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ジョセフ・クラフト 特別レポート

弾劾公聴会分析: 民主党に打撃的な新世論調査結果・・・

掲載日:2019年11月26日

先日紹介した「Marquette大学(ウィスコンシン州」と「FiveThirtyEight(ネット調査)」に続いて「Politico/Morning Consult」が弾劾公聴会に関する世論調査を発表した。調査はポリティコ社とモーニング・コンサルト社が共同で行った。共に無党派メディア機関でモーニング・コンサルは中道的でバイアスが少ないとされる一方、ポリティコは中道ながらリベラル寄りと位置付けられている。調査は全国の登録有権者1,994人を対象にオンライン(ネット)で聞き取り、調査期間は11月15~17日。結果は、表面的には大きく変わっていないように見えるが、2020年大統領選を左右する中道派の意識が明らかに反弾劾に傾いていることが伺え、民主党にとって厳しいデータとなった。

トレンドは反弾劾に傾いている ~ まず、全登録有権者に「トランプ大統領は弾劾(罷免)すべきか?」と聞いたところ、48%が支持と1週間前に比べ2ポイント減少した(下記表参照)。逆に不支持は45%と前回から3ポイント増えたものの、依然支持が不支持を上回っている。弾劾への支持・不支持の差が縮んでいる傾向は「FiveThirtyEight」の調査とも精通しており、トレンドの整合性が伺える。更に調査では「弾劾の是非について今後考えを変える可能性は?」と尋ねたら81%は「絶対に無い(62%)」あるいは「可能性は低い(19%)」と答えた。そう答えた回答者の大半は民主党あるいは共和党支持者。と言うことは、弾劾に関する世論が変わるとすれば残り約2割の中道派・無党派支持者となり、この構図は2020年大統領選と比例していることから来年の結果を予見する指標にもなり得ることから注目に値する。

中道・無党派有権者が明確に反対 ~ 同調査で、中道派・無党派層に弾劾の支持・不支持を問いたところ、40%支持に対して47%が不支持と明らかに反対。10月前半はほぼ均衡からやや支持だったことから後退しており、民主党の思惑から逆行している。野球で例えるならイニングの表で民主党の攻撃先攻である。つまり共和党の攻撃に入る裏(上院)の前に大きくリードしてないと更に差を付けられてしまうのである。上院の弾劾審査・裁判では民主党に不利な証人(バイデン親子、シフ下院情報委員会委員長など)が呼ばれるだけで、クリントンのメール疑惑やトランプ選挙監視疑惑に関するFBI捜査官などウクライナ疑惑と関係の無い事案も持ち出され、逆に民主党への疑惑に焦点があてられることが予想される。上院での弾劾可決には期待しなくとも、2020年の大統領選を有利に運びたい民主党執行部の思惑がことごとく裏目に出てしまった。

弾劾不支持の理由は? ~ 中道派・無党派有権者の態度逆転の背景・理由を示唆するデータがいくつかある。一つは民主党が主張する弾劾容疑そして調査の進行が分かり難いという指摘が挙げられる。下記問②で、「弾劾調査の進行・容疑等について分かり易いか?」との質問に55%が分かり難いと回答している。一般国民には知名度の低い証人を頻繁且つ多く呼び過ぎている点(5日間で12人)が焦点をボヤかしてしまったようである。12人も出るとそれぞれの証言内容が異なり、焦点(容疑)が混乱しかねない。更にそもそも「Quid Pro Quo(見返り)」という分かり難い容疑にも関わらず、民主党は公聴会途中から「贈賄」、「司法妨害」、「選挙違反」や「証人威迫」と証言によって次々と容疑を変えたり、加えた。そうした容疑の一部・主流は不適切であっても弾劾に値しないとの見解が一般的に多い。例えば、選挙違反に関してオバマ政権が有罪となったものの、罰金で済まされている。「贈賄」など弾劾に値する重罪に焦点を絞れば良いものを何でもかんでも悪いという戦術が裏目に出てしまったようだ。

