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ジョセフ・クラフト 特別レポート

民主党大統領指名情勢①: 政治献金収集動向検証 ~ 民主党はついにバイデンを見捨てたか・・・?

掲載日:2019年10月07日

民主党大統領候補の第3四半期政治献金収集額がほぼ出そろった。資金力は選挙戦運営の命綱であると共に候補の勢いを示すことから注視すべき一つのデータ。7月~9月期の政治献金額はバーニーサンダーズとエリザベス・ウォーレンの左派勢力が約2,500万ドル(約27億円)ずつ集め、大きく後続に差を付けた(下記チャート参照)。3位はピート・ブティジッジの1,910万ドル(約21億円)。そして本命であるはずのジョー・バイデンは1,520万ドル(約16億円)と溝を開けられてしまった。その他では、カマラ・ハリスは1,160万ドルを集めるものの、失速ぶりが鮮明化、コーリー・ブッカーは資金不足で離脱は時間の問題である。予想外に健闘したのが、アンドリュー・ヤン候補で、前期の4倍も献金が反発したことものの、支持率上昇にさほど繋がっていない。

献金額と同様に重要なのが、支持基盤のすそ野の広さを示す、一人当たりの献金額である。サンダーズは一人当たり18ドルで、献金者数が140万人。エリザベス・ウォーレンは26ドルで94万人の献金数になる。それに対してバイデンの場合は、一人当たり44ドルで、献金数は34.5万人程度。これはウォーレン女史の3分の1、ブティジッジの58万人にも満たず、大物献金者頼みの選挙態勢が浮き彫りとなった。

以前からバイデン候補には勢いが欠けると指摘させていただいたが、今回の献金データはその見解を裏付けるものとなった。9月24日に民主党は弾劾調査に踏み切った際、バイデンの選挙活動に悪影響を及ぼしかねないことは当然分かっていたはず。民主党執行部は上記の献金データを事前に把握しており、バイデンを見切っての弾劾調査決断と思われる。バイデンが本命であれば、党は最優先で守るはず。失言問題・認知症不安などの爆弾もさりながら、2020年を勝つためには献金収集力が極めて重要。党も背に腹は代えられず、圧倒的な収集力を見せつけた左派勢力に傾かざるを得なかったのであろう。

共和党・トランプの献金情勢も民主党に圧力を加えた可能性も考えられる。トランプの第3四半期の献金額は1億2,500万ドル(約135億円)と発表された。前回のレポートで、弾劾調査発表後の三日間、一日平均の献金額が通常の4倍に跳ね上がったと紹介した。少なくとも献金面では、弾劾調査はトランプに有利に働いている。一般献金に加え、シェルドン・アデルソン(カジノ王)などの大物献金者によって、共和党は来年の夏までに10億ドルを優に超す多額の資金力を蓄えるであろう。選挙を控える共和党議員は、こうした資金力を目の当たりにして、容易に民主党の弾劾調査に同調することはできない。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

民主党大統領指名情勢②: バーニー・サンダーズ選挙戦から離脱か?

胸の痛みを訴え、動脈閉塞(ステント)手術を受けたと、サンダーズ選対本部は10月2日(水)に発表した。予防措置の簡単な手術で、しばらく治療と休養してから選挙活動に戻るとのことだった。ところが、病状は心臓発作だったことが5日(土)に判明(下記写真参照)。サンダーズ氏が3泊で退院したことから事態は深刻ではないことは良かったものの、今後の選挙活動に大きな疑問を残すこととなった。78歳のサンダーズ氏が心臓に不安を抱えながらあと1年超の過酷な選挙戦を戦うことは正直無理がある。更に直近では、エリザベス・ウォーレンに支持率で引き引き離されてしまった。左派政策推進のためにウォーレン女史の応援に回った方が民主党及び本人のためとの声が今後増えるであろう。1ヶ月前のレポートで指摘させていただいたが、サンダーズ氏が離脱すればウォーレン女史の民主党指名はほぼ確実となる。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

