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ジョセフ・クラフト 特別レポート

1.2022年米中間選挙検証① ~ 下院議席再配分は共和党に追い風

掲載日:2021年05月18日

下院の総議席数は435で州ごとの人口によって議席が配分される。議席数の配分は、国勢調査局の人口統計に基づき10年ごとに見直される。今年がその見直し期日で、最終決定は年後半に確定するが、大方の配分調整が公表された(基本的に事前予想から変わることはない)。今回の議席配分は2022年の中間選挙から2030年まで適用される。結論から言うと、2022年の中間選挙において今回の議席再配分は共和党に有利に働く。

▶ 議席数が増える州 ~ 人口増加によって議席が増える州は6つ: テキサス、ノース・カロライナ、フロリダ、モンタナ、コロラドそしてオレゴン(下記左表参照)。テキサスにおいては2議席増える。そこで2020年の大統領選でトランプ(共和党)に投票した州が4つでバイデン(民主党)に投票した州は2つ。テキサスの2議席を含めて合計7議席のうち5議席分の州がトランプに投票。つまり、2022年中間選挙の投票が2020年と同じであれば、共和党に5議席が傾くことになる

▶ 議席数が減る州 ~ 人口減によって議席が減る州は7つ: ニューヨーク、ペンシルバニア、ミシガン、オハイオ、イリノイ、ウェストバージニアそしてカリフォルニア(下記右表参照)。このうち、ニューヨーク、ペンシルバニアやミシガンなど5つの州がバイデン(民主党)に投票した。共和党に投票したのがオハイオとウェストバージニアの2つ。従って民主党は計3つの議席を失う可能性が想定される

結論 ~ 2022年の世論が2020年と変わっていなければ、8つの議席(議席5と議席減3)が共和党に傾くことが予想される。そして現在の下院議席格差は6議席(民主219対共和212)と、共和党が下院の過半数を奪回するのに十分な調整幅であるということ。バイデン率いる民主党はあと1年の間でこの8つの議席ハンディキャップを補うほど世論を味方に付ける必要がある。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

2.2022年米中間選挙検証② ~ 共和党上院現職議員の引退ラッシュは民主党に追い風

任期が大統領よりも長い6年ある上院では、現職議員が選挙戦で圧倒的に強い。50対50と議席が真二つに分かれる上院の現状では、両党は1議席も落とせない。ところが、共和党の重鎮上院議員5名が2022年の選挙に出馬しないことを表明している(下記参照)。更にもう2名が引退を検討している(下記参照)。これに対して引退する民主党上院議員はゼロ。共和党執行部にとって今回の引退ラッシュは取り分け2つの悩みがあると思われる: ①委員会のパワー・バランスと②接戦州。

▶ 委員会のパワー・バランス ~ 今回引退する議員は委員会の副議長を務めている。議長職は過半数を持つ民主党に宛がわれている。つまり5人の上院議員は委員会での共和党トップの地位にある。委員会での交渉を有利に進めるのに経験豊富そして相手に威圧されない重鎮議員の存在は大きい。長期的に若返りは良いことだが、短期的に委員会での運営が不利となることがある。細かい勢力争いに打つかもしれないが、議会政局の優位性は委員会で決まることが多いと言っても過言でない。

▶ 接戦州 ~ 引退する5人のうち3名は大統領選で大接戦を繰り広げた州の出身。それは、オハイオ州のポートマン議員、ペンシルバニア州のトゥーミ―議員そしてノース・カロライナ州のバー議員。保守岩盤のアラバマ州とミズーリ州は新人議員でも勝利は見込めるが、接戦州は現職議員でさえ勝利する補償はない。万が一民主党がこの3州を奪回、その他の州を保持できれば議席構成は47対53となり、議会運営にかなり余裕が生まれる。共和党執行部は現在、引退を検討している最重鎮のグラスリー議員(87歳)とロン・ジョンソン議員(66歳)の引き止め交渉に躍起になっているのでは。あまり知られていないが、グラスリー議員は「上院仮議長」という役職。これは上院議員の中で最上位、上院で2位の位になる(1位はハリス副大統領)。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

