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ジョセフ・クラフト 特別レポート

米選挙戦はトリプル・ブルーを予想 ~ しかし2016年のデジャヴュが拭えない・・・

掲載日:2020年10月23日

大統領選 ~ バイデンが勝利と予想する。しかし、それは世論調査とは無関係(むしろ世論調査はミスリーディングとの主張に変わりはない)。バイデン勝利の理由は前選挙でのトランプの勝因に変化が見られるからである。2016年トランプ大統領三つの勝因: ①反ヒラリー票、②黒人投票率そして③サッカー・マム票(郊外に住む母親層)。先ず、若年層や左派有権者が中心だった所謂「反ヒラリー票」は今回無い。次に2016年は黒人の投票率が7%(ラストベルトでは12%)下がったことで、多くの重要激戦州がトランプに傾いたが、今回は大分改善することが見込まれる。ミシガン(0.1%)、ウィスコンシン(0.2%)そしてペンシルバニア(0.7%)は黒人の投票率が2~3%回復するだけで情勢が大きく変わって来る。 最後に大方の予想に反して、2016年では郊外に住む女性そして既婚女性、所謂「サッカー・マム」と呼ばれる女性票がトランプに傾いたことも大きかった。しかし、この有権者層は今回かなりの勢いでトランプ離れを起こしている。再度言わせていただきますが、世論調査は信用してはいけない。しかし、トランプ再選の確率は無いわけでは無く、下記三つのレポートを見て頂ければ2016年の二の舞になる不安は拭えない・・・。先ずは、本日行われる第3回大統領討論会に着目・・・。

上院選 ~ 民主党はネットで4州を奪回すると予想(バイデン勝利なら3州でも過半数獲得)。上院司法委員会議長で保守牙城のサウス・カロライナ州政界の重鎮であるリンゼー・グラハムが接戦を強いられていることは、如何に共和党上院が苦戦しているかを象徴している。9月23日のレポートでも紹介したが、アリゾナ、コロラド、ノース・カロライナ、メイン、アイオワ、モンタナそしてジョージア州で激戦が繰り広げられており、このうち取り分けアリゾナ、コロラド、メイン、アイオワそしてジョージア州が危うい。民主党はアラバマ州を落とすことが予想されるが、共和党は4~5州を落とすと思われる。金融市場的に最悪なシナリオはトランプが再選して上院が民主党に落ちる完全ねじれ状態である。

バイデン選対本部長が選挙戦は遥かに接戦と警告 ~ 民主党選対幹部が真意を説明

一部左派系メディアがバイデンの圧勝を示唆する中、先週14日(水)の夜に、バイデン選対本部長のジェン・オマリー女史は、「We think this race is far closer than folks on this website think. Like a lot closer.」と選挙戦は(世論調査が示すよりも)遥かに接戦・拮抗していると警告するツイッターを投稿した。更にオマリー本部長は18日(日)にも、「ドナルド・トランプが選挙選に勝利する余地は十分にあり、選挙戦は最後の最後まで分からない。」と改めて有権者向けのメールを配信。第1回大統領討論会以降はトランプが劣勢とされ、バイデン対トランプの支持率格差が二桁に広がった世論調査も少なくない(例えばNBCが11ptやCNNが16pt)。

そこでオマリー選対本部長の警告の真意と実情について民主党の選対本部幹部に伺った。先ず同幹部は、世論調査が示すよりも接戦・拮抗していることは間違いないと指摘する。
民主党の独自調査では7~8ポイントの差だが、所謂「隠れトランプ票」を差し引くと、実態は2~3ポイントでバイデンがリードしていると見ている。これは誤差の範囲内である。「まぁ、2~3ptというのは多少慎重過ぎるかもしれないが、5ポイント以上の差は無い」と同幹部は断言。無論、この2週間でトランプ支持層が諦めて投票に出向かなければ、バイデン圧勝の可能性もあり得るが、現時点でこのシナリオには期待できないとのこと。

