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ジョセフ・クラフト 特別レポート

ポンぺオ国務長官が個人ツイッター口座開設 ~ 上院への鞍替え準備か?

掲載日:2019年12月16日

7月9日のレポートに、「トランプ再選のリトマス試験の一つとしてポンぺオ国務長官がカンザス州上院選に鞍替えするか注目」と指摘させていただいた。趣旨は、いづれ大統領出馬の願望のあるポンぺオ氏としては政治キャリア継続あるいはステップ・アップとしての選択肢。本来、国務長官続投が望ましいが、トランプが落選した場合、キャリアに少なくとも4年間の空白が生まれてしまう。それならば上院議員に就任すれば、共和党内で存在維持あるいは影響力を発揮、やがて大統領選出馬のタイミングが計れる。

そこでこの度、ポンぺオ氏が個人のツイッター口座を開設した。このタイミングでの口座開設は、鞍替えの準備に入ったのではないかと疑ってしまう。特に鞍替えの含みを匂わせるのが、自己紹介欄で「Kansan(カンザス州民」と明記したこと。更に顔写真の背景にはカンザス州の麦畑と思わせる絵は、カンザス州の有権者向けに意識したのではと推測したくなる。

鞍替えの理由としてポンぺオ氏の政治キャリアが最大ながらも、トランプ自身の心境の変化というもう一つの要因が加わった可能性がある。マコネル上院院内総務率いる共和党執行部は、現在立候補しているクリス・コーバック氏への自信・信任が薄い。コーバック氏は2018年の州知事選に出馬して落選、州知事で勝てない者が上院で勝てるかは疑問。1939年以降完全に共和党が掌握したレッド・ステートでの負けは許されない。認知度と人気共に抜群のポンぺオ氏なら勝利は確実視される。トランプとしては例え再選しても、上院が民主党に陥落してしまえば、今度こそ弾劾される。背に腹は代えられないのでカンザス州選が不透明であるならば、トランプからポンぺオ氏に鞍替えを要請することもあり得る。既にそのような状況になっているのかもしれない。二人の利害関係が一致したのかもしれない。いづれにしてもポンぺオ長官の動向には注視していきたい。

弾劾訴追検証①: 弾劾決議案とUSMCAの同日発表の裏事情・・・(ペロシ事務所情報)

12月10日のペンシルバニアの集会でトランプ大統領は、「They were very embarrassed by (impeachment), and that's why they brought up USMCA an hour after because they figure it will muffle it a little bit」と民主党は弾劾決議案に関して後ろめたさがあるからUSMCAを持ち出し、有耶無耶にしようとした」と主張。ワシントン在住の情報筋が金曜日にペロシ事務所の幹部と接触、今回の発表に関する裏事情に言及した。上記のトランプ主張はまんざら的を外していない。幹部の主張には(ペロシ議長への)一定のバイアスを差し引く必要はあるものの、興味深い内容がある。

記者会見の裏事情 ~ 12月10日(火)の午前9時にペロシ議長は司法委員会がまとめた「弾劾決議案公開」の記者会見を開き、その僅か1時間後には「USMCA合意」の会見を招集した。会見の質疑応答の最初の質問で、「二つの会見のタイミングは偶然か?」と問われ、ペロシ議長も見え透いた嘘は言えず、「偶然では無い」と回答。事務所幹部曰く、議長の発言の真意は、「弾劾決議」と「USMCA合意」共に議会が終わる20日までに達成する努力・狙いがあったので偶然という意味で、必ずしも同日会見を狙ったわけでな無いとのこと。現に同日会見が確実になったのは前日の月曜日だったとのこと。ただし、弾劾決議案会見を先行、その後にUSMCA会見で締めくくる案はペロシ議長一人の決断の何ものでも無い。更に同日会見の可能性を高めるために、議長自ら介入したようだ。当初、弾劾決議案の発表は12月1週目の後半の予定を模索していたが、12月に入りUSMCA合意が急速に進展、そこでペロシ議長は弾劾決議案を翌週に先送り、同日会見にこぎ着けられた。もともと弾劾決議プロセスが早過ぎるとの批判もあり、好都合。

激戦区議員への配慮 ~ 弾劾訴追をめぐっては40ほどある激戦区の議員らから懸念が連日寄せられているとのこと。トランプ大統領は、弾劾しか頭に無い民主党を「Do Nothing Democrats」としきりに揶揄している。そこで激戦区の議員が弾劾以外の成果を選挙区で主張出来るように、同日会見にペロシ議長は拘ったようだ。それに加え、来週予定される弾劾決議案で造反議員を最小限に抑えたい狙いもある。ポイントは、左派勢力に押され、弾劾に邁進する党と違い、ペロシ議長は苦境に立たされる議員に気を使い、自ら声をかけ、激励しているとのこと。幹部曰く、ペロシ議長の最優先事項は大統領選よりも下院での過半数維持とのこと。

