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ジョセフ・クラフト 特別レポート

弾劾公聴会に関する6つのポイント ~ 民主党の目論見、今のところ不発・・・

掲載日:2019年11月19日

ポイント①: 公聴会を開く民主党の目的とは? 公聴会を開く目的は、世論を(弾劾支持に)動かす一点に尽きる。それにより、共和党上院議員に圧力が掛かり、上院での弾劾決議案で造反者を増やしたい。たとえ上院で否決されても、世論を味方に付けることで大統領選を有利に戦える。11月13日に公聴会が始まったが、週末を終えた現時点で民主党の目論見は不発に終わっている。11月17日のネット世論調査会社「FiveThirtyEight」の集計によれば、弾劾(罷免)支持が46.5%対45.0% と不支持を僅差ながら若干で上回っている。しかしどちらも過半数を超えておらず、更に公聴会後の支持対不支持の開きが2.8%から1.5%に縮んでいる。この数値は、世論が単に左派対保守、民主党対共和党に分断した構図を反映しているだけで、取り分け弾劾へモメンタムが傾いているとは言い難い。日本から見て弾劾で全米本土が弾劾公聴会に釘付けになっている印象を受けるかもしれないが、貰いがっているのワシントンDCだけである。更にCNN、ニューヨーク・タイムズそしてワシントン・ポストなどのリベラル・メディアが躍起に報道しているが、有権者にはシラケムードが漂っている。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

ついでにトランプ大統領の支持率を確認してみたい。一時45%あった支持率は、民主党が弾劾調査を表明した9月24日を機転に下落、さらに非公開証言が行われた10月後半でも下がり、42%を切る。しかし、非公開証言から確信に迫る証言が無かったことから、10月31日に底打ちして、現在44%台まで回復基調に入っている。この状況から共和党上院議員が大量に造反するとは到底思えない。むしろ弾劾調査はトランプの支持基盤の危機感を煽ってしまっただけに過ぎない。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

ポイント②: 公聴会が不発に終わった要因は? 要因は主に三つ挙げられる: ①証言が伝聞・又聞きだったこと、②新証言の欠如(ノー・サプライズ)そして③証言者の低知名度。テイラー駐ウクライナ臨時大使、ケント国務次官補代理そしてヨヴァノヴィッチ前駐ウクライナ大使が証言に立ったが、いづれもトランプ大統領とは直接会話したことがなく、軍事費とバイデン調査が交換条件(Quid Pro Quo)であると確信に迫る証言には至らなった。一連の問題で大統領としての資質に欠き、ウクライナ大統領との電話会談は不適切ではあるが、伝聞証言だけの状況証拠では説得力に欠ける。二つ目の問題は、非公開証言の内容を民主党が事前にリークしたため、公聴会から目新しい証言あるいはサプライズが無く、織り込み済みという状況で終わったしまった。個人的には民主党の弾劾調査の戦術が甘く、演出が下手と感じる。最後に、民主党が重要証人(スター・ウィットネス)とする上記三人は、一般有権者にとって初めて聞く名前であり、注目度が低い。優秀なキャリア官僚だけに証言は正確且つ信用性があるものの、ドラマ性が少なく、面白みに欠け、有権者を引き付ける公聴会になっていないのが実態。現時点での証言は、ゼレンスキー大統領・ウクライナ政府が見返りという認識は無かったとの公言、あるいは(バイデン調査を行わず)ウクライナ政府が軍事予算を(9月11日に)受け取っているとの共和党の主張を覆すほどのものに至っていないのが実情である。黒に近いグレーとの主張は分からないでも無いが、それでは弾劾という高いハードルを越えるものでは無い。

ポイント③: 民主党の焦り・・・ 公聴会が不発に終わったなによりの証拠は民主党がこの段階になって弾劾容疑を変更したことである。14日にペロシ下院議長が定例会見で、「軍事支援保留したトランプ大統領の行為は『贈賄』にあたる」と公言。これまで軍事支援とバイデン調査を交換条件という「Quid Pro Quo(見返り)」、つまり職権乱用が罪と主張し続けて来た。一般の有権者にとって「くイッド・プロ・クオ」というラテン語はイマイチ馴染み難いというかイメージが湧きにくいため、より分かり易い且つ罪の重要度が大きい「贈賄」に民主党執行部が切り替えたものと思われる。 法廷では、審議の途中に検察が容疑を変えることは基本的に許されない。非公開証言(リーク)で世論が盛り上がらず、戦略を公聴会に切り替えるもこれも不発に終わっていることから、今度は容疑を変えるという民主党の焦りが際立つ。

ポイント④: 今後の公聴会の焦点は? 伝言証言では突破口は見いだせない。直接トランプ大統領と会話を交わした証言がより重要となり、20日(水)に予定されているソンドランドEU大使の証言がハイライトになると考える。詳細は不明だが、ソンドランド大使は非公開証言の後に見返りがあったような気になる訂正を行っている。しかし同大使はトランプ政権の大物献金者であり、どこまでトランプ政権に不利な証言をするのか不明である。来週20日の公聴会から確信に迫る証言が無いと民主党は相当分が悪くなる。一つ起死回生の証言としてボルトン元国家安全保障担当の可能性があるが、ボルトン氏は法的召喚状を要求しているため、時間的に現実味が薄い。

