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ジョセフ・クラフト 特別レポート

予想以上に早かったボルトン解任 ~ 後任候補を探る・・・

掲載日:2019年09月12日

5月31日のレポートで、「トランプはイラン緊張情勢の鎮静化を模索 ~ ボルトンは年内に退任」と紹介したが、年内どころか3ヵ月ほどで幕引きとなった。解任理由としてシリア、北朝鮮、中国、ロシアあるいは直近でタリバンとの和平交渉などが挙げられるが、WHスタッフによるとトランプとボルトンの最大の対立イシューはイランとのこと。取り分け関係が修復不可能となった決定的イベントは6月20日のイラン空爆回避だったとワシントンの事情通がWHから聞いている。

ボルトン解任によって米中貿易交渉が進展すると指摘する市場アナリストが居る。米中貿易協議は進展するかもしれないが、ボルトンとは関係無いと見ている。先ず、貿易交渉は完全にライトハイザーが掌握、ムニューシンも多少関与しているが、最終的にトランプが決めている。ボルトンが貿易交渉に関与した話は聞いたこと無いし、自身もあまり興味は持っていないと理解している。ただ、安全保障問題であるファーウェイ規制に関してボルトンは関与しており、一見緩和の期待も持たれるが、ボルトン以上に米議会が強硬的で5G規制法案を提出するなど、ボルトンが去っても米国の強硬姿勢は大きく変わるものでは無いと思われる。

ボルトン解任で期待されるのが、地政学リスクの緩和、とりわけイランとの関係である。核規制の再交渉の可能性は低いが、ボルトンが強く推奨した軍事衝突のリスクは遠のいたと思われる。今後の地政学リスクを占うのに重要となるのが、次期安全保障担当の選出である。下記はWHが考慮していると思われる候補者のリストである。後任選出のポイントとなるのが、推薦者と考えている。当時Fox Newsのコメンテーターだったボルトン氏をトランプがテレビで見て、スタッフの反対を押し切って任命し、失敗した経緯がある。そこで今回は側近の意見をより聞くものとワシントンの事情通は指摘する。ただし、トランプが耳を傾ける側近とは極めて近しい少人数に限られる。影響力がある側近とは、ペンス副大統領、クシュナー上級顧問、マルバニー主席補佐官そしてポンぺオ国務長官ぐらいであろう。これら側近がどの候補と近いかを知ることである程度絞れるかもしれない。この観点からフック国務省イラン担当特別代表あるいはケロッグ副大統領安全保障補佐官などが有力かもしれない。その他に共和党上院議員数名が意欲を示しているとの情報もあり、個人的にはトム・コットン(アリゾナ州)議員に注目している。今朝、聞いた情報だとポンぺオ国務長官を兼任させる案も上がっているが、さすがにこれは負担が大きく非現実的と思う。しかし、自分が事実上の国務長官兼安全保障担当と思い込んでいるトランプのことだから、完全に否定することはできない。

WHが検討しているNSC担当候補

ブライアン・フック国務省イラン担当特別代表:ティラーソン国務長官に誘われ、国務省に入り、一時期は同国務長官と共に解任される噂が浮上。しかし、ポンぺオ国務長官とも波長が合い、イラン担当に任命されると中東問題でクシュナー上級顧問を支え、彼から厚い信頼を得る。外交・政治経験は豊富だが軍事経験は無い。推薦 ~ クシュナー上級顧問、ポンぺオ国務長官とリンゼー・グラハム上院議員(トランプのゴルフ親友)。

ロバート・グレネル駐独大使:極右派姿勢でドイツ政府と度々衝突。その姿勢・思想がトランプから絶賛。ブッシュ政権下の2001~2008年は国連では米報道官を務め、それ以前は共和党政治家のアドバイザーに就いていた。2009年~2017年までは、Capitol Media Partnersというメディア・PRコンサルティング会社を設立。同氏は、トランプから好かれており、一部の保守系共和党員からの支持も厚い。しかし、軍事・安全保障経験に乏しいのネック。ボルトン氏よりも強硬的な側面があるが、前NSC担当との違いはトランプの言うことを聞くこと。推薦 ~ 一部極保守系共和党議員。

