ジョセフ・クラフト 特別レポート

USD安は最終局面? ~ ユーロ高調整リスクに注目

掲載日:2020年08月07日

ドル安は続くのか? ~ 3月下旬からドル安基調が始まり、直近でドル売りが加速した。ドル指数(DXY)は、3月20日の102.75高値から下げ始め7月20日には96.0から現在92後半と2年ぶりの安値圏まで落ちている。USD/JPYも連動、3月25日に111円台の高値を付けてから徐々に円高へ進み、7月20日の107円台から一気に104.18の安値を付け、現在105円半ばで推移。ポジションの観点から考えるとドル安は最終局面に入っている可能性がある。下記左チャートは、シカゴIMM通貨先物市場での投機筋ドル取引ポジション(青棒)とドル指数(赤線)を表す。7月28日付けのIMMドルの解約枚数は▼6,727枚の売り越し。直近はドル・ショートに転換したばかりでもう少しは安値基調が見られるかもしれないものの、ドル・ショート・ポジションが長期に持続することは異例で、売り越し額も大体1万枚が限度であった。IMMポジションは広い意味でヘッジファンドや貿易実需など需給を反映することがある。すぐにドルが反発するわけではないが、早ければ1ヶ月以内、遅くとも3ヵ月以内にはドル買い基調に転換すると予想。

ユーロ高調整リスク高まる? ~ ユーロが過度に買われており、調整リスクに晒されていると考える。下記右チャートは円、ユーロ、ポンドそして豪ドルの先物ポジション。7月28日時点でのユーロ・ロングは157,559枚(197憶ユーロ)と過去最大の買い持ちを計上。EUR/USDは現在1.19近辺と2018年5月依頼の高値水準で取引。6月の1.11台から2ヶ月弱で0.8ポイントと急激に上昇しており、買い持ちポジションの調整リスクが高まっていると考える。少なくともこの水準でユーロ買いは要注意。

サプライズ指数は米株安とドル高を示唆?

6月3日のレポートで、経済情勢が悪化しているにも関わらず株高に転じる背景に市場の「ショート・ポジション」を挙げさせていただいた。金融アナリストや投資家らは悪い景気指標を予想して株売りに転じていた。しかし、実際の景気指標は予想を上回るポジティブ・サプライズの展開が見られ、投資家は株ショートの買い戻しを余儀なくされた動きが一定程度あったものと思われる。それを象徴するのがサプライズ指数である。サプライズ指数は事前の経済指標予想対実際のデータの差を指数化したもの。実際のデータが事前予想を上回ればサプライズ指数はプラスに転じ(ポジティブ・サプライズ)、逆にデータが予想を下回ればマイナスに動く(ネガティブ・サプライズ)。

下記左チャートはIMM先物S&Pポジション(グレー棒)対アメリカのサプライズ指数(赤線)を表したもの。サプライズ指数が急速にプラス転換する中、積み上がっていて株先物の売り越しポジションが買い戻されているのが見受けられる。6月19日時点で30万枚の多額ショート・ポジションが、ほぼゼロまで解消されている。その間、サプライズ指数は、6月の▼53から7月16日には+270と記録的な高値を付ける。このサプライズ指数の動きは、実態経済が強いというよりも、エコノミスト・アナリストらの予想が悲観的過ぎたことが背景にあったと思われる。そこで現在、米サプライズ指数には頭打ち感が見られる(下記右チャート参照)。EUサプライズ指数もアメリカを追随して高値圏に近づいている可能性が考えられる。

ここで一つ注目されるのがサプライス指数とドル及び米株の相関性である。下左チャートは米サプライズ指数対USD指数の動きを示し、サプライズ指数が急伸した4月末ごろからドル安基調が加速している。株式においてはサプライズ指数の上昇に比例して株価も上昇して来た。今後サプライズ指数が低下し始めるようであれば、ドル高そして株安へ転換する可能性が推測される。

米雇用統計検証 ~ PPP(給与保護プログラム)は下振れそれとも上振れ要因となるか?

今夜、金融市場が重要視する景気指標である(7月)雇用統計が発表される。5月に続き6月の雇用統計は市場予想を上回り、株式を押し上げる要因となった。雇用統計上振れの背景にはPPP(給与保護プログラム)が挙げられる。PPPの仕組みを簡単にまとめると、ローン申請を行いその金額の75%を雇用・給与に充てる必要がある。逆に25%は事業主が自由に使える資金となる。このため雇用促進のインセンチブとなる。もともとプログラムの期限が6月30日。6月の雇用統計が堅調だったのは期限内にローン申請を済ませるために雇用が増えたと思われている。その後、PPPは7月6日に再開され8月8日まで期限が延長された。

では今夜発表される7月雇用統計も上振れするかと聞かれれば、6月のように簡単な話では無いと思われる。結論から言うと7月の統計は市場予想を下回るのではないかと推測する。先ず、5・6月統計予想を市場が低く見積もっていたが、今回は157万人と楽観予測となっている。次にPPPの申請期間が挙げらる。PPP申請期間が6月30日で切れて7月6日から再開されたことで6月統計より申請期間が1週間弱少なくなっている。更に雇用統計は月の1日から30日を集計するのではなく大体前月の最終週から今月の第3週までを含む。そこで新たな期限が8月8日まで伸びて余裕が出来たことで7月半ばの申請が多少和らいだことが推測される。逆の意味では、相当駆け込み申請が多かったと思われる6月最終週の雇用が7月データに含まれていることから上振れ要素もある。最後に7月ADP雇用者数が事前予想の120万人に対して16.7万人と大きく下回ったことも気になる。いろいろ悩んだ結果、個人的には上振れリスクよりも下振れリスクの方が高いのではと推測する。さあ、今夜は如何に・・・。

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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