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ジョセフ・クラフト 特別レポート

① スコットランド議会選挙 ~ 独立という種を刈らされるジョンソン首相?

掲載日:2021年05月10日

EU執行部が味わったブレグジットの苦悩をジョンソン首相が味わうことになる可能性が高まった。金曜日に行われたスコットランド議会選挙で、第一党で独立派のSNP(スコットランド国民党)が64議席と改選議席前の61議席から伸ばした。過半数の65席に満たなかったものの、独立を同じく望むGreen Party(緑の党)の8議席と合わせればSNP率いる独立派は過半数を優に超える。選挙後にSNPスタージョン党首は、先ずはコロナ終息に専念、しかしその後に分離独立を問う住民投票を実施すると表明。ただ問題は、正当な住民投票を実施するには、中央政府の承認が必要。もう一つの問題は、現在世論が独立に五分五分と拮抗しており、SNPとしては先ず世論をより味方に付ける必要がある

自らブレグジットを推奨して来たジョンソン首相が独立を阻止することに矛盾があり、難しい立場に立たされている。ジョンソン首相として悩ましいのが、ブレグジットによって英領の北アイルランドでもアイルランドの統一論が高まっている。スコットランドが独立に傾けば、アイルランドも追随し英連合の終わりに繋がりかねない。金融機関はスコットランドの独立を15~35%としているが、情勢が急に(独立へ)傾く可能性は否定しない。世論によるが、住民票は2年前後に行われる可能性を海外専門家が指摘する。こうした不透明要因は英ポンドそしてFTSE株式の重石になることが予想される。

② 予想を大きく下回った米雇用統計 ~ 心配ご無用・・・

金曜日に発表された4月米雇用統計は、26.6万人と事前予想の100万人大きく下回った。ポイントは、この弱い雇用指標が米経済の失速を示唆しているのか、それとも単なるアノマリー(例外)なのか?結論は、米景気は堅調である。先ず、ストレートに予想が単に高過ぎたことを認めなければならない。そして同日の米株式市場が229ドル(0.7%)上昇したのは金融市場が悲観的になっていたことを表す。投資家の観点からは最高の結果だったかもしれない。米回復が健在でありながら低い数値によって金融引き締め時期が遅れる可能性があり、投資家のリスク許容度にプラスに寄与したものと思われる。ただし、個人的には夏場に入るとインフレ圧力が顕在化し、早ければ8月のFRBジャクソン・ホールでテーパリング姿勢が表明される可能性を注視している。インフレリスク議論はまたの機会として、下記では今回の雇用統計は懸念するほどでないポイントを6つ紹介したい

ポイント① 過去データの修正 ~ 4月のデータ以外で、3月の雇用統計が91.6万から77.0万に下方修正されたことで失速感が助長されたとの指摘がある。ただ、2月の最終(3回目)修正分が6.8万に上方修正、1回~3回全てで+15.7万、更に1月も+18.4万と合わせて34.1万の上方修正である。通年の1~2月の修正額は±2~3万に止まるに対して今回の約7倍の(上方)修正は回復基調が健在であることを示す。

ポイント② 季節調整 ~ 季節調整済みの雇用統計は26.6万と低かったものの、非季節調整雇用は108.9万人と予想値に合致する。4月というのは季節調整と非調整データが大きく乖離する傾向がある(下記左表参照)。2010年からさかのぼると季節調整済みデータは、非季節調整データに対して約80万低く出ている。今回のデータは例年の傾向がそのまま表れたに過ぎない。

ポイント③ 平均時給 ~ 雇用の需要が本当に減速しているのであれば賃金が下落するのが筋。下記右チャートは平均時給を表すが、コロナ直後の変則データを除けば、4月は初の30ドル第に上昇。前月比の伸び率は0.7%と労働需要は極めて堅調と言わざるを得ない。