3.2022年米中間選挙検証③ ~ 新政権就任最初の選挙は野党優勢

新政権発足後の最初の(中間)選挙は、野党優勢なトレンドが見られ、取り分け下院選においては野党が大勝、与党が過半数を失うケースが目立つ。そこで、1980年のレーガン政権まで遡って各政権の最初の中間選挙の結果を確認してみた(下記表参照)。結果は、2002年のブッシュ政権を除いて、やはり野党が議席を伸ばしている。2002年の例外要因は、前年のテロ事件(9・11)によって世論が現政権支持に回ったものと思われる(それでも与党の勝利は低調なものに止まった)。野党優勢のトレンドの背景には、有権者が権力のバランスを取ろうとする意識が働くと言われる。それは綺麗な説明で、実際はメディア批判の矛先・ターゲットに与党政権がなり易いことから有権者の反発が強まるものと分析する。下記の表が示すトレンドから2022年中間選挙動向が垣間見られるかもしれない。

取り分け注目なのが下院で、トランプ、オバマそしてクリントン政権では40議席以上の大敗をしきしている。こうした中間選挙のトレンドに加えて上記で紹介した議席配分を加えると尚更バイデン・民主党にとって不利な展開が予想される。上院選でも野党優勢の流れだが、下院ほどブレ幅が少ない。2018年の選挙においては与党共和党が議席を伸ばしたケースがある。更に上記で紹介した共和党現職議員引退のチャンスを民主党が物に出来れば議席数を伸ばせる可能性は十分にあり得る。2022年の中間選挙見通しはねじれ議会継続ながら、下院は共和党が奪回、上院は民主党が議席を伸ばす可能性が現時点では高いと推察する。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

4.著名投資家ドラッケンミラー氏 ~ 金融政策批判など直近の注目コメント

著名投資家のスタンレー・ドラッケンミラー氏が、FRBに異例の苦言を呈した。先週10日にWSJで「FEDの火遊び」と題した論説を掲載、そして11日にはCNBC放送のインタビューで金融政策が実体経済とかけ離れている、米株式は割高そして引き締めは間近などの見解を示した。彼の発言が先週のインフレ懸念と株価下落を煽った可能性が考えられる。ドラッケンミラー氏の主張に同意する面が多い。個人的には、8月のジャクソン・ホール会合がテーパリングに言及する良いタイミングではないかと考える。FOMC高官からテーパリングへの言及が少しずつ見られ始めており、ジャクソン・ホールに向けて(6月のFOMC?)今後増えていくか注目していきたい。とりあえず、ドラッケンミラー氏のCNBCインタビューでの主なコメントを下記に紹介したい

5月11日CNBCインタビューでのドラッケンミラー氏の発言
「現行の金融・財政政策はこれまでで最も過激であることは間違いない。」

「当初(1年前)の当局の政策は正しかった。しかしそれから状況が大きく変わっており、それに乗じて政策を変える必要がある。」

「金融政策と財政政策が経済情勢とはこれほど歩調が取れていないことは歴史的に見たことがない。一度もだ。」

「去年の春6週間に行った量的緩和(QE)は、2009~18年の間の購入額を上回るものだ。」

「それ(これまでのQE)自体問題視していない。問題はワクチン普及が進み、小売売上高がトレンドを超えたにもかかわらず、まだ2,5兆ドルも購入が続けられることである。」

「小売りは年平均3%で伸びて来たが、現在は15%と大きく反発している。それにも関わらず2次、3次と給付金など財政刺激を続けている。」

「(経済実態と照らし合わせれば)FRBの現政策は不適切。」

「FRBが過度の財政支出を助長させている。FRBなしでは本来金利はもっと上昇し、財政支出の抑制に繋がるが、今は機能していない。」

「10年金利が4.9%まで上昇すれば、金利返済額だけでGDPの30%に及ぶ。そうなればFRBはMonetization(財政ファイナンス)をせざるを得ない。」

「(財政ファイナンスを行えば)私は15年間のうちに、ドルが基軸通貨の地位を失うと懸念している。」

「去年の春にコロナ対策法(CARES Act)が執行されてから外国投資家は米国債を売却。この20年間で外国投資家は毎年5,000憶ドルを購入して来たが、この1年は売りに転換した。(このトレンドが続けば)長期的な財政マネジメントを考えると恐ろしい事実だ。」

「5,000憶ドルの流出があって何故ドルはさほど下がらなかったのか?それは(海外から)GAFAなどのハイテク企業への株式流入で相殺されたからである。しかし、既にハイテクセクターへの投資が急速に減って来ている。」

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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