ジョセフ・クラフト 特別レポート

スーパーチューズデーと民主党予備選(途中)結果

掲載日:2020年03月05日

大統領予備選は何州勝ったよりも代議員票数が大事である。大方の駄馬票と裏腹にジョー・バイデンが躍進した結果となった。とりあえず現時点の開票結果を下記に紹介する。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

出所:Politico誌

スーパーチューズデー予備選検証

CNNのアンカーが、「昨日まで全く予想だにできなかった結果だ!」と驚くほどジョー・バイデンの躍進劇となった。バイデンの健闘及びスーパーチューズデーを含む民主党予備選に関していくつか指摘したいポイントを下記に紹介したい。

ポイント① 反トランプ票がバイデンに流れ込んだ: 2月の予備選を含むスーパーチューズデーの出口調査で、「候補に投票する要素は?」との問いに一貫して6割が「トランプに勝てること」と回答。サウスカロライナ以前はバイデンが低迷、トランプに勝てる感じが無かった。従って民主党有権者、特に中道派層は勢いのあったサンダーズ氏に傾きざるを得なかった。これがネバダ州でのサンダーズ圧勝に寄与した。ところが、サウスカロライナでの勝利によって中道・保守層の民主党有権者の目にはバイデンが心強く見え、政策でも共感できることから、土壇場でバイデン氏に乗り換えたことが出口調査からも伺える。「候補に投票する要素」との問いに「政策に共感する」を選んだ有権者は主にサンダーズを支持。こうした有権者の多くには強い左派思想が多く、熱狂的なサンダーズ支持でもある。逆に「トランプに勝てそう」だからと答えた有権者の43%はバイデンを支持、これが主流有権者の考えを反映していると思われる。イデオロギー別で見ても、トランプに勝てる候補を優先する傾向のある「ややリベラル」あるいは「中道・保守」層の大半はバイデンに流れ込んだ(下記右チャート参照)。これはネバダ党員集会と大きく転換した現象である。政策重視ならサンダーズ、打倒トランプ重視ならバイデンの構図が見え始めている。その場合6割の有権者は打倒トランプを優先している。

出所:Washington Post紙

ポイント② バイデン躍進は執行部と推薦者のおかげ: アイオワやニューハンプシャー州予備選でのバイデンと、スーパーチューズデーでのバイデンとでは何が変わったのか?答えは、本人は何も変わっていない。変わったのは2点: ①中道派票の統一と②影響力の推薦者。サウスカロライナの勝利を受けて民主党執行部が早急にブティジッジとクロブチャー候補に撤退するよう働きかけた。ブルームバーグ氏が残っているとは言え、これによって中道派票を大分統一することに成功した。そしてバイデン躍進に最も寄与したのが影響力のある推薦者の効果であろう。その最大の例がサウスカロライナ州の重鎮であるジム・クライバーン下院議員。当初バイデンはサンダーズに押され気味だったが、クライバーン氏が正式に推薦した2月26日を機に、黒人層が一気にまとまりモメンタムが高まった。スーパーチューズデーの例を挙げると、ウォーレンの地元マサチューセッツ州のサプライズ勝利の背景にはキャロライン・ケネディとケネディ家の推薦が大きく寄与した。更にバージニア州での圧勝にはヒラリー・クリントンの元副大統領候補だったティム・ケイン上院議員の影響があった。その他、ミネソタはクロブチャー候補そしてテキサスで人気が高いベト・オルーク元下院議員も貢献している。バイデン氏はほとんど広告展開を行わずとも、スーパーチューズデーで健闘出来た理由はこうした影響力のある推薦者の力を利用したことが大きい。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

ポイント③ ジェネレーション対決の様相を呈している:  サンダーズ対バイデンの戦いを最も象徴する対立軸は左派対中道派思想である。しかしもう一つの対立軸は年齢・ジェネレーション・ギャップと言えよう。出口調査を見ると年齢によってサンダーズとバイデンの支持基盤が分裂していることが伺える(下記チャート参照)。サンダーズ氏は「17~29歳」から61%そして「30~44歳」から43%と若者層から圧倒的な支持を受けている。逆にバイデン氏は「45~64歳」から42%そして「65歳以上」から48%と高齢者層に強い支持がある。若者の支持はムーブメント(波)と盛り上がる反面、投票率が下がり易いリスクもある。民主党予備選及び大統領本選の重要なカギは投票率と考える。その意味では高齢層の方が期待し易い。

出所:Washington Post紙

今後の予備選の焦点・注目事項

以前に、民主党予備選の序盤には三つの山があると紹介した: ①勢いを付ける2月、②票を積みあがれるスーパーチューズデー、そして③激戦州の力量を見せる4月中盤(10日と17日)。2月の予備選で代議員票をいくつ取ったかは大事でなく、むしろスーパーチューズデーに向けた勢いを付けれることが重要。2月予備選最後のサウスカロライナで波に乗ったジョー・バイデンがスーパーチューズデーにその勢いを持ち込み躍進した。序盤最後の山は3月10日と17日に控える予備選である。この二つ予備選重要性は単に全体票の23%を占める大型予備選だけではない。この予備選の重要性は大統領のカギとなる激戦州で健闘出来るか証明する場であるのだ。例えば10日にはミシガン州やミズーリ州が予定、17日にはフロリダ州、アリゾナ州、オハイオ州そしてイリノイ州が予定されている。予備選での代議員票を獲得していても激戦州で弱さを露呈してしまうと本選で戦えるか疑問視を残してしまう。逆に激戦州で強いと有力候補としての名を上げられる可能性がある。スーパーチューズデーに続いてバイデン氏が激戦州も勝ち取ると指名候補として一気に抜け出すことが予想される。逆にサンダーズ氏が強いと後半選に勢いを付けさせてしまう。明暗を分ける重要な戦いである。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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