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ジョセフ・クラフト 特別レポート

米経済対策の交渉舞台裏 ~ 週内の合意を急ぐ・・・

掲載日:2020年03月11日

民主党上層部とのパイプを持ち、議会(特に下院)との交渉手腕が期待されたマーク・メドウズ新主席補佐官はコロナ・ウイルス(感染の疑い)で自主的に2週間の自宅待機を課せ、ホワイトハウスにはまだ足を踏み入れてない。既に民主対ホワイトハウスによるコロナ向け経済対策の中身に関してせめぎ合いが始まっているとのこと。トランプは報道の通り、休業による減収を和らげる給与減税を推し進めたいが、民主党は学校給食など社会インフラの補助金や失業保険の拡充を主張。両党が既に合意出来る政策としては、有給休暇の柔軟化・拡充が挙げられる。

ワシントン在住でホワイトハウスに近い知人曰く、本来はトランプ大統領とペロシ下院議長が直接協議して大枠の方向性を定めるのが望ましい。しかし、トランプとペロシは会うどころか口もきかない仲なので直接交渉は無いとのこと。更にメドウズ主席補佐官も不在のため、ペロシ議長との交渉役にムニューシン財務長官が任命された。ムニューシンとペロシ両者は去年の予算協議でも直接交渉しており、合意に至った経緯がある。マコネル上院院内総務は早急の経済対策の執行に意欲的であり、交渉を積極的に後押しするとのこと。

民主・共和党の執行部が経済対策を急ぐ理由には、土曜日から来週にかけて春休みに入るからである。コロナによる危機的状況を考えれば、春休みなんて延期・廃止すべきとの考えもあろう。しかし、危機的状況だからこそ議員らは、地元に帰り状況確認や有権者との対話を重視したい考え。更に、大統領選を意識して両党共に経済対策の足を引っ張ったと責められたくない。従って雑かもしれないが、今週中に大枠の経済対策がまとまる可能性が高い。しかし土壇場になって、トランプ大統領がどさくさ紛れの壁建設費を要求したり、民主党を逆なでする言動や要求をする可能性をホワイトハウス幹部は密かに心配しているとのこと・・・。そこで大統領を抑えるためにも、ムニューシンの脇をがっちりクシュナーで固めたいとの考えがあるようだ。

民主党予備選(ミニ・チューズデー)を検証 ~ サンダーズ失速、バイデン圧勝の様相・・・

2016年の所謂ミニ・チューズデーはサンダーズ氏にとってヒラリーを最後まで追い詰める復活劇の始まりとなったが、2020年は墓場になる可能性が高い。代議員票が最も多いだけでなく、大統領本選を左右すると言われ最も重要であるミシガン州に関しては、開票85%の時点でバイデン氏が52.8%対37.8%と15ポイントの大差でリードしている(下記表参照)。その他の州でもバイデン氏が代議員票を倍近い率でリードを広げている。サンダーズ氏が確実に取れるとされたワシントン州でも32.7%でほぼ同率の接戦となっている。

今回、バイデン勝利の最大要因として二つ挙げられる: ①女性票を取り込んだことと②若者層の低投票率(詳しくは下記分析参照)。ミシガン州で圧勝した勢いは、フロリダ、オハイオそしてアリゾナなどの激戦州が控える来週(17日)の予備選にそのまま繋がり、バイデン優勢の構図はほぼ固まったと思われる。15%ルールの中でサンダーズ氏が過半数の1,991票に辿りつくには奇跡が無いと難しい。バイデンがサウスカロライナ州を機に奇跡を起こしたので、サンダーズ氏を見捨てるのは早過ぎるかもしれなが、民主党の大統領指名はジョー・バイデン氏で決まったと考える。

出所:CNN

さて、上記結果をより深く検証するべくワシントン・ポストの出口調査を分析してみたい。上記でも指摘したように女性票(多さ)と若者票(少なさ)が明暗を分けたと言える。

性別 ~ 先ず、投票率に関して47%対53%で多少女性が多かった。男性票は、両者互角に分け合った(下記左チャート参照)。バイデン圧勝要因の一つとなったのが57%の女性票を取り込んだことである。サンダーズ氏は39%に留まった。本選では黒人、ヒスパニックそして女性票が勝敗のカギを握るとされる。バイデンが黒人、サンダーズがヒスパニック票を囲い、残っていた女性票はバイデンに軍配が上がった結果となった。女性が傾いた要因として、ミシガン州のウィトモア州知事や元大統領候補のカマラ・ハリスなど著名女性政治家が相次いで推薦を表明したことが挙げられる。

年齢 ~ 予想通り、サンダーズが若年層そしてバイデンが高齢層を取った(下記右チャート参照)。しかし、勝敗を分けたのが投票率。「18~29歳」と「30~44歳」を占める若者有権者層は、全体の36%を占めるのに対して、45歳以上は63%を占める。スーパーチューズデーでのサンダーズ氏敗因として若年層の投票率低下を指摘したが、今回も同様の問題が浮き彫りとなった。2016年に見られた若者の盛り上がりが今回は明らかに欠けている。これでは高齢者を囲い込むバイデン氏の方が圧倒的に有利である。

出所:Washington Post

候補選び ~ 何度も指摘して来たが、過去と今回の民主党予備選の最大の違いは、有権者が候補を選ぶ要素・理由が従来の政策では無く、トランプに勝てるというもの。「政策に共感」を重視する有権者は全体の38%を占め、37%対57%の差でサンダーズが支持を受けた(下記左チャート参照)。しかし、「トランプに勝てる」候補を優先する有権者は全体の57%を占め、これらは61%対35%と圧倒的にバイデンを支持。サンダーズ氏は政策重視型候補であり、これに関連して懸念すべきデータがある。「現在の医療制度を全国民型医療制度に切り替えることを支持するか?」との問いに57%が賛成で38%が反対と回答。サンダーズが主張する最重要政策に6割近い有権者が同意しているにも関わらず、バイデン支持に回っているということは政策よりもトランプに勝つことを優先しており、サンダーズ氏にとって不利な状況と言えよう。

イデオロギー ~ 「リベラル・左派」層は69%対30%と予想通りサンダーズ氏を支持、「中道・保守」も63%対30%と予想通りバイデンに回った(下記右チャート参照)。勝敗を分けたのが、その間にある「ややリベラル」層で、55%対42%とバイデンを支持した。「ややリベラル」と言いつつも、上記で指摘したようにこの有権者は政策よりもトランプ(勝利)を重視しているため、イデオロギーはサンダーズに幾分近くとも、強いこだわりを持つ訳では無い。投票率に関しても政策を重んじる「リベラル・左派」層は全体の22%に満たない。逆にバイデンが制した「ややリベラル」は全体の40%と最も多く、「中道・保守」の38%を合わせると全体の78%と大半の有権者を占める。

出所:Washington Post

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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