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ジョセフ・クラフト 特別レポート

台湾建国記念日 ~ 蔡英文総統が独立示唆する驚く演説

掲載日:2020年10月12日

10日に台北で辛亥革命を記念する双十節(建国記念日)の式典が行われ、蔡英文総統が演説。英語ではあるが、演説の全文を読んで驚いた。アメリカを筆頭に直近の西側諸国の反中志向に勇気づけられたのか、台湾が独立に向かって前進しているとハッキリ受け取れる演説を行った。以前にも紹介させていただいたが、アメリカが台湾独立を事実上擁護したと考える8月31日のスティルウェル国務次官補の演説の意味はは大きいと改めて思う。蔡英文総統の演説に関して中国国務院台湾事務弁公室は当然、「対決志向と敵対意識を継続した演説であり、独立を画策する民進党当局の本質をさらけ出した」と批判した。今回の演説は、台湾をめぐって米中対立が更に高まることを示唆するものと考える。

演説は五つのテーマに分けられた: ①コロナ感染対策、②コロナ禍後の経済戦略、③安全保障維持のための防衛力、④積極的な国際協力そして⑤試練を克服するための結束。下記に主だった発言を紹介したい。

①コロナ感染対策 ~ 趣旨は台湾の感染対策が世界に評価され、より国際社会の一員に入ったことをアピール。蔡英文総統は、「台湾国民は、森喜朗元首相、チェコのミロス・ビストルチル上院議長、アレックス・アザール米衛星長官そしてキース・クラッチ米国務省次官らの訪問に勇気づけられた。」と主張。日本やアメリカでは海外要人の訪問は珍しくないが、台湾では如何に大ごとであるかが伺える。

②コロナ禍後の経済戦略 ~ ここで目立った発言は、アメリカとの経済協力強化の協調。蔡英文総統は、「先週、アメリカと『インフラ融資と市場構築の枠組み強化案』に署名・・・深まる台湾とアメリカの経済協力関係はアクション(実行)のフェーズに入った。これは国際社会との経済及び貿易の包括的突破口に繋がる。」とより国際的な経済発展を主張した。

③安全保障維持のための防衛力 ~ 海外脅威に対して万全な防衛体制を構築するだけでなく、その脅威が中国であることまで明記した。「海峡の向こう側(中国)から空と海からのハラスメントによって台湾海峡での緊張が高まっている。弱さを見せたりや妥協することは平和に繋がらない。国家の防衛力を万全にすることによって台湾そして(アジア)地域の平和が維持出来るのである。」と総統は訴えた。

④積極的な国際協力 ~ 国際社会との協力が中国抑止力に働くと共に中国とはイデオロギーが異なるとハッキリ明記。総統は、「南シナ海での海洋侵略、中印国境紛争、台湾海峡の緊張そして香港安全維持法は国際社会の懸念を助長、インド太平洋地域の平和と繁栄は深刻な試練に直面している。」と中国の脅威を指摘。次に「我々は価値観が共有出来る友好的な国と同盟関係を結んでゆく」と明かし、中国から更に距離を置く方針を打ち明ける。

⑤試練を克服するための結束 ~ 最後の締めくくりに、(独立へ)国は結束していると、明らかに中国及び国際社会へのメッセージを発信した。総統は、「台湾世論は国際関係そして安全保障(つまり独立)に関して見解が統一して来ている。この見解は野党も共有している。」と国の結束をアピール。そして演説の最後に、「今から20年後に今年を振り返った時、次世代が台湾の試練に勇敢に立ち向かい、これまでの足鎖を取り払い、未来を切り開いた始まりの時だったと認識するであろう。」と宣言した。

米経済対策協議の行方 ~ ペロシ議長が下院議員に送った弁明書

トランプ大統領は6日(火曜)に協議を打ち切ったと思いきや、9日(金曜)には方針転換、1.8兆ドルに増額した経済対策案を提案した。それを受けてミュニューシン財務長官とペロシ下院議長が30分間協議したものの、交渉は翌週に持ち越されることとなった。ペロシ議長は経済対策案を、「不十分」そして「一歩前進、二歩後退」と合意に否定的な見解を示した。更に、土曜日午前の電話会議で、一部共和党上院議員がムニューシン財務長官とメドーズ首席補佐官に経済対策案への不満を漏らした。双方の溝は大きく、合意は難しいように思われる一方で、選挙選を睨んだ焦りと思惑によって利害関係が一致する部分も少なく無く、水面下では合意への磁力が働いていると考える。この意味では、大統領選前(この2週間以内)に経済対策パッケージが合意されるのではと予想する。そこで下記に主要プレーヤーの事情・立場を検証、そして取り分けペロシ議長が民主下院議員に送った書簡の意味を探りたい。

▶ トランプ大統領 ~ ホワイトハウスに精通している現地の政治筋と話した。トランプの方針転換にWHスタッフは困惑している。彼曰く協議再開は、週前半から週後半にかけて選挙選でより劣勢に立たされているとトランプの認識が高まったことを示すとのこと。トランプは、ディールメーカーと自画自賛する割には交渉が下手。水面下で民主党と打開策を模索せずに経済対策案を(1.6→1.8兆ドル)増額、明らかに国民へのアピールしたい意図を露呈。この点は、民主党に見透かされているであろう。