オマリー選対本部長の警告の背景には主に二つの理由があると説明。一つ目は予想が 付くと思われるが、Expectation Controlである。圧勝ムードが広がると、民主党有権者が油断して投票しないリスクを回避する狙い。2016年では黒人そして(左派の)若年層有権者の投票率が大きく下がりトランプの勝因に繋がった。二つ目は意外にも再就職とのこと。オマリー女史含めバイデン選対スタッフは大統領選後は、次の中間選挙を見据えて他の政治家の選対本部に就職活動をする。そこで一般的にバイデン圧勝の見通しが広がって、結果が僅差ともなれば、トランプに猛追を許したと評価されかねない。そうなると良い条件での再就職が難しくなるかもしれない。無論、就職目的でウソの警告をしているのでは無い。単に(接戦という)実態を把握してもらうことが選挙戦及び自身のキャリアにとって有益であるとのこと。

以前からこのレポートで世論調査は当てにならないと指摘して来たが、直近の動向を見ていただきたい。最新のRealClear Politicsによるとバイデン対トランプの支持率格差はバイデンの+7.5%と10月13日の+10.3%から縮んで来ている。その意味ではオマリー選対本部長の警告は正しい。特に激戦州で気になる動きが見られており、この点に関しては下記の郵便・期日前投票のレポートを参照いただきたい。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

事前・郵便投票の途中経過検証 ~ 世論調査と真逆の展開が見られている?!

郵便・期日前の現時点データを見る限り、改めて世論調査が如何にあてにならないか改めて認識させらる。大統領選は、当日投票ではトランプが上回るも、郵便・期日前投票が可算されるとバイデンが逆転するとの予想が主流である。ところが現時点での郵便・期日前投票情勢を見ると、全国的には見通しが正しくとも、一部の激戦州では全く違った展開が見られ、不透明な大統領選を示唆している。結論を言うと、現時点の郵便・期日前投票情勢を見る限り(世論調査とは逆に)トランプ再選の可能性は十分に考えられる。全国及び注目激戦州の郵便・期日前データを紹介、大統領選の行方を検証してみたい(下記表参照)。



全国 ~ 21日時点で約3,700万の郵便・期日前投票が行われた。郵便投票は基本的に事前に要請(身元確認の上)、投票用紙が送られてくる。この事前要請数から投票率が伺える。事前の要請数に対しての全国の投票率は56.4%である。投票自体は公開されていないが、投票者の登録政党は分かる。そして近年は、9割近くが登録政党通りに投票しているので投票動向がおおよそ検討つく。全国ベースでの郵便・期日前投票者の政党別比率は48%(民主)対34%(共和)と投票者格差が14ポイントとバイデンが優にリードしている。RealClear Politicsでのバイデン対トランプ支持率格差(+7.5%)と比較して、郵便・期日前投票は事前の予想通りバイデン・民主党にかなり有利な情勢が確認できる。

ウィスコンシン州とミシガン州 ~ CNNの選挙アナリストは(世論調査を基に)、ウィスコンシンとミシガンはバイデンが手中にしたと断言。ウィスコンシンの郵便・期日前投票は90.3万票(投票率64.7%)で、ミシガン州は169.6万票(投票率56.4%)。激戦州としては投票率はかなり高い。リアルクリアの世論調査の支持率格差によるとウィスコンシン4.6%でバイデンそしてミシガンは7.8%でバイデンがかなり優勢に立っている。ところが、世論調査とは対照的に、郵便・期日前投票の政党別投票者比率を見ると、バイデンとトランプが全くの同率(±0%)で、大接戦が演じられている。投票率が高いということは、この(拮抗)情勢が今後大きく変わる可能性が少ないことを意味する。当日投票でトランプが有利であるならば、大方の予想に反してウィスコンシン州とミシガン州はまたもやトランプが制する可能性が高まっている。

