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ジョセフ・クラフト 特別レポート

米大統領選: エリザベス・ウォーレンの勢い強まる・・・

掲載日:2019年09月24日

8月5日のレポートで、「民主党大統領候補は、エリザベス・ウォーレンかジョー・バイデンに絞って良い」と述べ、更に9月1日には、「民主党大統領指名はエリザベス・ウォーレン・・・ただし、バーニー・サンダーズ次第・・・」と題したレポートを紹介させていただいた。そのウォーレン女史の勢いが急増している。例えば、先週16日(月)にニューヨークのマンハッタンで集会を行ったところ、2万人も集まる盛況ぶり(下記写真参照)。更に信じがたいのが、演説後に行ったウォーレン候補との自撮り写真(セルフィ―)サービスに、なんと4時間待ちの行列となった(ウォーレンは残って全員と写真を撮ったとのこと)。集会を見学したワシントンの政治アナリストは、オバマも含めてこれほど熱気のある政治集会の記憶は少ないと驚きを語った。ニューヨークは(ウォーレンの地元)マサチューセッツ州に隣接しているため、ある程度の地元びいきがあると割り引いても、異例な盛り上がり方、現地のメディアも驚きを隠せない。

ニューヨークでのウォーレン集会に2万に集まる、自撮り写真行列は4時間待ち(9月16日)

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

そうしたが主観的な動きが少しづつデータにも反映され始めている。RealClear Politicsが算出する民主党候補の平均支持率調査で、7月からバーニー・サンダーズと横並びだったウォーレン女史が、同候補を3ポイント以上引き離した(下記チャート参照)。ジョー・バイデンは30%の支持率と以前リードを保っているが、同調査は数社の平均化しているため、直近の流れを反映していない可能性がある。例えば最も直近の世論調査でのバイデン対ウォーレンの支持率格差を見ると、NBC/Wall Street(16日)でバイデンが+6ポイント、Economist/YouGov(18日)では+5そして話題を呼んでいるのがアイオワ州最大の新聞「デモイン・レジスター」の調査(21日)でウォーレンがなんとバイデンを2ポイントと初めて逆転した。デモイン・レジスター調査はアイオワ州だけを対象としているので全国を反映するものでは無い。しかし、大統領予備選最初の党員会が行われるため、全国的に注目されている。実は、1996年以降、アイオワ州党員会を制し民主党候補が指名を受けている。

デモイン・レジスターの世論調査の中に、バイデン選対本部にとって気になるデータがもう一つある。1位の候補と2位の候補の支持率を足すとウォーレンが42%でバイデンが30%(因みにサンダーズは21%)。ウォーレンは第2位の候補としてバイデンを支持する中道派から一定の支持・評価を得ている。逆にバイデンは左派からの支持が少ない。つまりウォーレンとバイデンとどちらがより民主党有権者をまとめられるかというとウォーレンとの結論になる。

バイデンとウォーレンを比較した時、ウォーレンは若者の支持が圧倒的に高く、女性からの支持も強い。弱みは黒人支持で、圧倒的にバイデンに差を付けられている。以前に紹介させていただいたが、バイデンは失言・認知症疑惑という爆弾を抱える。逆にウォーレンの最大の問題は左派票を割っているバーニー・サンダーズである。サンダーズが左派政策推進のため自ら犠牲となり、早めに選挙戦から身を引けば、民主党の大統領候指名はウォーレンとなる可能性が極めて高まる。バイデン自身の性質や政策に賛同する有権者が少ないため、ウォーレンの方が勝利の可能性が高いと思った瞬間、バイデン支持は一気に引きものと思われる。

民主党候補の大統領支持率(全国)

出所:RealClear politics

直近の民主党候補の支持率調査:ウォーレン躍進

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

米中貿易交渉: 「香港人権・民主主義法案」は貿易のカード?それとも国内政局ツール?

8月23日に中国が発表した報復関税の背景には、アメリカによる香港内政干渉への警告ではないかという見解を以前に紹介させていただいた。ワシントンの政局通と先週話したが、「香港人権・民主主義法案」をめぐって腑に落ちないことがあると指摘する。この法案提出の意図は、米議会が本当に人権問題に関心を抱いているのか、それとも中国との貿易交渉のカードにするべく共和党とホワイトハウスが連携しているのか、それとも実は中国とは関係無く、単に共和党対民主党の選挙・政局の駆け引きなのか実態は分からない。そのからみで、いくつかの疑問点を指摘してみたい。

疑問その①: 共和党の積極姿勢

共和党は人権問題に興味が無いと言うつもりは無いが、民主党よりは消極的である。ところが、「香港人権・民主主義法案」に限っては強く推奨しているのだ。上院での法案提出者は与党共和党のマルコ・ルビオ(フロリダ州)議員。超党派法案と言われるだけに、下院は民主党と思いきや、共和党のクリストファー・スミス(ニュー・ジャージー州)議員が提出。これだけではおかしいとは言えない。それより違和感を感じるのが、本来まとめ役のミッチ・マコネル上院院内総務が全面に出ていることである。8月半ばから9月にかけてのマコネル氏とペロシ下院議長の香港問題に関するツイートを検証、マコネル院内総務はペロシ議長よりも3倍のツイートを発信している。ツイート数だけでなく、マコネル氏の口調も厳しい。取り分け8月21日に投稿されたツイートは中国共産体制を痛烈に批判、脅迫とも受け取れる内容。その二日後に中国政府が報復措置を発表するが、これが触発したのか定かで無いが可能性はあるかもしれない。勘ぐり過ぎと言われるかもしれないが、共和党それもマコネル院内総務がここまで人権問題にいきり立つのは不自然。