キース・ケロッグ副大統領安全保障補佐官:2003年に中将の位で陸軍を引退、その後はペンタゴンの戦略アドバイザーそしてOracle社の国土安全保障のアドバイザーを務める。2016年3月にトランプ選対本部の外交アドバイザーに就任、マイケル・フリン氏がNSCを失脚したあと、NSC担当代行を務めるなど、安全保障においてはベテラン中のベテラン。マクマスター氏就任後は、副大統領室で安全保障担当及びトランプ大統領の補佐官を詰めている。トランプ氏とは取り分け親しい分けでは無いものの、ペンス副大統領からは絶大な信頼を得ており、親日派でもある。推薦 ~ ペンス副大統領。

リック・ワデル陸軍少将兼統合参謀本部補佐官:現候補のうち、軍事経験・知識においてワデル氏の右に出る者は居ないと言われている。無論、ペンタゴンからの支持も厚い。問題としては、ケリー前主席補佐官と親しく、トランプに嫌気される可能性がある。彼を推奨するWHスタッフは少なく無いが、シリア撤退においてトランプと多少見解の相違があり、どのように売り込むかが難しいとのこと。推薦 ~ 統合参謀本部。

ピート・ホクストラ駐オランダ大使:1993~2011年までミシガン州第2区の会員議員を務め、議会からの信任は厚い。7年間は下院情報委員会のメンバーを務めた。トランプも、「彼は良いやつだよ」と言うぐらい好かれている。問題は過去にアンチ・ムスラム発言疑惑があり、中東問題において足枷にならないか懸念が残る。推薦 ~ 共和党、議会。

ダグラス・マクグレガー元陸軍大佐:2004年に引退、それ以降はBurke-Macgregorというコンサルティング会社の重役に就任。彼は定期的にFox Newsの安全保障コメンテーターとして出演(因みにボルトンもFoxのコメンテーターとしてトランプの目にとまる)。彼はシリア撤退を主張、それがトランプを後押しした要因の一つとされている。しかし、マクグレガー氏はPetraeusやDempsey陸軍元帥を批判、陸軍の不正・不平等さを主張していて、軍から反発を買うものと思われる。推薦 ~ Fox News。

スティーブ・ビーガン北朝鮮担当特別代表~ 裏事情を明かすと、彼がNSC担当として力量があるというより、WHは彼の行き場所に困っている。全て彼の責任では無いものの、北朝鮮との調整役として全く機能していない。駐ロシア大使が辞任した先月にビーガン氏が後任として上がったが、不適任としてサリバン副国務長官が任命された。ブッシュ政権下でコンドリーザ・ライスNSC担当の事務局長を務めた経験はあるものの、軍事経験は無い。ポンぺオ長官に好かれているものの、WH内の評判はイマイチ。推薦 ~ ポンぺオ国務長官(?)。

共和党上院議員~ トランプ安全保障政策が混迷している懸念を共和党執行部が抱いているとのこと。そこで議会から選出するのが良いとの見解が出ており、数名の上院議員が意欲を示しているとの情報がある。どの議員が名乗りを上げているのか分からないが、実力的には米上院軍事委員会のジェームス・インホフ議長(オクラホマ州)やトム・コットン議員(アリゾナ州)などが有力と思われる。

日銀金融政策: 日経インタビューで黒田総裁は緩和策を示唆?・・・

日経新聞が6日(金)、黒田総裁とのインタビューを基に「マイナス金利の深掘り『必ず選択肢』」と題した金融政策見通しの記事を掲載した。しかし、記事は当初から政策金利の深堀を焦点にしており、総裁にその是非を問う誘導的(バイアス)な内容と個人的に感じた。インタビューのやりとりそのものを読むと違う印象を受けた。フィルターの掛かっていない黒田総裁のコメントから二つのポイントがあると考える: ①YCCの調査委~「改善版」と②短期では無く超長金利への懸念(イールド・カーブのスティープ化)。

