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オーストラリアドル特別レポート
【2024年8月19日時点】

オーストラリア

【基本情報】

【首都】 キャンベラ

【面積】 約769万2,024㎢ (日本の約20.3倍)

【人口】 約2,643.9万人 (2023年)

【首相】 アンソニー・アルバニージー (労働党党首)

【通貨】 オーストラリアドル

【経済規模】 GDP 1兆7,238億米ドル (2023年)

       インフレ率:3.8% (2024年4-6月期) 失業率:4.2% (2024年7月)

【政策金利】

 豪中銀は、8月6日の中銀政策理事会で政策金利であるオフィシャル・キャッシュレート (4.35%) を昨年12月から6会合連続で据え置くことを決定し、声明で以下の見解を示しました。

  ・金利上昇により需給が均衡に近付き、インフレ率は22年のピークから大幅に鈍化
  ・インフレ率は中銀目標 (2.0-3.0%) の中間値を11四半期連続で上回る水準で推移
  ・単位労働コストの高止まりやサービス価格を中心にインフレの上振れリスク
  ・GDPの伸びの鈍化などが示すように経済活動のモメンタムは弱い
  ・家計消費の回復が鈍く、生産高の伸び悩みが続き、労働市場が悪化するリスクがある
  ・企業の価格決定や賃金がどのようになるか不確実性が高い状況が続く
  ・最大の貿易相手国である中国経済の悪化による商品市況低下の影響を注視
  ・世界的な金融市場の不安定、地政学的不確実性が供給網に影響を及ぼす可能性

 経済活動の停滞を憂慮する一方でインフレの上振れリスクを警戒する必要性に言及し、インフレ率が持続的に目標範囲に向かうと確信するまで政策は十分に制限的である必要があるとの考えを明確に示しました。
 さらに、ブロック総裁は金利先物市場が織り込む「11月の利下げ観測」を牽制したほか、状況次第では利上げの可能性を示唆するなどタカ派姿勢を維持しました。

インフレは鈍化

 中銀政策理事会前の7月31日に発表された4-6月期インフレ率は前年比+3.8%と1-3月期の+3.6%から上昇した一方、コアインフレ率にあたるトリム平均は前年比+3.9%と前期の+4.0%から鈍化しました。

 しかし、昨年10-12月期賃金物価指数が前年同期比+4.2%と2009年1-3月期以来の高水準に達するとともに消費者物価指数を考慮した実質賃金は21年1-3月期以来となるプラスに転じました。
 また、13日発表の4-6月期賃金物価指数も前期と変わらずの+4.1%となったことから3四半期連続で実質賃金がプラスとなっており、8月6日の中銀政策理事会のタカ派的見解を裏付ける根拠の一つとなりました。

豪労働市場と豪経済

 豪労働市場は、経済活動の正常化による雇用回復などを背景に堅調な状況を続けているものの、8月15日に発表された7月失業率は4.2%と6月 (4.1%) から悪化し2022年1月以来の水準へ上昇しました。
 ただ、労働参加率が昨年11月以来の67.1%と労働意欲の強さが示された中での上昇であり、引き続きコロナ禍前の水準 (19年12月:5.0%) を下回っていることを考慮すれば、今もなお低い水準にあるといえます。
 さらに、就業者数は前月比5.82万人増と市場予想 (2.0万人増) を大幅に上回ったほか、パートタイム雇用者が0.23万人減少する一方で、フルタイム雇用者数が6.05万人と6月 (4.52万人増) から増加し雇用の「質」が改善していることを示しており、労働市場の強さを確認する内容となりました。

 しかし、豪1-3月期GDPは前期比+0.1%と2022年7-9月期以来の低い伸びに留まり、前年同期比でも+1.1%と2021年1‐3月期以来最も低い成長率となりました。
 例年以上に夏が高温だったため電気・ガス料金の支出が増加したことに加え、建設許可件数が減少するなど不動産市況が悪化しました。
 また、天候不良のため石炭、鉄鉱石の生産が低迷し、加えて中国経済に回復の兆しが見えず石炭などの中国向け輸出が減少したことも影響しました。

 中国経済が減速する中、対中輸出が減少していることに加え、今秋の米大統領選でトランプ候補、ハリス候補のいずれが勝利しても米中関係の改善は見込めず、むしろ悪化する可能性もあり、豪経済の下押し圧力につながる懸念があります。
 また、NZ中銀が8月14日の政策委員会で0.25%の利下げを決めた上で追加利下げを示唆しました。さらに、インフレ鈍化を確認したFRBも9月に利下げを開始することが確実視されており、豪中銀も今後利下げに動き易い環境が整いつつあると思われます。
 GDP成長率の鈍化など景気減速の兆候に対し、豪中銀が今後利下げに動くことで個人消費が刺激される可能性もあること、さらに、中国経済の減速懸念は残るものの、米大統領選でいずれが勝利しても、新政権では財政支出は拡大すると思われ、短期的には米経済が下支えされることになり、豪経済も持ち直していくと考えられます。

まとめ

 ECBや英中銀、NZ中銀に続き、FRBも利下げが視野に入る中、豪中銀の利下げ開始が10‐12月期もしくは来年1‐3月期となれば、対ドルのみならず対欧州通貨でも堅調な値動きが期待されます。
 対円では、日銀の更なる追加利上げを行う環境が整うか注目される中、今後発表される小売売上高、雇用統計、消費者物価指数など豪のデータの結果で左右される日豪金利差の行方が豪ドル円の方向性も決める大きな要因となると思われます。

提供:SBIリクイディティ・マーケット株式会社
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