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ジョセフ・クラフト 特別レポート

米中貿易交渉: クシュナーの本格参加は合意の大詰めを意味?

掲載日:2019年12月05日

NATO首脳会議に参加しているトランプ大統領の米中貿易交渉に関するコメントで株式市場が下落。一部国内メディアは、「米大統領選後まで待つという考え方を気に入っている」や「期限は設けない、場合によっては大統領選後まで待つのも悪くない」と訳して報道した。コメント自体は株式相場にとってポジティブでは無いことは確か。しかし、実際の英語と日本語訳に多少ニュアンスの違いがあるように思う。実際のコメントは、「In some ways, I like the idea of waiting until after the election for the China deal, but they want to make a deal now and we will see whether or not the deal is going to be right」。上記文を3分割に分けると分かり易いかもしれない: ①「In some ways」、②「I like the idea of waiting until after the election」と③「but they want to make a deal now」。先ず、"In some ways(ある意味)"だが、これは、後文の意味・インパクトを和らげる効果がある。つまり、②の「大統領選後まで待つ」という考えは本心では無いということ。むしろ本心は③の「彼らは現段階でのディールを望んでいる」にあると思われる。ヘッドラインとしては②に注目が行きがちだが、①と③で挟むことで②の意味合いが大分薄まる。個人的な主観に過ぎないが、トランプが語った「they(中国)」は、心理学的に「I(私)」という潜在意識を反映していると分析する。交渉理論において、終盤・最終局面で強気姿勢を見せ、相手を揺さぶり、譲歩を勝ち取ることが挙げられる。今回のトランプ発言はこうした心理を反映しているのではないかと推測する。しかし、トランプの事だから土壇場でのちゃぶ台返しは否定できない。

さてトランプの発言よりも興味深いことは、ジャレッド・クシュナー大統領上級顧問が米中貿易協議に本格的に参加、米中貿易部分合意が大詰めを迎えていると期待させるものかもしれない。クシュナー氏の交渉参加はホワイトハウスが認め、2週間ほど前からのことらしい。彼はUSMCA合意の立役者で、同交渉が決裂した際、彼が三ヶ国の間に入るだけでなく、トランプのを説得にも尽力、無理と思われた交渉をまとめた功績がある。このことは、メキシコとカナダ政府だけでなくライトハイザー通商代表からも高く評価された。メキシコに至っては、外国人に与えうる最高位の勲章「アギラ・アステカ勲章」をクシュナー氏に授与するほどである。

ライトハイザー代表は、貿易協定を包括的に考えるよりも、個別の議題・問題をとことん交渉・議論する傾向があり、時には交渉が滞るあるいは決裂してしまうケースがあると日米の貿易高官から聞いたことがある。それが正しくUSMCAの例で、クシュナー氏はこうした膠着状態を打開する柔軟性を持つ。しかし、クシュナー氏の最大の貢献・メリットはトランプから信頼があり、尚且つ大統領と話し合えること。あるUSTRの高官は、ライトハイザーの説明は高度過ぎて、トランプ大統領に通じないことがあると指摘。娘婿のクシュナーはトランプからの信頼を得ているだけでなく、トランプが分かり易い言葉であるいは真意を汲み取ることが出来る数少ないホワイトハウス高官と言えよう。彼が交渉に直接参加したことは12月15の関税期限を控えて交渉が前進するものと期待したい・・・。

民主党大統領予備選: カマラ・ハリス脱落、左派勢力失速、ブティジッジ健闘・・・

当初はオバマの後継者として期待が高かったカマラ・ハリス女史が昨晩、選挙戦から離脱すると表明。7月に、彼女の支持率は一瞬バーニー・サンダーズを抜き、バイデン氏を追随する勢いがあったがすぐに失速、回復することは一度もなかった。当初からこのレポートで指摘したが、敗因は政治志向の軸が無く、時には左派寄り、また中道に戻ったりと政策のブレが露呈したこと。更にこのタイミングでの離脱は選挙資金が底を尽いたこと。この意味では、コーリー・ブッカーやエイミー・クロブチャー女史など資金繰りに苦しんでおり、2月のアイオワ集会まで持つか疑問視される。資金力豊富なブルームバーグ氏は4%と健闘するも、東北地域以外での知名度に欠けるため二桁台には届かないと考える(5%を超えれば上々)。

最も驚いたのが左派組の失速である。国民治療保険の財源(6兆ドルの増税)を発表して以来、エリザベス・ウォーレンの支持率は14%と下落が止まらない。しかし、彼女だけでなくバーニー・サンダーズも直近20%弱から16%に低下している。二人を合わせた左派勢力支持率は一時40%あったのものが、30%まで後退してしまった。左派政策ではトランプに勝てないとの見解が広まり、消去法でバイデンに指示が回っているようだ。それでもサンダーズ+ウォーレンの支持率はバイデンを超えているが、明らかに勢いを失っている。

左派とバイデン氏を支持できない有権者の受け皿になっているのが、ピート・ブティジッジ氏。彼の支持率は11.4%まで反発、ウォーレン女史に追い付く勢いを見せている。彼は大統領予備選最初のアイオワとニューハンプシャー州で首位に浮上して勢いに乗っている。しかし、彼はその後のネバダとサウス・カロライナ州で一桁の支持率で苦戦している。個人的には一番推奨する候補だが、同性愛者の大統領は保守層からの支持は得られ難く、本選どころか民主党の候補としても難しいと考える。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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