改善版:四つの緩和手段について聞かれた総裁は、「従来から金融緩和は4つのオプションを示している。組み合わせや改善版などいろんなことが考えられる。」と言及。「改善版」と言及したのは今回が初めてと思われる。更に、「今の金融政策の一番の大きな柱はイールドカーブコントロールだ。」とも指摘している。この二つを合わせるとYCCを新たに調整した仕組み(改善版)を模索している可能性が推測される。無論、小生は上記に5年ターゲットを新たに加えるデュアル・ターゲットという新たな仕組みを紹介しているだけに、過剰解釈、希望的観測と言われても仕方がない。しかし、安易に受け流すのも逆に軽視しているとも思う。

超長金利懸念:総裁は、「20年、30年の超長期の国債の金利はちょっと下がり過ぎだ。」とはっきり言及した。対処策として公開市場操作(オペ)で調整するとも指摘(実は既に日銀は償還期間(デュレーション)の短期化を進めている)。マイナス金利の深堀よりもイールド・カーブのスティープ化に関連した指摘・懸念の方が(政策金利の深堀よりも)多かったと思う。

今回のインタビューを総体的に分析すると、政策金利の深堀へのハードルは高く、それよりもイールドカーブのステープ化を図るものと思われる。その軸となるのが引き続きYCCフレームワークで今回初めて言及した「改善版」という言葉が一つのポイントではないかと推測する。


日経新聞インタビュー(9月6日)

Q: 足元の経済をどう評価していますか。

A: 「消費、設備投資という内需は比較的しっかりしている。現時点で物価安定の目標に向けたモメンタム(勢い)は維持されているが、海外経済を中心に下方リスクが大きい。下方リスクはさらに高まっている。それが悪化していく可能性も否定できない。米中貿易摩擦を中心に警戒を要する」

Q: 米国で景気後退の前兆とされる「逆イールド(長短金利の逆転)」が起きています。

A: 「米国は非伝統的金融政策で大量に長期国債などの資産を買い入れし、タームプレミアム(期間に伴う上乗せ金利)が縮小した効果が続いているので、長期債の金利が比較的低く保たれて逆イールドになっている。それ自体で景気後退の前兆だと言う必要はない」

Q: 追加緩和策として4つの手段を例示していますが、現在はマイナス0.1%としている短期政策金利の引き下げ、マイナス金利の深掘りは有力な選択肢ですか。

A: 「従来から金融緩和は4つのオプションを示している。組み合わせや改善版などいろんなことが考えられる。追加緩和を行う場合は、金融システムに与える影響、金融仲介機能や市場機能を阻害することにならないかなどの副作用、プラス面、マイナス面を総合的に勘案して最も適切な追加緩和策を講じる」

Q: マイナス金利を深掘りするとイールドカーブ(利回り曲線)に傾斜ができ、副作用対策になるとの意見もあります。

A: 「具体的に申し上げるのは難しい。総括検証で示したのはイールドカーブがあまりフラットになって超長期債の金利が低くなると、生命保険や年金のリターンが下がってしまい、消費者マインドにマイナスの影響を与えるのではないか、ということ。20年、30年の超長期の国債の金利はちょっと下がり過ぎだ。

「必要があれば超長期債の公開市場操作(オペ)で量や内容を見直すこともできる。いずれにせよ、政策金利の引き下げ、マイナス金利の深掘りは4つのオプションの中に必ず入っている」

Q: 長期金利がマイナス0.3%近くにある現状は許容範囲ですか。

A: 「弾力的に市場機能が発揮されているところを無理に(操作する)というのはいかがかという気はしている。他方、限度がないかというと、『0%程度』という10年物国債の金利の操作目標の意味がなくなる。金利の操作目標を置いたまま、どこまで行ってもいいということはあり得ない。行き過ぎれば当然チェックする」

Q: 金利低下を警戒しつつ、マネタリーベース(資金供給量)を拡大するのは矛盾しませんか。

A: 「今の金融政策の一番の大きな柱はイールドカーブコントロールだ。適切なイールドカーブを実現するため、年間80兆円(の国債購入)をメドとしつつ、実際の買い入れ額は減っている。ただし適切な形になるように国債の買い入れが引き続き必要だし、マネタリーベースの増加も不可避だ」

Q: 安倍晋三首相の自民党総裁任期は残り2年です。黒田総裁の任期は4年弱ですが、ポスト安倍で総裁を続けますか。

A: 「そういう質問にお答えするのは適切ではない。私の任期があと4年弱あるということはよく認識している」

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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