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ジョセフ・クラフト 特別レポート

最新の郵便・期日前投票検証 ~ トランプ追い上げ続く、カギは無党派層

掲載日:2020年11月04日

トランプ猛追も、バイデンの勝利予想に変わりは無い。2016年にトランプが勝った最大の要因は(民主党員の)低投票率だったが、今回は歴史的な高投票率が予想される。トランプは投票率で笑い、投票率で泣く。しかし郵便・期日前投票動向がほぼ見えて来て、バイデンはいくつかの重要激戦州で予想以上に振るわず、テキサスやジョージアなど落とせるとされた共和党岩盤州では健闘できていない。そこでこらからの焦点は当日の投票率に移って行く。当日票でトランプが健闘すれば接戦どころか、再選の可能性も十分ありえる。逆に当日票が振るわないと大方の予想に反してバイデンが余裕で勝つ可能性もある。しかしながら、メイン・シナリオは接戦での法廷劇。

11月1日付けの郵便・期日前投票は84,576万票に達した。これは2016年大統領選の総投票数の66%にあたり、記録的な投票率ペースである。登録政党別での投票比率を見ると全国ベースで民主党の44%に対して共和党37%(無党派19%)と事前予想通りにバイデンが優勢。しかし10月21日に14ポイントあった開きが半減、特にいくつかの重要激戦州でのトランプ追撃が目立つ。金曜日から昨日までの状況を見るとトランプ・共和党はほとんどの激戦州で1~2ポイントと差を更に詰めている(下記表参照)。最重要州のフロリダは、21日に17ポイントあった差が今は3ポイントにまで縮小。世論調査で優にバイデンがリードしているミシガンとウィスコンシン州に至ってはトランプが逆転してしまっている。更に一時CNNが勝利確実としたアリゾナも3ポイントの接戦となってしまった。

ここで重要なのが事前予想より若干多い無党派・その他票である(下記にグレーで表記)。これらの票がどっちに傾くか読み難い。大方バイデンに流れるもの予想するが、10月22日の大統領討論会以降でトランプの勢いが増しており、トランプが無党派票でも巻き返している可能性は否定できない。今回バイデンが負けたとしたら、敗因の大きな理由はこの討論会だと考える。



「Faithless Elector(不誠実選挙人)」とは? 大統領選への影響を検証

先ず、選挙人制度に関する事項を確認しておきたい。選挙人の総数は、(ワシントンDCを含む)51州・地区を跨いで538人。一般投票を1票でも多く取った候補に、その州の選挙人票全てが与えられる、総取り方式を採用しているのが49州・地区。ネブラスカ州とメイン州が例外で、2票は勝者に与えられものの、残りは下院区の勝利状況に比例して票が分配される。そもそも選挙人制度が導入された理由は、「衆愚政治」を抑制するために特別に選ばれた者が良心に沿って大統領を選ぶというもの。しかし近代ではそうしたリスクが減り、むしろ国民の意思に反する(反デモクラシー)懸念が強まった。

そこで33州・地区では選挙人の選任条件として、一般投票通りに投票することが求められている(下記表参照)。一般投票の結果に従わずに独自の判断で勝手に投票する選挙人を「不誠実選挙人」と言う。こうした選挙人の投票規制の違憲性について今年裁判が行われ、7月6日に最高裁は全員一致で合憲との判断を下した。しかし、18の州では自由に投票がゆるされており、最大激戦州の一つであるペンシルバニアがその一例である。更にややこしいのが、投票規定を設けている33州の中で16州(*表記)では、規定に反しても票は認められ、罰則も設けられていない。これに値するのが激戦州のフロリダ、オハイオそしてウィスコンシン州。つまり、大統領選を左右すると言われるペンシルバニア、フロリダ、オハイオそしてウィスコンシン州では、「不誠実選挙人」が出るリスクがあるということ。

過去58回の選挙で、計165人の不誠実選挙人が出ている。実は2016年でも、10人の不誠実票があり、うち7つが有効となった(クリントンが5票失い、トランプが2票失った)。これは1808年の6名を抜いて過去最多である(下記参照)。大統領選の勝敗を左右するに至らなかったため、クリントン232票対トランプ306票(計538票)と報道されることがあるが、正確には、クリントン227票、トランプ304票そしてその他7票である。過去の事例を見て一つあげるポイントとして、不誠実票が反対候補に投じられることは極めて少ない。大半は出馬していない人物が指名される。相手候補に票が行くと1票でなく、2票の差が付くので痛手はより大きくなる。

2016年の不誠実票
▶ Washington州(民主党勝利) ~ 3名が(クリントンではなく)共和党のパウエル元国務長官に投票、そして1名がFaith Spotted Eagleと名乗る先住民系政治家。
▶ Hawaii州(民主党勝利) ~ 1名がバーニー・サンダーズに投票。
▶ Texas州(共和党勝利) ~ 1名がケイシック元オハイオ州知事、もう1人がポール上院議員に投票。

