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ジョセフ・クラフト 特別レポート

弾劾公聴会分析① ~ 4日目が終わり、世論変わらず、しらけムード漂う・・・

掲載日:2019年11月25日

弾劾公聴会も5日目が終わった。中でも4日目でこれまで最も重要と思われるゴードン・ソンドランドEU大使の証言すべて(6時間超)を徹夜で視聴した。余談になるが、徹夜してまでも(正直8割はつまらない)証言を直接検証した理由は、もはや政局において米メディアが信用できなくなってしまったから。CNNとFOX Newsを筆頭に各メディアのバイアス(誘導)報道が酷すぎる。CNNはトランプに有利な証言は露骨に無視、FOX Newsはトランプに不利な証言でも勝手な論客で有利と主張するばかり。ニューヨーク・タイムズやワシントンポストも引けを取らず、かつてあった権威や信用性が影を潜めてしまった。

世論動かず: さて、本題のソンドランド大使の証言だが、記事の見出しに持って来いな派手な発言が出たものの、結果は世論を動かすものには全く至らなかった(弾劾公聴会分析②参照)。現在のところ、ソンドランド氏を上回る重要証言は予定されていないため、民主党の弾劾公聴会戦略は実質的に不発に終わったと言えよう。この情勢が変わるとすればボルトン元NSC担当あるいはマルバニー主席補佐官が証言に応じることだが、両氏は法的召喚状を求めていることから現状は難しいと見られている。中道派有権者数名へのインタビューを見るとかなりシラケており、疲労感も出始めている。リベラル派のメディアはいきり立っているが、焦りとしか見えない。

公聴会証言のまとめ: 公聴会は双方の主張が交錯し、問題の焦点が混乱してしまったことに民主党の敗因があると考える。公聴会のロジにおいて明らかに民主党のバイアスが見えてしまったことや公聴会途中で弾劾容疑を変えるなどの行動も国民の心象を悪くしたとも思う。そこで、4日目まで、10人の証言をなるべく簡潔に下記表にまとめてみた。ポイント①としてトランプ大統領と直接話した高官はソンドランドEU大使のみ、従って彼の証言が最も重みがあると考える。ポイント②はトランプ・ゼレンスキーに直接参加した高官は4名。ポイント③は電話会談の内容が不適切と思うかとの問いに参加した4人中、二人が不適切、一人は曖昧で一人は思わないと返答。ポイント④はQuid Pro Quo(見返り)があったかとの見解は分かれるも、ソンドランド大使の発言が焦点となる(詳しくは下記参照)。そしてポイント⑤は贈賄があったかの見解だが、肯定する者はおらず、情勢が悪いと判断したのか後半から民主党が問わなくなった。証人によって矛盾した証言があり、民主・共和共に都合よく解釈できる内容が多く、とても国民がまとまれるものでは無い、ロシア捜査の二の舞である。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

ソンドランド大使発言: 矛盾・困惑する内容がいくつもあって正直信ぴょう性に多少疑問を抱かざるを得ないが、重要視される発言が二つある。

発言① 「見返りがあったかどうかと問われれば、答えはイエスだ」 ~ 決定的な証言と一見思えるが、実態は紛らわしい。大使曰く、ウクライナに求めた見返りは「ホワイトハウスでの首脳会談」と引き換えに「汚職撲滅の公的コミットメント」で、軍事費は条件に入っていないと証言。このような条件つきの交渉はどの国でも行われ、違法とは到底言い難い。大使は更に「汚職撲滅」とは2016年米大統領選関与とブリズマ社の捜査を踏まえるが、バイデン元副大統領の疑惑は含んでいなかったと指摘。その後、トランプ・ゼレンスキー電話会談記録を読んでバイデン調査も含む可能性があるが、自分は当時バイデン捜査としては認識が無く、指示も無かったと説明。更に大使は、見返りがあったとの見解は個人的な「Presumption(推測)」であることを説明。見返りがあったと疑われる内容だが、確信を付いたとはと言い難く、弾劾に至るには否定しようの無い確たる証拠が必要と考える。しかし、CNN、NYTそしてWAPOはこの発言が弾劾の確たる証拠として大きく報道した。

発言② 「何も求めてない。見返りなど求めてない。ゼレンスキーに正しいことをやれと伝えろ。」 ~ 9月9日にトランプ大統領との電話会談で、ソンドランド大使は単刀直入にウクライナから何を求めているのかをトランプに問いたところ、「I want nothing. I want nothing. I want no quid pro quo. Tell Zelensky to do the right thing.」と返答されたことを明かした。これが今のところ、唯一疑惑にトランプが直接言及した証言であり、トランプを免除する発言と受け止められる。現にこの証言直後、ここぞとトランプはホワイトハウスの庭で記者団にこの証言を読み上げ、自信の無罪を主張した。CNNは、ホワイトハウスが数日前に議会がウクライナ調査に乗り出したことを把握したアリバイ作りと軽く説明しそれ以上は取り上げなかった。その指摘は十分あり得るものの、アリバイはアリバイであり、これを上回るあるいは否定する証拠・証言は今のところ無い。現実として、バイデン捜査はおろか汚職撲滅の公約(見返り)が無いまま、軍事費は9月11日に支給されている。