ポイント⑤: 弾劾決議スケジュールと共和党のリベンジ 民主党が焦るもう一つの理由に弾劾決議の日程が挙げられる。確たる証言が無いと証人の数を増やしたい、しかし証言が多いと決議のタイミングがズレ込む。弾劾調査が長引き、大統領予備選と重なって焦点が拡散さらに大統領選妨害との批判を受け、民主党は自分たちのクビを絞めかねない。現在、クリスマス前に決議を行うとしているが、民主党側だけで少なくとも8人の証人が予定されおり、来週には感謝祭休日が迫っている。12月半ばに決議が出来たとしても、上院審議は年明け1月半ばとなり2~3週間で決議が取れるとは思い難い。民主党にとってスケジュール以上に問題なのが共和党の攻勢、下院では民主党が証人や段取りを決め権利があり、進行を有利に運べるが、上院では逆に共和党を持っている。例えば、バイデン氏の息子を呼び、バイデン選挙に不利な情報に焦点を当てかねない。無論、トランプに有利な証言者も多々呼ばれ、世論が弾劾反対に回る可能性は否定できない。こうした先々のリスクを予見すれば、弾劾調査に踏み切らない方が、得策と個人的には考える。

ポイント⑥: 弾劾調査は大統領選にどのような影響を与える? 11月初旬に公表されたCNNの全国世論調査では、弾劾支持の方が不支持を若干上回ている(下記表参照)。しかし、大統領選に関して注視すべきは個々の接戦州の動向である。そこで接戦6州(アリゾナ、フロリダ、ミシガン、ノース・カロライナ、ペンシルバニアそしてウィスコンシン)の弾劾に関する平均調査を見ると、「弾劾すべきでない」が「弾劾すべきである」を10ポイントも上回っている。2016年大統領選を左右する重要な接戦州では、弾劾調査の支持が得られていないのが現状。トランプ支持基盤の危機感を煽り投票率を上げると共に、中道派層がトランプ支持(民主反対)に回るというダブル・パンチの危険性が示唆される。現段階は、依然トランプの再選が難しいと見ているが、弾劾調査によってより均衡してしまったとものと考えている。弾劾調査がこのまま不発に終わり、経済・株価が来年まで堅調であれば、トランプ再選も十分考えられる。皮肉なのことに、その場合、当初から消極的だったペロシ下院議長が弾劾調査の責任を負わされることである。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

民主党予備選: ピート・ブティジッジ氏躍進 ~ アイオワ世論調で査首位浮上・・・

8月のレポートで民主党大統領候補はバイデン対ウォーレンの一騎打ち(サンダーズが早期に離脱すればウォーレンの勝利)と主張させていただいた。今もその見通しに変わりは無い。その時もう一つ、ピート・ブティジッジ候補は資質・政策的に最も優れていると個人的に評価した。しかし、アメリカはまだ同性愛者の大統領を受け入れがたいため、指名を受ける可能性は低く、本選で大統領に当選する可能性は更に低いとも指摘した。その考えに変わりは無いが、予想以上の検討を遂げている。アイオワ州最大の新聞紙「デ・モイン・レジスター」の最新世論調査でブティジッジ氏で支持率が25%とトップに躍り出ただけでなく、2位のウォーレンに9ポイントの差を付けてしまった(下記表参照)。アイオワは投票人数が少ないものの、予備選の初戦として勝てれば勢いに乗れることから重要視されている。

ただ、ブティジッジ陣営はそう喜んでもいられない。アイオワ州は白人有権者が中心で、ブティジッジのような中道左派候補を好む。しかし、その後に続くニュー・ハンプシャー州では4位、次のネバダ州とサウス・カロライナ州では支持率が一桁代と低迷している。ブティジッジ氏はウォーレン女史同様に黒人・マイノリティ層からの支持が著しく弱い。更に保守層が多い南部では苦戦が予想される。ブティジッジ陣営はそのことは当然分かっており、今週からサウスカロライナ州で2億円以上の広告展開を仕掛ける。バイデン及びウォーレン候補らを真剣に脅かすまでに至ってはいないが、大健闘であることに間違いない。ブティジッジ氏とは対照的にDes Moines Registerの世論調査はカマラ・ハリス選対本部の致命傷となったと考える。予備選で低迷するカマラ・ハリスは起死回生の戦略としてオバマが2008年が執ったアイオワ州中作戦を決行した。1ヶ月間、ほぼアイオワに移住するほど時間と資金を擁して来たが、支持率は3%とむしろ低下してしまっている。個人的な予想だが、2月のアイオワ予備選まで持たない可能性が高いと思う。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

ブティジッジ氏が候補指名を受けるまでの道のりは厳しいが、希望を持てるデータがある。共和党の場合、2000年以降でアイオワ州を制した候補で後に党の指名を勝ち取った者は5回中2回(ジョージ・ブッシュ一人)。しかし、民主党の場合は2000年以降、アイオワを制した候補が全員最終指名を獲得している(下記表参照)。バイデンが失言とウクライナ疑惑という場苦言を抱え、ウォーレン女史が国民医療保険で苦労する中、ブティジッジ氏がアイオワを制し、勢いに乗れれば、大方の予想を覆す新星になる可能性は否定できない。個人的には応援したい。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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