• ホーム
  • マーケット情報
  • ジョセフ・クラフト特別レポート
  • 人気投資アプリ「ロビンフッド」に金融当局が捜査 ~ NASDAQの下落促進に繋がるか?

ジョセフ・クラフト 特別レポート

人気投資アプリ「ロビンフッド」に金融当局が捜査 ~ NASDAQの下落促進に繋がるか?

掲載日:2020年09月24日

ロビンフッドとは? ~ コロナ禍の中、NASDAQ株価は3月23日の安値($6,861)から9月2日の高値($12,056)まで実に75%上昇を遂げた(下記チャート①参照)。米株高のけん引役として、大人気の投資アプリ「ロビンフッド」が指摘されている。ロビンフッド・マーケッツ社は2013年に設立、手数料ゼロを掲げ、ミレニアム世代を中心に急速に業績を伸ばしているリテール(個人向け)証券会社。取り分けコロナ禍での取引高が大幅に増加している。日本でも似た現象が見られるが、自宅で過ごす時間が増え、失業保険や給付金などの余剰資金を金融投資に回す若者が急増した。下記チャート②はロビンフッドなど個人投資家注文を請け負う金融機関の取引高を示すものだが、2020年に入って高騰していることが伺える。

ロビンフッドの顧客口座数は2015年の75万から2020年上半期(6月時点)で1,300万と17倍に膨れ上がっている。注文量・取引高に比例するオーダー収益に至っては、2019年の1年間で挙げた収益が1億1,800万ドルに対して今年半年間だけで2憶7,100憶ドルと大幅増、後半もこのペースが続けば前年比ベースで4.6倍増となる(下記チャート③参照)。オーダー収益とは顧客から受けた注文・情報を外部の取引業者に発注して対価として受け取る手数料のこと。他社対比で見てもロビンフッドはリテール証券大手のCharles SchwabやE-Tradeのオーダー収益を上回っており、第2四半期(4~6月)においては最大大手のTD Ameritrade社をも上回ってしまったのである(下記チャート④参照)。ロビンフッドの顧客の大半はミレニアム世代(20代~30代後半)で、手数料ゼロという好条件に引かれ口座を開設。ミレニアム世代は取り分けハイテク企業に引かれ、NASDAQ市場やオプションなどのデリバティブ取引を好んで取引する。例えばロビンフッド社の2020年6月のオーダー収益を商品別で分けるとオプションが60%、S&P以外の株(NASDAQ)が36%そしてS&P株は僅か4%に満たない。9月6日に英ファイナンシャルタイムズがソフトバンクによる多額のNASDAQオプション取引が株価急騰に寄与したと報じた。一定の影響は否定しないが、実はロビンフッドなどリテール業者を仲介した個人によるオプション取引は、同時期のソフトバンク取引額の10倍以上もあり、むしろ市場の影響はソフトバンクよりも大きいと推測される。

SECによる捜査 ~ 9月2日に米証券取引委員会(SEC)が高速取引会社に顧客の注文を売っていたことを適切に開示しなかったとして、詐欺の疑いでロビンフッドの調査に入った。この日を機にNASDAQが10%以上も下落調整に入ったのは偶然と思えない。ロビンフッドの手数料ゼロの仕組みは顧客注文(オーダー)を第3の取引機関(ヘッジファンド、証券会社など)に委託し、手数料(オーダー収益)を受け取るが売り上げの柱となっている(詳しくはチャート⑤下参照)。この仕組みは違法で無いが、第3者取引機関が注文の先乗り(フロントランニング)あるいは逆張りに使ったりと、ロビンフッドの顧客に最良の取引執行(Best Execution)に至らない可能性があることから問題視されて来た。2019年12月にロビンフッドは、FINRA(金融取引業規制機構)からBest Executionを害したとして125万ドルの罰金を罰金を課せられた経緯がある。

