ジョセフ・クラフト 特別レポート

ブルームバーグに買収された民主党執行部・・・

掲載日:2020年02月03日

12月19日の民主党討論会(ディベート)は、参加資格が厳しいため、マイノリティ候補が一人(アンドリュー・ヤン)しか居なかったことで批判が集まった。ペレス民主党選対本部長は、アジア系候補や女性候補の二人が入っており、ダイバーシティは確保されていると、基準を変えたり、緩和する必要は無いと断言した。ところが、今月19日に予定されているネバダ州討論会の参加基準が突如変更されたのである。しかもそれが、マイケル・ブルームバーグ候補に有利に働く内容である。

これまでのディベートは、献金者数と世論調査支持率の二つの基準を同時にクリアすることが必要だった。例えば、登録献金者は10万人以上且つ四つ以上の全国世論調査で5%を超える基準。今回は三つの基準が設けられ、そのうち一つだけクリアすれば良い。 三つの条件とは: ①全国あるいはネバダ州かサウス・カロライナ州の四つの世論調査で10%を超えること、②ネバダ州あるいはサウス・カロライナ州の二つの世論調査で12%を超えること、そして③アイオワ州あるいはニューハンプシャー州の党集会で少なくとも一つの代議員票を得ること。

ブルームバーグ候補は、自己資金で選挙戦を戦うため、献金者は少なく、数十万人のような基準はクリアできない。つまり、今後の民主党討論会への参加は無いということになる。参加基準から献金者数が無くなり、支持率だけに絞れるルールは明らかにブルームバーグ氏のみに有利。それどころか、支持率10%を割り込んできたブティジッジ氏、そしてエイミー・クロブチャーとアンドリュー・ヤン候補に不利。このままで行くと3人はネバダ州討論会から落ち、代わりにブルームバーグ氏が入る可能性が考えられる。民主党候補が混線、伸び悩む中、ブルームバーグ氏は討論会で知名度を上げ、多額な広告戦略によって、支持率を着実に増やしている。因みにブルームバーグ氏は立候補した11月21日から12月末だけでなんと約1億9,000万ドル(200億円)という巨額な金額を使っている。この金額は億万長者のスタイヤ―候補を除く全候補を合わせた額を超える(下記左チャート参照)。尚、ブルームバーグ氏は1月だけで更に1億ドル(約110億円)も広告に使っている報道がある。これほど凄まじい資金を使いながら、全国支持率はまだ8%。しかし、上昇基調にある。

ブルームバーグ氏の戦略は、予備選全票の34%が争われる3月3日のスーパー・チューズデー、そしてミシガン、オハイオ、フロリダなどの激戦州が集中する10日と17日の党集会(全票の23%を占める)で健闘し、予備選に弾みをつける狙いだ。それにはネバダ州の討論会でプレゼンスを上げることが重要である。討論会は、全国放送で露出度が上がるだけでなく、バイデンやサンダーズ候補らと肩を並べることで自身のクレディビリティ(格)そして信頼度が高められる。合法とは言え、金で選挙を買う露骨な戦略に出ている。

情けないのは民主党執行部である。討論会の基準変更は明らかにブルームバーグ氏の資金力に屈したと言わざるを得ない。下記右チャートは民主党の財政事情を表している。12月末時点で共和党の手元資金が6,232万ドル(約68億円)に対して民主党は8,390万ドル(約9億円)。しかもそのうち、8割近くが借金である。自業自得だが、弾劾決議によって献金が増えず裏目となった。ブルームバーグ氏からの献金だが、同候補立候補後の11月29日に民主党執行部に80万ドル(約8,800万円)を献金している。更に12月10日に激戦区の他の民主党に計1,000万ドルを献金。この献金は直接党本部には行かないものの、本来党から支払われるべきもの、よって民主執行部として肩代わりしてもらい助かる。2018年の中間選挙では、ブルームバーグ氏は1億ドル相当(約110億円)の献金を民主党に行っており、2020年も同様の献金を約束している可能性が考えられる。無論、ブルームバーグ氏に民主党も配慮すればの話・・・。民主党はトランプの「Quid Pro Quo(見返り」を批判するが、同罪では無いか?

民主党大統領予備選 ~ 資金燃焼率(バーン・レート)から見た選挙情勢・・・

不要に内部留保を貯め込んでいる民間企業には、米選挙選に習ってもらいたい。選対本部は目的(当選)のために最も有効且つ効率的に資金を投じる。支出のメリハリ、投資・支出の金額とそのタイミングが選挙選の明暗を分ける。そこで各候補の資金燃焼率(バーン・レート)を見ることによって、どの候補が勝負を掛けているのか、それとも失速あるいは離脱間際なのか垣間見られると思う。