疑問その②: 米運輸長官の香港癒着

マコネル氏が香港問題にここまで強硬になることに不思議なのは、妻のイレーン・チャオ運輸長官の存在である。彼女の父・兄弟は香港で海運業を中心に様々に事業を展開しており、「香港人権・民主主義法案」が適用されると香港での事業に悪影響を及ぼす可能性がある。実は、「香港人権・民主主義法案」はアメリカが香港に与えている特権地位を無くすことが組み込まれている。それにより事業活動が制限され、香港に罰則的であるが中国本土にとって直接の影響は限定的。そのため法案は香港市民を苦しめるだけで中国への制裁にならないとの指摘もある。いずれにせよ、チャオ家の事を考えると何故マコネル氏がここまでいきり立つのか分からない。現地では、マコネル氏の香港法案への拘りは、逆に妻の家族を優遇していないことを示すためとの憶測が一部にある。妻の家族に不利益となるかもしれない法案を推奨することで利害関係が無いことを主張するというもの。現に、下院でチャオ運輸長官の地位乱用疑惑への捜査が始められている。個人的にしっくり来ないが、「香港法案」は単に民主・共和の国内政局争いの道具に過ぎないとの見解もある。

「香港人権・民主主義法案」の主な内容

・1992年の「米国・香港政策法」に定められた原則を再確認、香港における民主主義、人権、及び十分に自立していることの重要性をもって、米国の法律の下に中国とは違った待遇を受けるものとすること、を含む。

・制定後90日以内及び2023年までの毎年、香港における米国の利益に関する条件についての報告書を国務長官に発行することとする。この報告書には香港の民主的制度についての動向を含むものとする。

・香港について中華人民共和国と異なる扱いをする新しい法律、協定を制定する前に、国務省は香港が十分に自立していることを確認すること。

・大統領は、香港の特定の書店、ジャーナリストに対して監視、拉致、拘束、強制告自を行った責任者を明らかにすること。また、基本的自由を抑圧したなどの行動については、その者の合衆国における資産を凍結し、その者の米国への参入を拒否すること。

・2014年香港に移住したビザ申請者は、香港の選挙に関する非暴力的な抗議活動に参加したとして逮捕されたり、拘束されたり、その他の不利となる政府の蘇飛を受けたことがあっても、それを理由にビザを拒否されることがないものとする。

疑問その③: トランプ政権のだんまり

マコネル院内総務が反中国ツイートを連発する最中、同件に関してホワイトハウスの存在感はほぼ皆無である。ツイートの神様であるトランプは香港問題にほとんど言及していない。トランプは人権問題に関心が少ないから不思議でないかもしれない。しかし国務省は従来から人権問題に関わっている。同省のツイートも確認したが、香港に関する記載は見当たらない。国務省は同時期に、ヴェネズエラの人権問題に関して10回の批判ツイートを投稿、キューバ、カンボジア、ジンバブエそして中国のウイグル地区の人権問題に関するツイートを打っているのに、香港に関する記載は一つも無い。唯一、8月22日に香港のデモに関するツイートがあるが、「人道的な解決を願う。中国が香港へのコミットメントを尊重することに期待したい。」とかなり中国政府に配慮したコメントに抑えられている。マコネル院内総務とホワイトハウスの姿勢があまりにも対照的。国民の8割が銃購入に際する犯罪歴確認の強化を支持するのに、銃規制法案に関して「トランプ大統領の姿勢を確認するまでは法案提出はしない」と抵抗するのに、香港に関して一人で暴走するとは思えない。現地で、一つ推測されているのが、「Good Cop、Bad Cop」戦術である。共和党(マコネル)が悪者になり、中国を揺さぶり、トランプ・ライトハイザーが議会を説得、沈静化を図り、あるいは法案棄却まで打診して貿易交渉において中国から譲歩を取るというもの。しかし、中国が簡単にそんな手に乗るとは思い難い。

疑問その④: 9月以降のマコネル院内総務のだんまり

上記で示したように、8月は頻繁に香港ツイートを打っていたマコネル院内総務は9月3日を最後に一切投稿しなくなった。偶然かもしれないが、この後から米中貿易交渉が好転する。香港問題への言及を控えることと引き換えに交渉に中国が応じたのか?俄かに信じがたいが、上記で指摘した「Good Cop、bad Cop」戦術が功を奏したのであろうか?中国政府は国慶節前までに香港問題を鎮静化する狙いでトランプ政権と手を打ったのか?マコネル沈黙のもう一つの可能性として、下院で民主党が妻のチャオ運輸長官の捜査を始めると発表したことがあるかもしれない。しかし、捜査の発表は9月16日で、9月3日から13日間の沈黙の説明にならない。更に、チャオ長官の癒着疑惑は6月にNYTが報道、その時から民主党が内々に捜査していることはマコネル氏も分かっていたので急に黙るのもおかしい気がする。

「香港人権・民主主義法案」に纏わる疑問の真意は分からない。上記の理由が背景にあるかもしれない、あるいは全く関係ないかもしれない。いずれにせよ、この法案が今後の米中貿易交渉そしてその後の安全保障問題など中国との関係に影響することは確かだと思う。その意味で、同法案の動向を注意深く見ていきたいと思う。

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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