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ジョセフ・クラフト 特別レポート

米乱射事件が示唆する2020年大統領選の勝敗ポイント・・・

掲載日:2019年08月16日

ご存じ、今月3日と4日にテキサス州エル・パソとオハイオ州デイトンで30人以上が死亡する悲惨な事件が相次いだ。残念なことに、民主党、特に大統領候補の多くは、被害者を労わったり、思いやる以上にトランプを攻撃、事件を政局に利用した。エルパソ出身のオルーク前下院議員は、「トランプは公然と人種差別や暴力を促し、この出来事につながった」と主張。同テキサス州出身のカストロ元住宅都市開発長官も、「白人至上主義を容認するトランプが今回の事件を誘発した」と非難し、他の候補たちも「トランプは人種差別主義者」などと謳い、事件の責任はトランプにあると攻めたてた。このように常軌を逸した事件は、卑劣且つ卑怯な犯人自身の責任以外のなにものでも無い。しかし、そうした政局狙いの行動には来年の大統領選を左右しかねない黒人票の存在がある。

下記チャートは、2016年米大統領選での人種と性別投票結果である。黒人有権者は9割近くと圧倒的にヒラリー・クリントンに投票、2020年も同様に民主党候補への支持が予想されている。因みに、クリントン勝利との大方の予想を覆した波乱要因とされているのが、ヒスパニックと女性票。移民中傷やセクハラ問題があったにも関わらず、ヒスパニック(28%)と女性票(41%)が事前調査よりも多くトランプに入った。中でも既婚女性は49%(クリントン)対47%(トランプ)とほぼ均衡だったこともおどろき。従って一般票に関しては、ヒスパニックや女性票が読み難い中、黒人票は確実に民主党に流れると思われるため、民主党は黒人有権者の投票率に着目しているのだ。

2016年米大統領選データ:人種別投票結果、性別投票データ

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

一般票でクリントンが過半数を取ったものの、選挙人制度の票をトランプが勝ち取ったことは承知の通り。中でも勝敗を分けたとされるのが、ラストベルトの接戦州(ウィスコンシン、ミシガン、オハイオそしてペンシルバニア)でいづれも歴史的僅差でトランプ・共和党が勝取り、その要因の一つに黒人の投票率が挙げられる。重要接戦州であるミシガンとウィスコンシンに着目すると、2012年に比べ2016年の黒人投票率は12%ほど低下した。トランプはミシガンを僅か1万1,000人(0.2%)そしてウィスコンシンを2万3,000人(0.8%)と競り勝った(下記表参照)。ミシガンで登録されている黒人有権者は約93万人そしてウィスコンシンが23万人とされている。(その他の条件が変わらない仮定で)黒人の投票率が僅かでも上がればミシガンとウィスコンシン州はおろかペンシルバニアも民主党が勝つ計算となる(オハイオ州は投票率データが確認出来なかったため、除外したものの概ね同様の状況と推測される)。無論、登録されている黒人有権者数の全てが所謂アクティブな(生存あるいは投票歴がある)有権者では無い。しかし、1%でも多くの黒人有権者が投票することはラストベルト接戦州で民主党勝利の確率を高めることは間違いない。

2016年米大統領選データ:2012年比での黒人投票変化率、共和党が勝利した一般投票の差、黒人の登録済有権者数(推計)

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

 トランプ、次の主戦場はドイツ?・・・

主戦場と呼ぶのは大げさかもしれないが、トランプ政権が再びNATOへの軍事費を巡ってドイツに揺さぶりをかけている。先ず、今月8日に駐ポーランド米大使館の正式ツイッターからジョーゼット・モスバッハ大使が、「ポーランドはNATOに対して軍事費の責務を全うしている」とツイート。そこまでは問題ないが、続けて「ドイツは(責務を)果たしていない。ドイツからポーランドへの米兵移転を歓迎する」と外交プロトコール上のマナー違反とも言えるコメントを投稿(下記参照)。自身のツイッター・アカウントでは無く、米大使館のツイッターを使ったことは、トランプ政権の正式見解と受け止めるのが普通である。

更に、ドイツ政府から嫌われているリチャード・グレネル駐ドイツ米大使が、これまた米大使館のツイッターから、「ドイツは貿易黒字を自国のために使っているのに、アメリカの納税者が5万人を超える駐ドイツ米国人(軍)にお金を払い続けると思うと、確かに不愉快だ」と投稿。因みに5万人の米軍兵と言わないのは、正式には米兵が3.4万人そして米軍をサポートする米市民が1.7万人だからである。トランプは6月に1,000の米兵をドイツからポーランドに移転する考えを示唆した。この点にグレネル大使は触れ、「今こそ、アメリカ国民とアメリカ大統領が反応する時がきた」とドイツからの軍事コミットメントの縮小を推奨した。ドイツからまとまった米兵移転が決定されるようなことになれば、米独関係はもとよりNATOの枠組みが問われ、欧州全体の安全保障問題に発展しかねない。

予てからホワイトハウスに近い筋より、トランプ自身は中国よりもEU特にドイツに不満を募らせており、いづれ大きな衝突を予想している。これに近い見解を、日本政府の高官からも伺ったことがある。トランプ対ドイツ・EUの衝突の場は来月の国連総会になるかもしれない。中国(香港)、イラン(ホルムズ海峡)、北朝鮮、ヴェネズエラやアルゼンチンなど地政学不安が重なる中でで欧州とも対立が深まるようであれば、もう金融市場は耐えらない状況になることを危惧する。

駐ポーランド米大使館より、駐ドイツ米大使館より

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

相変わらず、トランプ政権の傲慢且つ剛腕手法には呆れるが、ドイツを筆頭にEU諸国のNATOへの軍事予算不足には一理ある。ドイツ国会の軍事監視機関からも、軍予算不足は指摘されている。例えば、独空軍のパイロットは予算不足から飛行訓練が妨げられ、NATOが要求する飛行訓練時間を満たしていない。因みに、このGDP2%のNATO軍事費に関して、偉そうなことを言っているアメリカは果たしているのか? 地域ごとの米軍事費は公表されていないため、正確には分からない。分かっていることから逆算してみたい。2018年の総軍事費は6,200憶ドル、GDPの3.1%に当たる。GDPの2%は4,000憶ドルになる。客観的に考えて、アメリカがヨーロッパに軍事予算の3分の2も費やしているとは到底思い難い。

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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