ロビンフッドに限らず、注文を受けて対価を払う第三者金融機関にも問題がある。個人投資家の注文引く家先として取り分けCitadel社とVirtu社の存在が目立つ(下記チャート②)。Citadelは顧客注文の先乗り・フロントランニング(注文情報を得て顧客の前に自社が購入し設けること)を指摘され、7月にFINRAから70万ドルの罰金が課せられたばかりである。同社は2017年にも個人投資家取引をめぐり様々な不正行為が発覚、SECに2,200万ドルの和解金を払っている。重要ポイントはSECがロビンフッドを含め、顧客注文や情報の売却をより制限すれば、これまでとは逆に株式相場の足枷要因になり得るかもしれない。例えば、注文売却の規制によって収益減が減少、逆に手数料を徴収することになれば、若年投資家の投資離れあるいは保有ポジション売却に繋がり、NASDAQを筆頭に株価下落の引き金になる可能性が考えられる。

ロビンフッドの収益構図 ~ ロビンフッドの最大の収益源は、上記で紹介したように顧客の注文を第三者金融機関に委託して手数料を受ける、リベート的なオーダー収益である(仕組みは下記チャート⑤参照)。オーダー収益は、全体の4割~6割を占めるとのこと。その他に: ①顧客が収める現金・マージンの運用、②ゴールド・メンバー(優良会員)から月間5ドルの手数料、③保管株式のレンディング(貸借)からの収益そして④銀行など外部の金融機関と業務連携(例えばクレジットカード紹介あるいは融資など)。顧客注文の受注・販売が規制されるようなことになれば、ロビンフッドにとっては死活問題である。SECとしては禁止まではしないものの、ロビンフッド及びシタデルなどの下請け業者への監視を強化すれば、これまでのようなマーケットへの影響が抑制されるか注目される。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

トランプがTikTok排除判断で二転三転 ~ 背景に環球時報のツイッター投稿の可能性

トランプ大統領は、18日にTikTok(及びWeChat)の新期提供の禁止を発表したと思ったら翌日にはオラクルとウォールマートによる20%出資の技術パートナーシップ提携案を基本的に承認すると態度を軟化させた。ところが21日になって、「米企業に経営権が無ければ提携案を承認しない」と改めて強硬姿勢に反転した。そもそもパートナーシップ案を受け入れること自体不思議だったが、案件の内容を説明され、十分に把握していたはずなのに何が気を変えさせたのか?そこでワシントン情勢に詳しい米国の知人に尋ねたところ、彼が入手した情報によるとホワイトハウスは中国政府がパートナーシップ案を却下するとの判断を受けてトランプが態度を変えたとのこと。
トランプは19日に、「ディールが成り立っても良いし、成り立たなくとも構わない」とコメントしており、中国政府が却下しても問題は無いのではと説いたところ、トランプとしては中国に断られるがイヤだったと言うのである。理由は自分が弱く見え、大統領選に影響を来す懸念を持ったようだとのこと。小生としては、まだ納得できない・・・。要するに、振られるのはカッコ悪いから、自ら振れということ。実にバカバカしいが、トランプらしい。

ところで中国が却下する情報は何処から?それは、中国の新華社通信通信傘下の環球時報のツイッターである可能性が高いと個人的に推測する。以前にも紹介したが、環球時報の胡錫進編集長は中国国内でツイッター口座を持つことが許されている数少ない人物であり、彼を通して中国政府が本音や批判を海外に配信していることはアメリカの金融及び政界では認識されている。そこで同編集長のツイッターを見ると、9月21日の午後(米同日午前)に「中国政府は同案件を許可しない」との投稿がある(下記参照)。そして半日ほど経ってトランプは承認に否定的な会見を行っており、つじつまが合う。そしてトランプの否定発言を受けた直後、胡錫進編集長は反論の投稿を出している。大事なポイントは、このツイッターが中国政府の意向を反映しているとしたら、TikTokの案件は破談になる可能性が高い。そして今後はアメリカで事業を行う他の中国企業へも退去・売却の圧力・要請が掛かることが想定される。

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

【ご注意事項】

お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。 また、これらの情報によって生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートに表示されている事項は、投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっての最終判断はお客様ご自身でお願いします。

【バックナンバー】