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ジョセフ・クラフト 特別レポート

一般教書演説はトランプに軍配~政府閉鎖回避はペロシの譲歩に傾き始めた(?)

掲載日:2019年02月11日

2月5日(火)の大統領一般教書演説の内容は大きく分けて: ①超党派協力の呼びかけと、②2020年の大統領選を意識したアピール演説と指摘させていただいた。米有権者はトランプに一定の評価を下した。講演直後にCBS/YouGov社が実地した世論調査では76%が演説を評価すると回答、なかでも民主党員の3割以上が評価すると答えたことは通常より結構高い比率である。RealClear Politicsが集計する主要世論調査のトランプ支持率平均指数は(41.0%前後から)42.2%と1月11日以来の水準に回復した(下記チャート参照)。ワシントンで権威のあるHill-HarrisX調査の最新(8日)調査ではトランプの支持率が44%から47%と改善。その中で民主党員のトランプ支持率が演説前の15%から演説後は20%に増えた。これにより大統領選を優位に戦えるとは到底言えないが、出血を止めたということでトランプ陣営は一安心というところではないか?

一般教書演説の評価に際して二つの要因が挙げられると思う: ①融和・超党派協力姿勢(ペロシへの圧力)と②社会主義への警鐘。先ず前者について、国民が最も危惧しているのが政府閉鎖。もともとの責任はさておき、閉鎖解除の決断に一定の安心・評価が向けられている。更に演説の融和姿勢に対して逆にペロシ下院議長が固持的に見える。ワシントンでは(全国的にも)今度は民主党・ペロシ議長が譲歩すべきとの声が高まっている。政府閉鎖解除を「敗北」や「弱腰」と当初厳しく批判したCNNでさえ、最近は一定の評価するなど姿勢を若干軟化させている。メディアに詳しい現地筋に聞いたところCNNに苦情が結構寄せられたとのこと。二つ目は社会主義への警鐘で、トランプは演説の中で「Here, in the United States, we are alarmed by new calls to adopt socialism in our country. America was founded on liberty and independence - not government coercion, domination, and control.」と謳った。この「new calls to adopt socialism」とは中間選挙の下院選で大勝したオカシオ・コルテス議員などが象徴するプログレッシブの波を指している(詳しくは下記「民主党迷走」文参照)。保守は無論、この新しい極左派的トレンドを警戒する中道派有権者も少なく無い。アメリカ人は歴史的に「Socialism」や「Communism」という言葉へのアレルギーが強く、これがボディブローのように聞ているようだ。

つなぎ予算の起源が今週金曜日に迫る中、ワシントン筋に確認したところ、前回の政府閉鎖の傷口が大き過ぎて、両党共に再閉鎖への余力・意欲など全く無いとのこと。それではどのような着地点が考えられるか?当初、民主党から一切の妥協が期待できないため、非常事態宣言の選択肢が有力とされ、現在も排除できない。しかし非常事態宣言は法廷で敗訴する確率は高いだけでなく支持率低下に繋がるリスクを含んでいる。そうでなかれば、ホワイトハウスは既に実行している。トランプがプライドを飲み込み政府閉鎖を解除そして一般教書演説で融和姿勢を見せたことで一般的に同調する流れが幾分感じられる。それを無視して全くの譲歩を見せないと民主党・ペロシ議長への風当たりが厳しくなる可能性が考えられる。非常事態宣言に抵抗する共和党上院議員が増えており、マコネル上院院内総務としては是が非でも避けたいところ。個人的には民主党がある程度の譲歩を見せ、共和党が支持する展開を予想する。問題は民主党の譲歩をトランプが受け入れるかどうか。非常事態宣言になったとしても二度目の政府閉鎖は無いと思って良いと考える。と言いつつ、トランプのことだから・・・。