今回は、2016年を超える不誠実票が出る可能性があり、どちらの候補にとって不利となるのか?不誠実票は、特定候補に強い険悪感を抱く場合に増えやすく、この意味絵はトランプに不利に働く可能性が高い。2016年にクリントンが失った5票の大半は所謂「反ヒラリー」票の象徴と言えよう。バイデンに比べトランプへの感情が(好き・嫌い問わず)強い。一つの票も失えないトランプにとって不誠実選挙人は気掛かりと言えよう。



最重要フロリダ州での民主党投票率伸び悩み ~ カギを握るラテン系有権者

バイデン選対本部に焦りが出ているとのこと。大統領選を最も左右するのが投票率。最重要激戦州の一つ、フロリダ州で民主党員の投票率が思ったほど挙がっていないとのこと。例えばフロリダで最も大きく重要な群が都市部のマイアミ・デード群、民主党としては落とせない主戦場。マイアミ・デード群で登録されている42.8万人の登録共和党員のうち63%が投票を済ましているのに対して63.4万人の民主党員の投票比率は56%に止まっている(30日時点)。都市部で票を稼げないとバイデンは劣勢に立たされる。

フロリダでは、白人高齢者とラテン系有権者が勝敗のカギを握るとされる。ラテン人はフロリダ州人口の26%を締める(下記①参照)。ラテン系の登録有権者数は250万人と2008年から倍近く増えており、有権者比率も12%から17%と伸びている(下記③参照)。そこで、一部有権者層でのクリントン対バイデンの支持率を比較してみた。例えば2016年時は高齢者層からクリントンはトランプに7ポイントの差を付けられていたが、今回バイデンは逆にトランプを10ポイントもリード、優位な情勢にある。女性有権者そしてトランプが強い高卒白人層においてもクリントンよりもバイデンは好かれている(トランプが嫌われていると言うべきかもしれない)。ところが、ラテン系有権者に関してバイデンは(トランプをリードするも)2016年時のクリントンよりも苦戦している(下記②参照)。

ラテン系と一言でくくっても、様々なラテン有権者が居て、それぞれ事情も投票行動も異なる。フロリダ州のラテン票を読むにはこの違いを知ることが重要。例えばフロリダ州のラテン有権者層の中でキューバ系が91.6万人(29%)と最も多く、続いてプエルトリコが2位(27%)。メキシコ系は3位だが、キューバ系有権者の約3分の1に満たない。キューバ系の多くはカストロ政権から逃げて来た亡命移民。キューバと国交正常化したオバマ政権を非難、逆にキューバ政府に批判的なトランプを支持している。でもバイデンにも勝機が無い訳ではない。有権者数の2位のプエルトリコは2017年のハリケーン(マリア)で多大な被害を受けた際、トランプ政権からの支援が消極的、首都の市長がトランプと対立するなど関係が悪かった。そこで関係修復を狙い、トランプは9月にプエルトリコのエネルギーと教育インフラ修復のために13億ドルの支援を打ち出した。プエルトリコの知事からも支持を取り付けるなど、強かな支持獲得攻勢を展開。ラテン系支持層を取り込むのにバイデンにとって誤算はBLM対警察の対立である。バイデンは警察解体を否定するも、BLM運動を指示、警察からの不信感を強めてしまった。対照的にトランプは警察を前面に支持。実は、フロリダ州警察官の半分はラテン系であり、都市部に集中している。こうしたラテン系表がマイアミ・デード群の共和党投票率を上げているのかもしれない。



米政局風見鶏のアイオワ州で異変?! ~ トランプが突然の逆転劇

大統領選直前でアイオワ州の情勢が急変している。10月30日付けのDes Moines新聞の最新の世論調査でトランプが48%対41%で7ポイントと大きくリードしたのである。9月末での同調査では47対47で互角、10月20日のMonmouth大学の調査ではバイデンが3ポイントリードしていた。RealClearPoliticsのアイオワ州世論調査でも1.2ポイントでバイデンが優勢だったが、昨日0.6ポイントとトランプにひっくり返った。そもそも世論調査にあまり信用を置いていない。しかし、今回の調査に注目した理由が三つある:①先行指標的な役割②Des Moines新聞の信用性③ラストベルトに近いこと。先ず、アイオワは選挙人数が6人と小さいながらも、同州は米政局の風見鶏と言われ激戦州の選挙の先行指標にもなり得る。次にDes Moines新聞は由緒ある新聞でアイオワ州の世論調査としては一定の信用が置けるからである。そして最後にアイオワはラストベルト激戦州と同じ中部に位置、投票性質が近いことも少なくない。

今回のデモイン新聞の調査で最も目を引いたのが無党派数の支持率で、トランプは無党派層から14ポイントもバイデンを大きくリードしているのである。目を疑う結果である。万が一アイオワ州の無党派票が近隣の激戦州の無党派層の投票動向を反映しているとすれば、トランプの再選はかなり高まる、いや確実と言える。この結果に半信半疑と再度指摘しながらも、注目に値するニュースだと考える。

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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