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ジョセフ・クラフト 特別レポート

弾劾公聴会分析 ~ 株価がすべてを物語っている・・・

掲載日:2019年11月15日

昨晩、ウクライナ疑惑をめぐって大統領弾劾の公聴会が開かれた。結論は、安定的に推移92ドル高で引けた株式市場が物語るように、何もインパクトは無かった。平日の日中にテレビの前で6時間も公聴会を見る暇な有権者は極めて少ない。テイラー駐ウクライナ代理大使とケント国務副次官補が証言に立ち、バイデン捜査と軍事費を引き換えにする意図があったことを証言。民主党はトランプに不利な証言だけに着手、弾劾を強調。共和党は不適切な行動は無視、逆に証言は全て又聞きに過ぎないと切り返えす。公聴会は、国民の目には政局の茶番劇にしか映らず、トランプ支持・不支持の構図を変えることは全く無い。当然、上院で共和党が20人も造反して弾劾に賛成するなど考えられない。だからこそ、株式市場も落ち着いた値動きを見せたのである。

個人的にあえて軍配を上げるならば、一日目は民主党の敗北だったと思う。テイラー大使とケント副次官補は言わば「スター・ウィットネス(最重要証人)」で、彼らの証言で国民を奮い立たせる必要があったのに不発に終わってしまった。これから予定されている証人は、ソンドランドEU大使以外はより知名度が低く、国民の関心・怒りを掻き立てる可能性は少ない。唯一、国民の強い関心を引き出せる証人はジョン・ボルトン元NSC担当。しかし、彼は法廷からの召喚状を求めており、それには時間が掛かることから民主党は今のところ呼ばない方針。しかし、今後の公聴会が不発に終われば、ボルトン氏を呼ばざるを得ないかもしれない。

ブルームバーグ氏大統領選参戦、勝因の確率は? ~ ゼロ

ニューヨーク・タイムズ紙はブルームバーグ元NY市長がこの時期になって、民主党大統領予備選に参戦するための手続きに入ったと報道。ジョー・バイデン元副大統領が圧倒的な支持率を持っての立候補が確実視された今年の3月、ブルームバーグ氏は参戦を断念。ところが、バイデン氏が苦戦、民主党予備選の行方が不透明になるや否や、チャンスと見なして立候補に動いている。アメリカの有権者は時として騙されるが、そこまでバカでは無い。米有権者はブルームバーグ氏をちゃんと見透かしている。

単に個人的見解では無く、歴史的な事実である。戦後、大統領予備選の後期に立候補を表明して、指名を受けた者は1952年民主党予備選でのイリノイ州・州知事のアドライ・スティーブンソン一人である。しかし当時は、選挙人選定は予備選で選ばれるよりも、党大会で党執行部と影響力を持つ大物献金者がいわば密室で決めるのが主流だった時代。今とは大きくことなる。それでもスティーブンソン氏が指名されるのに、投票が3回もやり直され、そして本選ではアイゼンハワーに負けている。

その後、予備選の後期に立候補した候補者は何人もいた。1960年にリンドン・ジョンソンが参戦するもケネディに負ける。1968年にロナルド・レーガンが参戦を表明したが、ニクソンに敗北。1972年にフーバート・ハンフリーが立候補、ジョージ・マックガバンに敗退。1976年に加州・州知事のジェリー・ブラウンが3月に表明、ジミー・カーターの足元にも及ばなかった。1987年に早くから立候補していたゲーリー・ハートは不倫問題から離脱したと思いきや同年の12月に再度参戦、一時は世論調査のトップに躍り出たもののニューハンプシャー州予備選で惨敗、マイケル・デュカキス・マサチューセッツ州・州知事が指名を勝ち取る。直近では2004年の民主党予備選で元NATO指揮官のウェスリー・クラーク大佐が前年の9月に参戦するも、ジョン・ケリーとジョン・エドワーズの一騎打ちに終わった。2008年の共和党予備選でテネシー州上院議員が参戦するもジョン・マッケイン・アリゾナ州上院議員を阻むことは無かった。

