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ジョセフ・クラフト 特別レポート

大統領討論会と直近の選挙活動検証 ~ 対照的な両陣営の選挙活動

掲載日:2020年09月29日

大統領討論会について ~ 討論会は現地29日21:00~22:30に始まる(日本時間10:00~11:30)。司会(モデレーター)はフォックス・ニュースの著名アナウンサーのChris Wallace氏である。トランプはウォリス氏とは定期的にインタビューを行っており、彼の質問・司会には慣れている。一方のバイデンはフォックスニュースと関わりが少ないだけでなく、今年に入ってインタビューを僅かしか行っていない。バイデンの不慣れな対応は大きな懸念である。

議論されるテーマは下記の6つと事前発表されている:
▶ トランプ氏とバイデン氏の記録
▶ 最高裁判所人事
▶ 新型コロナ感染症
▶ 経済
▶ 人種と暴力
▶ 選挙の完全性

捜査討論会の注目としては、メンタル面での不安及び討論に弱いバイデン氏への期待値はかなり低くなっている。バイデン氏としてはトランプを論破せずとも、大きなミスさえしなければ一定の評価が得られるであろうと目論みを立てている(ある意味情けない話)。だがバイデン氏が支離滅裂、あるいは最近見られるかんしゃく玉を起こすようであれば形勢は一気に傾く可能性がある。直近、バイデン氏は選挙活動をかなり抑制し、討論会の準備に集中している。トランプ節・攻撃にどこまで対応できるか、お手並み拝見だ。

選挙活動(集会) ~ 「Lid(フタ)」という米報道用語をご存じだろうか?要するに大統領候補がその日の活動を終了させる、あるいは行わない場合に「(その日の活動に)『フタ』をする」という意味で用いられる用語だ。「フタ」が閉じれば、報道陣らは取材を止めて帰宅できる。それを踏まえて、バイデン選挙を取材するメディア関係者の間で「Lid」が多い過ぎるとの見解が高まっている。当初は、ソーシャル・ディスタンスと称し、選挙活動・集会を制限するバイデン氏を評価する声もあったが、あまりにも頻繁に起きていることから選挙選になってないのではと疑問視する声が増えて来た。コロナ対応の差別化とバイデン選対本部は説明するが、直近では健康不安説が出るほど状況が不透明である。トランプ自身、「見たか?今日も早々とバイデンは『フタ』をしたぞ!」とツイッターで揶揄する始末。下記にもあるように、両候補の9月での選挙集会スケジュールを比較すると、トランプ陣営の方が勢力的に動いていることは明らかである。

問題は選挙集会の頻度だけでなく、集客力も問題視されている。トランプの集会は毎回一大イベントで、1万~2万人集まることは珍しくない(下記左写真参照)。ところがバイデンの集会はソーシャル・ディスタンスを意識して100人に満たず、少ない時は4~5名である(下記右写真参照)。さすがに民主党選対本部からもこれでは勢い・モメンタムが出ないと不満が噴出し始めている。勢いに乗れていないバイデン氏としては、明後日の大統領討論会で勝利し、選挙の起爆剤にすることが益々重要となって来ている。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

最高裁判事候補にエイミー・バレット女史任命 ~ 承認戦術に悩む民主・共和の両党

週末に民主党選対本部の幹部と話した上で、言うまでもなく目先の最大の関心事は29日の大統領討論会と上院での最高裁判事承認であることは明らか。取り分け最高裁判事の上院公聴会の戦術に関しては民主党内で意見が二分しているとのこと。トランプは土曜日にエイミー・コニー・バレット(ACB)連邦高裁判事を次期最高裁判事候補に任命した(下記写真参照)。民主党執行部は、最高裁判事の採決を止めることが出来ないことは重々承知している。そこで民主党内では、可能な限り戦って出来るだけ採決を遅らせるべきか、早めに採決を終わらせつつ保守勢力が増加しているとリベラル有権者の危機感を煽るべきかで意見が分かれているようだ。有権者の怒りをこの採決に向けることで、大統領選を有利な展開で進められるのではないかと言う意図がある。今後の戦術を決めるうえで民主党執行部は三つの要因で悩んでいるとのこと:①2017年のバレット連邦高裁採決 ②バレット女史の資質と性別 ③2018年カバノー承認劇の後遺症。

(1)2017年のバレット連邦高裁採決 ~ バレット女史は2017年5月8日に第7巡回区控訴裁判所判事に指名され、上院で55対43で可決されている。55人の賛成のうち、3人が民主党員で二人は今も現役である(バージニアのTim KaineとウェストバージニアのJoe Manchin)。今回、この二候補が理由もなく反対に回るのには矛盾が生じ、彼らにとって容易では無い。その他に接戦を強いられているアラバマのダグ・ジョーンズ議員やミシガン州のゲーリー・ピーターズ議員らも反対に苦慮すると思われる。

(2)バレット女史の資質と性別 ~ 彼女は養子を含め7人の子供を育てる誠実なクリスチャン。2017年の控訴裁判判事の審議でも資質にかかわる問題は無かった。更に世論が女性判事を熱望する現状で、彼女を過剰に攻撃すれば女性有権者はもとより宗教団体及び左派よりのキリスト教信者からの反発も招く可能性が考えられる。

