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メキシコペソ特別レポート
【2024年5月16日時点】

メキシコ

【基本情報】

【首都】 メキシコシティ

【面積】 1,964,375㎢(日本の約5倍)

【人口】 約1億3,123万人(世界10位/2023年)

【大統領】 アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール

【通貨】 メキシコペソ

【経済規模】 GDP 1兆4,658億ドル 成長率 +3.2%(2023年)

       インフレ率:4.65%(2024年4月) 失業率:2.3% (2024年3月)

【メキシコ経済と中銀の金融政策】

 コロナ禍から回復した米経済に連動し、メキシコ経済も、個人消費の伸びに牽引され2021年に+5.7%、2022年に+3.9%、そして2023年も+3.2%と3年連続で高い成長率となりました。
 また、2023年には、2020年7月に発効した米国・カナダ・メキシコ間のUSMCA(北米3国協定)がコロナ禍による遅れを取り戻す中、米国を中心に中国依存の強かったサプライチェーンの見直しを追い風に対内投資もメキシコ経済を支える要因となり、設備投資/公共投資/住宅投資などの固定資本形成が前年比で20%近く上昇したことも大きく寄与したと考えられます。
 米経済への依存度が高いメキシコ経済は、FRBの政策金利が高止まりする中においても堅調に推移する米経済に支えられ、失業率も昨年7月の3.1%を直近のピークに3月には2.3%まで改善が進むなど好調を維持しています。
 また、メキシコも米国同様インフレが高進したことから、中銀は2021年6月から昨年3月まで15回連続で利上げを実施しました。その後、2022年後半以降インフレが頭打ちとなる中、昨年5月の政策委員会で政策金利を11.25%で据え置き、金融引き締めサイクルの停止を発表しました。その後、11月の委員会では利下げについての議論を開始し、今年3月の政策委員会では、以下のインフレ見通しを公表した上で11.00%への利下げを決定しました。

 しかし、5月9日の政策委員会では、物価上昇率が依然目標を上回って推移していることから「政策運営に慎重を期することが求められている」と説明し、物価目標到達見通しを従来の25年第2四半期を同第4四半期に先送りした上で、政策金利を11.00%に据え置きました。
 実際インフレ率は昨年10月に前年比+4.26%へ鈍化したものの、今年1月には+4.88%へ上昇し、2月も4.40%への鈍化に留まり、4月には4.65%まで上昇しています。ただ、メキシコ中銀のロドリゲス総裁は、その後一部メディアに対して物価上昇率見通しを引き上げたことについて、「ディスインフレ過程が止まったわけではなく、想定よりもペースが緩くなるという意味に過ぎない」、「次回6月27日の会合で利下げ再開が議題になるだろう」と述べ、追加利下げに柔軟な姿勢を見せています。

 メキシコ経済は財輸出の8割が米国向けであり、米経済への依存度が高いことから、FRBの利下げを待って追随すると見られていました。しかし、昨年末時点では5月もしくは6月までに利下げに踏み切ると思われていたFRBの行動が読めなくなったことから、先んじて利下げを決めた可能性があります。米経済が想定以上の強さを示し、インフレ率も予想外の上振れが続いたことから、5月のFOMCでも、「インフレ目標2%に向けた進展は過去数ヵ月見られなかった」として「インフレ率が持続的に2%に向かっていると確信するまでは政策金利を引き下げることは適切でなく、そしてその確信を得るには想定以上の時間がかかる」との見解が示されました。
 ただ、パウエルFRB議長は会見で「次の行動が利上げになる可能性は低い」と述べており、5月14日、15日に発表された米4月卸売物価指数、同消費者物価指数でもインフレ再鈍化が確認され、9月の利下げ期待が高まるとともに再利上げへの警戒感は払拭されたように思われます。こうした中、メキシコ中銀も、「インフレの終息には時間がかかる」と慎重姿勢を見せつつも6月の再利下げも視野に入れており、今後の政策運営が注目されます。

【メキシコ経済の先行きと注目点】

 4月30日に発表された2024年1‐3月期GDPは前期比+0.2%と市場予想(±0.0)を上回った一方、前年比では1.6%と昨年10‐12月期(+2.5%)から大幅に鈍化し、市場予想(+2.1%)も下回りました。この結果からはメキシコ経済の成長率の鈍化傾向が見て取れ、3月の利下げが適切な判断だったと言えます。

 一方で、3月の失業率は2.3%と完全雇用の状態にあり、インフレ鈍化が進展しない要因の一つと考えられます。現実に目を向ければ、機械化により生産性の向上が進んだ大企業と機械化が遅れている中小のサービス業との間に生産性格差が生じています。
 このような状況下で、大企業が賃上げによる人材確保に走る中、生産性の低い中小サービス業も賃上げしなければ人材確保は難しく、価格転嫁によって従業員の賃上げに応じざるを得ないため、サービス価格の上昇を通じインフレの高止まりを招いていると考えられます。
 今後、中小のサービス業にも設備投資の裾野が広がることになれば、メキシコ経済の成長率が徐々に回復するととともにインフレも鎮静化に向かうと思われ、今後の動向が注目されます。

 そして、6月2日に注目の総選挙が行われます。現時点では、与党Morena(国民再生運動)の大統領候補クラウディア・シェインバウム(オブラドール大統領の後継者)の優勢が伝えられており、政権運営は混乱なく継続されると見込まれ、為替相場の攪乱要因となる可能性は低いと思われます。
 しかし、今秋の米大統領選でトランプ前大統領が当選した場合、USMCA(北米3国協定)の修正など対外政策の不透明感が高まるリスクもある中、メキシコ中銀がどのように金融政策を運営するのか、その舵取りが注目されます。

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