ジョセフ・クラフト 特別レポート

共和党全国大会初日を検証

掲載日:2020年08月25日

民主党と共和党の党大会を全部視聴、少なくとも第1夜の評価として軍配は共和党・トランプに上がったと思う。CNNのキャスター・コメンテーターが批判材料を探すのに苦労するように良い出来上がりだった。やはりメディア演出においてはトランプの方が一枚も二枚も上である。民主党党大会の失敗は「政策提言」に乏しく「トランプ批判」に着手したことに共和党は気付き、第1夜はバイデン批判を抑え、政策提言を重視した構成となった。1夜目を視聴した結果、下記に5つのポイント・印象を紹介したい。

▶ ポイント① 放送演出・構成 ~  民主党党大会から学習出来た分、初日の共和党大会の放送内容の方が出来が優れていたと思う。リアリティテレビのプロデューサーを起用し、トランプも自ら指示したことで、目まぐるしいビデオを削減、一般庶民をより多く出演させ、生放送的な演説によって流れに強弱が生まれ単調な印象を抑制、より見応えのある番組構成となった。実際生放送的な雰囲気と一般庶民中心の構成は、従来の党大会の雰囲気に近づき、より親しみやすかった。プロのプロデューサーを迎えるとここまで違うのかと感心した。推測だが、明日発表される第1夜の視聴率は民主党を上回るのではないか?

▶ ポイント② メッセージ ~ 共和党大会のメッセージを民主党と異なり「政策提言」を中心に据えた。「反トランプ」の感情論に終始した民主党に対し、共和党は「政策」を主張し、これまでの結果をアピールした。批判色を全面に出した民主党大会は、バイデンの「光になる」演説とは裏腹にネガティブ・悲観的な印象があった。それに対して少なくとも1夜目の共和党大会はより建設的な印象を受けた。トランプ・プロデュースの大会にしては意外である。

▶ ポイント③ 第1夜の立役者 ~ 民主党は終始ハリウッド役者・セレブを司会に起用したため、民主党の真骨頂である庶民・草の根的要素が薄かった。更に、司会者が冗談や雑談をすることで無駄に時間を使ってしまった。共和党は対照的に司会者を立てず、一般庶民の出演者を中心に番組構成を立てたのは効果的だった。放送が開始され、セレブは無論、共和党執行部の挨拶も無しにすぐに一般有権者の演説で始まった。政局演説と違って一般有権者の訴えは新鮮味があり、親しみやすくそして説得力も高い。更に民主党は、ミシェル・オバマ、ヒラリー・クリントン、ナンシー・ペロシ、バラク・オバマなど大物・セレブ政治家を放送のハイライトとなり、幾分エリート色を出したと共に期待値を高めてしまったのが仇になったのではないかと思う。共和党は冒頭に、5人の市民・専門家のビデオ出演を流し、トランプ支持よりも自分たちの経験・思想を語ったのは非常に効果的だったと感心した。冒頭の出演者とそれぞれのメッセージは下記の遠いである。

  A )NYK市カトリック市大司教 ~ 宗教の重要性
  B )第二次世界戦争退役軍人 ~ 愛国心
  C )保守政治非営利団体 ~ 保守思想・生き方を守る
  D )学校教師 ~ コロナ対策・学校再開を評価
  E )小企業オーナー ~ コロナ対策・経済支援を評価)

この他に現役看護師と医師が出演し、トランプ政権のコロナ対策を評価。強かなだなと思ったのは全体的なコロナ対策そして結果に触れるのでは無く、トランプ政権が打ち出したいくつかの対策が如何に現場にとって重要だったかを指摘した。更に治療薬の早期認可(レムデシビル)やワクチン開発支援を高く評価した。政権がコロナ対策を擁護しても説得力は無いが、現場の専門家の見解を聞くのは新鮮且つ説得力がある。それでもトランプ政権のコロナ対応の失敗は変わらない。

▶ ポイント④ 個別テーマ(ビデオ・メッセージ) ~ 演説の合間に造られたビデオで政策提言や成果を主張。軒並み反トランプのビデオを流す民主党よりは面白いし、見応えがあった。ビデオ・メッセージは下記四つのテーマに分けられる。

 A )「Promises Made/Promises Kept(選挙公約を守る)」 ~ 減税、貿易協定見直し、イラン核合意破棄、エルサレム首都肯定、対中強硬姿勢など選挙公約を執行、ワシントン・エスタブリッシュメントとの違いを強調した。
 B )「コロナ対策」 ~ 実に強かだと思った。トランプ政権のコロナ対応を正面から擁護するのは無理がある。そこで過去に民主党政治家によるコロナ発言をビデオにまとめ、民主党員による見識の甘さやトランプ評価を紹介した。例えばクオモNYK知事の「ホワイトハウスの対応に感謝している」とかペロシ下院議長が2月に語った「コロナは心配ないわ、(地元の)チャイナ・タウンに遊びに来て」コメントなどを紹介した。更に、トランプ大統領と元コロナ患者とのグループ会談を企画、一般市民の評価を紹介した。
 C )「法と秩序」 ~ 人権デモ・警察解体運動以降に大都市での凶悪犯罪が急増しているのは事実(7月のシカゴで殺人が2.4倍)。特に民主党市長の街での犯罪が高まっている。ニクソンが68年に発掘した「サイレント・マジョリティ」に訴えた。
 D )アメリカ人を守る(人質の解放) ~ トランプは何故か歴代政権より人質の解放に成功している。そこでトランプ自身とシリア、イラン、ヴェネズエーラそしてトルコで拘束されたアメリカ人人質と対談。国内のアメリカ人だけでなく海外のアメリカ人を守っていることをアピールした。

▶ ポイント⑤ トランプ・ファミリー(大会唯一の失敗) ~ 1夜目の明らか且つ最大の失敗はトランプ・ジュニアと彼のガールフレンドのキンバリー・ギルフォイルの出演である。特にトランプ・ジュニアのガールフレンドでトランプ選対幹部でもあるギルフォイル女史の演説はあまりにも感情的且つ攻撃的。メッセージが不明で不気味あるいはシラケるものだった。トランプ・ジュニアも民主党批判を並べるだけで、メッセージが伝わらなかった。第1夜が醸し出していた「政策重視」の建設的なメッセージから突出して浮いていた二人だった。

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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