ジョセフ・クラフト 特別レポート
最悪の米社会情勢なのに株高? 更なる上昇を示唆するデータとは・・・
掲載日:2020年06月03日
コロナ感染第2波が懸念されるも株価は上昇、米中対立激化でも株価は上昇、そして全米で暴動が拡大しても尚株上昇。現在、外国投資家を中心とした期待先行相場、短期的な調整が入ってもおかしくないと思いつつも、実は更なる上昇を示唆するデータがある ~ それはポジショニング。
S&Pは底値を付けた3月23日から現在36%上昇している。そこで大手外国投資家らにヒアリングしたところ、主だった株ロング(買い持ち)はとても少なかった。買い持ちで利食い売りをしたのかと思いきや、むしろショートから入り、上がっては買い戻し、また売ってまた買い戻すの繰り返しで損失を抱えている投資家も少なく無かった。そこで投機筋の株式ポジションの一つの指標としてIMM先物市場のS&Pポジションを検証したところ、未だに多額のショート・ポジションが積みあがっている。
5月26日時点で、IMM先物S&Pポジションは276,708枚の売り越しとなっている(下記左チャート参照)。これは2015年10月6日に付けた▽278,179枚数以来のショートポジション水準である。2000年以降に大きく売り越した時期を検証すると、サブプライム問題(2007年)、ギリシャ・欧州危機(2011年)、中国ショック(2015年)そして米中貿易摩擦(2018年)が挙げられ、今回のショートはそれらに匹敵する規模である。多くの投資家はコロナ渦の再熱あるいは米中対立激化を懸念して買い基調に乗り遅れてしまっているようだ。つまり投資家にとっての現株価リスクは値下がりでは無く、むしろ値上がりと言える。下落のリスク要因は十分残っておりこのまま右肩上がりで行くとは思い難いが、少なくとも海外投資家は、「上がったら売り」から「下がったら買い」へと投資心理が転換しているようだ。今後調整が入っても下落幅は限定的、むしろ更なる上昇リスクがあると少なくともIMMのポジションデータは示唆している。
最後に注目な動きとして、米株に出遅れた外国投資家は日本株や一部アジア株の買いに動いている。コロナ感染抑制に成功した日本・アジア(つまりより早い経済回復が期待)に加え、予てからアンダーウェイト基調の是正が要因のようだ。直近、日経平均がダウ・ジョーンズの値動きを上回っている背景にあると考える。
出所:ロールシャッハ・アドバイザリー
【筆者プロフィール】
ジョセフ・クラフト
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る
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