ポイント④ サービス業回復 ~ ワクチン普及によるサービス産業の回復が著しい。余暇関連サービス業(Leisure & Hospitality)は33.1万人増と強い回復基調が確認。レストラン開業や在宅勤務が減ったことで逆にテイクアウト配達やメッセンジャーが7.7万人減少した。

ポイント⑤ 手厚い失業保険 ~ 米商工会議所は金曜日、3月にコロナ経済対策に盛り込まれた週300ドルの失業給付上乗せ制度の廃止を求めた。失業者の4人に一人は失業前の給与より多く貰う事態が生じており、復職する意欲が削がれていると主張。こうした見解から、雇用統計の問題は需要では無く供給の問題、つまり景気減速によるものではない。

ポイント⑥ 新規失業保険者数 ~ 市場予想が外れた一つの要因が極めて堅調な失業保険申請者数と言えよう(一番下チャート)。先ず4月8日から15日の1週間で失業申請が74.2万から58.6万と大きく減少、更に4月29日から5月6日の1週間で10万と更に下落、1年2ヶ月ぶりに50万台を切った。雇用統計は大体20日ぐらいで切られることから直近の申請者数動向は5月の雇用統計に反映されるものと思われる。

③ バイデン政権でケーブル・ニュース視聴率暴落 ~ トランプ恋しいCNN?

アメリカ三大ケーブル・ニュース局と言えばFOX News、MSNBC(NBC放送系列)そしてCNN。日本では以外と知られていないが、2002年4月以降からFOX Newsが視聴率1位を独占、CNNは2位どころかMSNBCにかなりの差を付けられ毎年3位。CNNは中道左派という立ち位置を取って来たが、2013年にザッカ―CEOが就任、徐々に左派よりにシフトしていくがトランプ大統領の就任と共に加速する。そして視聴率を伸ばすために2019年からより露骨に反トランプ色を強め、大統領弾劾訴訟を長時間放送し、コロナ禍を過激に煽り立てるなど民主党視聴者からも批判がでるほど(長年CNNを視聴した者として、見るに堪えない放送が増えた)。しかしCNNの反トランプの急先鋒というイメージが功を奏し、トランプ大統領が敗戦した11月から視聴率が伸び、2021年1月6日の議会暴動によって約20年ぶりに1月の月間視聴率で首位に立つ

ところが議会暴動のショックも冷め始め、バイデン政権の発足と共にCNNの視聴率が急落し始める。トランプ無き今、トランプ批判に頼って来たCNNの戦略が裏目となり、1月18日の週にゴールデンタイムで283万人あった視聴者数が4月末には112万人と60%も暴落する(下記チャート参照)。CNNは戦略の立て直しに迷走、ザッカ―CEOが2月4日に年内で辞任する意思を表明。親会社のAT&Tは負債削減のため、去年からCNNの売却の意向を示してきたが、まだ買い手がまだ付かない。更に赤っ恥をかいたのが、マイノリティ差別とトランプを批判して来たCNNが、看板番組のアンカーがほとんど白人男性と批判される始末。2月17日に看板番組のアンカーの大半を女性と黒人に替える発表を余儀なくさせられる。もう一つの左派局であるMSNBCも視聴者数が40%とCNNほどでは無いが大きく下落する。皮肉なことにトランプを最も批判した局ほどトランプを必要としていたのである。FOX Newsは再び1位の座を取り戻し、他局同様に視聴者数は下がったものの、14%程度に止まった。

番組別の視聴者数ランキングでは通常FOX Newsが大体Top Fiveを独占。ただ、1月に(議会暴動によって)左派メディアへの視聴率が大きく増加したことで2021年1~3月期のランキングでMSNBCが首位を取った(下記右表参照)。通年、CNNはTop 20に番組が一つもランクインしないが、1月のおかげで5番組がTop 20入り(最高10位)。第2四半期(4~6月期)では再びFOX Newsがランキングを独占するであろう。CNNを筆頭に左派メディアの本音はトランプ大統領の復帰ではないだろうか?

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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