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ジョセフ・クラフト 特別レポート

トランプのツイートから垣間見られる貿易交渉戦術 ~ カギは「WOMP」

掲載日:2019年03月19日

週末にトランプが興味深いツイートを二つ発した(下記左参照)。共にGMが閉鎖すると発表したオハイオ州工場に関するもの。そのツイートで印象的なのが、焦りというか切羽詰まった感であり、緊急性に関して二つのポイントが挙げられる: ①アピールと②勢い封じ。前者に関してトランプは今週、遊説と献金活動のためオハイオ州に入るので事前に有権者らに工場閉鎖を気に掛けているアピールが狙いであろう。後者は春から夏にかけた(特に民主党)大統領選の政治スケジュールを念頭に置いたことが推測される。この時期は野党がニュースで取り上げられ易いので、勢い付かせないためにある程度の防止策を講じたいもの。取り分け経済においての批判材料を与えないことである。下記スケジュールを見て推察されるようにアイオワ州とニューハンプシャー州の行事が多く、これは2020年予備選のキックオフ(始まり)が両州であるから(2月3日にIowaと11日にNew Hampshire)。アイオワ州は中部でオハイオ州に近いため、GMの工場閉鎖が焦点になり得る可能性が考えられる。従ってトランプとして願わくば今年の夏までに、遅くとも年末から2020年1月までにGM工場問題を解決したいと思っているのは間違いない。

そこで「WOMP」という文字を改めて指摘したい。2018年12月19日のレポート(題して:日米貿易交渉に重要な四つのキーワード)で2020年の選挙戦を左右しかねない四つの重要州として「Wisconsin、Ohio、MichiganとPennsylvania」を取り上げさせていただいた。GMの工場閉鎖は正しくこのうちの二つ、オハイオ州とミシガン州にある。因みにWOMP州は大豆栽培においてアメリカトップ20位に入る(Ohio 6位、Michigan 13位、Wisconsin 16位とPennsylvania 19位)。更に予備選キックオフのアイオワ州は栽培量第2位。このことが直近、アメリカの中国貿易姿勢に関わっていると思われる。そして現に中国は(貿易合意に至ってもいないのに)12月から米大豆の輸入を再開している。要は貿易交渉を上手く進めて行くのに「WOMP」は効果的なレバレッジになり得ること。

上記トランプのツイートに関して、その他に注目点を挙げてみたい。一つはトヨタの135億ドル投資に言及したこと。これは日米交渉に先駆けて、日本政府の刷り込みがきちんとなされていると言えるのでなないだろうか?安部総理が直接トランプに、同時にあるいは、内閣府、経産省と外務省がそれぞれの米カウンターパートにも上がってそれがトランプに伝わっていると思われる。もう一つはトランプがGMに対して工場の売却を(一つの選択肢として)迫っていること。

例えば、中国として構造問題においての交渉が難航するようであれば、トランプにオハイオあるいはミシガン州の工場買収、または同州に別の投資案件を打診して妥協を促す戦術は友好的と考える。当然、中国政府はそれぐらいのことは既に理解していると思う・・・。最後のポイントとして、トランプは米中(及び日米)貿易協議を決裂どころか早期に合意したいということ。ライトハイザー通商代表は時間をかけて中国との構造問題を完全に解決したいのが本音だろうが、トランプとしては大統領選を控えてなるべく早期の合意に持ち込みたい意図があると現地筋からも聞く。そこで、「WOMP」を有効的な交渉材料として取り込むことが出来るか問われる、少なくとも交渉戦術の選択肢になり得るのではないか?

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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