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ジョセフ・クラフト 特別レポート

ブレキジット迷走劇 ~ メイ首相敗北宣言によって離脱延期からの国民投票そして(実質的)残留の道筋が開けた

掲載日:2019年04月03日

松坂大輔を引用するのも烏滸がましいが、「(長期)延期」→「国民投票」→「(実質的な)残留」という以前から主張するブレキジット見通しが自信から確信に変わった。昨晩、メイ首相は事実上の敗北宣言を行った(首相筋は「国民を重んじた柔軟な姿勢」と説明!?)。メイ首相は、「Today, I am taking action to break the logjam. I am offering to sit down with the leader of the opposition and try to agree on a plan.」と自身の離脱案を諦め、労働党との妥協案を模索する意思を表明した。しかし、彼女を動かしたのは政治思想や閣僚からの説得では無く、単純な算数である。

下記表はこれまでの議会代替案の評決を明記したもの。3月28日に八つの代替案が採決され、全てが否決された。その時、替案採決に関して「ブレキジットのプロセスが崩壊したかのように見えるかもしれないが、これは最終決断に近づく第一歩で必要なプロセス」と指摘させていただいた。その後、4月1日に可決の可能性が最も高い4案に絞り込まれ、またもや否決されたが、票差が更に縮小した。この数字・流れを見ればメイ首相の離脱案よりいくつかの代替案の方が賛成多数を得る確率が高いこと誰が見ても明白である。この時点でメイ首相の選択肢は基本的に解散総選挙か野党との妥協・対話の二つしか無いと思われ、後者を取ったのである。

ブレキジット迷走劇 ~ メイ首相敗北宣言によって離脱延期からの国民投票そして(実質的)残留の道筋が開けた・・・(2019年4月3日)

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

4月1日に採決された代替案で注目なことは、全てがEU離脱を諦めるか実質的にEU残留(ソフト・ブレキジット)案であること。英政治家は表立って言えないが、本質的なEU離脱の可能性がほぼ皆無であることが受け取れられる。しかし、それでは2016年の国民投票と反する方向性なため、代替案を2回目の国民投票に掛けることは避けられないと考える。そもそも、UKをこれだけ分断した重要政治事項だけに、例えメイ離脱であっても、もう一度国民に具体案を問わないかぎり、延々と不満・シコリが残り、本当の意味で前に進めないので再国民投票は絶対に行うべきと考える。

一つ腑に落ちないのはメイ首相が「短い延期」を求めると表明したこと。おそらく5月22日のEU議会選挙を意識したものと推測されるが、ブレキジットの最終決着(代替案+国民投票)は6~12ヶ月かかることが予想されるため、また再度の延期を求めることになると思う。このような小出し小出しの引き延ばし戦略は経済・金融市場にとって決してプラスでは無い。まぁ~、そもそもイギリス政府そして議会が経済・金融市場を重んじていれば現在の迷走劇には至ってないと思うので愚問である。

因みに、ブレキジットの金融市場への影響について著名投資家数名から見解を徴収した。海外投資家は全員ポンド高で意見が一致。先ず、合意無き離脱を織り込む投資家は一人も居ない(逆に万が一そうなったら市場への悪影響は相当大きい)。メイ案であろうが代替案であろうが、合意の上でのブレキジットは既に織り込まれており、離脱が決定すれば不透明感が払しょくされるのでポンド(及び株式)にとって一定のプラスと見ている。もし残留ともなればまとまったポンド(株)買いが見られ相場は大きく上昇することが見込まれる。いづれにせよヘッジファンドなどはポンド高を想定しているため、ブレキジットに強い懸念や不安は抱いていないようである。それを象徴するが直近の、比較的安定したポンド市場ではないか?

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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