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ジョセフ・クラフト 特別レポート

郵便投票の現状 ~ 民主党の圧倒的優勢、しかしペンシルバニアでは暗雲

掲載日:2020年10月14日

本大統領選は郵便投票が大きな焦点となっており、特に民主党に有利とされている。そこで、現時点での郵便投票の状況を下記に検証してみたい。先ず比較対象として、分かっている範囲で2016年の郵便投票データを踏まえたい。2016年は3,363万の郵便投票があり、総投票数の24%を占めた。郵便投票のうち、1%にあたる31.8万票が無効となった。2016年10月20日時点までに送られた郵便投票数は400万。

そこで今回だが、10月10日時点までに送られた全国からの郵便投票数は740万票(下記表参照)。2016年と同様の総投票数と仮定した場合、現時点での郵便投票比率は5.3%となる。郵便投票が加速するのが大統領選の1週間ぐらい前のため、これは取り分け遅いペースとは言えない。740万の郵便投票のうち、投票者を所属政党別(注意:これは投票行動では無い)で分けると55%が民主党なのに対して25%が共和党と事前の予想通り、圧倒的に民主党に有利な状況となっている。

更に州別、取り分けフロリダ、ノースカロライナそしてペンシルバニアの激戦3州の状況を見てみたい。フロリダの郵便投票数は120万票で2016年の総投票者数の12.7%と全国ペースを大きく上回っている。有権者別で見ると51%が民主で29%が共和党と、全国比率に比べると多少差が縮んでいるものの、民主党の優勢は変わらない。次にノースカロライナで、41.8万票が集まっており、ペース的には8.9%とこれも全国ペースより早い。ノースカロライナでは共和党有権者比率が著しく低く、逆に中道派層が多いことが注目される。

最後に最も激戦とされ、今回興味深いのがペンシルバニア州である。先ず有権者比率を見ると民主党64%対共和党24%と40ポイントの大差が開いている。一見民主党の圧勝に思える。しかしペンシルバニア州の郵便投票数が17万票とペースが僅か2.8%に止まっており、このまま郵便投票率が低迷すれば、同州でのトランプの勝算がかなり高まる。しかしこの背景には各州の郵便票受け入れ開始スケジュールが影響しているとの指摘もあろう。ノースカロライナ州では9月4日から郵便投票を受けれいているのに対して、ペンシルバニアは9月19日と確かに遅い。しかし、受け入れ開始日が10月1日であるフロリダ州と比べると早く、投票率は大きく下回っている。推測だが、おそらくペンシルバニア州の(民主党)有権者は決めかねているのではないか。結論は、予想通り全国の郵便投票情勢で民主党が圧倒的にリードしているものの、最重要激戦の一つであるペンシルバニア州では今のところ情勢が芳しくない。




選挙資金状況から占う米大統領選 ~ トランプ息切れ?バイデンはラストスパートに余力

以前から、近年の大統領世論調査は当日の投票率を正確に反映してないことや所謂「隠れトランプ票」によって時にはミスリーディングであることを指摘させていただいた。そこで、より客観的な参考データとして各候補の選挙資金状況を紹介して来た。取り分け重要と考えるのが、「献金」と「手元資金」である。「献金」は有権者のコミットメント(口より金)を反映、選挙戦のモメンタム・流れを見るのに役立つ。「手元資金」は今後の選挙を戦う余力を見極めるのに役立ち、レースカーで言えばガソリンである。そこで8月末時点でのバイデン対トランプ選対本部の「献金」と「手元資金」の状況を再確認してみたい。結論を言うと資金面ではバイデン陣営が優位に立っており、残りの選挙戦をより積極的に戦える一方でトランプ陣営は少なくとも資金面では幾分制約があり息切れのリスクが懸念される。

因みに9月分の選挙資金データの締め切りが10月15日のため、まだ最新情報は発表されていない。それから下記は、各候補の選対本部直径のデータに限定しており、連携しているPAC(政治行動委員会)などが集めた資金は反映されていない。

▶ バイデン: 累計献金額は5億4,059憶ドル(下記①参照)。7月までトランプを下回っていたが、8月に一気に追い抜いた。8月の献金額は3億6,450億ドルと1ヶ月の献金額として過去最高となる。同額の半分にあたる2億500万ドルは少額献金者によるもの。記録的な献金額の背景にはBLM運動に象徴される人種問題と初の黒人副大統領候補に有権者が喚起されたものと思われる。直近の献金動向が9月そして10月も続いているかが、大統領選を見極める一つのポイントとなる。手元資金は1億8,063憶ドル(下記②参照)。バイデンの手元資金はトランプを大きく上回り、広告展開などより積極的な選挙活動を遂行できる。9月の広告支出を見るとバイデン陣営は1億5,300万ドルとトランプ陣営の5,700万ドルを3倍も上回っている。バイデンが集会を極力引き受けられるのもこうした広告戦略が挙げらえる。

▶ トランプ: 累計献金額は4億7,650憶ドル(下記①参照)。バイデンの記録的な8月献金額に比べると見栄えが悪いかもしれないが、献金額は毎月堅調に増えている。このデータから有権者離れは見られない。手元資金は1億2,110憶ドル(下記②参照)。正当か不当か別として、リベル系メディアからの激しい批判に対抗すべく、多額の広告展開を打ったことでバイデン陣営よりも手元資金が少ない。広告費を節約するためなのか、9月でのトランプの集会活動はより積極的になった。コロナ感染しても早期に活動復帰したのはこうした資金事情があるのかもしれない。




