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ジョセフ・クラフト 特別レポート

10日のミシガン州予備選で民主党大統領候補が事実上決まる・・・

掲載日:2020年03月09日

以前に、大統領予備選には三つの山場があると紹介した。最初の山は勢いを付けるため、アイオワ州を筆頭に2月に予定される四つの予備選。ここでは、代議員票が全体の僅か4%に満たないため、得票率で1位を獲得し知名度と献金を上げることが最重要事項。そして二つ目の山は代議員票の3分の1を占めるスーパーチューズデーで他の候補をリードすること。民主党の予備選は15%ルールがあるため、2強戦だとス―パチューズデーで得たリードを逆転するのは容易では無い。三つ目の山は代議員票の4分の1を占める3月10と17日の予備選。ここで重要なのは、大統領本選を左右すると言われる激戦州が集中していることである。その激戦州を予備選ですら勝てない候補が本選で躍進する期待が持てないことから、執行部や大物献金者の支持がここで固まることは少なく無い。中でもミシガン州は最も重要な激戦州の一つである。

結論から言うとミシガン州はジョー・バイデンが制すると予想、圧勝するシナリオをが考えられる。ミシガンで勝利すると、翌週に控えているフロリダ州、オハイオ州、そしてアリゾナ州など他の激戦州を優位に戦うことが出来る。サンダース氏は日曜日に予定していたミシシッピ州での遊説をキャンセルして急遽ミシガンに切り替えたことは苦戦を強いられている証拠と考える。バイデン氏がミシガン州で単に勝つだけでなく、大勝する要因を三つ挙げる: ①黒人票、②若年層の投票率そして③効果的な推薦者の存在。

ご存じのようにバイデン氏は黒人有権者からの支持が高く、サンダース氏はラテン系の支持を持つ(下記左表参照)。そこでミシガン州の人種構成を見るとラテン系有権者人口は全国平均に比べ相当低く、黒人層が多少ながら多い(下記右表参照)。人種要因ではバイデンに分があるということだ。次に若年層(18~29歳)だが、サンダース氏はこの世代から圧倒的な支持がある。しかし、この世代が投票場に出向いていない。下記表は2016年と2020年民主党予備選の若年層投票率を比較したものである。アイオワ州を除いて若者層の投票率は軒並み2016年を下回っており、この状況がミシガンでも続くとサンダース氏にとって相当不利となる。最後に著名推薦者による影響力だが、ミシガン州で高い人気を誇り、民主党の若手ホープとされるグレチェン・ウィトモア州知事がバイデンを正式に推薦すると表明した(下記写真参照)。48歳のグレチェン知事(女性)は若者そして何よりも女性に強い影響力を持つ。因みに彼女は副大統領候補筆頭の一人と個人的に注目している。更に黒人であるガーリン・ギルクリスト副知事(37歳)もジョー・バイデンを正式支持した。バイデン氏は既に黒人有権者から支持を得ているが、副知事の後押しで若年層の黒人票(特に男性)の囲い込みが期待される。

2016年のミシガン州予備選でサンダース氏はヒラリーを下しており、最終指名を受けるには今回もミシガンでの勝利は不可欠と考える。最新のデトロイト・ニュース州世論調査によるとバイデン氏が29%で23%のサンダース氏をリードしている。個人的に、バイデンは現在更にリードを広げているように感じる。万が一バイデンが二桁の差を付けてミシガンを制するようなことになれば、民主党の大統領指名を実質手中にしたことを意味する。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

新主席補佐官にマーク・メドウズしが選ばれた本当の理由・・・

ウクライナ疑惑の対応がマルバニー主席補佐官代理にとどめを刺したのは間違いないが、もともとトランプと相性が合わないと言われて来た、解任は時間の問題だった。それにしても「北アイルランド担当特使」とはあまりにも冷血な移動だ。因みに前北アイルランド担当特使は、80年代に大統領最有力候補ながら不倫スキャンダルによって政界の表舞台から消えたゲイリー・ハート氏である。北アイルランドには失礼だが、このポストは言わば島送り的というか腰掛的な意味合いがあるのである。