「We Ate Their Lunch」発言の真意は? ~ 10日にペロシ議長は民主党下院議員を集め非公式の説明会を開いた。そこで議長はUSMCAの成果を自慢、「We Ate Their Lunch!」と発言。この英語に馴染みがある人は少ないかもしれない。日本語で最も近い表現は「相手のお株を奪う」であろう。同議長は記者会見の冒頭で、「There is no question that this trade agreement is much better than NAFTA.」と切り出し、すかさず「But in terms of our work here, it is infinitely better than what was initially proposed by the Administration.」と語った。当初案の不備を強調、民主党の修正によって「遥かに優れた」貿易協定になったと、(アメリカ人にしては)謙虚で慎ましいペロシ議長にしては珍しく自画自賛。この主張の背景には、党内からUSMCA合意への反対意見を抑制する狙いがある。USMCA合意はトランプの評価を高めるとの批判があり、少なくとも下院での弾劾決議が終わるまで待つべきとの意見が多かった。そこで貿易合意は共和党以上に民主党の功績であることをアピールした訳である。要は激戦区議員と左派議員の狭間で最大限のバランスを図ろうとしたのである。

USMCA修正に関するペロシ議長の役割 ~ 正直なところ、USMCA協定は民主党が主張するほど劇的に改善された訳でない。しかしながら、交渉過程でペロシ議長自身は強い存在感を示したとのこと。先ず、ペロシ議長は再交渉事項を四つの項目に絞った: ①環境保護、②医薬品会社への保護軽減、③紛争解決の強化そして④エンフォーサビリティ(強制力)。特に議長が拘り、最も譲歩を勝ち取ったのが④のエンフォーサビリティ(強制力)とのこと。交渉においても直接介入する場面もあった。例えば、9月の時点でメキシコが労働者保護規定に前向きでないと判断、議長はマルセル・エブラル外務大臣を呼び付け、受け入れるよう迫った。そして彼女の最大の功績はアメリカ労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)のトップであるリチャード・トラムカの指示を取り付けたことと言えよう。10月末にトラムカ氏は年内までに合意を急ぐ必要は無いと否定的な姿勢を取っていた。しかし、ペロシ議長がトラムカ氏を11月中旬に説得したことで、急速に状況が動き出した。労働組合が指示に回ったことで、トランプ・ライトハイザーは概ね民主党の修正案を受け入れざるを得なかった。そして11月の末~12月初旬の2週間にかけてライトハイザーを中心にメキシコ政府と必死の詰めの協議が行われ、ペロシ議長が願っていた弾劾決議案との同時発表にこぎ着けた。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

弾劾訴追検証②: 民主党下院議員が共和党に鞍替え表明 ~ 執行部は泣きっ面に蜂・・・

現在、保守系ニュース局のFox Newsである民主党議員が引っ張りダコとなっている。2018年の中間選挙に初当選したニュー・ジャージー州2区のジェフ・ヴァン・ドリュー議員が弾劾訴追をめぐって共和党に鞍替えする意思を表明したことが物議を醸している。弾劾決議で造反議員が出るのは珍しくないが(クリントン時の訴追では31人の民主下院議員が造反)、弾劾訴追中に党の鞍替が表明されたのは初めてである。共和党下院が結束力を見せる中、民主党は世論を動かせないどころか、重要な激戦州では弾劾不支持を増やしてしまった。40ほどある下院激戦区の議員から不安の声が高まっている。ペロシ議長・民主執行部としては造反議員をなんとしても4~5名以下に抑えないと、批判は免れないと共に大統領選で苦戦に立たされかねない。

ヴァン・ドリュー議員の判断は政治思想という高い志に基づくものでは無いことは言っておきたい。政治基盤が弱い1年生議員としては、弾劾訴追に賛成すれば来年の選挙でかなり劣勢に立たされる。しかし反対票を投じると、予備選で党の推薦を受けられず、対抗馬を立てれる可能性が浮上。ヴァン・ドリュー議員は、連日Fox Newsに出演、弾劾を批判することで一躍保守系有権者のヒーローとなった。そこでその人気に肖って、生き残りをかけて共和党からの出馬を決めたようである。このニュースはCNNなどリベラル・メディアでも取り上げられ始め、民主党執行部として泣きっ面に蜂である。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

写真が写す米政局事情: 大統領弾劾訴追が齎したもの・・・

民主党の弾劾調査・訴追が齎した最大の成果は?答えは下記の写真にある。それはトランプ支持層に危機感を与え、結集させてしまったこと。写真は、12月10日のペンシルバニア州、ハーシー町で行われたトランプの演説で、10,500人集客出来る会場は満員(因みにハーシー街の人口は14,000人ほど)で、氷点下にも関わらず数千人が外にあふれ出し、最後まで残ったとのこと。ハーシー街の人口は1万4,000人。無論、参加者の多くは州全土から来ているとは言え、平日火曜日の夜にこれだけの人を集め、熱狂的な集会を開くのは容易では無い。そしてジョー・バイデン氏はペンシルバニア州出身、生まれ故郷のスクラントン街はハーシーから車で2時間のところにある。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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