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ジョセフ・クラフト 特別レポート

米大統領選①:失言のランボルギーニ ~ 密かに高まるジョー・バイデン不安・・・

掲載日:2019年09月02日

ジョー・バイデン米大統領候補は昔から失言が多いため、「Gaffe Machine(失言製造機)」と言われていた。しかし、直近の失言内容及び頻度があまりにも酷いため、「失言のランボルギーニ」だと物議を醸している。ここに来て問題視された背景にはワシントン・ポストの29日(木)の記事が挙げられる。バイデン氏が24日にニューハンプシャー州で行った演説の一部がかなり歪曲された指摘したのだ。反トランプの急先鋒的メディア機関が民主党候補を疑問視するのは異例、バイデン氏の大統領としての資質・力量が疑問視され始めている。

WAPO曰く、バイデン氏は演説で、副大統領時代に海軍指揮官にシルバー・スター勲章を授与するため、戦下にあったアフガニスタンのクナル州を訪問したことを語った。「副大統領の一人や二人、死んでも問題じゃない」と危険なため訪問を引き留めようとするスタッフを振り切って現地へ向かったと明かした。現地では、指揮官が「自分は栄誉を受けるに値しない、亡くなった有志達にあげて欲しい」と彼の心意気を称賛した。バイデン氏は更に話の中で、「これは偽りでない、本当の話だ。神に誓って約束する」とまで強調。しかし、ワシントン・ポストは、上記の話は、別々に起きた三つの出来事を混合してしまっていると指摘。先ず、バイデン氏は確かに2008年にアフガニスタンのクナル州を訪れている。しかし、その時は副大統領では無く、上院議員だった。更にその時は兵士への勲章授与は無かった。この兵士は2014年に最高位軍事勲章である議会名誉勲章を受章したが、バイデンでは無く、オバマ大統領から貰っている。バイデン氏は2011年にアフガニスタン服役の兵士に勲章を授与しているが、海軍指揮官では無く、20歳の陸軍軍曹で且つ勲章はシルバー・スターでは無く、ブロンズ・スターだった。そもそもバイデン氏が紹介する海軍指揮官は存在しない。

バイデン氏が意図的且つ悪質な嘘をついたとは全く思っていない。しかし、他愛もない勘違い・度忘れにしては、時間、場所そして人物などの認識があまりにも混乱している。不謹慎かもしれないが、アルツハイマーなど認知症の初期症状とも疑われる。単発的な事例なら問題視しないが、例えば8月10日にも、「副大統領の時に、パークランドの高校乱射事件の学生らと(銃規制について)議論した」と主張、しかしこの事件は去年の2月(トランプ政権下)に起こっている。メンタルキャパシティを意識せざるを得ないもう一つの理由はバイデン氏自身の認識不足。ワシントン・ポストの指摘について同候補は、「私は兵隊の勇士を称えただけだ。それの何がいけないのか理解できない・・・」と自覚・認識が薄い。

最後に8月の1ヶ月間で把握されているバイデン氏の失言・誤認を下記にリスト・アップしてみた。年の近いサンダーズやウォーレン候補らよりも遊説回数が少ないにも関わらず、失言数は遥かに上回る。認知症では無くとも、失言の多さに話題が集中してしまい、本質的な政策議論が出来ないことが最大の問題と言えよう。民主党選対本部と接している知人によれば、トランプ批判が増加している最中に、バイデンを筆頭に民主党候補らが選挙のモメンタム・盛り上がりのチャンスを生かせて無いことに民主党執行部や大物献金者らが懸念を抱いていると言う。バイデン氏が大統領候補に選ばれるなれば、爆弾を抱えて本選を戦うことになる。

8月に確認された主なバイデン失言・誤認集

8月5日 ~ 「昨日のヒューストンそしてミシガン州での乱射事件の被害者らにお悔やみ申し上げたい・・・」
(乱射事件はテキサス州(エル・パソ)とオハイオ州(デイトン)で起こった)

8月8日 ~ 「トランプは(2017年)シャーロッツビルのデモに関して白人至上主義者を擁護した。このことはアンゲラ・メルケル独首相が非難、英首相のマーガレット・サッチャーも疑った・・・」
(その後テレサ・メイ首相と訂正した)

8月8日 ~ 「貧困の子供でも白人の子供同様に賢く、才能も持っている・・・」
(「裕福」というつもりが、白人と言ってしまい「貧困=黒人」を示唆しているとして人種差別発言との指摘を受ける)

8月9日 ~ 「我々は分裂より団結を選択、フィクションよりサイエンス、そして何よりもファクト(事実)よりも真実を選ぶ・・・」
(嘘とファクトを間違えた他愛もないミスだが、スピーチの「オチ」・「クライマックス」と重要なタイミングでの盛り上げるチャンスを逸したことでスタッフが落胆)

8月10日 ~ 「私が副大統領の時にパークランド高校の学生たちと(銃規制について)いろいろ議論したよ・・・」
(パークランド乱射事件はトランプ政権下の2018年2月に起きた。おそらく2012年のサンディ・フック小学校の乱射事件と混乱したものと思われる。)

8月20日 ~ 「1970年代後半にボビー・ケネディとキング牧師は暗殺されてしまった・・・」
(両氏は1960年代後半(1968年)に暗殺された)

8月23日 ~ 「(1970年)オハイオ州、ケント州立大学の乱射事件では40人以上も射殺されたんだ・・・」
(悲劇に変わりないが実際には、4人が亡くなっている)