オハイオ州 ~ オハイオ州は149.3万票が入っており、投票率も激戦州としては高い(54.5%)。世論調査を見ると0.6ポイントと僅かにトランプが優勢となっているが、郵便・期日前投票は40%対47%でトランプ・共和党が7ポイントも上回っている。オハイオ州はトランプが制する可能性がほぼ確定的と思われる。因みにオハイオ州を取らずに大統領になった候補は、グローバー・クリーブランド(1892年)とジョンFケネディ(1960年)の二人のみ、同州が如何に重要州であるか伺える。

フロリダ州 ~ トランプがフロリダ州を落とすとほぼ万事休すである。上記の3州でトランプは予想以上に健闘しているものの、フロリダでは予想以上に劣勢立たされている。現時点の投票数は300.9万票(投票率51.3%)。世論調査では2.1ポイントでバイデンが若干優勢となっているが、郵便・期日前投票者比率はバイデンが16ポイント(48%対32%)と大きくリードしている。ただ、フロリダの場合は、ラテン票の動向が極めて重要であり、この点はトランプが有利とされていることから、このデータだけでバイデンの勝利を予想することはできないが、事前予想よりもトランプが苦戦していることは間違いない。

ペンシルバニアとアリゾナ州 ~ 情勢が最も予想しがたいのがペンシルバニア州とされている。両候補が最も集会を行っているのがペンシルバニア州であることからも最大の激戦州であることが伺える。そのペンシルバニア州の投票者比率はなんと73%対19%と圧倒的にバイデン・民主党に傾いている。更に、これまで共和党の牙城だったアリゾナ州も13ポイントとバイデンが優勢に立っている。ところが、両州の投票率が全国や他の激戦州と比較してもかなり低い。このまま投票率が上がらないとバイデン優勢の投票行動も効果は限定的となってしまう。バイデンが重点的にペンシルバニアで集会を開いているのはこうした要因があるかもしれない。

ノースカロライナ州 ~ フロリダ州同様、トランプはノースカロライナ州を取らないと極めて難しい立場に置かれる。世論調査ではバイデンが2.3ポイントとリードしているものの、郵便・期日前投票は17ポイントでバイデンが大きくリードしており、トランプは当日投票でバイデンにかなりの差を付ける必要がある。

バイデンの圧倒的な選挙資事情 ~ でも一つ気掛かりが・・・

世論調査は信じられないが、金は信じられる。選挙戦の流れをより客観的に把握する一つの指標として選挙資金に着目してきた。取り分け「献金」と「(選対本部の)手元資金」が重要で、献金は有権者の熱意・コミットメントを反映。手元資金は今後の選挙戦の展開が伺える。最新(9月分)の選挙資金結果が発表されたので下記に紹介したい。結論を言うと選挙資金面ではバイデンが圧倒的な優勢に立っている。一つだけ気掛かり、盲点を挙げるとすれば小規模献金。

献金 ~ 9月の各候補の献金収入額は、バイデンが3億8,300万ドルに対してトランプが2億4,800万ドルと大差がついた。8月もバイデンの3憶6,400万ドルに対してトランプは2億1,000万ドル。8月と9月の2ヶ月間でバイデンの献金額はトランプよりも2億8,900万ドル(約305億円)と圧倒的に上回っている。トランプは毎月堅調に献金額を増やしており、有権者離れは決して無い。バイデンの献金額は記録的であり、有権者の際立った熱意・支持が伺える。バイデンの懸念事項を一つ挙げるとすれば少額献金者比率。トランプの少額献金者比率が49%に対してバイデンの32%と支持基盤の広がりが限定的であることは気掛かり。

手元資金 ~ 9月末でのバイデン選対本部の手元資金は4億,3,200万ドルに対してトランプ陣営は2億5,100万ドルと1.7倍の差がついている。この資金力があればバイデン氏は集会を開かずとも積極的な広告戦略に打って出れる。現に9月の両候補の広告支出額はバイデンの1憶5,300万ドルに対してトランプは5,700万ドルとバイデンが3倍も多く使っている。コロナ禍でトランプの積極的な集会活動が物議を醸しているが、背景には選挙資金事情があるかもしれない。

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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