バーン・レートとは収入対支出比率。例えば、バーニーサンダーズの10~12月期(Q4)の収入額が3,460万ドルで支出が5,010万ドル、よってバーンレートは1.45倍あるいは145%(5,010万÷3,460万)。それまで支出は収入を下回っていたが、アイオワ州党集会を直前にして勝負に出たと言えよう。それが功を奏したのか、サンダーズの支持率は1月を掛けて向上した。ブティジッジ及びウォーレン候補共にバーンレートが135%と155%と支出を大幅に上げ、勝負に出たようだ(下記チャート参照)。しかしウォーレン候補の使途には、やぶれかぶれ感というか瀬戸際間を感じざるを得ない。唯一収入が下がる中、バーンレートが一番高い。この勝負が成功しなければ、ウォーレン女史の離脱が早まる可能性がある。

注目なのはバイデン氏である。バイデン氏のQ4バーンレートは100%に止まった。これには二つの理由が考えられる: ①余裕があるため支出を抑えた、あるいは②資金難に陥っている。正解はおそらく両方と考える。先ず、バイデン選対本部は上位4候補の中で手元資金が最も少ない(下記チャート参照)。同時にバイデン氏は、2月後半のネバダとサウス・カロライナ党集会で挽回が見込まれており、アイオワとニューハンプシャーで勝負を掛ける必要は無い。バイデンとしては、アイオワで15%以上の票を獲得すれば良いと考え、少ない資金をセーブしたい狙いと考える。意味が分からないのが、エイミー・クロブチャーである。彼女はアイオワ州に全て掛けなければならないのにバーン・レートが89%。手元資金が500万ドルと他の主流候補より少ないため、勝負(支出)は1月にスラした可能性がある。残念ながら上院裁判でワシントンに拘束されたため、彼女の選挙戦に勢いを付けられなかった。

バーンレートから見た各候補の選挙情勢をまとめると、サンダーズがスパートを掛けリードに出た。バイデンは余力を残して後半戦に体力を温存。ブティジッジはバランスの取れた戦術で長期的にトップ3狙い。ウォーレン女史は最後の賭けに出た観があり、アイオワとニューハンプシャーで健闘が見られなければ、予想以上に早く失速する可能性がある。

大統領弾劾裁判スケジュール ~ マコネルの配慮で5日に否決持ち越し・・・

「大統領の行動は不適切だが、弾劾(罷免)に値しない・・・だからこれ以上証人は必要無い。」と語ったラマー・アレキサンダー上院議員は、自身だけでなく、共和党の主流議員そして共和党支持者(そして一部中道派)の本心を代弁したのである。どうでも良いことだが、中道保守の小生の心境でもある。先日のレポートで、証人招集の賛成に回る可能性のある候補としてミット・ロムニー(ユタ州)、スーザン・コリンズ(メイン州)、リサ・マーコスキー(アラスカ州)そしてラマー・アレキサンダー(テネシー州)と紹介した。1月30日の証人招集議決前夜のアレキサンダー議員の秘訣意向を受けて、マコネル院内総務の関心は残り3人の判断に移った。

アレキサンダ―議員以外の3人が賛成に回ると採決は50対50となり、ルール上は否決される。そこで、民主党は進行役・議長の最高裁裁判長(ジョン・ロバーツ判事)がタイ・ブレーカーとして一票を投じるべきと主張し、物議を醸すことが分かっていた(現に民主党の要請に、裁判長自ら拒否)。当然ながら、裁判長が議決に関わらないのは進行役・議長としての公平性を保つため。たとえ、採決に参加したくとも権限は院内総務のマコネル氏にあり、許されるものではない。マコネル氏としては新たな議論を避け、早期に弾劾採決に入りたいところ。そこでありがたかったのは、アレキサンダー議員が自身の決断を発表する前に、マコースキー議員と会談、自身の考えを伝えた。マコースキー議員の本心は分からないが、アレキサンダー議員によって否決が確実となり、党に逆らうインセンチブが無くなり、彼女も否決に回った。その結果、証人招集議決は49対51で綺麗に否決出来た。

本来はホワイト・ハウスの要請により弾劾採決を4日の一般教書演説前に行う予定だったが、マコネル氏は最後に幾つかの配慮を見せた。先ず、金曜・土曜の採決はあまりにも強硬過ぎると言う、マーコスキー議員ら中道派共和党員に配慮した。次に、証人招集に7割近くが賛成する世論に配慮、政治色を薄めるため一般教書演説後に遅らせた。最後に民主党にも配慮。これまで民主党の要望のほとんどを拒否して来たが、最後に最終弁論及び議員が個別の見解説明が出来る時間(3~4日)を設けた。マコネル氏は自身の判断をトランプ及びホワイト・ハウスに説明、理解を得たとのこと。結果、5日(水)に議決が行われ、確実に無罪が決まる。目先、弾劾裁判のスケジュールは以下の通りにとなった。

▶ 3日(月)11:00~15:00(EST): 弾劾裁判最終弁論(検察・弁護共に2時間)
              20:00(CST): アイオワ州民主党党員集会

▶ 3~4日(月~火):    上院議員による個人見解紹介(15分、CSPANで放映)
▶ 4日(火)21:00:     大統領一般教書演説 (約90分)
▶ 5日(水)16:00:     弾劾決議(否決・無罪が確実)

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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