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ジョセフ・クラフト 特別レポート

米中貿易問題:中国の追加関税措置は香港問題への内政干渉への牽制(トゥキディデスの罠)・・・

掲載日:2019年08月26日

米国が表明した9月1日に発動予定の関税を一部12月に延期、そしてファーウェイへの禁輸措置の(90日)猶予など、米中貿易対立が多少なりとも緩和の様相を呈していた最中に、中国は750億ドル(約8兆円)相当の米国製品に追加関税を課す措置を金曜日に表明した。中国は貿易対立に関して長期戦に転換したとは言え、このタイミングで火に油を注ぐような行動に何故出たのか?中国自ら先に貿易摩擦をエスカレートするような行動を取ったのは初めてと思われる。その答えは、習近平政権の非公式スポークスマンとして最近注目されるHu Xijin(胡錫進)氏のツイートにあると思われる。胡錫進氏は、中国共産党機関紙・人民日報系の傘下にある環球日報の編集長であり、本国からツイッターへのアクセスが許されており、海外のチャイナ・ウォッチャーの間から政府の見解を代弁しているとして注目されている。確かにツイートの内容は貿易や中国情勢について政府を擁護する者が大半、政府関係者以外に知り得ない内容も少なくない。

23日の中国追加関税発表前のツイートから、香港問題に関してアメリカの内政干渉だと強く反発している内容が投稿されていた。その対抗措置として貿易姿勢の強化を促している。。具体的には、「米国の(香港問題への)内政干渉を阻止するため、中国が貿易交渉の条件を設定する」や「中国は貿易協議決裂(no deal)シナリオの準備を進めている」など敵視するツイートが乗せられた。ワシントン在住の中国アナリストは、経済・貿易面で、中国はある程度寛容・受け身の姿勢は見せても、政権・共産党の権力・統治力を脅かす事態には敏感且つ強硬に抵抗すると指摘。香港のデモが一向に収まらない中、中国政府としては、アメリカが一線を越えた、断固たる措置を示す必要があったと判断したものと推測する。加えて、アメリカから台湾へのF-16戦闘機の売却も影響したものと思われる。

重要なポイントとして、米中貿易摩擦はいよいよ安全保障・国家権力の段階にエスカレート、後戻りの出来ない状況に陥ってしまったと危惧する。同編集長のツイートから中国は、貿易合意を諦め長期戦、事態の悪化を受け入れ、妥協しない姿勢を固めたように伺う。トランプに理性的・客観的な対応は全く期待できず、むしろ本能的に反発・エスカレートさせる方向に進みかねない。八方ふさがりの状態に陥り、打開の目途が立たない。もはやトゥキディデスの罠のように行き着くところまで行くしかないかもしれない。

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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