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ジョセフ・クラフト 特別レポート

バイデン初公式記者会見検証 ~ 移民問題が最大のアキレス腱に?・・・

掲載日:2021年03月29日

因みに、就任から64日目の公式記者会見は最も遅いものである。ホワイトハウス歴史協会の資料によれば、公式記者会見が開かれるようになったのが1913年のウッドロー・ウイルソン政権以降。これまで最も遅い会見は就任33日目に行われたジョージWブッシュ(2001年)だったが、バイデンの会見はその倍近くも遅いものである。

会見で取り上げられた議題・テーマは大統領では無く、メディア・世論が重要視するものと念頭において会見を分析すべき。従って、日本ではあまり報道されないも、アメリカ国内で着目されている問題が伺える。そこで、議題・テーマを時間別でランキングしてみた(下記表参照)。時間の他に、議題・テーマの質問順番も比較してみた。当然、時間が一番長く且つ早いタイミングでの質問ほど注目度・重要性が高いことが示唆される。下記表の下に、テーマ別での注目ポイントを指摘させていただいた。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

会見運営 ~ 本題の前に会見運営について一言。コロナ予防のため、参加メディア機関の数が制限された。ホワイトハウスは、全国、地方、左派、右派、そして国内外のメディア機関30社を公平に招待したと明かした(下記リスト参照)。問題は、質問が許された(大統領が指した)メディアは10社に止まり、CNN、CBS、Washington Post、NBCやBloombergなど政権に近しい左派機関が中心を占めたこと(下記に青で表示)。Fox Newsや中国系メディアが指されることは無かった。予想されるように、質問は比較的優しいもので、CNNとNBCの記者に至っては質問が5~6個も許されるなど融合が目立った。要は、大統領に優しいように会見のロジが事前に仕込まれた印象が強かった。
招待メディア(30社): ABC、ABC Radio、AFP、APBloombergCBS、CBS Radio、CNN、Fox、Huffington Post、Las Vegas Review、McClatchy、NBC、New York Times、Newsmax、NPR、PBS、Politico、Polskie Radio、RealClear Politics、Reuters、Shanghai Media Group、Sinclair、The Grio、Time、Univision、USA Today、Wall Street Journal、Washington Blade、Washington Post

冒頭挨拶 ~ バイデン大統領は、100日で1億回のワクチン接種を約束、僅か58日目で達成したことを謳った。更に次の100日間で2億回のワクチン接種を約束、コロナ対応の成果をアピールした。この発言は良く言って「賢い」、悪く言えば「不誠実」である。就任当日、つまりトランプ政権下で既に一日91万回のワクチンを打っており、ロジに慣れれば回数はさらに増加出来ることは目に見えていた。更に100日で2億回(一日200万回)の目標においても、現在で既に一日243万回のワクチン接種が行われているのである。コロナ対応の危機意識は評価できるものの、期待値を下げて早期の成果をアピールする意図があるものの、トランプ政権が続いていたとしたら結果はさほど大きく変わって無かったであろう。このことは記者団に見透かされており、(フレンドリーな人員のため)指摘する記者は居なかったが、さすがに誉める者も無かった。

移民問題 ~ 会見の中で21分以上と圧倒的な時間が割かれたことが示すように、国境に押し寄せる不法移民問題がアメリカで最も懸念されている問題と言える。移民問題はバイデン政権のアキレス腱になりかねないほど深刻になりつつある。民主党・バイデン政権なら移民に融和的との印象から、2月だけで10万人の移民志願者が国境に押し寄せた。取り分け問題とされるのが、親が同行していない未成年で、2月時点で9,300人の子供が収容所に保護された。批判が高まるもう一つの理由は、メディアが収容所への立ち入りを許されてないこと。透明性を誓ったにも関わらず、有言実行でないと左派メディアからも批判が出る始末。

中国 ~ 会見が始まって40分過ぎまで中国への質問が出なかったことは、現地メディア・世論の関心の低さを物語っているかもしれない。中国への言及は強硬的と融和的な姿勢が織り交ざって幾分焦点がボケてしまった感がある。幾分オブラートに包まれたものの、人権問題で「ウイグル」と「香港」と公式の場で初めて言及したことは意味が大きい。「習主席は独裁主義に将来性を見出したがっている」とか「公平な競争、公平な慣行、公平な貿易という国際ルールに従うよう要求する」などとこれまでより踏み込んだ発言を行った。ただ、ボディ・ランゲージや声のトーンからは特段強い思いは伝わらず、中国に融和過ぎるとの批判をかわす狙いもあるようにも受け止められる。強硬的な発言と同時に、「中国とは対立を望んでいない」や「同盟国連携は反中では無い」と融和姿勢も見せ、更に副大統領時代に習近平氏と長い時間を共にした思い出にふけるなど、プーチンとは違った思いを抱いていることが伺える。融和姿勢をところどころに見せながらも、アラスカの米中外相会談を踏まえ、バイデン政権はより対中強硬的に軌道修正していることは間違いないと思う。バイデン大統領は中国について7分以上と長く語ったが、半分は(中国に対抗するには)国内投資が重要と内政政策を謳ったものである。

議事妨害・超党派協力 ~ 議事妨害に関する質問が多かったことは左派メディア主導の会見を象徴する。党内の左派勢力は議事妨害制度さえ無ければ、多くの進歩派政策が通せると躍起になっている。記者団からは質問というよりも、議事妨害を無くすよう直談判と言った方が正確である。バイデン大横領は記者らから(議事妨害は意志を)問い詰められるも、議事妨害制度を無くすことには否定的ながらも改定・修正の必要性は認めた。

北朝鮮 ~ 「国連決議違反」発言に注目が集まったが、既に日本など他国が声明を出しており、遅ればせながらバイデン政権としても言及せざるを得ないのが実情。より重要な発言は、「何らかの形の外交を行う用意はあるが、それは非核化という最終結果が条件でなくてはならない」と非核化に言及したことだと思う。

再選・2024年 ~ メディアの多くは、「再選への意欲示す」と報道したが実態は違うと考える。先ず、就任2ヶ月で再選は無いと言ってしまえば、党内・議会での影響力・統治力を失いかねない。バイデン大統領の返答を良くみれば、逃げ道がある。バイデンは、「Yes, my plan is to run for reelection. That's my expectation」と再出馬は予定としている。それに気づいたCNNの記者が再度再出馬は「Yes」なのかと念押しするとバイデン大統領は、「3~4年先のことは確実とは言えない」とコメント、そこから中流階級のために成果を挙げたいと話を逸らしたのである。バイデン大統領は過去に側近らに再出馬は無いと言っており、個人的には難しいのではないかと思う。しかし、2024年を考える前に、2022年の中間選挙を勝たないと再選どころでは無い。

銃犯罪・規制 ~ この2週間で、ジョージア州とコロラド州で合わせて18人が射殺されたにも関わらず、会見の50分過ぎまで質問が無かったことに驚いた。もっと驚いたのは質問と返答合わせて僅か40秒に満たなかったことである。大統領として成功の秘訣は「タイミング」とコメント、銃規制は折を見て対処するとだけに止めた。被害者や家族への追悼・哀悼も示さなかった。答えも答えだが、素直に受けとめて反論しない記者団もなさけないと思った。

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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