バイデンの相次ぐ失言 ~ リベラル系メディアは露骨に無視

選挙戦に失言は付き物であり、よほどの発言でなければ数日中には忘れ去られる。しかしメンタル面での懸念を払拭できていないバイデン発言はどうしても気になる。そこで12日にデラウエア州からオハイオ州に向かう空港で記者から、「最高裁判事候補の宗教も承認の対象にすべきか?」と問われたバイデン氏は、「(宗教に関する私のコメントが)以前に物議を醸す事態となった。選挙の相手が・・・上院議員で・・・モルモン教・・・そして州知事だったんだ。個人の宗教は問題視すべきでない。」と回答。モルモン教の上院議員とはミット・ロムニーのこと。誰が見てもバイデン氏はロムニー氏の名前を思い出せない様子。知名度の低い政治家ならともかくロムニー氏はワシントン政界の重鎮そして2012年の大統領選で戦った相手だけに記者団から驚きと不安が漏れた。更にこの直後のオハイオ州の集会で、「私は誇りある民主党員として上院選に出馬している」と言い間違えた。上院出馬の発言は今年の2月におかしている。トランプはすかさずバイデン氏を揶揄するツイッターを投稿(下記参照)。

この程度の失言・言い間違いは誰にでもあること。しかし上記に加え、10月5日にコロナ禍に関して、「我々が隔離出来たのも何処かの黒人女性がスーパーの棚に食料を補給してくれたからだ」と発言したビデオが、黒人・女性蔑視ではないかと物議を醸した。更にバイデン氏は60年代の公民権運動・デモに参加した話を良くするが、当時はデラウエア州のユニオン浸礼教会に通ってデモの手伝いをしたことを話す。バイデン氏が公民権運動に加わったことは紛れもない事実だが、同協会の関係者に確認してもバイデン氏が通ったとの記録も記憶も無いことを明かした。更に9月20日にはコロナ感染によって200万人が亡くなった発言や29日の討論会で「俺はバーニー(サンダーズ)を選挙で優に破ったんだ!」など左派有権者を逆なでする意味の無い失言までしてしまった。一つ一つのコメントは大したこと無いかもしれないが、これだけ失言が相次ぐと心配になってしまうのは小生だけであろうか?

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

しかしここでの本題はバイデン氏では無く、リベラル系メディアである。9月以降、こうしたバイデン氏の失言や失態を左派メディアが報道されなくなったのである。CNN、NYTそしてWAPOが報道しなくなったため、日本でも取り上げられなくなった。インターネットに「バイデン」と「失言」で検索すると8月27日以降はバイデン失言に関する記事が一つも無い。唯一、東京新聞が10月12日に失言に振れる記事を投稿したが、バイデン氏のキャリアを紹介するものでむしろ好意的な内容。事実を歪曲するトランプ、無理があるトランプ賞賛を続ける保守系メディアは言うまでも無く悪い。しかし、バイデン氏に不利な世論調査や失言・失態を意図的に報道しないリベラル・メディアも同罪と言わざるを得ない。

因みに、CNN、NYTそしてWAPOから米政局ニュースを取得するため国内報道機関が少なく無いため、情報が片寄りがちになると以前から指摘させていただいた。著名なリベラル・メディアが揃ってトランプ批判を展開しているにもかかわらず、トランプが根強い人気を保てるは二大保守メディアの存在が挙げられる。一つ目はラジオ・パーソナリティの「Rush Limbaugh(ラッシュ・リンボー)」である。リンボー氏のラジオ番組の聴者数は1,400万人とされ、全米で圧倒的なの人気を誇り、3大リベラル・メディアも太刀打ちできない。

二つ目はFOX Newsである。日本ではFOX NewsはCNNと肩を並べる2大ケーブル・ニュース局と思われがちだが、視聴率ではFOX Newsが群を抜く。下記に7~9月期のケーブルニュース番組視聴率ランキングのトップ20を紹介、トップ10の中にフォックス・ニュースが6番組ランクインそして1位~4位を独占している。CNNがランクインしたのが20位の一つだけ。同じリベル系でMSNBCの方がCNNよりも存在が大きい。フォックス・ニュースの中で人気を二分するのがショーン・ハニティとタッカー・カールソンである。ラッシュ・リンボーと共にこの3人が毎日トランプを賞賛、バイデン及び民主党を批判しているのだ。アメリカがここまで分断してしまった背景にはメディアの存在は決して小さくない。




何があっても株高相場 ~ 気になるサプライズ指数と株価の乖離

増税のバイデン政権は株安と言われたが、現実味を帯びると、(何も変わっていないのに)インフラ投資が上回るので株高へ転換。米経済対策が難航しているが、期待だけで株高。世界で一日のコロナ感染者数が記録更新でも株高。米中緊張高まるも何のその。何があっても株高に持って行きたい相場の志向。こういう時は黙ってトレンドに乗るのが得策。

しかし、違和感を抱いており、その一つがサプライズ指数と株価の乖離である。ご存じ、サプライズ指数は景気指標予想と実態データの差を指数化したもの。実態データが予想を下回れば指数は減少、上回れば上昇する。時間差は若干あるものの、サプライズ指数と株価には相関性が見らて来た。以前にコロナ禍で景気が低迷しているにも関わらず、株価が上昇する一つの要因として実際の景気データが(悲観的な)指標予想を上回る状況を紹介させていただいた。米サプライズ指数は5月から8月にかけて記録的に反発した。しかし直近では、米サプライズ指数が8月末から減少に転じ、そして株価も一次的に調整が見られたものの、再び上昇、指数と乖離している(下記チャート参照)。

サプライズ指数の減少していても、実態経済は数か月前より改善していることは事実。指数の減少はむしろエコノミストの予想が強きに改善している表れとも言える。その他、超緩和政策での資金余剰によって株式投資に資金が流れやすい環境は否定できない。それにしても相場の感度低下が気になっており、今は相場トレンドに逆らうべきではないものの、一方的なブル志向には注視したい。


【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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