もう一つの理由としてメディアの影響力構図が挙げられる。日本メディアは米政局の情報源の大半をCNN、ニューヨーク・タイムズやワシントン・ポストなどのリベラルメディアから取っており、その結果トランプが追い詰められている印象があるかもしれない。しかし、米全土ではむしろ保守系メディアの方が多く、視聴率も高い。その最も象徴的な例がCNN対Fox Newsである。今やアメリカ国民の大半は娯楽そしてニュースはケーブル・テレビで視聴している。CNNとFOX Newsがケーブル・ニュースの1位・2位を争っている印象があるが、実は全く違う。Fox Newsは数年来、視聴率1位を保っているが、CNNは10位前後と後退している。今回の調査でも、「どのテレビ放送局を視聴しているか?」との質問にFox Newsが22%に対してCNNはその半分の11%である。ほぼ倍にあたる。CNNの反トランプ報道に対してFox Newsはトランプ擁護の報道に着手。視聴者の多いFox News、つまり弾劾批判のニュースが浸透しやすいことが挙げられる。

弾劾調査が始まってから言い続けていることだが、民主党は大統領選を勝つチャンスが高かったのに、弾劾に踏み切ったことで逆に情勢を不利にしてしまったと思う。弾劾調査は失策。この現実から目を背き、早く軌道修正しないでこのまま弾劾強硬論を唱え続けると2020年11月3日はトランプの再選を見ることになりかねない。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

民主党大統領予備選: ウォーレン支持率失速、国民健康保険がアキレス腱・・・

夏から飛躍的な躍進を見せたエリザベス・ウォーレン女史、支持率は10月8日にバイデン氏を一瞬抜いたものの、それ以降は失速している。リアルクリアポリティックスの11月20日付け調査によるとウォーレン候補の支持率は18.5%とサンダーズ氏に抜かれ3位に後退した(下記チャート参照)。バイデン氏の支持率は29.8%に再浮上、バイデン対ウォーレンの支持率格差が11.3ポイントにまで開いてしまった。アイオワ州の予備選で1位に浮上したピート・ブティジッジ候補は7.8%と検討するも全国的にはまだ壁が厚いことが伺える。因みに昨晩、大統領選への参戦を正式に表明したブルームバーグ元NY市長の支持率は2.3%と7位に入った。米北東部では知名度の高いブルームバーグ氏でも全国的には(特に南部と中部)人気が低く、個人的には支持率が二桁台に乗るのはかなり厳しい考える(正直5%も超えないと思う)。

そこで本題のウォーレン支持率だが、何故失速してしまったのか?一言で言うと「国民医療保険」と言えよう。支持率の転換ポイントが二つ挙げられると思う: ①10月15日と②11月1日。10月15日は第4回民主党討論会で二つの向かい風にあたる。一つは国民医療保険で他候補から集中攻撃を受ける。討論会では全般的に批判をかわすも、後に予算の財政・予算が不透明との批判が高まる。二つ目はサンダーズ氏の健闘である。討論会直前に心臓発作で入院、健康問題が懸念される中、本人は頑張る意欲を示した。そこで同情票というか応援の声が高まり、左派票の一部がウォーレン女史からサンダーズに移ったと見られる。そこでウォーレン候補は反撃する意味で11月1日に国民医療保険の財政案を打ち出す。中身は6兆ドル以上の大型増税。大半は大企業と超富裕層への増税ながら、さすがに6兆ドルはとてつもない額であり、リアリティに欠ける。この案ではトランプを破るのは難しいとの声が浮上、逆に現実化すれば間違いなく景気低迷は免れない。よって不安を抱えながらも、バイデン氏の方がトランプに勝てるとの見方が増え、逃げていたウォーレン票の一部が回帰したものと言われている。

支持率が失速したとは言え、これで脱落したとは思わない方が良い。不幸中の幸いはこのタイミングでの失速は、2月のアイオワ予備選まで軌道修正、立て直しの時間が十分にある。ただ、立て直しと言っても難しい綱渡りとなる。医療保険制度に関しては、左派勢力が逃げ出さない程度に中道派が受け入れられるより現実的路線に修正することが必要だが、そのスイート・スポットを見つけるのは用意ではない。それからバイデン氏に10ポイント以上の差があるものの、サンダーズとウォーレンの右傾の左派票は37.8%とバイデンを優に上回る。以前から指摘しているようにウォーレンが勝つのにはサンダーズがどの時点で選挙戦から引くかがポイント。残念ながら現時点では早々に引く気配は無いが、このままでは左派政策が執行できないと決断すればウォーレン女史に譲る可能性は否定できない。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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