出所:RealClear Politics:民主党大統領候補の主要世論調査平均支持率

弾劾調査反撃その①: ペロシの弱み・懸念につけ込むトランプ・共和党 ~ 弾劾調査の正式採決求める・・・

下院が弾劾調査を正式なものとする採決を行わない限り、大統領と政権当局者らは民主党が求めている文書提出や証言など無視できるとする書簡をペロシ下院議長に送付するとトランプは示唆した。これはペロシ下院議長が恐れていた事態に発展。27日のレポートで、ペロシ議長は左派派閥の弾劾要求を抑えきれず、(仕方なく)調査に踏み切ったと紹介した。しかし、一つの配慮・抵抗として採決を取らずに自らの権限で決行した。理由は、弾劾が不発に終わり有権者らの反感を招いた場合、調査に賛成した接戦区の民主党議員が苦戦することを恐れたからである。採決を取らなければ、自分の責任に止め、議員らは弾劾推奨を否定できる。そうした真意をトランプ・共和党は当然分かっており、圧力を掛けるべく攻勢に転じたのである。ペロシ議長は書簡でマッカーシー下院共和党院内総務に、「合衆国憲法と下院ルール、下院の慣例に照らしても、プロセス始動に先立ち下院本会議採決は義務付けられていない」と反論した。しかし、弾劾調査が正当なら採決を取っても良いのではとのメディアの問いに動揺する場面があった。

採決を求める作戦は、トランプ・共和党にとってもリスクがある。もしペロシ議長が裁決に踏み切り、可決した場合(ほぼ間違いなくされる)、民主党が求められる資料や証言に応じらなければならない。しかし、そこは当然計算ずくの上での行動。弾劾調査発表から10日以上過ぎ、今回の行動は、トランプ・共和党がウクライナ疑惑・弾劾調査を乗り越えられると自信を持ったものの現れと分析する。

弾劾調査反撃その②: 弾劾調査対抗のトランプ秘策はSNS広告戦略 ~ ロシアから戦術を学ぶ?・・・

ほとんど表立に出て無いが、弾劾調査の対抗策として、トランプ陣営は積極的なSNS広告展開を行っている。弾劾調査発表翌日の9月25日から10月1日にかけてトランプは自身のフェイスブックに200万ドルを費やし、1,800種ものの広告を掲載して来た。それら広告には1,800万回のクリック(視聴)があったとのこと。驚きなのが、1800種の広告は全て異なっており、それぞれターゲット層が違うとのこと。性別、年齢、政治志向だけでなく、趣味、食事、友達などありとあらゆる側面からピンポイントで狙った広告戦略である。実は、フェイスブックが広告主を発表するようになった2018年5月以降で、トランプ選対本部は2,000万ドルもののフェイスブック広告を掲載している。これは民主党候補全員のSNS広告料を大きく上回る額とのこと。

トランプは更に、「Official Impeachment Defense Task Force(公式弾劾防衛タスク・フォース)」と名付けたホームページを立ち上げた。「私はこの大事な時に支えてくれた者を把握したい、だから現在選対チームは「公式弾劾防衛タスク・フォース」に記名した、全てのアメリカ愛国者のリストを作成している」とSNS広告で呼びかけた。もう一つの広告では、「民主党は君のようなサポーターを黙らせ、脅すことで繁栄してきた。弾劾を通じて君の票(権利)を奪おうとしている!」と訴えている。弾劾調査は、トランプの支持基盤を触発、献金及び投票に出向かせる格好の起爆剤となったようだ。更にホームページを通じて献金も呼びかけており、恐らく大物献金者の協力を得て、一般献金者の2倍の額をマッチングする仕組みを作っている。例えば献金者が$100を寄付すると自動的に$300になる仕組み(大物献金者が差額を寄付)。

このような広告やホームページで結束力を強めると共に民主党への反論・フェイクニュースまでも発信、草の根レベルから民主党揺さぶり、圧力を掛ける狙いのようだ。こうした戦術はロシアが2016年の大統領選で展開したが、トランプは遥かに巧妙且つあからさまに展開している。情報特別委員会でくだらない自論・演技を展開するどこかの民主党議員とはレベルが格段に違う。大統領候補者もさらいながら、民主党の選挙戦術は未だに古いものであり、弾劾調査はロシア疑惑のように不発に終わると思わざるを得ない。宣伝・ブランド作りにおいてはトランプの方が一枚も二枚も上手である。

出所:Official Website of Donald J. Trump for President

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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