(3)2018年カバノー証人喚問の後遺症 ~ 記憶に新しいかもしれないが、2018年9月にブレット・カバノー候補をめぐって両党は激しく対立。高校時代の性的暴行疑惑が浮上したことから、上院に止まらず国が二分する前代未聞の承認採決となった。当時のカバノー問題からの流れで今の民主党執行部を悩ませているのが、バイデンの性的暴行疑惑である。カバノー審議では、(30年以上が経ち)証拠が乏しくとも(女性)被害者の証言は重く、それを優先して信用すべきと民主党は強く主張した。ところが今度は、今年の3月にバイデン氏の元スタッフが1993年に性的暴行を受けたと主張。カバノー氏と似た状況にも関わらず、民主党は証拠が不十分として取り扱わなかった。上院審議で共和党がこの矛盾を持ち出し、議論が最高裁判事指名からバイデンの資質問題へ飛び火することは是非とも避けたいところである。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

米大統領選世論調査のカラクリと盲点 ~ 回答者バランスと隠れトランプ票

以前から大統領選は世論調査が示すよりも混戦しており、大統領選を左右する最も重要な要因は「投票率」と指摘して来た。世論調査がミスリーディングである具体的な要因として二つ挙げられる:①回答者バランス(比率)と②所謂隠れトランプ票。回答者バランスは投票率に直結する事項である。そこで直近の世論調査を例にこの二つのポイントを解析してみたい。

回答者バランス(比率) ~ 先週、目を引く世論調査結果が発表された。ABC/ワシントンポストが集計したフロリダ州に限った大統領選支持率調査で、トランプが51%対47%でバイデンを逆転したのである(下記表参照)。ご存じフロリダ州は最大の激戦州、1929年以降同州を落として大統領選に勝利した候補は居ない。直近でトランプが追い上げているとは言え、この結果は疑問視せざるを得ない。何故なら世論調査で定評のあるモンマス(Monmouth)大学が1週間前に同じ(フロリダ州)調査を行ったところ、バイデンが50%対45%でリードしているのだ。僅か1週間の間に9ポイントの逆転は考えられない。

ワシントンポスト対モンマス大学世論調査の違いの大部分は「回答者比率(バランス)」で説明できる。ABC/Washington Postの調査ではフロリダ住民613人が回答、そのうち民主党員が30%を占めるのに対して共和党員の回答は35%である。共和党員の回答者比率が多いため、支持率がトランプ優勢に傾いたのである。逆にモンマス大学の調査は428人のフロリダ住民が回答、うち民主党員が35%を占めるの対して、共和党員の比率は31%と低い。このため、モンマス調査はバイデンに有利に傾いているのである。世論調査は、結果だけを受け入れるのではなく、裏のデータ構成を理解しないと読み間違える可能性がある。更に対人口比では、民主党員の方が多いため、一般的に世論調査はバイデンにより有利な結果になりがちである。

回答者バランス(比率)に関しての最重要ポイントは、大統領選での「投票率」に値する。一般投票に関してだが、11月3日の投票率が上記のABC/Washington Post調査に近ければ、トランプが勝利する。逆に投票率がモンマス大学の比率に近ければバイデンが勝つ可能性が高い。世論調査は、当日の投票率を予想・反映できないため当てにならないことが多いのである。ただし、世論調査はその時に勢い・流れを把握するのに有効である。その意味では、現在のモメンタムはトランプにあると言えよう。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

隠れトランプ票 ~ 回答者バランスの他に、世論調査が事態を捉えられないことがあるのが、所謂「隠れトランプ票」。隠れ票を正確に集計することは難しく、主観的に探るしかない。2ヶ月ほど前に民主党選対本部の幹部と話した際、彼も「隠れトランプ票」を意識しており、大体5%差し引く必要があると語った。当時、大半の世論調査でバイデンが二桁の差を付けてリードしており、バイデンの勝利を確実視するメディア・評論家も少なくなかったが、同幹部はバイデンがリードしつつも混戦に近いとの認識を示した。そこで隠れトランプ票を示唆する世論調査を二つ紹介したい。

FOX Newsが8月12日に実地した調査で、「自分はトランプ・バイデンのどちらを支持するか?」との問いに49%がバイデンに対して42%がトランプとなった。ところが、「隣人はどちらを支持すると思うか?」と聞くと、バイデンは34%と答えるもトランプが39%と上回った。心理学上、「隣人」というのは自分の本心を指し、これが「隠れトランプ票」を反映すると解釈される。

更に、著名調査機関のピュー・リサーチ社の世論調査(同じく8月12日)を見てみたい。そこでもバイデン対トランプの支持率は53%対45%とバイデンがかなりの差を付けた。しかし、「(自身の支持とは関係なく)客観的に見てどちらが勝つと思うか?」と問うと、46%がバイデンに対して51%がトランプと答えたのである。この質問も本音あるいは潜在意識を探るもので、「隠れトランプ票」を反映していると解釈できる。奇しくも両調査による「隠れ票」は、上記で民主党幹部が指摘した5%の目安と合致する。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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