さて一般的には、マーク・メドウズ氏が選ばれた理由は保守強硬派そしてトランプの強い支持者だからとされている。それは間違い無いが、他に隠れた要因があるようだ。因みにメドウズ氏はノース・カロライナ州出身の下院議員で、共和党下院議員によって結成される保守思想の議員連盟の「フリーダム・コーカス」の議長を務める。メドウズ氏の本当の価値は「ディール・メーカー」としての力量であろう。民主と共和党が対話すら出来ない現在の政界で、メドウズ氏は民主党執行部とのパイプを持つ数少ない政治家である。同氏は、民主党で影響力を持つ(故)イライジャ・カミングズ議員と親しく、現下院院内総務のステニー・ホイヤーとも信頼関係を持つ。メドウズ氏は、政策的に民主党と何も共通するものは無いが、法案成立のためのネゴやディールに長けているとされている。つまりメドウズ氏の任命は単にトランプの応援団長だけで無く、トランプが大統領選以降に民主党とディールを模索したい意思を表すものと推測する。2期目のトランプ政権はレームダック化どころか中流層への減税、インフラ投資あるいは壁建設など政策を積極的に推し進める意図があるのではないか。その前に再選は無論、上院を何が何でも死守することが重要となる。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

トランプのニックネーム(ブランド)戦術の効果を検証・・・

ウィスコンシン大学の調査によれば、テレビ・ラジオの「Sound Bite(ニュースを抜粋・集約した見出しあるいはコメント)」が1960年代の40秒から現在は8~9秒まで縮んでいると指摘。つまり現代の視聴者が把握するあるいは印象付かすためには一言・二言で完結に伝えなければいけないのである。SNSなど多くのメディア媒体に晒され、視聴者が選挙選やニュースに集中できる時間が非常に狭まっている。トランプはそうした現象を理解、ニックネームを通じてそうした傾向を利用している。トランプが付けるニックネームは相手の特徴を完結且つ鋭く捉え、ブランド化に成功している。

サンダース・バイデンのどちらが民主党の指名候補を受けても、ニックネームなどトランプのブランド手法に晒されることは間違いない。日本ではあまり馴染みが無いかもしれないが、トランプの真骨頂であり、効果的な選挙対策となっているニックネーム(あだ名)に着目してみたい。トランプはツイッターなどに「犯罪者ヒラリー」、「チビ・マイク」や「退屈なジョー」と言ったあだ名を紹介、それが定着している。一言で相手の特徴あるいは印象を植え付ける戦術は極めて効果的であり、これによって2016年共和党予備選、大統領選あるいは直近の弾劾決議など難関を乗り切るのとても役立っている。そこで過去のトランプの名ニックネームTop 10を紹介しながら、過去の選挙選で如何に効果的であったかを検証してみたい。

トランプの名ニックネームTop Ten

10位 Lyin Ted (Cruz): 嘘つきテッド、2016年予備選でトランプを批判して付けられたあだ名。一旦「嘘つき」とのレッテルを張られるとその後何を言っても信ぴょう性を疑ってしまうのが人間。ところが今やトランプ支持に回ったクルーズ氏のことをトランプは「Beautiful Ted」と呼ぶ変わりよう。

第9位 Little Marco (Rubio): アメリカの政治・選挙で身長や体格は極めて重要な要素である。背の低い候補が大統領選を勝つことは例外。「チビ・マルコ」と位置付けたことで、身長だけでなくトランプは自分との序列関係・優位性を潜在的に有権者の脳裏に植え付けたのである。2016年共和党予備選で身長に注目が集まり、これが呪縛となりルビオ候補はその後撤退を余儀なくされる。

