オーストラリア特別レポート | SBI FXトレード 
  • ホーム
  • オーストラリア特別レポート

オーストラリアドル特別レポート
【2024年5月23日時点】

オーストラリア

【基本情報】

【首都】 キャンベラ

【面積】 約769万2,024㎢(日本の約20.3倍)

【人口】 約2,643.9万人 (2023年)

【首相】 アンソニー・アルバニージー(労働党党首)

【通貨】 オーストラリアドル

【経済規模】 GDP 2兆4,345億9,000万オーストラリアドル(2022年)

       インフレ率:3.6% (2024年1-3月期) 失業率:4.1% (2024年4月)

【政策金利】

 豪中銀は、2024年5月6-7日の中銀政策理事会で政策金利であるオフィシャル・キャッシュレートを2023年12月以降4会合連続で4.35%に据え置きました。声明では、インフレについて「鈍化を続けている」と3月理事会の表現を踏襲した一方、「鈍化ペースは想定より緩慢」として警戒感を滲ませました。また、フォワードガイダンスでは「如何なる判断も排除しないが、データとリスク次第である」と、想定内ながら、3月に比べややタカ派化しました。
 政策理事会前の4月24日に発表された2024年1‐3月期CPIは前年比+3.6%、変動の大きい一部品目を除いて算出するコアインフレ率として豪中銀が注目するトリム平均も前年比+4.0%と、いずれも市場予想(+3.5%/+3.8%)を上回りました。おそらく、賃金上昇を反映しやすいサービス価格が、前年比こそ+4.3%と前期(+4.6%)を下回ったものの、前期比で+1.4%と前期 (+1.0%)を上回ったことがインフレ鈍化の妨げになったと思われます。
 ただ、イランとイスラエルの直接交戦をきっかけに4月中旬にかけて高まった中東の緊張が和らいだことから、NY原油価格も4月5日の86.91㌦を高値に政策理事会が終了した5月7日には78.38㌦(終値)まで下落、その後も70㌦台後半で推移しています。

豪労働市場

 豪労働市場は、経済活動の正常化による雇用回復などを背景に堅調な状況を続けているものの、5月16日に発表された4月失業率は4.1%と2月(3.7%)から2ヵ月連続で悪化しています。とはいえ、コロナ禍前の水準(2019年12月:5.0%)を下回っており、まだかなり低い水準にあります。また、豪賃金物価指数は高止まりしていますが、コロナ禍後の急速な移民受け入れの見直しを進めた影響で労働需給が逼迫していることが原因と思われます。

豪経済/為替市場の注目

 3月6日に発表された昨年10‐12月期GDPは前年同期比+1.5%、前期比+0.2%と7‐9月期(+2.1%/+0.3%)からいずれも伸びが鈍化しました。内訳の個人消費が前期比+0.1%と低調なことから、インフレの高止まりが消費者心理を冷やしていることが原因と思われます。

 5月6-7日の政策理事会で明らかになったように、豪中銀はインフレ抑制を最優先課題としながらも、追加利上げによる景気減速は回避したいという難しい局面を迎えています。そのため、現状の政策金利を当面維持することでインフレ抑制に努め、インフレ目標(2.0-3.0%)の達成を目指しています。豪中銀が示したインフレ見通しでは目標の上限(3.0%)を下回るのは来年後半とされているものの、今後のデータでインフレが目標に達する可能性が高まったと確認できた時点で利下げ開始を決めると見られています。
 豪経済に目を移すと、中国経済の回復や豪中関係の改善が豪経済を下支えする可能性が考えられます。コロナ禍を経て、豪最大の輸出相手である中国との関係悪化の動きは中国経済の先行きを巡る不透明感の高まりと相俟って、外需の重石となっていました。しかし、5月17日に習近平国家主席が観光強国の建設を加速させるべきと指示したことや20日に不動産安定策を発表したことで、20日の上海株は昨年9月4日以来約8ヵ月半ぶりの高値で取引を終えました。今後の中国経済は、政府による追加政策がカギを握るものの底入れの兆候もみられ、足もとで豪中関係の改善がみられていることも勘案すると、今後の豪経済を支える可能性があります。
 こうした点を踏まえ、市場では、豪中銀の利下げ開始は今年10‐12月期が最も可能性が高いと見られています。ただ、今後のデータ次第では来年1‐3月期にずれ込む可能性もあり、今後発表される経済指標にはこれまで以上に注意が必要です。また、5月22日のNZ中銀政策委員会で年内の政策金利見通しを上方修正し利上げの可能性を示唆したほか、利下げ開始については2月時点の2025年9月から12月へと先送りしたことが、次回6月18日の豪中銀政策理事会の決定に影響を及ぼすかも注目されます。

まとめ

 欧米英各国中銀の利下げが視野に入る中、豪中銀の利下げ開始が10‐12月期もしくは来年1‐3月期となれば、対ドルのみならず対欧州通貨でも堅調な値動きが期待されます。対円では、日銀が追加利上げを行う環境が整うのか注目される中、今後発表される小売売上高、雇用統計、消費者物価指数など豪のデータの結果次第で日豪金利差の縮小が限定的となる可能性もあり、注目されます。
 また、これまで世界経済の足かせとなっていた中国経済にようやく底入れの動きみられることは、欧米経済のソフトランディングへの期待を抱かせるとともに豪経済に直接ポジティブインパクトを与えると考えられることから中国経済の先行きも注目されます。
 さらに、再び地政学リスクが高まり原油価格や金価格が大幅に上昇すれば、資源国通貨の一角である豪ドルの支援材料になると思われ、中東情勢からも目が離せません。
 豪ドル円がこのまま堅調地合いを保ち4月29日の高値(104円94銭)を突破した場合、2013年4月11日に付けた105円43銭が次の上値目標と見られます。

提供:SBIリクイディティ・マーケット株式会社
お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。 また、これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートに表示されている事項は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。