ブルームバーグ氏の指名がほぼゼロに等し理由は歴史だけでない。彼はニューヨークでは知名度が高いが、全国的には知られていない。FOX Newsが10月末に実地した世論調査によると、ブルームバーグ氏に当選するという回答は僅か6%に過ぎない(下記表参照)。ヒラリー・クリントンの27%そしてミッシェル・オバマの50%に遠く及ばない。更に、もともとは共和党員だったこと、ウォール街との繋がり、超富裕層であること(トランプがほぼ唯一の例外)そして何よりも民主党執行部とのパイプが薄いことを考えるとブルームバーグ氏が指名を受ける

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

しかし、後期に参戦する候補者自身が指名を受けなくとも、予備選の最終結果に影響を及ぼす可能性が考えられる。例えば、2004年のトンプソン氏参戦時では、予備選の出だし、マイク・ハカビー・アーカンソー州知事が予想に反してアイオワを制し、勢いに乗る。それまで優勢とされたジョン・マッケインが劣勢に立たされた。しかしその直後のサウス・カロライナ州予備選で、南部保守のトンプソン氏が同じ南部のハカビー氏から票を奪い、マッケインが僅か3%で同州を制し、予備選の転機となったと言われている。この意味で、ブルームバーグ氏自身の指名は無くとも、予備選の結果を左右する可能性が考えられる。中道派のブルームバーグ氏の参戦が悪影響を与えかねないのがジョー・バイデンである。既に中道派の一部の受け皿となっているのが、ピート・ブティジッジ氏。しかし、彼は同性婚者であるため、中道派保守の一部が支持出来ないでおり、ブルームバーグ氏がそうした票の受け皿になり得る。ブティジッジ氏とブルームバーグ氏共に民主党指名を受ける可能性は低いが(特にブルームバーグ氏)、エリザベス・ウォーレン指名に寄与する可能性は十分に考えられる。これが唯一考えられるブルームバーグ氏の成果(?)である。

ペンス副大統領の対中スピーチ・ライターの正体・・・

ペンス副大統領が10月24日に行った対中演説について多少の誤解・見解の相違がある。一つは、議論に余地があるものの、演説の本質は強硬的では無く、融和的だと考える。もう一つはペンス副大統領自身あるいは彼のチームが書いたと一部で思われているようだが、それは違う。前者のスピーチの意図・品質に関しては10月25日のレポートで述べているので触れない。後者に関してだが、2018年10月4日含め、今回の対中スピーチはペンス副大統領オフィスが主導するものでは無く、ホワイトハウスが書いたものをトランプ政権を代表して代弁しているのに過ぎない。つまりペンス副大統領オフィスが中国批判の悪役を担っているのである。2018年のスピーチはペンタゴンにある国防省総合評価局(Office of Net Assessment)が各省の調整役となり、NSCが書いたことはホワイトハウス高官から確認が取れている。

今回のペンス演説は、米国家安全保障会議(NSC)のアレキサンダー・グレイ大統領特別補佐官(オブライエンNSC国家安全保障担当の補佐官)が中心となって書いたとのこと。米中貿易問題中心のスピーチに何故安全保障の高官が関わるのかとの疑問を持たれる方もいよう。実はグレー補佐官、去年までピーター・ナバロ国家通商会議ディレクターの補佐官を務めており、通商・商務事項には長けている。今年の初めにポッティンジャーNSCアジア上級部長にスカウトされてNSCインド太平洋部長に就任。そしてオブライエンNSC担当の補佐官に認められ10月1日にNSC補佐官に昇格、スピード出世を遂げている。このことから二つの注目ポイントが挙げられる: ①引き続きアメリカの通商政策は安全保障問題と密接に繋がっていることと、②グレー大統領特別補佐官は今後注目すべき高官であること。

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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