トランプ支持率の主要世論調査平均指数

出所:RealClearPolitics:トランプ支持率の主要世論調査平均指数

2020年米大統領選で民主党が迷走 ~ オカシオ・オーコルテス呪縛・・・

現段階で、2020年の大統領選を占うは早過ぎる。それでも、民主党の迷走ぶりが目立つ。2018年中間選挙で民主党は下院で圧勝。その躍進となったのが女性、マイノリティそして何よりもプログレッシブ派(革新派)の新人候補であった。現在、民主党はそのプログレッシブ派に掌握されようとしている。プログレッシブ派の最たる象徴がニューヨーク下院14区を勝ち取った新生オカシオ・コルテス議員である。彼女の党への影響力を把握するのに、小泉進次郎を100倍にした感じをイメージすると分かり易いかもしれない。民主党が抱える問題を理解するには「プログレッシブ」対「リベラル」の違いを把握することである。「プログレッシブ」は思想というよりイデオロギー、具体的に言うと社会主義に近い。「リベラル」は資本主義の中で自由・社会主義的な思想で、社会イデオロギーとは違う。

現在民主党大統領選候補たちが直面している問題とは、民主党指名を得るにはプログレッシブ(社会主義)的政策が有利なのに対して、大統領本選では不利とになり得るジレンマ。簡単に言うと、オカシオ・コルテス人気に肖る、その戦略を真似ることである ~ これが「オカシオ・コルテスの呪縛」である(下記左ズ参照)。それを象徴するのが、カマラ・ハリス(上院カリフォルニア州)とコーリー・ブッカー(上院ニュージャージー州)候補である。二人は民主党内では中道リベラルや中道保守的位置に立っていたが、立候補した途端に政策が極左派に寄せ始めた。ハリス議員に至っては、民間医療保険の廃止を示唆するコメントをCNNのインタビューで述べた。立候補直後は勢いがあったものの、このコメント以降はモメンタムが失速気味となってしまった。プログレッシブ色を打ち出すことで献金のジレンマがある。極右派志向は若い有権者に人気があり、小口ながらネットで献金がより多く集まり易い。しかし、中道派の大物献金者から毛嫌いされてしまう。「民主党予備選対大統領本選の政策ジレンマ」と「献金のジレンマ」を解読あるいはバランスを取れた者こそがトランプに勝利出来る。

政策志向が定まらない民主党は立候補者も全く定まらない。現在8名が正式に立候補、まだ20人以上ほどが名乗りを上げると言われている。中でもジョー・バイデン元副大統領の出馬に注目が集まっている。立候補者らがここまで極右派に寄り始めると、より中道派を求める有権者の声が高まっている。CNNが民主党有権者を対象に「大統領候補とし支持あるいは支持すると思われるのは誰?」との問いに、バイデン氏がトップとなった。民主党有権者にとって最重要要因は個別政策よりもトランプに勝てるかどうかのようだ。同じくCNNの調査で大統領候補に求める要素のトップはトランプに勝つ確率が高い(26%)、その次が政権を担うのに正しい経験がある(16%)かとなった。プログレッシブ志向は5%しかなかった。プログレッシブ派の若手候補が浮上するにつれて反発としてより年配層の中道派を求める声が挙がり始めている。党執行部が最も恐れるのが民主党内の中での「若手対ベテラン」あるいは「極右派対中道派」の争いである。民主党の迷走はしばらく続くだろう。

出所:ロールシャッハ・アドバイザリー

【筆者プロフィール】

ジョセフ・クラフト 
SBI FXトレード株式会社 社外取締役

【略歴】
1986年6月 カリフォルニア大学バークレイ校卒業
1986年7月 モルガン・スタンレーNYK 入社
1987年7月 同社 東京支社
為替と債券トレーディングの共同ヘッドなどの管理職を歴任。
2000年以降はマネージングディレクターを務める。
コーポレート・デリバティブ・セールスのヘッド、債券営業
そしてアジア・太平洋地域における為替営業の責任者なども歴任
2007年4月 ドレスナー・クラインオート証券 入社
東京支店 キャピタル・マーケッツ本部長
2010年3月 バンク・オブ・アメリカ 入社
東京支店 副支店長兼為替本部長
2015年7月 ロールシャッハ・アドバイザリー㈱代表取締役 就任
現在に至る

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