8月24日 ~ 「ヘルスケアに関して先ほどダートマス大学で演説したばかりなんだ・・・。え~と、大学の病院だったかな・・・?んんん、ハッキリ言っておきたい、私の頭はイカレテないぞ・・・。大学病院だったか何処だったか、兎に角キャンパス内だったことは間違いない。」
(頭がイカレてると誰も思ってないのに、自ら主張することでかえって話題となり、注目を集めてしまった。)

8月24日 ~ 「(ニューハンプシャー州の集会の冒頭挨拶で) バーモント州は大好きなんだ~!・・・」
(正直、この手の間違いは政治家に良くある。しかしスピーチの冒頭での失言は、会場の雰囲気をシラケさせてしまった。)

米大統領選②: 民主党大統領指名はエリザベス・ウォーレン・・・ただし、バーニー・サンダーズ次第・・・

8月19~23日に、ブルー・ステートであるカリフォルニア州を訪問。そこで南カリフォルニア大学(USC)の政治学教授と意見交換を行った。反トランプへのバイアスが強いので大統領や共和党の話はある程度差し引いて聞く必要がある。しかし、民主党の状況に関しては率直且つ参考になる見解が得られるのではと期待した。教授との対談だけでなく、1週間滞在しての全体的な印象は、民主党の大統領候補らへの盛り上がりに欠けているというか冷めて見方が多い。逆に反トランプ感情・怒りが強まっている。大統領候補は誰が最良?との問いに一番多く聞かれたのは、「トランプで無ければ誰でも良い」。最も印象的だったのが、バイデン選対部が新しく放送したコマーシャルである。CMは、政策定義や資質のアピールなどは無く、率直に「各世論調査でトランプに勝てるとされているのはジョー・バイデンだけです。だからバイデン候補に投票しましょう。」とプライドを捨てた反トランプ感情を煽る戦術を堂々と打ち出した。

そこで民主党大統領候補の検証を行ってみたい。結論は8月5日のレポートでも指摘したが、エリザベス・ウォーレン対ジョー・バイデンの一騎打ちである。更に踏み込めば、ウォーレン女史が最終的に指名を受けると予想する・・・ただし、バーニー・サンダーズが早めに選挙選から離脱することが条件である。下記チャートは、民主党大統領候補の支持率動向を表している。バイデン氏が29%と約倍近い大差を付けている。17%のサンダーズと16.5%のウォーレンはリベラル・若者票を二分しており、これを一本化すると、バイデンを上回ることになる。サンダーズは思想・ビジョンを語るのは得意だが、それらを現実化する具体的な政策立案に乏しい。そのため、彼の支持率はピーク時の25%から低下基調にある。個人的に同意しないが、ウォーレン女史は巧みに具体的な政策定義を示し、支持率は一桁台から2倍以上に上昇し続けている。彼女は若者そして女性からの支持が厚く、討論で唯一トランプに勝てると評判も高い。しかし、民主党予備選を最後までサンダーズが戦えば、リベラル票を二分したまま、バイデンを追い抜くことは相当難しい。バーニー・サンダーズがやすやすとウォーレンに譲るとも思い難い。

バイデン氏に関しては上記で述べたようにイマイチ盛り上がりに欠け、失言という爆弾を抱えている。二回行われた民主党大統領選のディベートでは存在感・力量が示せなかった。現在のバイデンには強みが三つある: ①中道派票、②反トランプ票そして③黒人票。ほとんどの民主党候補が左派よりな政策スタンスを取っているため、中道派の支持がバイデンに集中している。しかし、中道票は経済動向に左右されやすく、現職大統領に投票する傾向があるとのデータもある。トランプの最大の敵は経済と言われるように、来年の景気状況が堅調であれば、バイデンよりトランプに流れることが想定される。二つ目の理由は反トランプ票である。CNNやワシントン・ポストなどの世論調査を見ると、バイデン支持の理由について圧倒的に多いのが、「他の候補よりもトランプに勝てそうだから」という消去法的な背景がある。今は強みとなっているが、バイデンではトランプに勝てないという印象・認識が広まったら、途端に支持が暴落する可能性がある。最後に、バイデンがトランプに勝てる最大の理由は黒人票と言えよう。2016年の大統領選を左右したとされるラストベルト接戦州(ウィスコンシン、ミシガン、オハイオそしてペンシルバニア)でトランプが勝てた要因として黒人投票率の減少が挙げられる。同4州では2012年に比べて、黒人層の投票率が10%ほど落ち込んだ。トランプはミシガンとウィスコンシンを僅か1万と2万人の差で取り、これは黒人投票率に置き換えると2~3%ぐらいに値する。バイデンであればオバマ支持の黒人が投票に出向くことが期待されるのである。

最後に他の候補について一言。先ず個人的見解だが、ピート・ブティジェッジは頭が切れ、政策論争も上手いが、現在のアメリカではゲイの大統領は無理である。8年あるいは12年後に期待したい。一時躍進したカマラ・ハリスだが、もう終わったと言って良いであろう。そもそも政策論争に弱く、風見鶏で思想が全く見えない。彼女の人気が上がったのは第一回目のディベートでバイデン氏に噛みつき話題を取ったことだけ。それから支持率は下落の一途を辿っている。彼女にとって致命的なのは黒人からの支持が薄いこと。地元のカリフォルニア州以外では、黒人支持率はジョー・バイデンに倍以上の差を付けられている。その他の候補は語るに値しないほど指名される確率は無いと考える。

Realclear Politics:民主党大統領候補支持率(8月27日付け)

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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