一連のトランプの言動・行動は不適切であるとの主張には同意できる。しかし弾劾に値する行為には同調できない。少なくとも米中道派有権者は民主党の主張に動じていない、これが現実である。民主党は確信を付けない公聴会を続ければ、国民には疲労感が募り、やがて怒りとなって跳ね返って来る。早めに切り上げないとトランプの再選を助ける大失策となりかねない。

弾劾公聴会分析② ~ 直近の世論調査検証、国民は動じずどころか弾劾反対に傾く・・・

上記で、弾劾公聴会は世論を傾かせるどころかシラケムードが漂っていると主観を述べさせていただいた。では、客観的なデータからどのような状況となっているのか?結論から言うと、国民は弾劾支持に傾くどころか、民主党の思惑とは逆に不支持が増加、弾劾に消極的だったナンシー・ペロシ下院議長の恐れていたことが現実になって来た。そこで直近公表されたみっつの世論調査を見てみたい。

一つ目は大統領選の接戦州の一つウィスコンシン州の有権者を対象としたマーケット大学の世論調査で、トランプの弾劾(罷免)を支持するかとの問いに、40%支持に対して53%が支持しないと答えた(下記左表参照)。同調査は、ミシガン州やペンシルバニア州の有権者の考えにも近いとされ、注目されている。ポイントとして支持・不支持の格差が広がっていることで、10月は支持44%に対して支持しないが51%と7ポイントの差だったのが、公聴会を受けて11月17日時点では13ポイントに広がり、民主党の思惑と逆行。

二つ目はギャラップ社の世論調査で「トランプの経済運営を評価するか?」との問いに、評価するが就任以降最高の57%を付けた(下記右表参照)。米大統領選において経済情勢は最重要課題であり、トランプにとって命綱とも言える。まだ時期早々だが、株高・好景気が来年まで維持できれば、トランプにとっては強い追い風となる。そこに弾劾への不信・不満が重なると再選の確率は相当高まる。民主党は弾劾調査という失策を早期に終えて、政策重視の選挙戦略に切り替えること大統領選を制する本筋だと思う。

三つ目はネット調査会社のFiveThirtyEightの11月21日付けの全国弾劾世論調査で、これまで弾劾支持が優勢だったがこの1週間で支持対不支持が並んでしまった(下記チャート参照)。 公聴会が始まった11月13日には支持47.5%に対して不支持が44.7%と2.8ポイントの開きがあったが、現在は45.6%対45.5%と0.1ポイントにまで縮んでしまっている。以前にも指摘したが、全国世論調査とは逆に選挙人制度の接戦州では弾劾不支持が主流。マーケット大学調査から見られるように、全国調査が均衡するということは接戦州では弾劾反対の世論が更に高まっていることが示唆される。弾劾公聴会が始まってから公表された世論調査からは弾劾調査が民主党にとって失敗だったことが伺える。民主党はこれ以上墓穴を掘らないで直ちに戦略の変更・立て直しが急務であると思う。

出所:Marquette大学調査:弾劾支持調査(2019年11月17日付け)
Gallup調査:トランプ大統領の経済運営評価(2019年11月14日付け)

出所:FiveThirtyEight:トランプ大統領の弾劾を指示するか?(2019年11月22日時点)

弾劾公聴会分析付録 ~ 証言疑問を無理に立証しようとCNNアンカー恥かく・・・

中道保守の自分にとっては、FOX Newsは保守志向・バイアスが露骨過ぎるため、長年CNNを視聴して来た。しかし最近では、CNNのバイアスはFOX News同様あるいはそれ以上に変化、観るに堪えない。くだらないが、象徴の一つとして下記の(情けない)例を紹介したい。

5日目の公聴会に出席したホームズ・ウクライナ大使館政務参事官の証言についての21日のCNNの放送。ホームズ氏はレストランでソンドランドEU大使が携帯からトランプ大統領に電話した際の会話を聞いたと証言(そもそも大統領に携帯から掛けること自体セキュリティ上問題・・・)。そこで上がった素朴な疑問として、ソンドランド氏の会話は聞こえても雑音があるレストランで大統領の声まで聞こえるほど音が漏れるのか番組で話題に上った。そこで看板アナウンサーのクリス・クオモ氏(下記写真)が生放送中に自分の母親に携帯から電話、二人の会話が隣に座る同番組女性レポーター(デーナバッシュ)に聞こえるか実験を行った。静かなスタジオにも関わらず、周りのコメンテーターはおろか、隣に座るバッシュ女史も聞こえず、思わず苦笑い、スタジオにも変なムードが漂う。クオモ氏は、「視聴者には聞こえなかったかもしれないが、大丈夫デーナにはちゃんと聞こえていたよ」と電話をさっさと切り、話題を変える。すかさず、トランプ支持のコメンテーターが、「おいおい、何も聞こえなかったぞ~」と話を戻そうとすると、カメラは他のコメンテーターに切り替え、この議論は伏せられてしまった。またもやジャーナリズムの顔に泥が塗られたった瞬間だった、本当に情けない・・・。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

もし皆さんが直近の弾劾公聴会レポートに飽き飽きしているとしたら、米国民はその何十倍も飽きていると思ってください・・・。時間が経てば経つほど民主党には不利になるばかり・・・。

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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