第8位 Alfred E. Neuman (ブティジェッジ): これはアメリカ人にしか分からないであろう。アルフレッド・ヌーマンとは、70年代に流行った人気コミック雑誌「Mad Magazine」のキャラクター(下記参照)。ピート・ブティジェッジ氏はこのキャラクターにそっくり。コミックのファンも少なくないことから、親しみを持ってもらう意味ではブティジェッジ氏にプラスだったかもしれない。親しみは持てるが、大統領としては幼稚過ぎる・経験が少なすぎるとの印象を強めたネーミングと言えよう。

第7位 Pocahontas (ウォーレン): ウォーレン女史が立候補当初に売りにしたのが、インディアンの血を引いていること。マイノリティ票へのアピールの狙いがあった。そこでトランプが、ディズニー映画にもなった有名な女性インディアン、「ポカハンタス」と命名。当初は人種差別的とトランプに批判が集まった。しかしウォーレンが血液検査を受け、ほとんどインディアンの血が入っていないことが判明、更に大学入試に自分がインディアンであることをアピールしてハーバードに受かることを図った疑惑が浮上して「ポカハンタス」の意味が変わる。

第6位 Crazy Bernie: 「怒れたバーニー」とはサンダースの左派政策への頑なな拘りを指すもの。これはサンダース氏の熱烈な支持者には何ら効果は無いが、中道派の民主党員が共感、心を指すネーミングである。「(6兆ドルの増税が必要な)国民医療保険はクレージーだ、その上に大学無償化まで狂気の沙汰だ!」と思っている民主党に変わってトランプが見事に代弁。

第5位 Shifty (Adam) Schiff: Shiftyとは「不誠実」、「風見どり」あるいは「裏切り者」などの印象を与える。弾劾採決の急先鋒であるアダム・シフ下院情報委員会議長の信頼性を疑わせる効果的なあだ名となった。このニックネームが定着し始めた2019年10月末から11月初旬以降にトランプの支持率が回復、激戦州を中心に弾劾反対の声が高まったのもニックネームとの因果関係があったと思われる。

第4位 Sleepy Joe (Biden): スリーピーとは「退屈・つまらない」という意味。民主党指名候補の大本命として現れたジョー・バイデンの出鼻をくじいたと言えるニックネーム。そのあだ名を象徴するようにバイデン氏の答弁・演説は支離滅裂や意味不明、エネルギ―に欠け、盛り上がりに欠ける退屈な候補との印象を見事に植え付けた。更にニックネーム第2弾としてバイデン氏の息子にまつわるウクライナ疑惑を持ち出し、「Quid Pro Quo(見返り)」ならぬ「Quid Pro Joe」と呼んでいる。バイデン氏が大統領選を制するには、トランプのブランド戦略に打ち且つことが不可欠である。

第3位 Mini Mike (Bloomberg): 単にチビというだけでなく、大富豪かもしれないが器が小さい、人間としてセコイとの印象も含む。そして初の討論会にブルームバーグ氏が登場して惨敗するとこのニックネームの信ぴょう性が更に助長された。ネバダ討論会が致命的とされるが、ブルームバーグ氏の墓は既に「ミニ・マイク」というニックネームによって掘られていたと考える。更に、ミニの「M」とマイクの「M」を掛け合わせたことで語呂が良く、覚えやすいのも効果的。

第2位 Low Energy Jeb (Bush): 「息切れジェブ」とでも訳すべきか、2016年共和党予備選の本命であったジェブ・ブッシュを一言で殺したニックネーム。性格が優しい、人当たりが柔らかいブッシュ氏の性格をエネルギーに欠ける、息切れとの印象に置き換えた見事な発想。ブッシュ家がトランプを許さないのこのニックネームに尽きると言っても過言では無い。

第1位 Crooked Hillary (Clinton): Crookedとは「不正」、「不誠実」や「犯罪者」を連想させる。複雑で分かり難いメール疑惑を一言でまとめた見事なネーミングと言えよう。アメリカ国民の多くはメール疑惑の本質は未だに分かっていないが、「Crooked(不正をした)」との印象は深く脳裏に刻まれた。2016年大統領選勝利の直結した要因と言っても過言ではない。ヒラリーは未だにこのイメージの取りつかれ、苦しんでいる。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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