ジョセフ・クラフト 特別レポート
ワシントン・ポスト紙予想から検証する米副大統領候補事情
掲載日:2020年07月10日
3月30日のレポートで、民主党副大統領候補が大統領選の行方を大きく左右する可能性に言及した。ワシントン・ポスト(WAPO)は4月から「最も論理的な副大統領候補11人」と題した選任予想を毎月公表している。4月9日のリストから6月26日の最新リストで予想順位が結構入れ替わっている(下記リスト参照)。ワシントン・ポストの6月26日候補者予想リストから直近のトレンドを検証してみたい。そこでWAPOの副大統領候補予想リストから二つのトレンドに着目したい: ①黒人候補の躍進そして②バイデンは左派有権者を囲い込めてないこと。
①黒人候補の躍進 ~ 警察暴行事件・BLMによって副大統領選びは黒人候補にシフトしている。ワシントン・ポストのリストでは、4月時点黒人候補は4名でカマラ・ハリス以外は下位にランク。ところが6月のリストには黒人候補が6人に増えている。更にトップ5のうち4人が黒人候補となっている。その4人とは、カマラ・ハリス・カリフォルニア州上院議員、ヴァル・デミングス・フロリダ上院議員、キーシャ・ボトムス・アトランタ市長そしてスーザン・ライス元安全保障担当(オバマ政権)。この中で全国的知名度を持つのはカマラ・ハリスのみ。個人的に、知名度以外でハリス女史はあまりプラスが無いと考える。ハリス女史は真の黒人では無く(母がインド、父はジャマイカ)、カリフォルニア州は既に民主党が牙城、更に黒人逮捕歴が増加した司法長官時代の経歴は逆に突っ込まれるリスクがある。フロリダ州は最大の激戦州でここを奪還すれば勝利に大きく近づく。その意味ではオーランド市初の女性警察長官のヴァル・デミングスは魅力的。しかし、国政経験に乏しく、何よりカリスマ性に欠けるのが難しい。ボトムズ市長はアトランタで銃撃事件が多発、街が混乱に陥っており任命は厳しいと思われる。ライス女史は国政経験に豊だが、選挙経験が無い。彼女を押すのはワシントンのエスタブリッシュメントで全国的知名度に乏しい。更に彼女はワシントンDC出身で地元州を抱えていないことは選挙を戦うのに厳しい。リスクを取らないバイデン氏としては、おそらく無難な選択肢であるカマラ・ハリスで行くのだろう・・・。
②左派有権者 ~ 黒人有権者が上位を占める中、ワシントン・ポストは何故かエリザベス・ウォーレン(今更?!)を2位に置いた。これは、ジョー・バイデンがプログレッシブ(進歩的)・左派有権者を取り込んでいないことを表す。WAPOやニューヨークタイムズ紙は2016年のクリントンのように左派票を取りこぼす懸念を抱いている。黒人票を確保したバイデンの弱点はラテン票と左派や若者票である。更にウォーレン女史ならカマラ・ハリスより知名度も高く、もう一つ重要である郊外の白人女性票も取り込める。ウォーレンという選択肢は逆に民主党中道派を孤立させるリスクを含む。個人的にウォーレンの確率は低いと考える。70歳以上の白人大統領と副大統領候補は今の世論に合わない。もう一つは、ウォーレンとバイデンはケミストリーが合わないと考えるためハードルが高いであろう。
出所:ロールシャッハ・アドバイザリー
出所:ロールシャッハ・アドバイザリー
【筆者プロフィール】
ジョセフ・クラフト
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る
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