受け入れなどサービス業が経済成長に貢献しています。

 足下のニュージーランド経済を見ると、長きにわたる高インフレに苦しみ、労働市場では失業率の悪化が進み、4-6月期は4.6%とコロナ禍にあった2021年3月以来の水準となり直近1年間で1.0%上昇しました。また、失業者数も前期比5.9%増の14.3万人となり、その半数以上を若年層が占めています。さらに、1-3月期GDPこそ前期比+0.2%と昨年7-9月期から2四半期続いたマイナス成長から脱却したものの、9月18日に発表される4-6月期も高失業率を反映して再びマイナス成長に転じる可能性があります。

 ニュージーランド中銀は、5月22日の政策委員会では政策金利を据え置いた上で利上げを議論したことを明らかにしていましたが、同じく据え置きを決めた7月10日の委員会の声明はインフレ率の物価目標上限に到達する時期を前倒すなどハト派的となりました。そして、8月14日の委員会では、経済活動が弱まっていること、インフレが鈍化したことを反映し、政策金利を0.25%引き下げ、コロナ禍後初となる利下げに踏み切りました。先行きの利下げも示唆しており、市場では、ニュージーランド経済の回復が期待できるとの声もあります。

利下げサイクルへ転換が既定路線か?

 8月14日の政策委員会ではおよそ4年5ヵ月ぶりに政策金利を0.25%引き下げ5.25%とし、21年10月から開始された金融引き締めサイクルを終えました。中銀は、利下げ決定の根拠として以下の二つを挙げています。
    ・ここ数ヵ月の国内経済活動が大幅に弱回ったこと
    ・消費者物価が中銀のインフレ目標である1~3%の範囲に戻りつつあること


 経済活動の弱含みはクレジットカード支出額や住宅販売件数の減少から窺えるとし、また、需給ギャップ推計値の先行きはマイナス幅が拡大するとの見通しを示しました。これは、移民の伸びの鈍化により人口が減少し、生産性が低下したことによる潜在成長率の推計値が引き下げられたことが影響したと指摘しています。中銀は、今後経済活動の見通しを「想定以上に減速する」と5月時点から下方修正したことが金融引き締めから緩和へ舵を切った論拠としています。

 インフレについては下振れより上振れリスクについてより議論され、インフレ上昇に伴う企業の価格転嫁が進み易い環境にあること、世界的な製造業の国内回帰の中で輸入物価が押し上げられる可能性があることなどを挙げています。一方、下振れについては、中国経済の減速による国内景況の悪化への警戒感があること、さらに賃金及び価格改定が急速に進む可能性があることなどを指摘しています。

 また、7月から低中所得者層や子育て世帯を中心に所得減税が開始された影響により、インフレ鈍化ペースが緩慢になる可能性を指摘、インフレ圧力が確実に緩和されるためには金融引き締めを当面続ける必要性に言及しました。また、「追加の緩和ペースは、価格動向が低インフレ環境と引き続き整合的であり、『インフレ期待がターゲットである2%付近で固定されている』という確信を政策委員会が持てるかどうかに左右される」として、今後の追加緩和のペースはデータ次第との考えを明らかにしました。ただ、4-6月期GDP発表が9月15日、7-9月期消費者物価指数の発表は10月15日、さらに7-9月期失業率は11月15日発表とかなり先となります。とは言え、米FRBによる9月の利下げ開始が確実視されるなど、日本を除く主要国は既に緩和政策に転換していることから、NZ中銀にとって利下げし易い環境が整いつつあると言えます。加えて、経済規模が限られるだけに失業率の悪化や低成長、もしくはマイナス成長となれば、今後の政策委員会でも利下げが既定路線になると思われます。

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