▶ マコネル上院院内総務 ~ 最も難しい立場に立たされているのがマコネル氏であろう。フロリダ州のスコット議員やテネシー州のブラックバーン議員など選挙を戦わない議員そしてカンザス州のロバーツ議員やテネシー州のアレキサンダー議員など引退組から反発を受けている。一方、サウスカロライナのグラハム議員やメイン州のコリンズ議員のように激戦を強いられている議員からは早期合意が切望。マコネル氏にとって最重要議題は最高裁承認であり、経済対策議論でそのプロセスを遅らせたくない。もし政権と下院が合意に至った場合、最高裁承認をスムーズに行うために反対議員の説得工作にあたる可能性が考えられる。

▶ ペロシ下院議長 ~ 一見強硬姿勢を見せているペロシ議長だが、世論そして特に自身の下院議員らから相当圧力が掛かっているようだ。民主党有権者の中でも、ペロシ議長が経済対策合意の妨げになっているとの見方は少なくなく、コロナ自粛下での「美容院問題」の悪印象が尾を引いている。更に激戦を強いられている議員から早期の合意要望がある一方、進歩派議員からは遥かに大きい額を要求すべきとの突き上げがあり、板挟みになっている。

ペロシ議長の難しい立場を象徴したのが、同議長が民主党下院議員に送った書簡(下記参照)。手紙の冒頭3分の2はトランプ政権批判と共和党案が如何に不十分か詳細に説明している。これは進歩派や否定的な議員をなだめる意図があると思われる。ところが後半では、「懸念事項は残るものの、昨日の展開は合意に近づくものと希望を持っている」と前向きに締めくくった。これは明らかに激戦区の議員を意識したものである。ワシントン政局に詳しい者から、実はペロシ議長はバイデン政権になる前に合意した方が良いかもしれないと周囲に漏らしているとのこと。一見矛盾のように思えるが、バイデン政権となった場合、進歩派議員が無謀な要求をして来る可能性があり、民主党下院議員が分断するリスクが考えられる。その意味では、今のうちに手打ちしておいた方がバイデン政権発足後の下院を統治が保ち易いと見ているようだ。

ナンシー・ペロシ議長が民主党下院議員に送った書簡

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

「Contingent Election」とは? ~ 米大統領決選投票シナリオ

トランプ支持層が諦めて投票に出向かないことで、バイデン圧勝のシナリオが考えられるが、大方の予想は接戦でのバイデン勝利を不服とするトランプによる法廷闘争のシナリオ。そこで下記では、確率は低いかもしれないが、「Contingent Election(決戦投票)」という違うシナリオを紹介したい。決戦投票とは、どちらの候補も過半数に満たない場合、大統領を下院そして副大統領を上院が選ぶプロセスである。「Contigent Election」は憲法2条に定められ、その後修正第12条によって確立された選挙条項。大統領の決戦投票は過去2回行われた: ①1800年Thomas Jefferson対Aaron Burrと②1824年 Andrew Jackson、John Quincy Adams、 William H. CrawfordそしてHenry Clay。1800年は、ジェファーソンが勝利そして1824年はアダムズが4人の候補から大統領に選出された。

▶ 大統領の決戦投票プロセス ~ 下院が選ぶ。しかし議員一人に1票では無く、各州に1票が宛がわれ(総票数50票)、26票を獲得した候補が大統領となる。先ず、州ごとで下院議員が投票、過半数を取った党の候補にその州の1票が与えられる。例えばフロリダ州は現在下院議員が27名、うち14名が共和党で13名が民主党。もし全員が党派通りに投票すれば共和党が勝ちフロリダ州の1票はこの場合、トランプに行く。因みに選挙人制度ではワシントンDCが3票持っているが、決選投票には参加できず、あくまで50州のみに限られる。議員数では民主党が232対198議席と上回るものの、州別で集計すると共和党が27州で過半数を持つ。つまり決選投票に入った場合、トランプに有利になる可能性が高い。

▶ 副大統領の決戦投票プロセス ~ 上院が選ぶ。この場合、議員一人に1票が宛がわれ(総票数100票)、51票が過半数となる。ご存じ、上院は53対47議席と共和党が持っていることから今回の場合ではペンスが選任される可能性が高い。

それでは、過半数(270票)割れという状況は現実的にあり得るのか?統計的な確率は低いかもしれないが、ありえないシナリオでは無い。そこで下記に考えられる過半数割れの例を一つ紹介したい。無論、無数の可能性が想定され、これはあくまでも一つの可能性に過ぎない。先ず、一般的に激戦6州と見なされているのがフロリダ、ノースカロライナ、ミシガン、ウィスコンシン、アリゾナそしてペンシルバニアで選挙人票が101票となる。その他の州を常識的に振り分けると民主が232票対共和党の205票となる(下記①表参照)。激戦6州に関しては、フロリダとノースカロライナが若干トランプ寄りと思われている。逆にミシガン、ウィスコンシンそしてアリゾナはバイデンに傾いている。両候補が頻繁に訪れていることからも伺えるように最も情勢が混戦しているのがペンシルバニア州である。激戦6州が上記の通り、そしてペンシルバニア州がトランプに落ちたと仮定すると、トランプとバイデンの選挙人票はちょうど269対269で過半数割れの状態となる(下記②表参照)。統計額的に確立は引くかもしれないが、このシナリオは全く考えられないものでは無いと思う。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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